第二話 卒業試験開始!
卒業試験当日。
フレイは自室で一人、目をつぶって精神を落ち着かせていた。ゆっくりと息を吐くと、目を開く。
「よし、行くか」
そう呟くと、フレイは外に出て、試験会場へと向かう。
道場のそばにある屋外の広場には、まだ時間があるのに、100人ほどいる門下生のほとんどがいた。その中央、白線で区切られているバトルフィールドにカイルは立っていた。カイルは念入りにストレッチをしながら待っていた。
フレイはカイルの方に近づいていくとカイルもフレイが来たことに気づいたようで振り返る。
「よっ、ようやく来たか」
「別に遅れてきた訳じゃないだろ。むしろお前が早すぎるんだよ」
「まあ早いに越したことは無いだろ」
そんな会話をしているともう一人の受験者もすぐに到着し、緊張感が漂うなか試験開始時間になった。
「ただ今より、卒業試験を行う」
審判のニドキングがアナウンスを始めた。
「受験者、フィールドの中央へ」
3人ともすぐに中央へ移動した。
「当道場責任者、フレア、正面へ」
ニドキングが呼ぶが、何故か現れない。
「えっと……フレアさん?何処にいるんですか!?」
ニドキングがもう一度呼ぶが、やはり現れない。
いったい何があったのか。周囲はざわざわと騒ぎ始めるが一向に現れない。
一方フレイとカイルは察しがついたようで一人はあきれたような表情で、もう一人は苦笑いをしていた。
「まったく……昨日の時点で念を押しておいたのに」
「普通なら来てるはずだけど、今回は俺たちがいるからなあ」
「俺たちのことについてはルーズすぎるんだよ……」
そんな話をしていると、ある方向から声が聞こえてきた。
「あ、ごめん!ちょっとここ通して!」
声のしたほうを向くと一人のメスのバクフーンが集まっていたポケモンたちの間を縫ってやってきた。
「責任者のフレアでーす。遅くなってごめんね〜」
緊張感の漂っていた空気が一瞬で壊れた。
「お袋、いくら今回俺たちがいるって言っても他の奴もいるんだから遅れるなよ」
「まあまあ、俺たちのことで遅れて来るなんていつものことじゃないか」
「そーよ。それに、これで忘れられない卒業になるじゃない」
「もうこの時点で忘れたいよ……」
そんなことを言い合っているところに、ニドキングが止めに入る。
「とりあえず、もう開始時間を過ぎてるんですから、皆さん一旦止めにして元の位置に戻ってください」
とりあえず、その場は落ち着き、時間の都合上、とある方法で同時に試験が行われることになった。ただ、一度粉砕された空気は戻ることなく試験が行われることになった。
フィールドは均等に三等分され、それぞれに試験受験者とフレアが立っていた。
そのうち二人のフレアは本体の身代わりの技で現れたものだが、その二人も体力以外の要素は完全に同じである。
フレイの相手はフレア本人だった。
「わざわざ俺の相手になるなんて嫌がらせか?」
「親としては自分の子供がどれだけ強くなったか知りたいものよ。それで、もう準備はいいの?」
「ああ」
フレアはにこりと笑うと話し始める。
「今から試験を始めるわ。試験に合格するには」
「私たちを倒すか」
「納得するだけの実力を見せるか」
フレアの本体に続いて身代わりの分身も口を開く。
「「「そのどちらかが必要。それは分かってるわね?」」」
三人の言葉に受験者三人は同時に頷く。
それをみてまたフレアが口を開く。
「なら……始めましょうか」
フレアは審判の方に目配せする。
「それでは、試験開始!」