疾風戦記















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七章-運命(とき)の歯車と決意(やみ)の石-
九十八話 大空の塔防衛抗争
===前回のあらすじ===
 ソアを上の階へ向かわせ、僕はクレイと相対した。フィレンはアルト、ライはセレア、ボーバンはあのゾロアーク、ノンはカロトを下の階へ運びに行っている。みんなが何かと戦っているのかと思い、僕はまた気を引き締めた。


「『サイコキネシス』、展開……」

 元より、相性的な差はあります。私の持ち技じゃ、『竜の波動』しか、せいぜい攻撃が通りません。キリキザンは悪タイプですから、本来、『サイコキネシス』や『ミストボール』は直接攻撃しても効き目がありません。キリキザンは鋼タイプでもあるため、『竜の波動』でさえ効果が薄いくらいです。となると、ここに工夫が必要です。

 私は飛行が可能、そして相手は、飛行ができない。お兄ちゃんから、こういう時にやることはいくらか教えてもらっています。

「な、なんだ……うわっ!」

 一つは地形操作。キリキザン本人のあたりは相殺されてうまく通用しませんが、私の周りなら、地面を落とすことくらい……。それが、進路妨害になり、瓦礫はさらに天井にぶつけるくらいはして雨を降らせることが適います。メグさんはこれを素手でやるのが凄いのですが、私だって……。

 地面の微弱な揺れが少しずつ大きくなり、ガラガラッ、ゴトゴトッ、と岩が崩れながら。

「うぅ……っ!えいっ!」

 巨大な岩石は頭の上に浮かびました。小指一本で。

 私は前を向きます。そこに立っているのがキリキザンだと意識した瞬間に、私の思考は一気に現実に戻ります。たとえ口を開けてキョトンとしていても、私にとっては知らないポケモンです。

「う、動かないで……くっ……ください……ね……」

 人見知りは、事後的に発症することもある、そう記憶しました。顔が真っ赤になりましたが、とりあえず巨大な岩は落としませんでした。


〜〜


 右手、左手、左足、右足……彼の四肢はいつかの記憶を頼りにルカリオは動いていた。
 機を見て足払いを仕掛ける。回避、読みを見て後ろへバックステップ、そこから『波動弾』。これには回避はかからず、相殺を狙われると予想。『火炎放射』、右へ移動し軌道から外れ、態勢を整える前にもう一度『波動弾』。綺麗なサインカーブを描かさせ、正面ではなく側方から命中するように調整。『火炎放射』を中断し、バク宙で波動弾から距離を取り、タイミングを狙ってその拳で無効化。

 左へ転がる。『神速』、神より速く接近、跳躍、かかと落とし。これは回避、即座にバックステップ、足払いを仕掛けられたが回避。回し蹴り、回し蹴り、掌底打ち、右足蹴り……攻勢に乗り出すが、決定打が乗るほどにはならない。

「やっぱ、アルトの体って分はあるな」

 どうやら経験値はアルトに依存しているらしい。俺の典型の奇襲コンボは完全に封殺されている。
 少しうろたえたか、隙を見られた。回し蹴りをすんでで回避、そのまま、戦況を相手に譲る形になる。回避、回避、動体視力にものを言わせ、後ずさりをしながら猛攻をかいくぐる。
 が、じきに背中が壁に当たった。アルトの右腕が、壁に食い込む。さらに、左腕で攻撃態勢を構える。

「……なんだ?俺の行動パターンは全部知ってるってか?」

 相手は反応を見せない。すぐに決(や)りにくる。


 ……おかしくてたまらない。

「俺は確かにアルトに俺の技の全てを見せてきた」

 アルトの左腕を体を捻って回避。

「だがな……」

 そして、腕を掴み、背負いあげる。

「生憎、それじゃ一手足りねぇんだよな……!」

 背負い投げ、受け身を取られても、間髪入れず、急接近から『インファイト』。
 いつも彼らは、互いの技の『次』を見せ合い続けた。常に、技術を進化させ続けた。それに常に対応しようと試みた。だから、彼らの間では、“予想外の攻撃が、予想通りの攻撃”だ。それを知らなければ……。

「……うぉらっ!」

 パンチの一発一発が重く響き、最後の一発で、アルトは大きく吹き飛んだ。室内の柱にあたり、そのまま倒れこむ。決定打。
 これ以上はない。そう確信し、一呼吸を入れた後、アルトに近づく。柱にもたれ掛けさせた。目はもう赤くない。

「……すまないな、アルト」
「……いいよ、別に。……ごめん」
「謝るなって。また落ち着いたら、色々話を聞かせてくれ」

 俺は、ポーチの中のオボンの実を取り出し、かじりついた。アルトのそばにも置いておく。

「先行ったら?あんたのガールフレンドが待ってるんじゃないの?」
「……ま、相棒ってとこでは間違いじゃねーな。ありがとよ」

 会話はそれだけでいい。今は、緊急時だ。オボンの実を食べきってから、俺は階段へ足を運んだ。

〜〜


 さぁーてと、私は周りを見渡す。土煙の中に立ち上がっているポケモンはほんの少し。だいたい負傷している。これは勝ち確定?ルートが意外と役に立ったのと、フゥちゃんがかなり役に立ったのとが功を奏した。
 ちょっと疲れたし、いっそ寝よっかな。あとを任せて。それもよし。正直、これがひっくり返るなら、私の人生ここまで波乱万丈になんなくて済んだし。よぉーし、惰眠を貪りますか。いらないと思いつつ持ってきておいた枕がまさか役に立つとは……。

「ちょっと寝ていい?」
「あ、はい!ど〜ぞ〜」
「……はぁ……まぁ影響はないしいいか」

 よし、合意をもらった。できれば毛布欲しいなぁ。フッカフカの羊毛布団も一緒に。硬い地面だし、そもそも敷布団くらい欲しい。ま、贅沢は敵。倹約でやってきてるし眠いしだるいし……早く寝よっ……。

「やった!メグさん!」
「ひゃあっふ!?」

 の、ノンちゃん!?確か上にあったはずだけど……。というか、カロトが文字通り抜け殻状態で運ばれているのも気になる。あいつ、前線で引っ張るんじゃなかったっけ。

「かくかくしかじかで……と、とにかく、カロトさんが!」

 あー、察し。だからこいつは……全く……。

「ここになんか都合よく枕あるから、そこに寝かせるわよ。フゥちゃん、ギルドまで戻って救急用具取ってきて。元サン視点なら場所わかるでしょ?」
「お任せあれ〜!ここよろしくお願いしまーす!」

 フゥは浮上、から、ギルドの方へ一直線に飛んでった。よし!これでいいかな。あとは……。

「ノンちゃんはこれを看てて。私は……はぁ……」

 結局こうなんのね……。オス一体じゃ任せらんないし。

「サボろうとした天罰だな」
「うっさい!ぼやいてないで、早く片付けるわよ」

 しばらく残業。さてと、ノルマでも決めとこうかしら。


〜〜


「……はぁ……はぁ……」

 やばい……。これ、結構やばい……。

「……うぐっ……!」

 息切れ。体力が少ない。あれから30分と少しの時間が経った。消耗戦に持ち込まれ、明らかに不利はこっち。
 翅がやられた。動かない
 左腕がやられた。動かない。
 逃げ惑っているだけでは無理なのはわかっていたけど、それでもこれは……。力不足を感じた。どうにも倒せない。僕がそれでもなお厳しい形相で睨むと、クレイは予想外の言葉を発した。

「ここまでとしておくとしよう」

フィーゴン ( 2017/12/23(土) 00:36 )