151のほころび - 第一章 御三家
原因
「博士、遂に判明しました!」博士の助手を長い間つとめている男が、研究所の扉を勢いよく開けて言った。
 博士は言った。「おお、君か。確か君には、大気中の二酸化炭素の量が減少している原因を調べてもらっていたな。で、何かわかったのか」
「ええ、原因がばっちり特定できましたよ。無論、政府の地球温暖化対策がうまくいったからでも、炎タイプのポケモンが乱獲されたからでもありませんでした」
「では、真の原因は何だ」
「ある草タイプのポケモンが大量発生したんです。そのポケモンがやたらと光合成をするもので、二酸化炭素が減っていたんですよ」
「ほう。そのポケモンというのは、草タイプ、ということしかわかっていないのか」
「あ、いいえ、そうではなく……。恥ずかしながら、実は名前をど忘れしてしまいまして。図鑑ナンバーなら、印象的だったので覚えているんですがね……」
「それは、何番だね」
「001番ですよ。うーん、本当にどういう名前だったかな。それにしても、ここは炎タイプが多い地域だというのに、どうして草タイプが大量発生したんでしょう」
 博士は首を傾げながら、しかし確信をもって言った。「それは、ふしぎだね」

■筆者メッセージ
我ながら、実に下らない小説を書いたものである。ポケモンというエンターテインメントの傑作を素材に、如何にして自らの文学的着想を表現し、如何にしてより高次元のエンターテインメントとして読者に提供しうるか、というような深淵な考察を日々おこなっているポケノベルの先輩作家方には、身の縮む思いである。

アイディアとしては、誰もが思いつく他愛ないものであろう。もしかすると、既に小説に書いた人がいるのかもしれない。そうでなくても、駄洒落として頭の中で呟いた経験がある人は、案外多いのではないかと想像される。私もそういった人間の一人であった。

だが、このアイディアをショートショートに落とし込むのはそんなに簡単ではなかった。ストーリー構成が難しい。今でも若干の不満が残る。どうということもない短編であっても、アイディア熟成と文章推敲には意外なほど時間が費やされているものなのだと知った。

ともあれ、この文章を読んでくれている人がいるというだけで、私としては嬉しい限りである。
kaisuke ( 2014/07/09(水) 21:56 )