2話
〜1〜
「うーん!いい朝ー!」
ラピスは今日は珍しく自分で、しかも早く起きた。
「お、寝坊助が珍しい」
「おはようラピス」
「顔洗ってきな、もう朝ごはんだぞ?」
と言っても、この3匹には到底敵わない。それよりも早く起きたいならば、朝の3:00に起きるのは必須いだ。
「もう。みんな起きるの早すぎるよ」
「お前が遅いだけ」
俺がそうつっこむと、ラピスはムッとしたが顔を洗いに外に出た。
ここの洗面台は、川そのもの。洗濯に使う水も、井戸の水もこの川が原泉になっている。
ユーリは、スープを作っている。ちなみに、今日の朝ごはんはスープとサラダに、パンと目玉焼き。いたって普通の朝食だ。
「よし、出来たぞ」
「あ〜、サッパリ!スッキリした!」
「んじゃ、飯にするか」
ラピスが戻ってきたところで、お楽しみの朝食タイムだ。
相変わらず、ラピスはパンをモリモリと食べている。食べてるときは幸せな顔してるんだよな。
俺の目の前の席に座っているサファイアは、全く手をつけずに何かを考えているように見えた。
「どうしたサファイア?食欲がないか?」
「…………僕。昨日からずっと、考えていたことがあって」
「考えてたこと?」
「あのね。ソルトとラピスにおねがいがあるんだ。僕を、僕を君らの旅に連れていってほしいんだ!」
「ぶっ!!!!」
丁度スープを飲んでいたユーリが、ラピスの顔面に思いっきり吹きかけた。ラピスの毛はスープでベトベトになり、雫が垂れ落ちている。
これは、また洗わないとな。
「ユーリ汚い!」
「わりぃわりぃ、ビックリしてさ。わざとじゃねぇって」
「なんで、そんなおねがいを?」
「僕、自分の記憶の鍵を探したい。色んな所に行けば、何か分かるかもしれないって、思って」
サファイアの目は、綺麗な藍色の瞳をしている。いや、藍色と言うよりも群青色に近い色だ。その瞳は、俺を確りと捕らえて絶対にそらさない。
全く、俺はこう言う目に弱いな。ラピスとおんなじ目をしてる。
「分かったよ。一緒に行こう。でも、俺は目的があってここに来た。だから、そのついで…でも良いか?」
「うん!ありがとう!」
「で?ユーリのお兄さんはどうするんだ?」
不意に俺はユーリにふる。サファイアが行くと言ったら、きっとユーリも来るという自信があった。どこから出てきたのかは分からないが、そんな気がする。
「俺は…。あんたらは、軍に追われてるって言ってたな」
「そうだね。そうなりたくは無かったんだけど…」
「実は、軍にはちょっとした借りがあってな。いつか返してやりたいと思ってたんだよ」
「じゃあ!」
「あぁ、俺も行くぜ。それに、餓鬼だけでの旅なんて一番厳しいからな」
ほら、やっぱり。それに、軍に借りか。何があるかは分からないが、目的は俺と同じと考えて良いのかもしれない。
「で?次は何処に行く予定なの?」
「首都を目指そうと思う」
「首都って…軍の本拠地じゃねぇか!警備も厳しくなってるはずだぜ?そんなところに行ったら、相手の思うつぼだろ!」
「いや、その裏をかくんだよ。それに、俺はどうしても行かないといけないんだ。付いてきてくれないか?」
確信なんかどこにもない。もしかしたら捕まってしまうかもしれない。それでも、行く意味がある。行かないといけないから、俺は進む。
「もちろん!一緒に行くって決めたからね!」
「全く、いきなりとんでも発言をするなんてな。こうなったらとことん付き合うぜ?」
「それに、ソルトが言うとなんだか何でも出来そうな気がするしね」
なんだそれ。でも、嬉しい。仲間がいてくれるから、俺もとんでも発言が出来る。仲間がいるから、俺も進める。
「それじゃあ、行くか!」
「「「おう!!!」」」
朝食をそうそうに済ませて、ユーリとサファイアの家から飛び出す。
町を抜けて、明日へと続く道を進む。きっと、この出会いは運命だと信じて。
〜2〜
「〜♪」
長い道のりの間に、ラピスは鼻歌を歌う。サファイアが、その曲に耳を傾け、癒されているように見えた。
俺とユーリは、地図を見ながら次の村の事を話していた。
「綺麗な曲だね。何て言う曲なの?」
「これはね、私がまだ小さいときに、ママが歌ってくれた子守唄なの。よく歌ってもらったなぁ」
「へぇ。良いお母さんなんだね」
「うん!自慢なんだ」
楽しそうに話すラピスは、サファイアが少し暗い顔をしているのに気が付いた。
「あ!ご、ごめん…」
「ううん。大丈夫。僕のお母さんとお父さんがいるかどうか分からないけど、僕にはユーリがいてくれるし、それに、今はラピスもソルトもいるから。楽しいのは本当だよ?でも。やっぱり、少し羨ましいって言う気持ちがあるんだよね」
サファイアはそう言ったが、ラピスはやっぱり虚しい気持ちになった。サファイアがそれに気が付いたのか、笑顔で返した。
「ねぇ、さっきの子守唄聞きたいな。歌ってくれる?」
「うん。いいよ!〜♪」
「次の村はどんなところなんだ?」
「そう…だな。この時期だったら、あの祭りをやってるな」
あの祭り…?あのってなんだ?
「どんな祭りなんだよ?」
「あ?あぁ、つきゃあ分かるって」
「もったいぶらないで、教えてくれたっていいだろ?」
「楽しみにしてた方が、驚きが多いってもんだ」
そう言って、結局ユーリは言ってくれなかった。そんなこと言われたら、気になっちまうって。あー!早く行きたい!
「おい!早く次の村に行くぞ!走れ!」
「大丈夫だ、もう着いてる」
「え?」
目の前には、大きな門。その上の方に大きな旗がものすごく目立つ。
「えーっと、バイダン名物、バトル祭り!バトルに勝ちまくって、賞金をゲットしよう!だって」
「バトル祭り!?」
「そう!この村の名物は、一年に一度のバトル祭り!毎年力自慢のポケモン達が集まる有名な祭だ!もちろん、参加するよな?」
「わ、私は良いかな〜」
「僕も遠慮するよ」
「俺は出る!」
「その意気だ!さっそくエントリーするぞ!」
「おう!」
俺とユーリは、エントリーするために祭り会場に急いだ。
木の上からその行動さえも、筒抜けなのを知らずに。