3話
〜1〜
村を出て真っ直ぐ進み、右側の道を行くと、メラニウス帝国の将軍閣下の大きな屋敷が見えてくる。
ミストライルの市長の家なんか比にもならない。お城みないな豪華な屋敷が俺達の目の前にそびえる。そびえるっていっても、近くの木の陰に隠れて見ているだけだけど。
「おっきぃ〜!!!」
まず見て出てきた一言がこれだ。この屋敷は、税金からとった給料で買ったのだろうか?そうなら、少しムカつく。
「さーてさてさて。どうやって入るかなー」
「ねぇ、私思ったんだけどさ。捕まっちゃえば入れるんじゃない?」
はぁ?なにいってんだこいつ。捕まったって門前払いだろうよ。そりゃあ有名だったら入れるかもしれないけど。
「きっと門前払いで終わるわ」
「じゃあ作戦Tで行こう!それでいいよね?」
作戦Tってなんだよ?なんかすっごく怖い。とにかく恐怖しかこの作戦にはない気がする。
「ちなみに…。作戦Tってなに?」
「作戦TのTは、『突撃(TOTUGEKI)』のTだよ?」
「それのどこが作戦だ!!!そんなのダメに決まってんだろ!」
「えーっ!何でー!?」
「あのな、今回のターゲットは軍の上層部の奴だぞ?簡単に言えばお偉いさんだ。いくら気にくわない傲慢野郎だったとしても、手を出しただけで首が飛ぶわ」
ラピスの顔からサーっと血の気が引いていったように感じた。と言っても顔が真っ青になっている。血圧が急激に下がったらしい。
「その、手を出しただけで首が飛ぶようなポケモンに、今手を出そうとしてるんだよね?それってさ、もう死しかないように感じるのは私だけ?」
「いや、今その事を言った自分を殺したい。………生きて会おう」
「そんな事言わないで!?」
ギャーギャー騒いでいたせいなのか。屋敷の門番らしきポケモンが、怪しんだのか声をかけてきた。
「おい!そこの2匹!こんなところで何をしている!」
「「あ……。えっと、遊んでるだけです……」」
「なんか怪しいな…。ちょっとこっちに来い!」
首のところを捕まれて、ズルズルと引きずられて屋敷の門をくぐった。扉を開けて、中に入り。地下に続く階段を下りて、地下牢にぶちこまれた。
入れたのは嬉しかったけど、いきなり地下牢って…。
「お前達は後で取り調べを行うから、しばらく大人しくしておけ」
そういって、門番は地下から出ていった。
冷たい石畳で出来た牢屋には、俺とラピス。それに小さな黄色い物体がいるだけだだった。うん?黄色い物体?
「あんた達、捕まったの?」
「え?き、君誰?」
「俺はライト。ライト・ハーブィン。この近くの村に住んでるんだ」
こいつが、あの宿の亭主の息子さん?どう見ても、まだ10歳ぐらいじゃないか。
「あんた達は?」
「私はラピス。ラピス・ライレット。こっちはソルト。君が軍のお偉いさんに連れていかれた子?」
「まぁ……そうだな」
「なぁ、聞きたいことがあるんだが。ここに住んでるお偉いさんの名前。知ってるかな?」
「うん?あぁ、あのいけすかない傲慢将軍のことか?確か…。カルス・エステール将軍だったような」
うん。ビンゴ!良い情報を聞けるかも知れないぞ…!
そう予測している間にも、自分の事がかなり重要だなんて、分かってなかった。
〜2〜
そして、ソルト達が地下牢で意外な遭遇を果たしているときに、カルスは優雅なティータイムを過ごしていた。
さっき邪魔されたからなのか、物凄くリラックスしている。そんなときに、通信機から1匹の“ニャルマー”が映し出された。
「エステール少将?お仕事はやられてますか?」
「全くさー、心配しすぎなんだよ。タラ・リフォルダ中将?まずは自分の心配したら?」
中将と言うことは、カルスよりもひとつ上の上司だ。それでもため口なカルスに、少々飽きれかけている。
「宰相閣下が気にしておられましたよ?貴方、仕事は出きるけどやり方が汚いから」
「それ、僕にとって最高の誉め言葉だよ。大丈夫だって、仕事ついでに休暇もとりたかったからさ。ぼちぼち頑張るって」
「まぁ、私には興味の無いことなので、どうでも良いですが、それより。貴方にお仕事です」
「えーっ!仕事ー?やだなぁ。どんだけ僕にやらせたいの?」
「障壁が破壊されたのはご存じですよね?」
「あ、シカト?まぁ、その事は知ってるよ?朝に大きな音が聞こえたからね」
「その障壁を壊したポケモンを捕らえるのが、今回の仕事です」
「まぁ、それぐらいならいっかな。分かったよ、ご苦労様でした。じゃあね!」
そういって、一方的にきった。カルスは、彼女のことをあまり好んでなかった。確かに、かなりスタイルも良く。軍内でも人気がある。でも、カルスの好みのタイプじゃなかった。なんせ、性格が違いすぎる。
紅茶を一口飲んで、また優雅なティータイムに入った。もちろん、仕事の事以外、つまり彼女と話した事じたいはすべて消し去って。