1話
〜1〜
……うん。ここは…?
目が覚めると、全部が岩で出来た空間にいた。横には焚き火。その隣には……“マニューラ”がいる。
「よっ!起きたか?」
「……え?」
いきなり物凄いことが起きて、整理がつかない。ここはどこ?なんで、“マニューラ”が喋ってるの?え、え!?
「……おい。大丈夫か?」
「…ごめん。信じられないことが一気に来て、収集つかない」
「理解なんてするだけ無駄だって、今起きてることが全て…違うか?」
…そう言われるとそうなんだけど…。確か…僕は吹雪の中で意識を失って。あれ?じゃあ、なんでここに?
「もしかして、君が助けてくれたの?」
「まぁな。普通なら、身ぐるみ剥いでそのままポイッ!なんだけどな」
身ぐるみ剥いで…?ま、まさか…この“マニューラ”って…盗賊か、泥棒!?
…最悪だ。どこかも分からない土地で、初めて会ったのが賊だなんて…。
「……と、とりあえずありがとう。で、ここはどこなの?君の名前は…?」
「俺の名前はランド。で、ここは俺のアジトさ」
「アジトってことは…君は盗賊なの?」
「んー。ま、そうだなぁ。そんな感じさ」
……疑惑が確信に変わってしまった。どうしよう…もしかしたら殺されるかもしれない。僕を助けたのも使えそうなカモだからって言うのもある。
僕はいろんな思考を頭の中で巡り回した。
「で?お前は?」
「僕はケルマ。一応…人間」
ランドにそう言うと、ランドは首を傾げて僕にこう言った。
「人間…?どう見ても、俺には“ブースター”にしか見えねぇんだけど」
「え…?」
自分の体をよく見ると、赤い体に首元には黄色いフワフワの毛。考え付くしても自分がよく知ってる“ブースター”の特徴だった。
「ポ、ポケモンになってるーーーー!!」
「うぉっ!い、いきなり大声出すなよ!ビックリすんだろうが!」
「ご、ごめん」
これは…夢?悪い夢?そうなら早く目が覚めてほしい。でも、その前に…確認したいことが。
「ねぇ、ランド」
「ん?なんだ?」
「どうして僕を助けたの?さっきも言ってたけど、普通なら身ぐるみ剥いでそのままなんだよね?なら…なんで?」
見た感じ、僕にはそんな大層なものを持ってるようには見えない。普通なら、そのまま見捨てるだろう。賊なら尚更だ。でも、それでもランドは僕を助けてくれた。その理由を聞きたかった。
「んーー。そうだなぁ〜」
深く考え込みながら、ランドは僕の質問に答えてくれようと、必死に言葉を紡いだ。
「……面白そうなことが起こりそう…だったから…だな」
「面白そうな…こと?」
「ん。まぁ、それが何かは分かんねぇけど…そんな感じさ」
どんな感じ…?…まぁ、いいや。気にしてもきりがない。それを質問しても、ランドから帰ってくるのは、曖昧な答えしか返ってこないと思う。
「あ!そうそう!これ、返すな!」
「え!?うわぁ!」
ランドがいきなり放り投げた物は、上手いこと僕の手の中にすっぽり収まった。これは…赤い宝石?
「ちょっと確認したんだけどよ。それ、水晶みたいだったわ」
「いや。これ、僕のじゃないよ?」
「そうなのか?でも、お前の手にあったぞ?まぁ、持っといて損はないだろ持ってけ」
赤い水晶…か。なんで僕の手の中にあったんだろう?その謎も、これから解けていくのかな?
「さて…!そろそろ行くぞ!」
「え…?」
「これから、俺と旅をしようぜ!?お前となら、なんか変わる気がする」
「え…?えぇぇぇぇ!?」
ランドに体を抱えられて、僕は外に出た。真っ青な空、綺麗な緑色の草、世界が僕の目の前に広がる。
これから──半ば強引な感じで、僕は旅をする。僕は…何のためにこの世界に来たんだろう?そして…この赤い水晶のことも、何か分かるかな?
運命の出会いは、これから始まったばっかり。