疾風戦記















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六章 青い波動
八十五話 道程の標
===前回のあらすじ===
 新たに仲間に加わった、というフゥが自己紹介をしてくれた。途中からはサンに関する暴露会になったから、途中参加のサンはメグとライに引きずられていってしまった。


 かわいそうに。

「さっ!話の続きと参りましょう!」

 そしてこの切り返し。相当サンの不幸が蜜の味になっているのが分かる。フィレンが「慣れてるな、あいつの扱いに」って話しかけてるから、いよいよサンが報われてない。

「で、でも、お話もいいですけど、そろそろ……」

 ノンがまごまごと提案を出す。そうとも。談笑はしていたものの、今、僕らは結構危ない状況にあるのを忘れてはならない。ミランが言っていたこの島の「石」、その二つを奪われている。ミラン国王も、この状況に追い詰められた結果、
「場所は、こうもなって来るとさすがに教えられない……向こうが情報を握る手立てはもう無いはずだけど、頑張って自力で見つけて……お願い」
という返答を頂いた。だからこそみんな情報収集に勤しんでいた。そこにフゥが突如として現れたところで、情報収集を続けなければならない。


「石の在り方、ですよね!ご安心あれ!このフゥに何なりとお任せを!」

 ……えっ?な、何を……。
 フゥはノンに近づく。こんなこと言ったばかりだから少しおどおどしている。

「安心してくださいね、すぐ終わりますから」

 フゥはノンの手を合わせて握ると、深く息を吸って、吐い……。

消えた。目の前から。一瞬にして。
 誰もがそれに目を疑った。

「ど、どこに行った……?」

 いや、どこに行ったとかじゃない。そもそもに、そんなことがあり得るのか。

「えっ……え、えっ……?」

 ノンも困惑しているらしい。自分の目の前でポケモンが一匹、完全に消えてしまったのだ。仕方ない。

「……!は、はい!」

 突如、ノンは返事をした。

「……フゥさん……ですか?」

 上を向きながら話している。もちろん、ノン以外に話者はいない。と、いうことは……。

「……今、『その通りなんです!どうですか?すごいでしょう?』って……」

 頭に直接響いているような気分らしい。目が点になっている。 つまり、憑依、ということだろうか。フゥは、対象のポケモンに憑依することができ、情報のやり取りはそのポケモンとの間で密にできる、ということだろう。これだけではまだ、石を探す手がかりにはなり得ないと思う。もし、サンが言っていたように本当に『天使』のような存在なら、眺めている景色はおそらく……。

「……外で、サンさんがボコボコにされているのが見える……そうです……。流星群や電光石火で悲惨なことになっているようで……」

 ……あまり聞きたくない情報だったかな。でも、テントの中からでは明らかに見えない『視界』を探ることができるようだ。つまり……。

「これをうまく使えば、場所がわかる……ってこと?」
「……と、言ってます。範囲も、細かいところが見えにくくはなるものの、かなりの広さをみることができるそうです」

 なるほど、上空、しかも、僕らが見えているあたりは『透過』してみることもできるということだろう。つまりは、捜索の効率がぐんと上がるわけだ。となると、サンに憑依していた間は何故してくれなかったのか、という疑問が残る……いや、フゥの性格からして、例え島の危機にさらされた状態でも、サンに協力的にはなりにくかったのかもしれない。

 ズシーンッ、という音が、ギルドの外に響くと、テントの布をハラリとまくって中にフゥが入ってきた。

「いーたたたた……連続でやるのは精神的にも肉体的にも厳しそうです……」

 デメリットも、まぁ少々あるようだ。計画的に使わらないといけないという実感は得た。『今を観る目』、フゥの新たな視点なら、相手よりも早く「石」を見つけ出せるかもしれない。


〜〜


 その日は早く更けていきました。サンさんはボロボロにされたものの、とりあえずは加減されたらしく、夕食までには回復した。フィレンさんの怪我もだいぶよくなったらしく、「明日から仕事してやるぞー!」ってはしゃいでます。急に入ってきた身なので、私はサンさんと同じ部屋で寝ることになりました。メグさんが、うまく威圧をかけてくれたおかげで、サンさんは床、私はベッドの上です。
 まだ寝つけません。隣には、もうすでにサンさんがスヤスヤと眠りにありつけているのでした。そういえば、私の間違いで転生させて、私の間違いでメスのフライゴンになってしまったのに、サンさんは一つも文句を言っていないのでした。

「私が変われたのは、確かに、あなたのお陰……かもしれませんね」

 ベッドの上に座って、毛布を抱えます。今まで、幾度となくサンさんは追い詰められ、助けられてきました。私も、できれば助けたかったのです。けど、何だか変な『気持ち』が邪魔をして、アドバイスをする気にもならなかったのです。なので……今、だけ、でしょう。

 耳元に、口を近づけます。

「実感はなかったでしょうけど、貴方は、私の心の支えでしたよ」

「エルドが、貴方を慕った理由も、今では何と無くわかるんです」

「私を変えてくれて、ありがとうございます」







「…私の、大っ嫌いなトレーナーさん…………」

■筆者メッセージ
先週更新できなくて本当にすみません。反省したので3話投稿です。これでチャラにしてください。お願いします
フィーゴン ( 2017/05/28(日) 15:22 )