疾風戦記

















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六章 青い波動
七十四話 リオルの冒険
 真っ青な空を見上げていた。僕の左右は青い若草が広がっていた。太陽が空の天辺を目指している。雲が穏やかに、のっそりと左右を過っている。ぬくもりを持った風が頬を撫でる。

「ふぁ〜……」

 あくびをかけるのは平和の特権だけど、なんかどうも暇が過ぎる。日光浴だなんておじいちゃんになるまで縁のないものだと思ってたのに、この調子だと習慣にだってなっちゃうよ……。村の友達……というか、子供自体が僕と、コジョフーのワヅキしかいないのだから、ワヅキが家の手伝いしてる日は、海岸で砂の上に自分で作った地図を描いたり、木の上に登って景色を眺めたりしてたけど、もう飽きた。
 空からメスの子供でも降ってこないものか、とつい適当に思ってみたけど、降ってきてるのはオスの方だけ。あーあ……だんだん眠く……。

「……はぁっ!?」

 降ってる!?ポケモン降ってる!?飛び起きるどころか、これからの暇つぶしにさえなり得るくらいの大ニュースだけど……降ってる!?
 見たところ、雲よりも高いとこから落ちている。重力の影響をモロに受けている。遠目でも、もがいてるのが見える。あの調子だと……。

「……森か!」

 この一部始終を見ながら助けに行かないのもどうかしてる。『電光石火』で駆け出した。急げば……急げば間に合うはず……!


〜〜


 風景も変わった。風を切る音も変わった。姿もだいぶ変わった。けど、あいつの現在(いま)が、こんなにも変わってることには、驚くしかなかった。
 林道の中を、ゾロアークとアルトは駆けて行く。ついてはいけているが追いつかない。あいつとは、戦いは望まない。狂戦士っぽい性格なのに、こんな時はどうも弱気だ。それよりも知りたい。俺が村を出た後、あいつは……ワヅキは……。


〜〜


 ドッシーン!!
 大きな音がした。あぁ……間に合わなかった……。あの高さから落ちたのだ。こんなにふかふかなクッションの上に落ちてもぺちゃんこになるのがオチだ。自分の背丈の二倍くらいの草をかき分け、音のした場所に急ぐ。
 ……いた。目を回して気絶してる。……生きてる!?落ちてきたことといい、今日は本当に不思議なことしか起こらない。

「ねぇ、しっかり!大丈夫?」

 肩を揺する。少し意識があるみたいだ。ゆっくりと、目を開ける。

「……はぁ〜、良かった!怪我はない?」

 何気ない気遣いの言葉だったけど、固まってしまった。しまった、少し馴れ馴れしかったかな……。

「しゃ……しゃ、しゃしゃ……」
「しゃ?」


「喋ったぁぁぁあああ!!」
「え!?」

 び、びっくりした……。というか、喋っちゃ何か悪かったのか!?こういう時は、まずは声かけが大事、ってワヅキからも聞いたんだけど……。

「ポ、ポポ……ポケモンが……」
「お、落ち着いて!ポケモンは普通喋るでしょ?」

 首を横に振ってる。オレンジ色の体毛がブンブン動く。えぇ……?アチャモって見かけないし、どんなとこから来たって言うの?相当な世間知らずなのか、あるいは僕が相当な世間知らずなのか……うん、前者だな。

「とりあえず、ここじゃなんだし村まで案内するよ。立てる?」
「あ、あー……うん。……ありがと……でも、腰が抜けちゃって……」

 どうも面倒のかかる子だな……楽しみが増えるってものだろうけどね。同姓だし。ふわふわの毛むくじゃらを背中に乗せる。誰かにおぶってもらったことはあるけど、おぶったのは初めてだな。

「うっ……お、重い……」
「ちょ、ちょっと!女の子に対してそれは失礼でしょ!!」

 ……はい?今なんて……。

■筆者メッセージ
短いです。ものすごく短いです。そしてなおひどいことにも遅れています
めちゃくちゃ反省してます。無計画を呪いたい……
サンパターン再び。フィレンさん、二人も性転換経験者と会えるのは結構貴重な経験だぜ
フィーゴン ( 2017/03/20(月) 14:10 )