4話
〜1〜
青い水晶を手に入れることが出来た僕達は、今までの来た道を戻っていた。初めに戦った番人の“グラエナ”も出てこないのを見たところ、この神殿は、ランドが持っている青い水晶を奉っていたんだと推測出来る。
「ねぇ。これからどうしよう」
「そうねー。唯一の手がかりの青い水晶を手に入れても、なーんにも起きないし。ほんとにどうしよっか」
「んじゃあ。世界中回れば良いんじゃね?この水晶を見つけて手に入れる!目的はそれでいいだろ」
青い水晶見たいに、他の水晶もどこに奉られているんだろうか?でも、それよりもっと分からないことがある。もちろん、それは自分自身のこと。僕はどうしてこの世界に来たのか。しかも、どうしてこの赤い水晶を持っていたのか…分からないことだらけだ。
「………貴方は」
「え?アヤ。なんか言った?」
「私何もいってないけど?」
え?じゃ、じゃあさっきの声って…。
僕は、さっき聞こえた小さな声の出所を探して、自分の周りを見回った。左右を見て誰もいないのを確認し、後ろを振り返っても誰もいない。次に上を見上げると、“ピカチュウ”が氷で固まった天井にぶら下がってるのを見つけた。さっきの声は、あの“ピカチュウ”のもの?
「…貴方は、こんなところで油を売ってる場合じゃない」
「え?」
「…貴方は、この世界に必要な最後の希望。早く次に移動しないと…この世界が崩壊する」
「それって…どういう?て言うか、君は誰?」
“ピカチュウ”はクルッと一回転し、綺麗に地面に着地した。腰には、1本の剣がついていて、胸には、紫色の水晶のペンダントがぶら下がっている。
「紫の水晶!こいつも水晶使い!?」
「…そうね。でも、貴方達二人と同じレベルだと思われるのは侵害だわ」
「感じ悪り姉ちゃんだな〜。んなもん。やってみなきゃ分かんねぇだろ」
そう言って、ランドとアヤは身構えた。剣を抜くと言うわけではないが、腰の剣に手を当てて、アヤは“ピカチュウ”を警戒している。いつでも戦える…そう言ってるように見えた。
「私が用があるのは、貴方達じゃないの。でもまぁ…良いわよ。力の差ってやつ。見せてあげる」
そう言って、“ピカチュウ”は剣を抜いて、アヤに切りかかった。アヤの方を見る、2本の剣で綺麗に受け止めて、跳ね返した。空中に浮いた“ピカチュウ”の足元には、青い光を放つランドがいて、足元には魔方陣が出ている。
「氷よ。全てを凍てつかせる絶氷よ。星の導きにより、我に力を!
絶対零度!」
“ピカチュウ”の真下から氷柱が出てきて、“ピカチュウ”を包み込んだ。二人の息の合った連係プレーで、“ピカチュウ”をたお…した?いや、捕まえた…のかな?とにかく、勝った…んだよね。
「勝った…の?」
「いや…まだだ!」
「“火炎迅”!」
剣に纏わせた炎が氷を破壊してあちらこちらに飛び散った。氷の破片が鋭く尖ってこっちにも飛んでくる。
「おっと!」
「うわぁ!」
僕がいたところには、氷の破片が床に突き刺さってる。もう少し避けるのが遅かったら、僕は確実に死んでた。
「ハアッ!」
キン!と言う刃物がぶつかる独特の金属音が響いていて、あの“ピカチュウ”とアヤが戦っていた。力的には、ほぼ互角のように見える。
「あいつの方が上か」
ランドが僕の横でそう呟いた。あいつって、どっちのこと?でも、僕は粉の質問を口にすることはなかった。なぜなら、すぐに明らかになったから。
「フンッ!」
「っ!」
アヤがどんどん押されていき、もはや防御しかできない状況となっていた。アヤの剣技は確かにすごいものだけと、あの“ピカチュウ”と比べたらまだまだのものなのかもしれない。すると、耐えきれなくなったのか、アヤがガクッと膝をついた。
「勝負ありね。私をなめてもらうと困るわ」
「っ!」
アヤの目の前に剣が突きつけられていて、それを見た瞬間に、僕は自然と体が動いていた。
「その剣を退けて」
懐に閉まっていた赤い水晶を取り出して、いつでも魔法を出せる準備をした。体を炎が包み、足元には魔方陣が出ている。
「あら。貴方にこの状況が見えてないのかしら?」
「その剣を退けて、アヤを離して」
「…やるの?私と」
…もちろん。そのつもりではあった。僕が勝てる確率なんてどこにもない。でも、それでも…誰かが傷つくのを見るぐらいなら、僕は戦う。
「…その沈黙。イエスととらえるわね」
さて…さっきも言ったように、僕が勝てる確率なんてどこにもない。どうしようか。
「なーんか、聞いてたら面白れぇことになってんじゃねぇか。なぁ、俺も混ぜろよ!」
「ランド…」
ニカッ!と笑ったまぶしい笑顔のランドは、僕の肩を組んだ。そうだ。今、僕一人だったら勝てないけど、二人なら…なんとかなるかもしれない。
「ランド、力を貸してくれる?」
「さぁな」
「さ、さぁな!?」
「俺は俺のやりたいことをするし、俺が気に入らないやつをボコる。でも、ボコる相手が同じなら、自然と共闘になってるんじゃねぇの?」
…なんか、メチャクチャな理論。でも…出来る気がする。何でなんだろう。出来るって、僕の中で確証していた。
「そうだね。じゃあ…行こっか!」
「ん」
ランドは青い水晶を手に取ると、青い光を放った。
“ピカチュウ”はアヤから剣を退けて、僕達に向けると、紫色の光を放ち出した。水晶の力を使う気なんだろうか?でも、それでも僕は負けるわけにはいかないんだ!
「悠久の炎よ。全てを焼き払い、その力を今示せ!
迦楼羅炎!」
「白氷の加護よ。我の力となり、形を表せ!
氷槍!」
「光をも飲み込む闇よ。全てを飲みこみ、永久の無に変えよ!
奈落の影球!」
3つの技がぶつかり合って、ものすごい光を放つ。けして目を開けられるような状況じゃなくて、目をつぶってしまった。その拍子に爆発音が鳴り響き、いつの間にか体が空中に浮いていた。
そして、またしてもその時に闇の中へと意識を手放し…そこからは覚えていない。