疾風戦記















小説トップ
四章 -夢幻は儚く-
四十八話 手品と紅鏡
===前回のあらすじ===
 圧倒的な強さを誇るアイの前に完全に打つ手なしになってしまった僕。なので、打つ手がないなら作るしかない、ということになったけど…………?


 技、という概念を考える。攻撃手段としてはもちろん、移動手段、時には防御手段として幅広く用いられる。そして、発動のタイミングは自在。同時に出す、なんてことも可能かもしれない。機動力、攻撃距離、そしては、おそらく火力や耐久力でも負けている以上、“技の多様性”で勝ち筋を見出していくくらいしか、今は考えがつかない。化学反応のように、ある技と別のある技を組み合わせるだけで、思いもよらない変化がつけられるかもしれない。
 一途の希望。
 難しい、は承知の上。だが、“難しい”を熟さなければ、何も変えられない。二度目の『シグナルビーム』を回避。接近は不利なら遠隔から。でも、“より早く、より強く”。命中は捨てて、大きなリターンを信じる。
 『ドラゴンクロー』、起動。その状態の手で『地震』を起こす。手に今まで感じたことのない大きな力がかかり、潰れそうになるのを必死にこらえる。地面の亀裂は、途端に青紫色を帯び、『竜の波動』に近い靄を噴き出す。完全に直線的に伸び、ほぼ一瞬でアイのところに達した。噴き出す靄に当てられ、不意をつかれたアイは、少し体勢を崩す。効果あり。
 隙は逃さず。接近して『ドラゴンクロー』を起動。『テレポート』から、背後を突いての攻めは見えた。消えた瞬間、後方に『爆音波』の要領を利用して腕の振りを空気に伝える。これにも大きな力がかかり、まだ安定はしない。拡散力が低いものの、音自体はあまり飛ばないため反応はかなり遅らせられる。『テレポート』の先は……命中。確実にダメージを稼ぐ。

「……いいね、そう来なくっちゃ」

 アイは再び『自己再生』。回復の隙は与えない。次は拡散力、持続性を目指す。『地震』を起動。震動に『岩雪崩』を乗せ、擬似的な土石流を起こす。地面を覆い尽くす岩の流れを、アイは片手で消滅させていく。そこが狙い目。反応は遅延させられると見て急接近。

「『ドラゴンクロー』!」

 渾身の一撃をお見舞いしてやる。


 刹那、物体を弾き飛ばしたような感覚の後に、『サイコキネシス』の強い念力で天井に飛ばされた。二度目の衝撃は体の操作をも奪っていく。最後の力で『地震』を起こすが、あっさりと躱された。そこから『シグナルビーム』が飛んでくる。地を蹴り、接近をかけた。『シグナルビーム』をモロに受けてでも。特攻は考えていなかったようで、守備がガラ空きだ。『ドラゴンクロー』を、もう一発……………。





 アイは静かに、パタリと倒れた。それを見て、僕も膝から崩れ落ちた。

「いやー、面白かったよ」

 朧げになっていく視界で、アイが……いや、アイに見えていたものが泡となって消え、本物のアイが『テレポート』で姿を現す。

「一試合にここまで懸ける“人”も、あんまり見ないからねー。楽しいものが見れたよ」

 ……なんだ、最初から幻に弄ばれていたわけだ。


〜〜


『大丈夫ですか?』
(うん、もう平気)

 軽く頭痛がした。本気で戦うと、傷もここまでひどくなるとは……ガチゴラスの……名前は忘れたがあいつの弱さがしみじみと伝わる。僕が目を覚ましたことに気づいてか、アイが僕のベッドに駆け寄った。

「お疲れー。どう?気分は」
「……まずまず」
「んー、でも、中々だったと思うよ?カウンターもなんだかんだで成立してたし、筋は悪くなかったよ」

 褒め言葉を貰っても、第一に技が“本体”に一発も当たっていないのだから、間に受け止めるのは難しい。

「ま、でも、誰だって最初はそんなもの。大事なのは、ここから次を見て頑張るか、だからさ」
「……優しい言葉、どうもありがとう」

 少しだけ、心が綻んだ。焦燥していた気持ちが緩くなった気がする。まだ焦らなくても大丈夫だ。焦るべき時に焦られるように、今は落ち着いておくべきだ。ようやく思えた。

「さ!回復したなら早速、賭けの報酬をいただこうかな?」
「前言撤回」

 やはり、ドSはドSだった。この後、アイと天使さんと、ついでにメグとに、散々いじり倒されたのは言うまでもない。

■筆者メッセージ
どうも。
日曜って早いですね。時間の早さを感じます。おかげで書き溜めも何も、22時の段階で原稿さえ白紙でした。あかんな、これ。ということで、今からおよそ十話分くらい、書いてきます。徹夜の覚悟です。
そして、コラボしてくださったタチバナ様、改めてコラボしていただきありがとうございました。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
フィーゴン ( 2016/08/01(月) 01:37 )