疾風戦記

















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五章-真実は嘘が語る-
五十二話 神様の隠し場所
===前回のあらすじ===

 何もない日を満喫していたところ、やはり日常をぶち壊してくれよう依頼が舞い込んできた。森の石という、厨二病感と一日で決めた感のあるキーアイテムの存在を確認するため、僕達は『神隠しの森』へ向かう。


 遠足のようにリュックに何かを大量に詰め込んでいるソアは、タッタと僕らを置いて先へ向かう。僕やボーバンがいなければ出発もできないのに。少人数の方がいいだろうということから、『セイバーズ』の何匹か留守番している。動きたくない、そんなことより甘いものをくれ、というクレームによりメグはもちろん。ノンが残るとのことなので、ライとフィレンもセットになった。しかし、四匹削ると今度は返って少ないため、『フルカラー』からランペアを借りて五匹で出発することになった。今考えれば、十分多い気がする。

 さらりと目的地までフライト。もうこの世界での生活も相当経つし慣れたものだ。目の下に映るは主に緑だったが、緑は緑でも一際濃い緑に変わったあたりでカロトから着陸の指示を受けた。こんなところに今から入るのかと思うと、先の見えなさに幻滅しそうになる。おそらくずっと前に探検隊が作り上げたと思わしき砂利道は雑草が生い茂り、ナゾノクサが顔を出す。それを辿っても、入口と呼べる入り口はなく、森に突っ込む、という表現が適正だ。申し訳程度に添えられた立て札も爪痕すら見れるくらいボロボロになっている。……とと、目の前の景色に感傷に浸っている場合じゃない。ランペアに声をかけられた時には既にソアの姿がない。メグは、こんなのに毎日のように困らされていたのかと思うと、不憫にさえ思われる。


〜〜


 木の葉を踏む音。
 一本道が基本。具体的には、進んだ方向にしか道ができない。時々、サンやボーバンに上から確認をしてもらっているが、機能しているとはお世辞にも言えない。迷ったな、と言ってしまうと、探検隊員のモチベーションに関わるため口を閉じておくし、聞かれても合理的っぽい受け答えで何とか済ましている。が、どうやら察し始めているらしい。ひたすら、進めなくなったら右に曲がっているわけでもないのに同じような風景ばかりが映るし、冷たかった空気が、いつの間にかてっぺんにまで差し掛かった太陽でやや温まっている。

「……、開けたところが見えてきたな」

 ぼそりとボーバンがつぶやく。

「え!ほんとー!?」

 それを聞いて、すっかり歩くのに退屈しまっていたソアが全力疾走。後ろにいたので危うくぶつかるところだった。ようやく、中継ポイントに着いたというところか。お腹が空いたら拾い食いで済ませてきたが、それではさすがに持たないのでどこかで休憩を取りたいと思っていたところだ。ありがたい。
 急に周りから木が消え失せ、空が広がった。草原のど真ん中には座れそうな程度の岩。ソアが一番乗りして自分のリュックの中から色々取り出している。何のためのスペースかはわからないが、今は何としてでも休憩がしたい。もうそろそろ僕の体力も限界が近い。よくやった方だとは褒めるが、サンもボーバンもランペアも平気な顔をしているところで萎えてしまう。

ザッ……ザッ……

「……?今の音……」

 嫌な予感が過った。草の揺れる音。森の奥から次々にポケモンが姿を現し始める。総数……十数体。様子が少しおかしい気はする。操られているようだった。

「……あぁ、やっぱりこうなるんだね……」

 サンが肩を落とす。その後、誰かに何か言われたようにフゥッと息を吐いてから自分を律した。彼はよく同じようなことがあるため、今となっては不思議でもない。でも、気になる点ではある。


 とりあえず、僕はできることしかしない。できることをしたら石のそばで守ってもらおう。戦いに行ったら潰されるだけなら、大人しくしていた方がいい。決して、ヘタれたわけではない。

「……?」

 視線を感じた。背筋が凍るようなとても冷たい視線。前にも“同じようなの”を感じた気がしなくもない。


〜〜


「右、ペンドラーとナッシーの方はサン!左、メガヤンマとアメモースの方がはソア!正面、ラフレシアの方はボーバン!後方、オーロットの方はランペア!後方、左右は足止めを中心に、正面はとにかく切り開いて!状況が厳しくなったら戦力を正面に集中!強引に突破!」

 指示が下った。足止めと言われても、攻撃技が主体なので押し返すのが中心だ。

(サポート頼むよ、天使さん……)
『えぇ……面倒くさい……』
(今くらい本気出してよ!)

