疾風戦記















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一章-この大きな世界のちっぽけなところで-
六話 騒ぎのあとに
 例の強盗二匹は、フィレンが呼んだガーディさんに逮捕された。
 フィレンはガーディさんと話があるようなので、僕は木の実屋さんとか床屋さんとかコダックさんとかに謝りにいった。木の実のこととか、ほうきのこととか。
 あれ?でも床屋さんぶっ壊したのって……。ま、いっか。
怒られると思っていたけど、案外そうでもなかった。床屋さんの店主なんて、「こんなの大したことないって。ポケモンの命に比べれば。」だって。若干声が震えていたのを除けばかなりかっこよかった。とにかく、ここの人たちは気前がすごくよかった。前の世界じゃこんな方々は稀だった。泣きそう。
 途中であの兄弟がお礼を言いに来てくれた。リーちゃんは怪我もないようなので安心した。
 一通り回ってから、僕はフィレンのいるところに向かった。

『もしもし〜、サンさん?』
(あ、天使さん)

 久々に聞く声が頭に響く。ようやく戻ってきたようだ。かなり遅かった気がする。

『すみませ〜ん。ちょっと長引きまして……。ところで…どうしてそんなにボロボロなんですか?』

 大方あんたのせいだよ。飛んでいるときに自分のことを秘密にしろって執拗に言うくらいなら、技の使い方を教えてくれよ。

『あー、えーっと…。まぁ、いいじゃないですか。“終わりよければ全てよし”ですよ』
(どこもよくねーよ!危うく死にかけたんだぞ!)
『まぁまぁ、あとで教えますから』

 はぁ…。いつか死ぬな……これ。
 天使さんに脳内で抗議している間に、フィレンのいるところに着いた。
 フィレンはガーディに怒られているようで何度も謝っていた。電話でもそうだったけど、フィレンは本当に何をしたんだろう。
 ガーディさんの説教も終わったようなので、僕はフィレンに聞いてみることにした。天使さんが『この人はフィレンさんと言うんですか〜。』と呟いているのをよそに。

「フィレン」
「ん?何だ」
「何でさっき怒られてたの?」
「あ、あぁ。まぁ、話せば長いんだけどな」

 フィレンは苦い顔をした。

「あそこの石像についてなんだが…」

 フィレンが指差した方には広場があり、中央にポケモンの像が置かれている。

「四日くらい前の話なんだが、あそこら辺で子供が二、三匹遊んでてよ。そのうち一匹が、
『ねぇ、おじさん。あれ持てる〜?』
って聞いてきてな。『おじさん』でイラッときたけど、押さえて、
『無理だよ』
って答えたんだ。そしたら、
『え〜、持てないの〜?よっわ〜』
って言われて……」
「……持ち上げたの!?」

 フィレンはこくりとうなずいた。え!?だってあれ、フィレンの二倍くらいの大きさだよ!?

「『そこから投げてみて〜』
ってそのあと言われてな。で、投げた先に警察署があってな…。それから三日、石像の修復手伝わされた」

 うわぁ……。そりゃあ怒られるよ。警察に向かってケンカ売っているようなものだからね。それだけで終わっているのがむしろいいくらいだし。

「そういうお前は?」
「へ?」
「いや、お前の話聞かせろよ。ここらじゃ見ない顔だぞ」

 う、う〜ん…どうしよう……。信じてもらえるかな……。

『いいんじゃないですか?別に。大丈夫ですよ、きっと』
(天使さん……)

 さっきまで黙っていた天使さんからアドバイスされた。そうだよな。大丈夫だよね、きっと。信じてもらえるよね。

「実は……」

 僕は、フィレンに今までのことを話した。一応、天使さんのことは除いて。


〜〜


「うわっははははははは!」

 現在僕の目の前のルカリオは、近所迷惑とも言えるほどの音量で腹を抱えて笑っている。

(……天使さん)

 天使さんは口笛を吹いてごまかしている。やっぱり信用すべきではなかった。

「……ねぇ、真剣な話なんだ。笑わないでよ」
「だって、人間って…」

 所々笑いをこらえているのがよくわかる。正直、腹立つ。

「本当なんだって。信じてよ」
「はいはい。信じるよ、中二病」
「中二病じゃねーよ!」

 フィレンの感情のこもっていない受け答えに、すぐさま言い返す。

「はいはい。とりあえず親を呼ぶね〜。住所は?」
「だから、住所とかは……」
「あ、そうだよな!だってお前、人間だもんな!別次元から来たんだもんな!」
「だーかーら!僕は本当に人間なんだって!」

 何度いっても信じちゃくれない。天使さんは『中二病…』とかいいながら笑ってるし……。

「いい加減、目ぇ覚ませ。お前は、メスのポケモンだ、中二病」
「だーかーら!僕は人間なんだ!」
「ったく、しつけぇんだよ!」

 フィレンの方もイライラしてきたみたいだ。

「人間って所詮ゲームやマンガの話だろうが!それとも何か?特別な能力でも持ってんのか?人間って証明できんのか?」
「うぐっ……」

 た、確かに、証拠と言えば自分の記憶だけだ。それ以外には何もない。

「ほらほら〜。覚えられない技を覚えたり、別のポケモンに変身できたり、相手のステータスを盗み見できたりしねーのか?人間さんよぉ」

 うぅ……。だんだん言い返せなく……………って。


「ステータスなら、見れるけど……?」


〜〜


「フィレン、Lv.56。HP169/169、攻撃162、防御100、特殊攻撃122、特殊防御97、素早さ156」
「……マジかよ…」

 信じられないという声を漏らしている。

「え、みんなはできないの?」
「こんなチート使えたら、戦術なんか使えなくなっちまうだろうが」
「そ、そっか…」

 なんだ……。僕だけのだったんだ……。

「じゃあ、あれか?人間のオスだったってのも?」
「さっきからそう言ってんじゃん。」
「…わかった。信じるよ、全部。その能力の時点ですでに異常だしな。」

 はぁ…。ようやく信じてもらえた……。僕を受け入れてくれるポケモンがいるのか心配だったこともあり、少しだけ安心した。

「そうだ!お前、ここら辺よく知らねーだろ。謝罪ついでに案内してやるよ。」
「え!ホント!?ありがとう!」

 ちょうど一人では心細かったところだ。僕は目一杯フィレンに礼をいった。役割をとられた天使さんが舌打ちした気がする。

■筆者メッセージ
今回は少し長くなりました。文字数を調べたら、いつもの1.5倍でした。
しかも、全て書き切った文章が一回消えました。題名残して。あのときの絶望はすごいです。
こまめに保存、これ大事ですね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
フィーゴン ( 2015/09/30(水) 22:04 )