2話
〜1〜
そして、ソルトとラピスはと言うと…。ずっと続く森の中を歩き続けていた。
「あーも!!森森森!ずーっと森!もう5時間ぐらい歩ってるけど、木しか見えてこないよー!!!」
「お前、少しだまれ。東州の軍に捕まったらどうする気だ」
ラピスはうるさいし、森しかないしでイライラしてくる。そういえば、この森を抜けた先に、俺が住んでた村があるはずだ。今はどうなっているかはわからないが、行ってみたい。
「ねぇ、東州についてもうすこし知りたいな。教えてくれる?」
「うん?あぁ、そうだな。東州は、メラニウス帝国が支配してる軍事国家だ。それでも、支配を拒む所が多いはずだったな。今はどうかは分からないけど」
「やっぱり、6年住んでたのはだてじゃないね。ねぇねぇ、他には?」
こいつの良いところは、何に対しても興味をわくところだな。初めて聞く事に対して、善悪に関係なくしっかりと聞く。そして、後から考える。その繰り返しだ。
「うん?そうだな…。と、その前に村が見えたな。あそこで休憩しよう」
「やっと休憩出来る〜!さ!そうと決まったら早くいこ?」
「あ!おい!待てって!ったく、勝手に行動するなよな」
草を掻き分けながら進んでいくと、のどかな村にたどり着いた。ここは、俺が住んでた村と同じ場所にある。新しく村が出来たのか?うん?あれは…。
「あ、ソルトどこ行くの!?」
村の中にあるひとつの教会。青い屋根に白い壁、屋根の上に十字架があり、ステンドグラスも見えた。間違いない、俺が住んでた頃のままだ。そう言えば、教会だけは潰されずにそのままだったような。
「綺麗な教会。いいな〜。私もこういう場所で結婚式あげたいな〜」
「その前に相手を見つけろよ。ま、お前と結婚したやつは確実に不幸になるな」
「もー!何でデリカシーのない発言するかなー!」
「もしもし、そこのお二人さん」
後ろを振り返ると、かなり年のいった“ドタイドス”がこちらに近づいてきた。大きすぎてかなり迫力がある。それでも、どこか優しい雰囲気がでている。まるでバナードさんみたいだ。
「もしや旅のお方かな?」
「まぁ、一応…」
旅に出てまだ5時間ぐらいしかたってない新米ですけどね…。旅人とは程遠いぐらい経験も知識もない。
「それなら、あの宿に行ってみるといいですよ?良い情報も入ってきますし、何より食事が美味しい」
「食事が美味しい!?ね!今日はあそこに止まろ!?」
「な!決めるのが速すぎんだよ!もっと考えろって!」
「別に急ぐ用事もないし、情報が手にはいるのなら一石二鳥だよ。ほらほら!行こ行こ!」
ラピスに強引に宿に連れていかれる。本当に食い物に釣られるその癖、直せよな。お前が良くても、俺が良くないんだって。
宿に入ると、2匹の“ピカチュウ”が愛想良く向かいいれてくれた。
「ご宿泊ですか?」
「はい!一泊夕食と朝食つきで2名でお願いします!」
「はい、それではお支払として、500000ポケになります」
ごっ!500000ポケだと!?一人あたり、25000ポケかよ!高いわ!
「高すぎんだろ!そんな金ねぇって!ラピス、あきらめろ!違うところに行くぞ!」
「どこも同じ金額だと思いますよ?」
な!それじゃあ野宿しかねぇってかよ!ふざけんなって!
「あの…。もうすこし安くならないですか?流石に、そんなに高かったら誰も泊まらないと思うんですけど」
「それが、そうもいかなくて…。すみませんね」
「そ、そんな〜」
「何かあったんですか?この金額はそれが原因ですよね?」
少し悩むかのように黙りこみ、キョロキョロと周りを見渡してから小さな声で話し始めた。
「実は、私達の息子が将軍の怒りをかってしまいまして、連れていかれてしまったんです。取り返すためには、500000ポケ必要でして。それで…」
将軍!?いきなり軍人と関わる機会が出てくるなんて、今日はついてる!
「あの…。その息子さんのこと、俺たちに任せていただけませんか?」
「え?」
「その代わり、達成出来たらここに泊めてください」
かなり無茶な交渉だ。どこの馬の骨とも知らない連中に、自分達の息子の命を預けるのだから。それでも、息子を絶対に取りかえすきでいるし、俺の目的も達成する。それだけは自信があった。
「お父さん…」
「分かりました。息子のこと、よろしくお願いいたします」
「はい、必ず。さ!そうと決まったら行くぞ、ラピス!」
「あ、ちょっと待ってよ!」
宿をばっと飛び出して、村の入り口の門をくぐり抜け、どこまでも続く道を走る。
実は、どこに連れていかれたのか大体予測できていた。この村から少し行った先に、軍のお偉いさんの別荘がある。俺が6歳の頃は誰もいなかったが、今はいる可能性があった。
「ねぇ!どこに行くの?」
「軍のお偉いさんの所さ。この近くに別荘があるんだ。そこに行くぞ!」
俺とラピスに吹いた追い風は、あの町と同じ感じがした。どこに居てもこの風だけは、俺達の味方をしてくれている気がする。