2話
〜1〜
俺が住んでた村から大体………5キロぐらい?よく分かんないけど、まぁ、それぐらい離れてる所に、隣町のサネーブがある。
俺がついたのはお昼丁度。広場にある時計台の時間が12時だったのと、俺のお腹が鳴ったのでよく分かった。でも、食欲なんかそっちのけで、俺はとある所に向かう。
「ここが…集会所」
冒険者になるっていったって、無断でできる訳じゃない。きちんと集会所でチームを登録しないといけないんだ。チームは1匹じゃなければ何匹でも良いんだけど、もし、いないよそんなの!って言うポケモンには、集会所で同じ目的のポケモンを紹介してくれるんだ。だから、知らないポケモン同士のチームが多い。
「ごめんくださーい」
集会所のドアを開けると、たくさんのポケモンたちでごった返していた。賑やかで、とてもいい雰囲気だ。ここから本当に俺の冒険が始まると思うと、ワクワクする。
すると、俺に気が付いたのか、“タブンネ”と言うポケモンがこっちに来て話しかけてきた。
「あら?あなた、見ない顔ね?」
「あっ!えっと…俺。冒険家になりたくて来たんです!」
「ウフフ。そう。なら、チームの登録をしないとね?じゃあこっちに来て?」
そういって、俺はその“タブンネ”の後ろをついていった。受付のような窓口に行くと、朝に道の真ん中で会ったあの感じ悪い“ゼニガメ”が立っていた。
「あーーっ!あの時の目付きと感じ悪いやつ!」
「なんだ…あの時のバカか。なんでお前がここにいんだよ?」
「あらリーバ。また来たの?」
「ミルラさん。俺にいい仲間を紹介してください!」
俺の事をそっちのけで、2匹が話…ちょっとした討論になった。
“ゼニガメ”の方がリーバ…“タブンネ”の方がミルラさんか…。覚えておいて損は無いな。
「あなたこの前も仲間を置いて先に行ったんだって?また苦情が来てたわよ?」
「それは…アイツらが役立たずだから…」
「言い訳問答無用!いい?冒険には危険が付きまとうものなのよ!?それなのに、仲間も信頼しないで先に行ってしまうなんて…無責任にもぼどがあるわ!?」
「次は…!上手くやる…さ…!」
「…そう。なら、これが本当に最後だからね?ねぇ君」
“タブンネ”…ミルラさんが俺の方を真剣な目付きで見てきた。な、なんか…そらすにも剃らせない…。と言うか…そらしちゃダメな気がする。
「見たところ…仲間もいなさそうよね?どうかしら?このバカと組んでみる気はない?」
「「え!?」」
「なんであんたまで驚くのよ?」
「だ、だって!こんないかにも頭が悪そうな奴とコンビだなんて…!」
「誰が頭悪いだって!?いいさ!やってやる!お前と訓でやるよ!」
完璧に頭悪そうなのは言っちゃいけないワードだぞ!?もうこうなったら、実力で見せるしかないって訳だ!
まぁ、これが俺の転機ってやつだなんて、思ってもないんだけど…それはこれから先の話だ。
「じゃあ決まりね?そう言えば…まだ君の名前を聞いてなかったわね?教えてくれる?」
「俺、アルティルス・ドラグーンです。長いんで、アルって呼んでください。俺の故郷のみんなもそう呼んでたから」
「アルね?私はミルラ・クイーン。ここの集会所で受付を担当してます。よろしくね?さっ!リーバも自己紹介!」
「な、なんで俺が…!」
「良いからしなさい!!」
「………リーバ・スティルス」
シブシブ感が強いけど…まぁ、悪い奴…なんだろうな?違う意味で。まぁ、根は腐ってないみたいだし、別に信用が完全にない訳じゃないしな。かけてるけど…。
「はい!それじゃあこれから、あなたたちの愛称の度合いを試すために、試験を受けていただきます!内容は簡単!これからある森に行って、お宝を取ってきてもらいます!」
「…………それだけ?」
「そうよ?どう?簡単でしょ?」
「だったら楽勝だな。とっとと終わらせよっと!」
「なら早くいくぞ?それと!くれぐれも俺の足を引っ張るなよ!?」
…いちいち気にさわるなコイツ。まぁいいか。
リーバは1匹でどんどん先に行ってしまう。…これなら、前までパートナーだった奴の気持ちが分からなくもない。まるで、自分一人見たいな空気を勝手に作り出してしまう。……おもしれぇ。なら、俺の実力と、お前のその空気、俺が何とかしてやる!
