疾風戦記















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一章-この大きな世界のちっぽけなところで-
七話 職業決め
 現在、僕はフィレンに連れられて街中を歩いている。実は、フィレンもここに来たのは数週間前らしく案内できるところも少ないらしい。
 先程喫茶店を見てきたところでやはり多くのポケモンでにぎわっていた。
 フィレンはメスである僕を連れているにも関わらず、通りすがったのメスポケモンを片っ端からナンパしていた。恥ずかしいのとナンパの邪魔になるだろうということから、さっきからフィレンの後ろを程よい間隔を保ちながら歩いている。
 ちなみに、九割は断られ、一割は無視されていたと思う。もう二十匹は越えているだろうに、全く動じていないし、悲しい素振りも見せていない。

『彼ってすごいですね〜』

 全くだ。
 ある意味“男の鏡”だ。僕にはあんな根性はない。

「そーいえば」

 フィレンが急にこちらを向いた。

「人間の世界ってどんなんだった?」
「…と言うと?」
「ほら、騎士とか侍とかいたんだろ?」
「い、いや、全然」
「え!?嘘っ!?」

 フィレンの驚きぶりから察するに、人間の世界のイメージは相当おかしいのだろう。

「会社とかの事務的な仕事をしている人が多かったよ。そういうのは一昔前だね」
「へぇーっ、意外だな〜。全部デマか〜」

 フィレンは再び前を向いて歩き出した。

「……あと、正直者が馬鹿を見る世界だったよ……」

 僕は小さく呟いた。

「ん?何か言ったか?」
「え?い、いや!別に!そ、それより、これからどこに行くの?」

 僕は話題をそらしてごまかした。フィレンは特に気にかけていないようで安心した。

「あぁ、まだ言ってなかったな。ギルドだ」
「ギ…ギルド?」

 ゲームの中で何度も聞いた言葉。個人や探検隊などのチームを集団としてまとめ、それぞれの成果を分かち合い全体で強くなることを目的とした組織だ。

「ああ。俺は今まで犯罪者を取っ捕まえて懸賞金を集めて生計を立てていたんだがな、半年前に探検隊になればもっと儲けられることを知ったんだ。で、所属するギルドを探している途中だ」
「ギルドってそんなホイホイあるものなの?」
「この街だけでも七つくらいあったぞ。」
「え!?」

 そんなに!?この世界どんだけギルドがあるんだ!?

「あ!そうだ!」

フィレンはパンッと手を叩いた。

「お前、俺と探検隊やってくれねーか?」


〜〜


「無理無理無理無理ィ!」
「頼むよ〜。探検隊自体は一匹からでも結成できるけど、できる限り多い方が助かるんだよ〜」
「無理無理!絶対、無理!」
「いいじゃんか〜。お前のそのチート能力と俺の拳が合わされば敵なしだ。だろ?」
「だってこれ、無駄に集中力必要だし、計測に大体五秒かかるし!使えそうだったけど結局需要ないし!」
「そうは言ったって無いよりかはましだろ?」
「無理!」

 人間の頃、ろくに体を動かしていた覚えがない。その上ポケモンの体になって余計体を動かすのに慣れていないのだ。足を引っ張るだけだ。

『私は賛成ですよ〜。丁度目的の職業にもありつけますし、この世界についての理解も深まるかと』
(うっ……)

真っ当な意見に言葉が詰まる。でも、嫌なのは嫌なんだ!職に就くなら小説家とか画家とかの方がいい。

『あー、いいんですかー?別にその手の仕事がうまくいかずにやめてしまって、他に就ける職もなくて空腹で食べ物に飢えていても、私は何も援助できないので知りませんよー』
(あんたもう、サポート役じゃねーだろ!)

くっ……。よくよく考えてみれば、三本の指じゃしばらくたたなきゃ筆も持てなさそうだし、第一にこの世界の字が書けない。

「なぁ、頼むよ〜」

………はぁ。

「オーケイ………」

ため息混じりの了解にフィレンは喜んでいた。


〜〜


「じゃ、ギルドに向かうぞ」

 はぁ、何でこうなったんだろう。運命は何でこんなにも辛いんだろう。それもなんで何回も災難はこうも降りかかるんだろう。
 大体天使さんのせいだった。いい加減本業を頑張ってほしい。

「これまでのギルドはどうだったの?」

 暇なので適当に話を吹っ掛ける。とりあえずの間継ぎにはなるだろう。

「どれも微妙でな〜。有名どころじゃ遠くの大陸までいってプクリンギルドも見てきたんだが……」

 プクリンギルドといえば、ゲームでは主人公が所属していたギルドだ。ゲーム内ではかなりいいギルドだったと思うが、なぜやめたのだろう。

「親方プクリンの一番弟子のペラップが気に食わなくってさ〜」
「へ、へぇ〜。」

 わがままでしかない気がする。長くなりそうだ。太陽も傾き始めているし、今日中にはムリかもしれない。

「ん?何だ?」

 フィレンが急に立ち止まる。

「どうしたの?フィレン」
「ほら、あそこ」

 フィレンが指差した方には、ポケモンが四匹いた。二匹はどうやら言い争っている様子で、もう二匹がそれを止めに入っている。

「おい、行ってみよーぜ!」
「え!?ちょっ……フィレン!?」

フィレンは僕の腕をつかんで走り出した。僕のことなんか気にしていないようだ。
もう少しまともなやつが一人でいいから欲しい。

■筆者メッセージ
こんにちは。これにて一章は終了となります。
この時点まででまさかここまで拍手や感想が来ると思っておらず、泣きそうです。これで安心して失踪できませんね。頑張ります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
フィーゴン ( 2015/10/08(木) 00:20 )