番外編!シーザとエレスの出会い編
〜1〜
「う〜ん!!今日もいい朝だな!」
草むらの上にゴロンと寝転がる1匹のポケモン。種族は“フタチマル”。
気持ちのいい風が吹く草原に1匹、ただただ日向ぼっこをしているだけだ。もちろん、この“フタチマル”だって、別に暇を余している訳ではない。今は休憩中なだけだ。
「そう!俺は今休憩中!少しぐらいのんびりしたって、神様は怒らねぇだろ?」
……怒られてしまえ!
この“フタチマル”の職業は、この草原の近くの酒場のウェイトレス。今の時間は、それほどではないが普通に客が来る時間帯。つまり、こいつはサボっている訳だ。……もう一回言おう。怒られてしまえ!
「グルルルル…!」
「ん?なんだ?」
起き上がって横の方を見ると、後ろ足に矢が刺さっているポケモンがいた。シーザは、そのポケモンが伝説のポケモン。“ライコウ”だと言うことを知るのは、もう少し親しくなってからの話だ。
「お、おい!大丈夫か!?」
「来るな!!!それ以上近づいたら、貴様のその喉笛を噛みちぎるぞ!」
「おうおう。それは怖い。でも、傷付いてる奴を黙って見捨てるほど、俺だってバカじゃないさ。えーっと。包帯と消毒液はあるな。よし、かなり痛いが、まずはその矢を抜くから、暴れるなよ?」
シーザはそういって、“ライコウ”の足に刺さっている矢を瞬時に抜いた。血がどんどん出てきていても慌てることはなく、的確に処置をする。綺麗に包帯を巻いて、 処置を終えた。
「よし。これで終わり」
「貴様は…医者か何かか?」
「いいや。そこの酒場のウェイトレスさ。あそこにはよくならず者どもが傷をつくってやってくるから、その治療をしてて慣れただけ」
「……私としたことが。一般に情けをかけられるとは…」
「情け…なぁ。でも、困ってるポケモンを助けるのに、理由なんているのか?」
“ライコウ”は、その言葉を聞いて驚いた。大抵、伝説のポケモンを見た奴は恐れるか、拝めるか、その二つしかあったことがない。でも、この“フタチマル”の態度は、初めてされる態度だった。
「俺は、シーザ!シーザ・カーテリアス!お前は?」
シーザと名乗る“フタチマル”。そう、そのポケモンは、後にソルトの父親となるポケモンだった。
「……エレス・エステール」
落ち着きはらったその声で、“ライコウ”は自らの名前を相手に教える。もちろん、この“ライコウ”も、後に、カルスの父親となるポケモンだ。
「エレスな!よろしく!」
「私は貴様と親しくなるつもりは無いぞ」
「え!?俺、なるきまんまんだったんだけど!?」
「はぁ…。貴様はとことんなしに変なやつだな…」
最後にエレスが言ったその一言は、シーザにとってどういう意味なのか、全く分からなかった。
これがこの2匹の出会い。その時から、運命の歯車が回り始める。