本 -2-
そうは言っても、探したいものがシードラの頭の中に描かれたもの、というだけでは何のあてもない。何匹かのポケモンに聞いて回ったが、知ってる風なやつは一匹もいない。知っているとからかってくるやつはいたが。まぁ、そんな調子だ。元よりここ、カントー沖において、ビードロを知っている奴がいるはずもない。岸辺のポケモンにも聞いても結局というところで、シードラ自身、陸に上がれないのをひどく悔やんだ。そういう時だったか、中々見つからぬと嘆いて空を見上げると、海上を一匹のポケモンが通過した。ここらじゃ見かけない鳥ポケモンで、何か知っているのではとはすぐに勘付いた。
「なぁ、あんた」
「ん?おいをお呼びか?」
南方の訛りの強いポケモンだった。話を聞くに、ペリッパーというポケモンでカントーとの渡し便の帰りなのだという。
「で、話なのだが、赤色の、壺みてぇな形のガラス細工、知らねぇか?」
「赤のガラスせっくか?そいなぁ、おいの地方にずんばいあるど」
「……たくさんある、という意味か?」
「じゃっど。青や黄色、黒も白もあっど」
イエスの意味を汲み取り、キングラーとシードラは顔を見合わせる。
「なぁ、あんたの住処って……」
「こっかぁずっと南のホウエンちゅうとこいだ。かたみっでも一週間はかかっ」
一週間という言葉から、生半可な覚悟では無理だということを悟った。表情に真剣さが増す。
「……お前はどうする?」
「俺は行くさ。キングラーは、嫌なら残れ」
「別に嫌でもねぇさ。どうせ暇なら、珍しいもん拝ませに行かせてもらうよ」
だろうと思った、という顔でシードラはキングラーを見た。そして、ペリッパーに向き直り、宜しくと伝えた。
〜〜
遠出の為、食料を大量に用意する必要があった。ペリッパーは当然自分の分は用意してあったが、シードラとキングラーの分を賄える程ではない。幸いにも、キングラーの知っていた穴場のお陰で、早い段階で食料は集まった。岸辺でなければ海上に顔を出せないキングラーはペリッパーの大きな口に入れてもらうことになった。体格ではペリッパーの方が小さかったが、大きなハサミを外に出せば、すんなり入ることはできる。シードラも入れてもらえば早かったのだが、さすがに一匹が限界。シードラは海の上からペリッパーを追う形をとった。どの道、シードラは海の上にはあまり顔を出さない為、日差しが厳しいことに変わりはない。
「さぁ、早いとこ行こうぜ」
「ああ」
空に浮かぶペリッパーと、それに乗せられたキングラー。その上の、天頂の太陽は眩しく光を放つ。