疾風戦記















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五章-真実は嘘が語る-
六十三話 熱源を辿って
===前回のあらすじ===
 ミラン国王の命により、僕らの次の目的地は『根源の洞窟』に定まった。心配なのはこの話が外部に漏れないかどうか。ライやカロトはさっきから考え事に唸ってばっかりだし、やっぱり、どうにも何かが裏側で動いている気がする。もしかしたら、この前の件の諜報者は案外……。



 皮膚からも感じ取れる熱。溶岩が弾ける音。長居しようものならこんがりと焼け焦げてしまいそうだ。要は、暑い。地下熱により、ダンジョンの内壁、天井、床は、少し赤みを帯びている。
 カロトは10分でノックダウン。弾け飛んだマグマで木の苗がやや焼け落ちたのがトドメとなった。フィレンも、タイプ上か、あるいは単に暑いのか、さっきから集中力がないように辺りを見回しては額の汗を拭っている。とはいえども、予備の水に最初に手を出したのはメグ。最初の休憩を打ち出したのもメグ。やっぱりこんな場所では毛の多さはデメリットにしかならないらしい。

「あ〜つ〜い〜……もう限界、誰かおぶって〜」

 あーあ、遂に弱音まで吐き出してしまった。いつも半目で睨みつけていた目は閉じ切り、両手両足を大きく広げてうつ伏せ。尻尾を左右に動かしてアピールする。こんなメグはレアなため、写真か何かに収めたい。

「我慢しろよ、俺だってさっきからこの暑さにはイライラしたんだから……」
「あんたのことは知らないわ〜。とにかく誰かおぶってよ〜」

 口の悪さが健在なところで、まだ元気ではあることは確認できる。ノンちゃんが進み出てくれたので、なんとかはなったけど、「やっぱり、どっかのフィレンとかいうやつよりは気が利くわね〜」の発言でフィレンは更にイライラしてしまったようだ。

『サンさんは平気なんですか?』
(結構ね。フライゴンは砂漠のポケモンだし、寒さは苦手でも暑さには強いみたい)

 フィレンとは正反対。実際問題、体毛がなく、熱の発散効率はかなりいい。むしろ、ここは冬では快適なくらいだ。この探検が終わったら週単位で通うことにしよう。

『それはいいですが、サンさん、右右!』
(おおっと、ごめん!)

 視線変更。その際に『ドラゴンクロー』を発動。右手が紫色のオーラを纏い、ブーバーに直撃。……よし、一発。いくら快適でも油断はできない。むしろ、有利な環境であるからこそ、不利なポケモンのために、いつも以上に気を引き締めなければ。そのためにも、周囲には常に気を配り……。

『ありゃりゃー。どうやら、気を引き締めるのが遅かったみたいですよ?』
(……やっちゃった……)

 額に手を当てた。しかし、落ち込む暇はない。前に向き直り、ステータスを確認。レベルはばらけているが、平均でも六〇代。高い奴では八〇はあるかな。

「こりゃー囲まれたなー」
「らしいな。くそっ……早く終わらせて帰りてーってのに……」
「そう焦るな。バトルは冷静さを失った方の負けだ」

 推定、二〇匹。倍の数はいるけど、問題外。ボーバンが、背中のカロトを起こそうとしているが、起きてくれない様子。ソアがピストルのように打ち出されたのが、戦闘開始の合図となった。


〜〜


「『火炎放射』!」

 口から、摂氏四〇〇〇度にも達する熱を吐き出す。暑さも兼ねて、威力は高い。だが、そもそも暑いところで生活している彼らには効果が薄い。『アイアンテール』も、この空間じゃあ尻尾がしっかり固まらず、威力もまちまち。だからといって、『地震』はリスキー。『逆鱗』は最終手段。分が悪い。カロトを背負いながらだから余計だ。向こうも俺に有効な手立てはないようだが、ジリ貧なバトルは好きじゃない。
 内壁を破壊し、瓦礫をつくる。『アイアンテール』で飛ばしてみたが、命中しない。厄介。それに比べ、サンは上手く戦っている。接近戦では『ドラゴンクロー』、遠距離には『岩雪崩』と使い分け、常に有利を崩さない。なるほど、パワーバトルばかりでは、こういったときが面倒なのか。連携なんてついこの間までは頭の片隅にも考えてはいなかったから、技にも、その意識が届いていない。

「……しまっ……!」

 左に大きく回避。それと同時にカロトが背中からずり落ちる。申し訳ないが仕方あるまい。どうにか攻撃を届かせないように立ち回ろう。だが、向こうは待つ気は更々ない。炎のパンチが頬を掠めていた。軽い火傷。まぁ、気にするまでもない。けれど、これはどうやら、決断を早めるべきである、ということらしい。焼けた皮膚を少し触る。

「そんなに飛ばされたいか?」

 平気だとでも言うように拭う。むしろ、『逆鱗』に触れられたのだ。挑戦状を叩きつけられた以上、こっちも黙ってはいられない。ハイリスクはハイリターン。舐めららっぱなしではつまらない。ドラゴンの気迫を見せつける。睨みつけた標的を逃さず。急接近。前脚で薙ぎ払えば、バオッキーは簡単に倒れた。だが、まだ足りない。標的を変えて、再度。

「ぐぁぁぁぁぁぁっ!」

 大声で相手を威圧する。油断大敵とはいえ、ここは自信過剰でやってしまおう。仕方ないし、やりたい方を目指すとしよう。鋭く睨みつけた俺の口からは、ほんの少し炎が漏れた。

フィーゴン ( 2016/12/26(月) 00:30 )