第三話 親子対決、フレイVSフレア
「まずは先手を取る。火炎放射!」
「そうはさせないわよ!火炎放射!」
フレイとフレアは互いに火炎放射を放つ。そして2つの火炎放射はぶつかりあい、相殺した。周囲に散った炎が消える前に二人は動いていた。
「「電光石火!」」
同時に加速した2匹は何度もぶつかり合う。そして、再び正面からぶつかった際に互いに走っていた体勢から立ち上がり、腕を掴み、動きを止める。
「私にきちんとついてこれるなんて、なかなか早くなったじゃない」
「お袋、言っとくが、まだいつもの試験の時の力すら出してないのは分かってるんだからな……」
「フフッ良かったわ。それに気付いてなかったら鍛え直すところよ」
「火炎車!」
「おっと」
フレイはそのまま炎を纏うがフレアはすぐに手を振りほどき、距離を取る。
「さあ!行くわよ!」
フレアは低い体勢でフレイに向かって走り出す。
「火炎放射!」
フレイの放った火炎放射はフレアを飲み込む。しかし、フレアは炎の中を突っ切り、火炎車を発動した状態で突進した。
「なっ……ぐっ!」
フレイは弾き飛ばされるが、すぐに体勢を整える。
「それぐらいの炎じゃ私は止められないわよ」
「くそっ……」
炎に飲み込まれる直前、フレアは火炎車を発動していた。炎と炎がぶつかり合い、火炎放射を押し切ったことでダメージをまったく受けていなかった。
フレイはすぐに右に円を描くように走り出し、フレアはそれを追う。
「あらあら、あんまり消極的な戦い方なら卒業させないわよ」
フレアは距離を縮めて行き、フレイと2メートルほどの幅をとって並走する。
「これなら……」
フレイがボソッと呟いたのが少し聞こえたのかフレアは聞き返そうとするがその前にフレイは動き出した。
「火炎車!」
フレイは炎を纏うと地面を蹴り横に跳ぶ。近かったこともあり咄嗟の動きに反応できず、フレアはぶつかってしまう。
「っ…!」
「まだだ!電光石火!」
フレイは電光石火で距離を一気に詰める。
「雷パンチ!」
フレイは右手で雷パンチを放ち、フレアは反射的に左手で受け止める。電流が流れたことで一瞬動きが止まる。
(しまった!狙いは……)
その隙にフレアの腕を掴み、背負い投げで投げ飛ばす。フレアは受け身が取れず、そのまま叩きつけられる。
「手としては悪くないけど、私はまだまだ倒れないわよ!」
すぐに起き上がりフレイの方を向くと、フレイは既に火炎車を使い、走り出していた。
「火炎放射!」
フレアは火炎放射で迎え撃ち、フレイは火炎車を発動したままその中に飛び込む。先のやり取りの鏡写しのような構図になる。
「うおおッ!」
炎の中を抜けてフレイはぶつかった。しかし、それは受け止められ、フレイはすぐに後ろに下がった。
「ッ!……相変わらずおかしいぐらいの火力だな」
「ふふっ、試験だからこそ、そう簡単に通すわけにはいかないわよね?」
先ほど炎の中に飛び込んだ際、フレイは火炎放射の炎を防ぎきれず、その体を少し焼かれていた。
「だからって諦めはしないけどな!」
フレアに向かって火炎車で炎を纏い、電光石火で加速して向かっていく。
「動きが単調になってきてるわよ」
フレアはエネルギーを集中させ、大きな火球を作る。
「さあ、どう対処するか見せてもらうわ」
しっかりと地面を踏みしめ、フレイに狙いを定める。
「ブラストバーン!」
火球はかなりの速度でフレイに向かっていく。
「うおおおぉぉぉっ!」
フレイは地面を強く蹴り、跳びあがる。
「身代わり!」
跳びあがった勢いを利用して空中で回転しながら身代わりを使う。すると、そばにまったく同じ状態のフレイの身代わりが現れる。そのまま火球をこえ、落下の加速と回転により威力を挙げた状態でフレアに激突する。
「「バーニングティバイド!」」
「くっ!?」
反動で動けず、直撃を受けたフレアは大きく弾き飛ばされる。
「いたた……子供の成長はうれしいけど、やっぱり……」
そういいながら立ち上がるフレアの前には身構えたフレイがいた。
「負けるのはいやだからね!」
フレアは一瞬で接近すると気合パンチを叩き込む。
「がっ……!?」
フレイの体が浮いたかと思うとすぐに投げ飛ばされていた。何とか着地して正面を見ると、火炎放射が目前まで迫っていた。防ぐこともできず炎に飲み込まれる。
「ぐっ……ううっ……」
何とか耐えきったものの片手を押さえ、息があがっていた。
「さあ、続けましょう!」
フレアはフレイを鋭い目で見据える。フレイも睨み付けながら両手にエネルギーを収束させていく。
「これ以上時間をかけても無駄だろ……次で最後にさせてもらうぞ……」
「それもそうね…ただ、負けても文句は聞かないわよ」
そう言い放つとフレアもエネルギーを集め火球を生み出す。
「これで最後よ。ブラストバーン!」
先に放たれたブラストバーンがフレイに接近する。フレイはその場から動かず、両腕を交差させる。それぞれの手には火球が現れていた。
「押し切ってみせる……!ブラストッ!トルネェェェド!」
交差した腕を振りおろしながら最後の大技を放つ。二つの炎は互いに絡みあい、一つの大きな竜巻を作り出す。二つの炎は正面からぶつかり合い、互いに拮抗する。
「うおおおおッ!」
「はああああッ!」
しかし、次第にフレイのブラストトルネードがブラストバーンの炎を飲み込みながら勢いを増し、フレアに向かっていく。
「いけッ!」
「くっ……」
フレアを炎の竜巻が飲み込む。フレイは体勢を崩し、地面に手をついて何とか支える。地面すら焦がす炎が消えると、そこにはフレアが倒れていた。
「はは……なかなか強くなったじゃない……合格よ」
フレアのその言葉を聞いた直後、フレイの意識は途絶えた。