疾風戦記















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六章 青い波動
七十三話 鋼色と戦友
===前回のあらすじ===
 クレイ、セレアの二匹を取り押さえ、キーンに差し出そうとした僕らだけど、化かされていたみたいで。クレイの味方と思しきゾロアークが必死の抵抗を見せる中、僕は、もう一匹の仲間に気づいた。その、仲間のバシャーモを見たとき、フィレンは急に、動きを止める。


「アルト……?」

 タイルの二、三枚が割れ目を作る。重く、強い着地は付近に響いた。腕を付き、身を屈めて降り立ったポケモンは、ゆっくりと、曲げた膝を立て、伏せた顔を上げた。赤橙の体毛が胸のところ。髪はやや薄い肌色で、手の三本の指と爪が、いかにも鶏の類を思い起こさせる。
バシャーモはそこに降臨した。

 起立から、視界の確認を為している。眼光はクレイの視線に似ているものの、鋭さはあっても冷たさはあまり感じない。フィレンを一瞥。呆然とする彼は、眼前の事実の対処に追われている。それなのに、すぐに視線をクレイとゾロアークに向け直す。

何か知らないけど、二匹まとまられると、せっかく捕まえた関係者との逃避の成功率も格段に上がる。フィレンは事情アリで動けない(というか、それならむしろ積極的に行動してほしいけど……)様子だし、とりあえずここは僕が食い止めねば。

 仕掛けの筋は、まずは『地震』から。添えた手から大地のエネルギーが揺らめく感覚を感じつつ、その撃の方針を定める。視線をで調整。手際よく。グラグラ揺れる大地とともに、低空飛行で急接近。バシャーモ、アルトとやらも感づいたらしい。軸足でステップを踏むように右へ回避行動。上にジャンプして自ら獲物になってくれるポケモンが今まで多かったから期待はずれ。でも左右でも構わない。ゲーム的条件判断は、生前の僕にとっては体が追いつくかが論点になるレベルだ。易々と有利展開には持ち込ませない。

 体を前進と共に回転をつけ、『ドラゴンクロー』発動。青紫色のオーラが僕の周りに円を残す。バシャーモが回避行動をかけたところで僕も右へ転換。縦回転の反動を利用しつつ、転換の初速を利用しつつ、急接近攻撃を仕組む。

「でやぁっ!!」

 掛け声も一丁前にやったけど……躱されちゃうか……。
 追撃を読んで、回転を足で止める。逆回転で返して態勢を整える。体格からも、頭の中のデータからも察せるように、機敏さは伊達じゃない。回避が上手い。接近戦は不利。なら、遠隔的に地震でジリ貧を狙えば……。

「待て、サン!」

 攻撃体制の手を引っ込める。フィレンが後ろから来ている。顔色はまだ戸惑いを含んでいる。

「どういうことだよ!なんでお前こんなことしてんだ!!」

 知り合いだった、でやっぱり間違いないらしい。事情とか色々わかんないから説明が欲しいのだけど、この状況で聞くのもできない。というか、話しかけられない。今のフィレンには、別の何かが憑いていた。フランクな、気前の良さが消えていた。
 フィレンの問いかけに、アルトは沈黙を貫く。

「村は……ワヅキはどうしたんだ!!何とか言えよ!!」

 怒りとか、戸惑とか、失望とか。折れそうなくらい強く、歯を食いしばっていた。対照的に冷静なバシャーモが印象的だ。キリッと真っ直ぐ立ち、芯を通る棒は何にも折られそうにない様相を呈した。

 質問には答えなかった。フィレンに少しずつ近づく。フィレンは構えを作って応戦を試みる。ザッ、ザッ、という土音が刻まれる。
その音は、急に風に乗った。
急接近。防御の姿勢を取り、接近するポケモンに蹴り込みの仕掛け。跳躍で躱され、背後。回りこまれる。アルトの右手の拳がフィレンを捉えた。振り返りからフィレンは回避を見る。『見切り』は成功。踏み込み、アルトがフィレンに攻めを仕掛ける_____いや、倒すのが目的ではない……。『見切り』後にできた隙は、フィレンから「石」を奪うには充分。

直上に投げる。フィレンは、意を察したらしい。アルトが何を伝えたいのか、理解したらしい。

「……なんで……お前……」

落胆するフィレンをよそに、アルトは自分の掌の上の物を、固く握り締めた。
それからは、機敏に、軽やかに、広場の噴水の周りを巡り始める。

「お……おい、待て!!」

 フィレンも『神速』で後を追う。


 ゾロアークを抑え込むこと以外に目が行かなかったボーバンは、強襲の一撃でノックアウト。ライの攻め手を躱し、ソアの電撃を防ぎ、隙を生み、ゾロアークとクレイ・セレアを、付近の森への逃亡を支援。。『瓦割り』は手で受け、突き放す。『サイコキネシス』は俊敏な動きで翻弄し、『電光石火』は炎を巻いて目くらまし。その手筈の良さは、まさに暗殺者(アサシン)。攻撃を受け流し、妨害する。

「ちっ……逃げられたか……!」

 アルトの火炎放射の煙が薄くなる頃、森の木の隙間にゾロアークを確認する。
 逃し切り、適当に時間を稼いだ後、アルトは大きな跳躍一つで街中から逃亡した。


フィレンがその後を追う。


 午後、時刻は一時を過ぎた。広場の中央は、噴水の縁が少し割れ、焦げ臭い匂いは風がさらっていってくれた。自分の身近の親友のこと、まだまだ全然知らなかったのだと、やや傾き始めた太陽がうっすら笑っている気がした。フィレンの過去……あいつは何を見てきたんだろう。

■筆者メッセージ
最近、めっきり自分の文がつまらなく感じます。スランプですね、分かります。
フィーゴン ( 2017/03/12(日) 22:35 )