 またこの“駄”天使は……。だけど、死角は他の味方三体に補われているため前方だけに集中できる。

「『岩雪崩』!」

 この前使った合成技は安定性がない。だから、大きな賭けに使うのが当然だろう。となれば、まずは普通に単一の技で機先を制する。
 向こうも、こちらの攻撃に対応して動く。左右に分かれた。厄介だが、後方に退いて警戒を図る。右はハードローラー。左はリーフブレード。リーフブレードはドラゴンクローで弾きかえす。ハードローラーの方はカロトの方に行かないように狙いを逸らさせた。続いて『爆音波』を放ち、大音量により足を止める。そこで一匹。ハハコモリをドラゴンクローで討ち取った。力なく倒れたのを確認してから、次の標的を見る。バラけている。ここは一箇所に固めて倒しやすくしよう。
 空中へ移動。全体がよく見える。技を当てるため、僕の真下へ詰め寄ってくる。よし、狙い通り。急降下。右手を構え、地面スレスレで……。

「『地震』!」

 技を解き放つ。地面の亀裂が蜘蛛の巣状に広がった。ペンドラー、ハブネークには大きなダメージ。放置しても攻撃はしてこない。そして正面に向き直る。

(……しまった!)

 一匹倒しそびれていた。ナッシーがソーラービームを構えている。ためは終わった模様。そして、見事にゼロ距離。防御の態勢をとっても、効果がほぼない。どんどん押されていく。

「ぐっ……!」
「……うわっ!!」

 背中が岩に当たった。ということは、カロトの方向に放たれてしまったか。カロトが中央の岩から飛び降りて回避したようではあるが、他のポケモンのいい的だ。攻撃を避けてふらふらと逃げ惑っていることだろう。
 草が焼けた匂いが消えないうちに、ナッシーが次の攻撃に移る。反撃に移るべきだが、強力な攻撃を受けて少し体に自由がきかない。まずい……!おそらく次の技はサイコキネシスだ。受けたら今の僕では立っていられない。なんとか、右に避けられれば……。

「『電磁波』っと」

 弱い電気が地面を伝った。青色を帯びたその電気は、ナッシーに当たって機動を潰す。電気の出処はどうやらランペア。こちらに気を遣える程、余裕があるらしい。

「『岩雪崩』!」

 岩に寄りかかりながら、余力でナッシーに止めをさした。一時は危なかったが、こちら側は片付いた。足止めとは言われたが、結局は全員倒してしまった。さて、援助に行かねば。助けてくれたランペアの方に向かおう。補助が専門のはずだから、苦戦しているかもしれない。岩に手をかけ、上体を起こそうとする。

「……ん?」

 目に付いたのは……岩の刻印。汚れていてよく見れない。だけど、配列とか、まだ見える方の刻印とかで察しがついた。

『あれ、サンさん、どうかしました?』
(これ、もしかして……)

 土埃を払った。やっぱり、アンノーン文字だった。例の遺跡の時と同じ、並びは英語のそれと変わらない。偶然にも程があると突っ込みたい。

■筆者メッセージ
〜その頃のギルドの現状〜

フィレン「おうおう……いい加減譲ったらどうだ?バカ兄貴さんよぉ」
ライ「それはこちらのセリフだ。ノンは誰にも渡さない。大人しくしてな、ナンパバカが」
ノン「はわわわ……ふ、二人とも、やめてくだはい……」
フィレン「いいだろう、ならば直接黙らせるまでだ」
ライ「望むところだが、俺に勝てるとでも思ってるのか?」
ノン「フィレンさんもお兄ちゃんも、そんな私のために争わないでくださいよぉ…」
フィレン「少なくとも、妹に固執してるようなヘタレには負けないな」
ライ「そうか、こっちも変態には負けんのでな」
メグ「あんたらうるさい、両方黙れ」
フィレン「……今日のところは引き下がろう」
ライ「だな。不毛な争いは何にも進展しない」
ノン「ありがとうございます、メグさん」
メグ「別に。私自身もむかっときてたし」

書く喜びに浸っています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
フィーゴン ( 2016/09/19(月) 23:05 )