疾風戦記















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六章 青い波動
八十三話 未来予測図(中編)
===前回のあらすじ===
 メグにすねを蹴られつつも、僕はフゥの付き添いを行う。僕が接していた時もだったけれども、フゥはSっ気と共に微妙に天然が入っているためか、メグは(自称)メスに対してながらもイライラしているような気がする。


「それで、ここが……」
「はい!医務室ですね!それでこっちが……」
「……全く……」

 僕を睨まれても困るんだけど……。さすが、(本人曰く)天界にいたということもあったのか、施設の間取りは完全に記憶している。いや、僕らとは『見方』が違うから、むしろ僕らより詳しい可能性もある。

「調子狂うわね……頭の中では分かってるんだけども……」
「いやぁ……まぁ、天使さんだし……はは……」

 この色違いフライゴン、足を引きずるような役立たずだったのにポジションだけは有能。少し前まで、僕の死角を埋めていたくらいなのだから、アビリティ的な面だけは中の上にいるのだ。もっとも、連携をとってくれたならば、もっとやりやすかったのだけども。
 とはいえ、天使さんの『視界』では見えなかったものも多いらしい。壁の模様とかを斬新そうに見たり、さっきもさっきで、フードコートのカウンターに乗り上げて、厨房を眺めて羽根をパタパタさせてはしゃいでた。カロトに出会ったときの最初の一言も、

「ちっちゃいですね!」

だったし、ボーバンに会ったときの一言も、

「やっぱりちっちゃいですね!」

 まるで同じだった。ボーマンダは、平均的な丈が一・五メートルで、フライゴンより図体は大きくとも背丈は小さい。カロトはともかく、ボーバンに関しては喧嘩沙汰になるところを止めれてよかったよ。フゥは相手が初対面だってなんて考えてないから見境ない。

「……さ、着いたわよ」

 メグが案内したのは親方の部屋。今は大体メグが使ってるから、ノック無しに勝手に押し入る。

「ん?……あ!メグー!やほー!」

 ぼくも忘れやすいのだけど、ここは親方の部屋だ。勢いよく、バタンとメグはドアを閉めた。

「待ってて」
 
メグは廊下を歩き、僕らを待たせて自室に戻る。数秒経つと、マスターキーを持って現れた。躊躇いなくノブに手をかけると、回しはせず、鍵穴に鍵を差し込んで鍵を閉めた。ガチャッ、という音で、錠を下ろしたのが分かる。

「……書類的なのは後回しね。先に、みんなの前で自己紹介してもらおうかしら」

 にっこり笑ってるから、とりあえず頷いた。「おぉー!」と天使さんが叫びかけてたから慌てて口を塞がせた。あんまり機嫌良くないみたいだから、挑発のようなことはやめよう……ね?


〜〜


 天使さんとメグはフードコートに向かった。だけど僕は、ちょっと二匹とは別行動。医務室に向かった。ノブを回して中に入る。……いた。腕を肩から吊って、体は起こしているものの呆然と、包帯の巻かれた足を見つめている。頭もぐるぐる巻きにされている。出血は……無いみたい。

「……あ、よう」

 ようやく気づいた。吊って無い方の腕を上げる。陽気そうに振舞ってるけど、気迫がない。

「どうした、今日も確か情報探しだったはずだろ?」
「うん、訳あって早めに帰ってきてね」
「……訳って?」
「事情が複雑だから一言では言い切れない、かなぁ……」
「……そうか、じゃ別にいい」

 沈黙。二匹だけで少し気まずい。大抵はノンかグレンがいてくれてるらしいんだけど、今は両方とも、たまたまいない。

「……そういえば、さ」

 なんとか話題を見つけて話しかけてみる。

「相手のバシャーモと、何かあるの?フィレンがあんなにボロボロにされるなんてよっぽどだけど……」
「……」

 後々考えて、しまった、と思った。今話すにはあまり良くなかったかもしれない。けど……。

「……なんでもない。ちょっと油断しただけだ」

 ちょっとムッとした。隠すなんて、それこそあまり良いとは思えない。

「……本当のこと言ってよ」
「本当のことだ。なんで嘘つかなきゃなんねーんだよ」
「見え見えなんだよ!」

 つい、大声を出してしまった。ギョッとして僕を見る。手を握って、歯を噛み締めた。

「らしくないじゃん、さっきから!何かあったなら話せば良いじゃん!どうしてそんなこともできないの!」

 普段からあまり怒らないのもあって、戸惑ってるようだ。フィレンだからこそ、だった。人間の頃にもこんなことはできないと思う。でも、フィレンだから、打ち明けてほしい。できれば、力になりたい。親友なら、当然のことのはずだ。昔できなかったことを、今もできないなんて恥ずかしい。フィレンはすぐにシュンとして、

「……すまない」

って呟いた。

「だよな……そうだよな……」

 フィレンは目を閉じた。なんかを笑い飛ばした。

「わりぃ、らしくなかった」

 へへっ、て笑って見せてくれた。ようやく、僕の太陽が戻ってきてくれた。

「じゃ……」

 フィレンは僕のおでこに包帯を巻いてない方の手を近づける。

「……あいたっ!……うぅ……デコピンすることないじゃん……」
「お前が俺に説教なんて変な話だろ?これでおあいこだ」

 ヒリヒリするところをさすってると、フィレンにちょっと笑われた。ぐっ……まだまだ舐められてるな……。

「さてと、そうだったな、あいつの話だったか」

 包帯をいじりながら、フィレンは話を始めた。

フィーゴン ( 2017/05/28(日) 15:22 )