「うぉぉぉぉぉぉりやぁぁぁぁ!!!!」
「っ!?」
「まぁぁぁぁちぃぃぃやぁぁぁがぁぁぁぁれぇぇぇぇ!!!」
俺が走ると、リーバもスゴい勢いで走り出す。まるで、命の危機みたいな感じで…まぁ、追いかけっこならずっと姉さんとやって来たから楽勝だな。……追われる方だったけど。
〜2〜
いつの間にか森の中まで来てしまっていたが、リーバか止まるまで俺たちはずっと追いかけっこをしていた。
「はぁ…!はぁ…!なんなんだよお前…!」
「なんだ?もう息上がってるのか?まだまだだな」
「…どんだけ体力有り余ってんだよコイツ…!」
「なんか言ったか?」
別に。とリーバは言い放って、リーバはゆっくりと歩き出した。その後ろを俺がついて歩く。それからしばらくの間、長い沈黙が続いた。でもそれは、消して嫌なものではない。と言うか…都会の喧騒を忘れて、リラックスするのに十分な時間だった。
すると、リーバがクルッ!と俺の方に振り向いて、キッ!と睨んでいる。怒ってる…って言うよりも、ムッとしてるの方が正しいか。
「なんで俺の後ろをついてくるんだよ!」
「仕方無いだろ。俺とお前の目的地は一緒なんだから。お前、変な奴だな」
「それをお前に言われたらこの世の終わりだな。俺は、後ろに着かれるのは嫌いなんだ!責めて横にいろよ!」
それを言われて、少しビックリした。こういうタイプは、横に着かれる方が嫌だと思ってたから。意外だ。
「やっぱりさ。お前変な奴だよ」
「お前の方が変人だ!良いから!もう後ろにつくなよ!?」
「はーい」
それから2匹で横に並んで森の中を進む。そう言えば…この森ってどこまで続いているんだろう?俺は故郷の町から出たことなんて無かったから…世間知らずって訳じゃないけど、そこまで詳しい訳じゃない。
「この森の中ってどこまで続いてるんだろうな?」
「さあ?まぁ、そこまで深い森でも無さそうだが────」
リーバが急に立ち止まった。なんだ?腹でも痛くなったのか?
「うん?どうした?」
「───分かんないのか?」
「何が?」
「はぁ…これだけの数に囲まれてるのに気付かないのは中々だぞ?鈍感なのにも程がある」
囲まれてる?改めて自分の周りを確認すると、赤く光る目があちこちに見えた。…見てて気味が悪くなってくる。
すると、草むらや木々の間から“ミツハニー”の大群と、“ビークイン”が出てきた。
「な、なんだぁぁぁ!?」
「貴殿方!ドロボーざますね!?」
「はぁ!?な、なんでそうなるんだよ!俺達はただ、この森にあるお宝を取りに来ただけだ!」
「………この森の宝。それは私たちが作る密でございます!やはりドロボーざますね!?」
な、なんか…いらんこと言っちゃったかな?目が完全にいっちゃってるよ…。あーあ。ついさっきの自分にバカヤロウって殴ってやりたい…。
「やっちまったな」
「後悔してる暇があるなら構えろ!来るぞ!」
「覚悟!!!」
静寂に包まれていたはずの森のなかで、騒然とした戦いが起ころうとしていた。そして…これが2匹の初めての共闘となる。