疾風戦記

















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五章-真実は嘘が語る-
五十一話 イージーモードは長続きしない
===前回のあらすじ===
 新たな仲間を加えたり、パーティで大盛り上がりした後、ようやく過剰労働から解放され自由を満喫していた。けど、どうやらそれも長続きしなくて……。



 この世界にも四季があるらしく、木の葉が少しずつ色づき始めている。“天高く馬肥ゆる秋”、なんて言葉もあるくらい、食べ物が美味しいし、そのせいか少し眠たい。自分の食費は自分で出せ、という制度のもと、仕事をサボるは死も同然だが、それでも慣れてくれば毎日が平和に過ぎる。探検隊の名前すら忘れるほどボーッとしてしまうことも多いし、それでもすんなり終わることも多い。今はお尋ね者のポケモンを探しているのだが、フィレンに任せておけばパパッと終わらせてくれるのだ。ちゃんと僕も加勢しているが。

「『波動弾』!」
「グアァッ!」

 ほら終わった。最近フィレンが覚えた『波動弾』は、命中性能、攻撃性能に優れた遠距離技。接近して殴ることしかできなかったフィレンにとっては、“距離をとっていても攻撃できる”、はアドバンテージにしかなりえない。縄で縛り、結んだ紐の先を持って引きずる。帰るみたいなので僕もそれに倣った。



 ガーディさんからのお礼の言葉、メグの報酬ぶんどり、よし、流れは間違っていない。いつも通り、話が終わってから階段へ向かおうとする。

「あ、サン、ちょっと待って」

呼び止められた。嫌な予感とともに後ろを向く。ポケの札束をピラピラと確認している。もしや足りなかっただろうか。いや、枚数は確認したしそれはない。

「なんだ?話なら手短にしろよ」
「要件、っていうよりかは伝言に近いわ。ミラン、国王さんのことは覚えてるでしょ?」

 ラスト一枚まで確認し終わってから、メグは紙幣を早業で一枚抜き取り、他をキリマルに渡す。なんらかの犯行現場が見えたが、歯向かう気はない。前にそれでライとの間で戦争が起こっているのを目にした。フィレンも見えていたが無視したのか、あるいは気付いていないのかは分からないが、平然とメグの質問に「ああ、覚えている」と返した。

「実はね、なんか急に呼ばれたの。明日らしいわ。それも、セイバーズ全員。街が平和ボケしてるのに変わりはないはずだし、なんか不可解なのよね〜」

 額にシワを寄せている。面倒くさそうな顔もしている。まぁ、彼女の性格上、それは無理ないとして着眼点は急な呼び出し。前にも警護とかの依頼は来たことがあるが、数日前には連絡がついていた。焦っているのか、間違えたのか、前日になるまで呼び出すのを忘れていていたのか、そこはまだ知りようがない。
 が、なんとなく日常をぶち壊してくれるなにがしか、というのは分かった。
 室内電灯が一瞬暗くなった気がした。


〜〜


 中世ヨーロッパ風の外観は健在。中身がすっからかんなのも健在だろう。

「お待たせ致しました。どうぞ、中へお入りください」

 中央の門を開いてキーンが出てきた。ウインディの姿は相も変わらず堂々とした風格を漂わせる。ぞろぞろ、八匹のポケモンたちは中へと進んだ。物珍しそうにライが中を眺めていると思ったら、ライは来るのは初めてだったなと気づく。ミランは謁見の間らしき場所にこの前と違って玉座で泰然と座っていらっしゃる。

「ごめんね、急に呼び出しちゃって」
「構わないさ。それ程、緊急の用事なんだろ?」

 既に本性はばれているため、形骸的なことはしないようだ。タメ口で喋り合う僕らに、キーンはまた頭を抱えている。

「そうなんだ。キーン、まずは少し説明を」
「かしこまりました」

 キーンは一礼、そして、ソアに一枚の写真を渡した。エメラルド色の綺麗な石が飾られている祠の写真である。神秘性のあるその石は、単なる石ではないことは誰もが受け取った。

「この国は太古の昔、私の祖先であるウインディが一つにまとめ上げて築き上げたものだとされています。それに際し、反対派との友好の証と島の守護のために三つの石をどこかに祀った、という伝承がございます」

 立て板に水に、息継ぎしているかもわからない速さで言葉を並べる。カロトの方をちらと見るが、首をひねっているあたりはカロトですら知らない話なのだろう。

「この伝承は、こちらで極秘事項として長きにわたって隠し通させていただきましたから、知らないのも無理はありません。私であっても、大まかな場所や年代、存在自体も知りえていないのです。 こちらに関して、最も詳しいのは……」

 キーンはミランを見た。ミランはキーンの視線を確認してうなづくと、こちらに顔を向けた。

「キーンの祖先のウィーンって奴がね、実際に三ヶ所に置いたんだ。風の石、熱の石、そして、そのエメラルド色の石が森の石。僕はこのことを語るのは初めてだし、誰も手に入れられるものではないはずだったんだけど……」

 次の言葉が読めた。カロトが、それをいち早く察知して口を開く。

「……盗まれた?」
「おそらく。まだ確認には向かっていないけど、そういう知らせが届いたんだ。メディアにはまだ伝えていないし、伝える気はないけど、なるべく真実は掴んでおきたい。だから……」

 一呼吸。

「セイバーズ、他の探検隊と合同でもいい。探ってきてくれないかい?」

 大きな広間に声がこだました。面倒くさそうなため息がメグの口から漏れた。

■筆者メッセージ
遅れて申し訳有りません。本当に申し訳有りません。
もう言い訳は致しません。ですが、プロットを作成してある程度先までは安定して書けるようにはなりました。ので、もう投稿が遅れることはないでしょう。ないと信じています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
フィーゴン ( 2016/09/18(日) 03:14 )