疾風戦記















小説トップ
七章-運命(とき)の歯車と決意(やみ)の石-
九十話 目標座標
===前回のあらすじ===
 僕とフィレンは、天使さんの助けを借りて、広範囲を捜索して残りの『石』の在り処を探す。そこで、偶然かあるいは策謀か、僕らはクレセントの……敵国の動きを察知する。目的地は、その方向から大方を天使さんが求めてくれた。


 『大空の塔』。本島においては『三叉路の谷』、『海洋の割れ道』と同レベルの難易度の高いダンジョン。諸学説によると、炎の大陸の高度難易度ダンジョン、『焼け石の塔』をも凌ぐレベルとも称され、その全貌は、多くの探検隊が調査に向かっているものの五十階以上にはまだまだ未開拓ゾーンも残る。………『ダンジョン評論全集』第五巻、二十ページの五行目から。


 記憶の内容は以下の通り。『森』、『熱』とあったため、次は『海』とアタリをつけていたところだったけど、三つ目は『空』だったらしい。心底驚いたが、同時に納得がいった。海のダンジョンというのは実は少ない。先にあげた『海洋の割れ道』、それからは、『やまびこの海』、『潮の通り道』、他は簡単な、初心者用ダンジョンがいくらか。他なんて、水関連と広げたとして、湿地帯なんてのはないしソアがこの前掘り当てた遺跡くらいしか思い当たらない。
 逆に、『塔』という建造物はたくさんあるのだ。その中でも、『大空の塔』は、シリウス国家時代に天の頂を望むために大規模国家プロジェクトとして始動し、それがダンジョン化したもので、住み着いているポケモンおろか、そもそもに罠の技術や建築様式の複雑さは、他の文明に類を見ない。その上に階層自体も高い。『階を上がるためには年を一つ取らなければならない』なんて文句すら出てくる、要は『最後』にはふさわしすぎるダンジョン。
 何より、五十階層から先の探索は、海図なしで嵐に突っ込むような無謀さも伴う。ただ、サンからの事情を聞いたミランの発言……

「確かに『大空の塔』に『空の石』はあるよ。……自信あったのに、まさか気付かれるとはなぁ〜」

 苦笑い気味だった。誰でも、大切なものはたどり着きにくい場所に隠しているであろうとは予想がつくと思うから、自信ありげであったことに違和感は持つ。
とはいえ、そこにあるのだからこそダンジョン内の情報は少しでも欲しかったのだが、四、五百年の歳月で、ミランがかつて登った時の話とはすっかり変わっていてもおかしくない。

 ここで、相手国の僕の考察。一つに人員。サン……というか、フゥが見た話では影は多数。いくら高難易度でも、ダンジョン一つに大所帯は足手まといになることが多く、むしろ、探索が長くなればなるほど、動きが鈍く、かつ食料消費も激しくなる故、全滅が早くなる。となると、塔の周りに配置して警戒に使っているはずだ。まぁ、そんなこと、クレセントという国の大きさを考えれば、当然してくるとは考えられる。

「……見えて来たな」

 そこで、僕は考えた……というより、同じ手をもう一度使った。
 頭上、いつもよりも大きな太陽が見える。ライの肩に手をかけて、しっかりと捕まっているため、下を見なければどうということはない。塔自体が高台に作られているのと、サンの飛行限界を考えると、この高さなら八階にならたどり着ける。

「じゃ、お先〜」
「パパッと一掃しちゃいますよー!」
「……テンションだけはこいつには勝てねぇらしいな……」

 前例があるため、飛行タイプのポケモンは多いはず。そこはメグとボーバン、それからフゥに風穴を作ってもらう。侵入は下のポケモンに気付かれるが、それはさっきの先鋒に引き続き任せる。
 これが当初の予定。意外にも変更があった。

「それじゃルーちゃん!落下の準備はよろしいですか?」
「はいはい……好きにしろ」
「ふ〜ん?メスに適当に相槌打つなんて、オスのくせに生意気じゃない?」
「お前も、言葉遣いがメスのくせに生意気だな。これでイーブンだ」

 あだ名まであったことは、今初めて知った。幼馴染の友達もいないからどういう気分なのか分からないけど。それよりも、泊まりだけ、と言っていたルートが参入してくれるというのは予想してなかった。フゥに出会えたから満足だ、とか何とか言ってたのに、もう少しだけ旅を続けていたいって、つい昨日の朝までは言っていたから、薄情なのかと思っていたけど、ピンチは助けてくれる性分らしい。お陰で、足りなかった塔攻略メンバーは定数に達した。僕、ノン、ソア、フィレン、ライ、サン、ボーバンの七体。昨日支度して、今日来たのだからすでに制圧は進んでいることだろうけど、急げばまだ間に合うはず。

「大丈夫かな……?」
「問題ねぇよ。カロトの案だ。俺もいいと思ってるしな」
「……そうだよね、きっと」

 ……サンとフィレンとの会話が少し重荷。意味もなく不安が募るから、首を振って誤魔化す。

「……うまくいくと思うか、カロト?」

 ライが話しかけて来た。気休めか、確認か。

「フィフティー、フィフティーくらい。運が悪ければプラン通りにはいかないだろうね……」
「それでいいさ」

 風が切れて、雲が切れて、まだ登り切らない太陽が、真っ青な空と緑色の平原に挟まれる。

「うまくいかなかった時がお前の腕の見せ所だ。あるいは、俺らの腕の見せ所とも言える」

 にっ、と口角を上げて笑みかけてくれている。また少し、元気をもらってしまった。だから、それに応じれるようなことをしなければならないだろう。

「これより作戦を開始する!……みんな、この島を守るよ……!」

 顔つきが変わった。メグとルートを乗せたフゥが、急加速を起こして塔に接近する。

■筆者メッセージ
九十話です。
最近は忙しなさと夏バテにやられていつも以上に執筆意欲と生きる活力を失いつつあります。ついこの間に修学旅行で買ったイルカのぬいぐるみに癒される日々です。
内容はいつも通りの無推敲、展開も自分でもまるで読んでおらず、さらには短く、文の質もやや落ちつつあるかと思われます。記念すべき百話に向けて、もう少し腕を上げて頑張りたい所存です
フィーゴン ( 2017/07/09(日) 23:24 )