疾風戦記















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五章-真実は嘘が語る-
六十話 危機感に訴えたくて
===前回のあらすじ===
 僕の戦闘の話から、クレイに関する考察はより進展した。セレアの不可解な動きが目立つけど、何か勘付いているのか、あるいは隠し事があるのだろうか。


 他の石の場所に関しては、ミラン国王自身も口を開いてはくれなかった。クレイが石の場所を特定できた理由は明らかに情報漏れ。だとすれば、明らかに城内に原因がある。情報網を整理し、抜かりがないかを充分に確認した上で再び僕等を呼んでくれるという。まぁ、それまでの間、しばらくだが、暇といえば暇だ。つまり、ようやく探検隊……っぽい仕事をまともに行える。新興ギルドの広告労働と、フードコートでのメイド仕事の日々で、いつの間にかすっかり忘れそうになっていたが、僕は探検隊員。依頼をもらい、それを実行することが仕事だ。秋頃になってから自由な時間は増えだしたが、おそらくここまで何もない時間を、しかも一週間以上体感できたのは初めてだと思う。以前からの変化といえば……。

「『サイコキネシス』!」
「ありがとな!『神速』!」

 セレアが同行しているということ。長い旅を行っていて、泊まる場所がなく、ギルドに居付いたのだが、ソアの采配により、探検に同行することとなった。ゲーヴェもしばらく留まると言い出し、今はカロトたちの方で別の依頼をこなしている。レベル70。ステータスは、耐久能力に秀でている。セレアの『サイコキネシス』で行動を潰されたウツボット、草タイプの、現実世界でいうウツボカズラを思い出させるような体格のポケモンは、フィレンの『神速』でとどめを刺された。

「んー……やっぱりいつもと違うな……」

 肩を回して動作を確認している。件の石がどうこうで、向かってくるポケモンの強さも種類も大きく変わっている。今回の依頼もただの迷子探しなのだか、レベルが格段に違う気はする。その証拠に、ステータスを見ても高レベルが多く見られる。だからといって難しいということでもない。ガサガサと落ち穂を踏む音はフィレンのもののみだから、向こうから来た場合、音が聞き取りやすく反応が早くて済む。セレアの腕もいいし、結局は余裕を持って先に進められていた。
 気になるのは風がそろそろ冷たいこと。体毛があるとはいえスラッとした体格からは寒さは苦手そうなのに、やはりタイプの上ではフィレンは平気なようだ。僕は気を抜けば凍え死にそうだ。手を息で温める。白い息が上へ上へと昇っていって消えた。こんな仕草ばかりであるためか、

「ここで小休憩にしましょう」

セレアがそう言ってくれた。ありがたい。フィレンはどうやら、セレアの笑顔に魅せられたらしく、すんなりと同意した。


〜〜


 厨房は手が足りており、他に仕事もない。メグはメスらしくなく、自室のフローリングの上でうつ伏せの大の字になっていた。外は日を重ねるごとに寒くなってきているが、暑いよりかはましなのが実状。顔を前に向ける。視線の先のソアは動く気配がない。向こうからノックもなしに入ってくるのが悪いと彼女は思っているが、他のポケモンは、ニグループくらいに分かれてそれぞれ別件の依頼でしばらく帰ってこない。PCゲームはメンテナンス中だ。オシャレなカフェでもあればとため息を吐くが、どうやら彼女にとって一階のフードコートは好みじゃないらしい。
 これ以上動かなければ背中に苔でも生えてしまう。前足からゆっくりと立ち上がり、ソアの耳を噛んで廊下に引きずり出した。目線を階段の方へやると、ライがいた。数秒、睨み合う。ライの方が、三本の指を手前に折り畳む仕草をする。来い、と言う意味だろう。メグは頷いて、ソアを廊下の壁に寝かせてからライに着いていった。


〜〜


「へぇ……もう五年以上も……」
「初めは草の大陸で追跡をしていて、一度逃げられてしまったのですが、炎の大陸にいるとの情報を得て」

 フィレンがサンドイッチを片手に相槌を打った。セレアは弱い念力で携帯用の野菜スティックを口元に運び、ポリポリといい音を立てて食べている。僕は、暖かいお茶の蒸気で目のレンズを曇らせていた。

「実際に戦ったことはどれくらいあるんですか?」
「十五回程。しかしどれもお話しするような代物ではありません。攻撃をやり過ごされてそのまま逃亡されたものが大半です」
「ふーん成る程……」

 ズズーッとお茶をすすった。その後、はぁー、と白い暖かい息を吐き、この上ない幸せを噛み締める。

『爺さんですか』
(黙らないか!)

 天使さんのからかいにも受け答えを忘れないが、結局どうでもよくなる程僕は幸せになっていた。顔にも出ていたのか、ハッと気づいたときにはフィレンが隣でニヤニヤこちらを見ている。

「いや〜、中身はオスでも相変わらず可愛いなぁ、お前」
「うるさいなぁ、放っといてよ」
「そうやって反抗するとこも中々だぜ?」

 天使さんはツボに入ったらしい。まったくいい笑い者だ。セレアさんまで、僕らのコントを微笑ましく思っているようだ。

「お二人とも、仲がよろしいのですね」
「そうさ。まぁ、俺はメスには基本仲良くするんだが、コイツが元はオスって聞いた時は正直がっかりはしたな。普通よりは可愛かったし、彼女候補にもなるかと期待していたからな」
「え!?まさか、初めはそんな風に見てたの!?」

 衝撃的だ。今のお前も嫌いじゃないぜ、と、トントンと背中を叩かれる。友情的な意味だろうけど、なんか下心が見え隠れしているように見えた。また、クスクスとセレアさんが笑っている。その笑みに一瞬、暗い顔が見えた気がしたのを寒さのせいにした。

■筆者メッセージ
唐突ですが、スマホが修理に出されました。更新が遅れる可能性があります。
フィーゴン ( 2016/11/13(日) 22:45 )