2話
〜1〜
ランドに抱えられながら走る途中、僕はランドに質問をぶつけてみた。
「ねぇ!どこ行くの!?」
「この近くの街!“プルミエ”さ!」
この近くの街?僕が前を見ると、確かに街が見えてきた。て言うか…ずっと思ってたんだけど……。
「ねぇランド!」
「なんだ!?」
「ちょっと速すぎない!?もっとスピード落として落として!!」
ランドのスピードは…大体時速40キロ位。普通のバイクの同じぐらいのスピード。ポケモンってこんなに速く走れたっけ!?
「なに言ってんだ!!ほら!もうすぐでつくぞ!」
「尚更だよ!!」
物凄いスピードで街中に入る。それでもランドは止まる気配が全くなくて、もう目の前には、煉瓦の壁。
「ランド!止まって止まってーー!!」
「ごめん。無理」
結果として、煉瓦の壁にそのまま突っ込んだ。煉瓦の壁はそのまま崩れ落ちて、僕達を押し潰す。
「うっ…!うぅ…」
「おーい。生きてっかー?」
「なんとか…」
ランドが煉瓦を退けて、僕を掘り起こしてくれた。奇跡的に大きな怪我はないみたい。全身いたいけど…。
「うわぁ。また派手に突っ込んだわね」
「なんだ、いたなら止めてくれよ」
ランドの隣には、見知らぬ“ピカチュウ”がいた。誰だろう?ランドの知り合いみたいだけど。
「ごめんね。ランド、スピード調整が出来なくていっつもここに突っ込むの」
「それを黙って見てるのはどこのどいつだよ」
「巻き込まれて死ぬのはごめんだわ」
ランドと親しく話す“ピカチュウ”の腰には、2本の剣があった。持ち手の先には、青と赤の綺麗な宝石がついている。
「私はアヤ!君は?」
「あ、ケルマです」
「ケルマね?よろしく!そーれーよーりー!ランド?なんか言うことあるんじゃないの?」
ランドは、んー。と言いながら上を見上げて考え込むと、すぐに僕の顔を見て話始めた。
「悪かったな」
「え?あ、大丈夫!怪我とかしてないし!」
「さて…ここじゃなんだし、私の家に来ない?ここから、十字路の左にあるから。私、先に行ってるわね」
そう言って、アヤは走っていってしまった。まるで嵐が過ぎたみたいだ。とりあえず、アヤの家に行こう。
確か…この先の十字路を左に曲がるんだったよね。そう言えば。
「ランドとアヤってどういう関係なの?」
「うん?
親友だよ
親友。もう5年になるかな」
「へぇ。そうなんだ」
ダチ…か。良いな…そう言うの。
そんなことを思ってると、あっという間にアヤの家についた。家は煉瓦の作りになっていて、アパートみたいな感じだ。一人で住んでいるなら、十分だね。
アヤの部屋は、2階の一番日当たりのいい右側の部屋だった。
「ごめんくださーい」
「どうぞ。ちょっと散らかってるけど、ごめんね」
部屋の中は、ベットにテーブル、椅子と沢山の剣とか銃、煉瓦の暖炉。女の子の部屋にしては、ちょっと不思議な感じがした。
「私、武器マニアなの。剣とか銃とかいっぱいあるけど、触らないでね?間違って怪我したら困るし」
「本物なの!?」
「当たり前でしょ?」
壁にかけられているありとあらゆる剣と銃の全てが本物。こんな風に本物の武器を見たことがなったから、ものすごく新鮮に感じた。
「そんなんだかいつまでたっても嫁の貰い手がいないんだろ?」
「余計なお世話だっつうの!で?私になんか用があるから来たんでしょ?」
アヤは自分の腰につけていた剣をとって、壁に立て掛けた。椅子には座らずに、そのまま壁にもたれる。
「おう。ちょっと見てほしいものがあってよ。ケルマ。あの水晶を出してくれ」
「あ、うん」
自分の懐に隠していたあの赤い水晶を出して、机の上に置いた。すると、アヤが机に近づいてきて赤い水晶を手に取った。
「……これって。もしかして」
「お察しの通り」
「…そう言うこと」
アヤはそう言うと、僕の顔を見て水晶を僕の前に置いた。それより…この二人は何を言ってるんだろう?この水晶の事を何か知ってるの?
「ねぇ…二人は何か知ってるの?」
「う〜ん。知ってるけど…知らない…かな?」
「え?それって…」
「そーれより!私、これに似たやつ見たことあるよ?」
なんかいきなり話を切断された?これ以上聞いても答えてはくれないだろうな…。て言うか…今ビックリ発言した…よね?
「これに似たやつって…どこで!?」
「この近くの遺跡。“プルミエ遺跡”の奥底に青い水晶があった。でも、結界が張ってて近づけなかったの」
青い…水晶。僕の…謎に近づけるのかな?それなら…。
「行こう…!」
「…?」
「僕に繋がるなら…僕の事が分かるなら。僕は行きたい。一人でも…絶対に!」
僕がこう言うと、二人は笑って僕を見つめた。アヤは壁に立て掛けていた剣を取って、腰につける。
「ご本人が行きたいって言ってることですし、行きますか?」
「だなぁ〜。ここに至って、武器と戯れるだけだしな」
「武器と戯れるのが、つまんないって言うの!?」
「そんな物好き、世界中探してもお前だけだよ」
そう言って、ランドは僕を抱えてアヤの部屋を出た。また抱えられてる…。
「こら!待てランド!まだ話しは終わってないわよ!」
後ろから、アヤが大急ぎで駆け寄ってくる。頬を膨らませながら、ランドと横に並び、口論を始めた。
この二人…案外気が合う気がする。喧嘩するほど仲が良いってこう言うことを言うんだろうな。ランドに抱えながら、僕はそう思った。