5話
〜1〜
…………なんか…苦しい。あれ?俺、どうしたんだろう…?
確か、“どくどくの牙”を受けて…毒?もしかして、俺、死んじゃった?……いや!ダメだろそれ!!俺、まだ目的果たしてないぜ!?主人公が死んだら、この小説終わるわ!
「…ト」
うん?誰だ?…どこかで、聞いたことがあるような…。
「ソ…ト!」
……ラピス?
「ソルト!!」
俺の名前を呼ぶラピスの声で、俺は目を覚ました。
ここは…ベットの上か。って、事は…生きてる?
横を見ると、ラピスがイスに座って寝ていた。どうやらずっと付きっりで看病していたみたいだ。
窓の外はまだ明るい。あれからどれだけの時間がたったんだろう?って言うか、バトルは?
「よぅ、起きたか?」
俺の隣のベットでユーリが寝ていた。ユーリの身体には包帯が巻かれ、いかにもけが人と分かるような格好になっている。
「俺…どうしたんだ?」
「どうしたって、相手の毒を浴びてぶっ倒れたんだろうが。モモンの実をすぐに食べさせたから、毒がすぐ抜けたって言ったって、こんなに早く起きるなんてな」
「あれから、どれだけたったんだ?」
「30分ぐらいかな。レインが、お前が起きるまで待つって聞かないくて困ってるらしいぜ?」
バトル…そうだ!俺、決勝戦に進出したんだった。って事は、行くしかねぇよな。
重たい身体をムリくり叩き起こす。すると、その衝撃でラピスが起きた。
「ソルト!もう、大丈夫なの!?」
「なんとか…な。俺、いかないと。まだ決勝戦が残ってるしな」
「ダメだよ!まだフラフラなのに、どうみても戦える状態じゃないって!」
「大丈夫だって。毒はもう抜けてるし、けがしてるのは左腕だけだから、なんとかなるだろ」
ラピスはドアの前で通せん棒をして、何がなんでも行かせたくないみたいだ。
「絶対ダメ!戦って、それ以上ケガをしたってなんの意味も無いでしょ!?」
「……ラピス。俺、行きたいんだ」
「ダメダメダメ!ぜーーったい、ダメ!!!」
「分かった。なら、ムリしない程度にするから。それでもダメか?」
「……本当は、行かせたくない。だって、ソルトがムリして戦ってたら、私がハラハラしてぶっ倒れちゃうもん」
やっぱりダメか?結構ごり押しで頑張ったんだけどな。
少し落ち込むと、ラピスが見かねたのか話を続けた。
「分かった。でも、ムリしちゃダメだよ?…応援してるからね?」
「…!ありがとう。ラピス!」
病室のドアを開けて、外に飛び出す。祭り会場には、たくさんの観客で埋め尽くされている。石のステージには、レインが座って待っている。ハムライバッチは、少しイライラしているのか、周りをキョロキョロしていた。
「レインさん?いつまで待つつもりですか?」
「相手が来るまでだ」
「なに言ってるんですか!もしかしたら明日になるかも知れないんですよ?」
「ちょっと待った!!」
自分の存在を分からせるために、必死になって叫ぶ。周りの観客が道を開けて、ステージまで誘導した。
「来たか…」
「まさか、逃げ出すとか思ってた?」
「いいや、今のお前からはそれは感じられない。どうやら、完全に吹っ切れたようだな」
「まぁ、お陰さまで!さぁ、決勝戦始めようぜ!?」
横を見ると、ラピスにサファイア、ユーリまでもがステージに近いところで見ていた。
さぁ、決勝戦の始まりだ!
〜2〜
「この時を誰もが待ちわびた!去年の優勝者と準優勝者を倒すその実力!今年の優勝は一体どちらになるのか!!さぁ、準備は良いかい?お二人さん。バトル、スタート!!!!」
先に攻撃してきたのはレインの方だった。歓声で音をかき消され、足音が全く聞こえなかった。
「“炎のパンチ”!!」
「“水鉄砲”!」
炎をまとった拳が来る前に、“水鉄砲”で消火する。
水蒸気がステージにいっぱいになり、全く見えない。動いた方がいいのか、動かない方が良いのか…。そう思いながら動かずにいると、下の方から強烈なパンチが来た。
「うわっ!あっぶね!」
「これを避けるか。なら、“きりさく”!」
ユーリの身体を切りつけたあの凶器が、こっちに向かってくる。避けらるだけ避けるが、少しだけかすっていく。
「“シェルブレード”!!」
“きりさく”と“シェルブレード”がぶつかり合い、甲高い音が響いていく。
“シェルブレード”は、出きるようになったとは言え、まだ使いなれていない。そのせいなのか、すくいあげられ、遠くに飛んでいってしまった。
「勝負あり…だな?」
「そうでもないぜ?俺は、まだとっておきを出してねぇんだからさ」
とっておき、まぁ秘密兵器ってやつだ。
そんなことを話しているときに、ユーリは大事な事を思い出そうとしていた。
「う〜ん。レイン・エスペラント…。どこかで聞いたことが…。あーっ!喉まで来てるのに出てこない!!!」
「ユーリ!怒ったら血圧上がっちゃうから!」
「炎の使い手…。あっ!いけないことを思い出しちまった!」
「何?あのレインってポケモンを知ってるの?」
「メラニウス帝国大佐。烈火のレイン!帝国の中でもいちにを争う炎のエキスパートだ。なんだって、この祭りに…」
その話を聞くことになったのは、この祭りが終わったときだった。
って、今はこのピンチを乗り越えないとな。レインは爪を下げ、あえて距離をとった。と言うことは、何かしかけてくると言うことだ。
「なるほど。ならば、俺のとっておきを見せてやる。ちゃんと構えとけよ。じゃないと死ぬからな!“だいもんじ”!!」
「こ、これはー!!炎タイプの必殺技、“だいもんじ”だー!!ソルトピーンチ!」
大きな大の字を描いた炎が向かってくる。でも、これが俺の逆転の大チャンス!ラピスの大きな声が響いた。
「ソルトーーー!!!!」
物凄い爆発と爆風が町中に取り巻いた。黒い煙の中、ステージのギリギリでなんとか耐え抜いた。
「なっ!?“だいもんじ”を直撃して、立ってる…だと!?」
「残念でした。これは、俺にとってピンチでもなんでもねぇ。大チャンスさ!“リベンジ”!!」
「この技は、相手から受けた攻撃を、倍にして相手に返す技!」
「勝つのは、俺だ!!!」
“リベンジ”で相手の攻撃を、倍にして返す。大きな光の玉が、レインの腹部に直撃し、止まることなく場外に弾き飛ばした。と、言うことは…?
「レインが場外!と言うことは!今年のバイダン名物、バトル大会!優勝は、ソルト・カーテリアス!!!」
ものすごい歓声で、町中がうるさく感じた。それでも、“だいもんじ”のダメージが残っているせいで、ユーリ達のところに移動するので精一杯だった。
「やったね!ソルトが優勝!」
「おめでとう!ソルト!」
「ありがとな。でも、“リベンジ”が相手に当たってなかったら確実に負けてたな」
「全く、無茶するんじゃねぇよ。ムリはしないって、ラピスと約束したんじゃねぇのか?」
「もうすでに、勝つとこしか頭になくって…」
「ったく、アホ」
「あはは。知ってる…さ」
またしても目の前が暗くなり、そのまま後ろにぶっ倒れた。でも、今回は気絶と言うよりも、疲れすぎて寝たに近い。
夢を見た。どんな夢だったかは忘れたが、良い夢だったことは覚えてる。