疾風戦記

















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四章 -夢幻は儚く-
四十五話 フェイス・トゥ・ディストピア
===前回のあらすじ===
 ただただ同じ負けを繰り返し、ひたすらに研究を重ねるカロト。どんな情報を得て、どんな戦略を立てているのかも分からないまま、バトルは遂に八戦目。カロトは急展開を仕掛けようとしていた。





 いくらでもいい。一秒以下でもいい。とにかく相手が攻撃の手を緩めない限りこちらに勝機はない。そのきっかけの一つがバトルの急激な“変調”。正面突破を繰り返し、相手に先入観を刷り込むことにより、警戒意識の低下を図る。もちろん、失敗の可能性は大いにある。しかし、他にも賭けてみるつもりである策はあるし、何より可能性は大きさより多さを追求すべきだ。正面……と見せかけて、右足の力で、上体を左にそらす。転がれば簡単に進行方向を変えられる。身体中に地面の砂がこびりつく。これでいい。アビスの様子を確認、反応している。ならば、ここは一旦後方に引いて………。いや、反応はしているが、なぜかこの変化に対応しようとしない。接近から近接攻撃が常套と思われるが、構えようとしていない。この行動の意義は取れないが、少なくともこの機会を逃す手はない。

「『はっぱカッター』!」

 少し前の、ラレス戦の時みたいに、全方位にはっぱカッターを飛ばす。通常戦闘なら僕の攻撃程度なら軽くあしらいながら突入可能。だけど、今回のルールにおいて、この方法はかなり強い。空気中の木の葉の密度が上昇し、自ずとアビスも移動を迫られる。もちろん、回りこみはするが、彼はぐるっと遠回りしなければ回り込めないのに対し、こちらは後ろを向くだけ。はっぱカッターを飛ばす方向、量、角度を計算通りに調節し、アビスの進行を妨害する。そして、自然と僕の周りには葉っぱがたまり、いつでもタネばくだんで発火も可能。隙だらけのようで、隙はゼロ。これが僕の考えた策だ。空気中はすでに、木の葉で埋め尽くされ始めていた。


〜〜


 アビスは平然としていたが、戦況としてはカロトに傾いているように見えた。アビスが舞い散る葉を交わしながら電撃を操って飛んでくる葉を掻い潜らせながらカロトを狙う。電気の流れも相当細く、火力よりも精巧さを重視した『10万ボルト』だ。
 カロトはこれを確認。『はっぱカッター』では対応不可能と見てか、タネばくだんを放出。空気を漂っていた葉が、『10万ボルト』と地面の葉を巻き添えに一気に燃え上がる。より微弱となった電気も、先ほど転がった時に体につけた地面の砂が回収し、ダメージは皆無。その後も絶えず『はっぱカッター』を繰り出し、隙を与えずアビスのスタミナを奪っていく。木の葉の障壁は、時間を置くごとにより厚く、より密度を持つようになる。持久戦も不可能な状況。アビスの次手に注目がいく。

 アビスは『めざめるパワー』を使った。目標は葉っぱの密度の低下。つまり、『はっぱカッター』の飛ぶ量の薄くなった部分からの強引な打開を決めたということ。爆発に巻き込まれないよう、一定の間隔をとりつつ、幾度もエネルギー弾を打ち込む。次第にはっぱカッターが薄くなる。カロトが抵抗策としてはっぱカッターをタネばくだんに変えるも、やはり全ては抑えきれない。

 一か所、道ができた。アビスはそこに転がり込むように飛び込み、刹那、カロトに『めざめるパワー』を撃ち込む。防御策はなし。技はカロトに的確に命中した。



…………………………………



 身代わりだった。
 現在、アビスはカロトの身代わりのあった中央部。それは、減っているとはいえ木の葉に囲まれた中央部。カロトがいたのは………木の葉の円の外。もう、アビスは外へは逃げ出せない。


「『タネばくだん』!」

 カロトは技を放った。目の前で大きな爆炎が発生する…………………。










「…………『守る』」






 煙が立ち込める。その中から、アビスは無傷で走り込んだ。カロトは反応が遅れる。急接近から近接攻撃だ。

「『爆裂パンチ』」

 技はカロトにヒットした。カロトは力なく倒れ、ゴングの音が響き渡った。


〜〜


「………はぁ……」
「結局だったわねー」
「……もっと、こう……よく頑張ったねとか、そういうのはないんだね」
「当然よ、だって八回やって全敗なんだし」

 カロトが目を覚ましたが、心地よい目覚めではなかったようだ。やり切れなさがあったようだ。メグとの会話後も、ため息混じりに「『守る』読みは考えるべきだったか…」と、ボソボソと呟いている。

「目、覚ましたか」
「……うん、やっぱり負けだったよ……」
「まぁ、いい方だったさ。あそこまで追い詰められた分はな」
「できれば、本心からの言葉と願いたいけど……」

 ヘタレモードに移行してしまったカロトは、すっかり萎えていた。それを見かねたのか、アビスはカロトの肩に手を置く。数言、何かを耳に囁いた。カロトは顔を上げ、その言葉に頷く。アビスは、まだバトルの最中にも関わらずその場を去って行った。メグの制止も聞かない。ので、九回戦目以降はなしになり、不戦勝ということで、形としてはカロトの勝ちとなった。だが、カロトはそこまで喜んではいなかった。けど、何かが見えたように、これからの挑戦、希望を見つけたようではあった。

 アビスが基地を出て平野を歩いていく。彼もまた、何かを見つけたのか、あるいはこれから見つけるためにか、あるいは単に歩くだけなのか、その真意ははっきりしない。しかし、彼もきっと、彼の見る世界で別の脅威に立ち向かい、彼の道を作るのだろう。

■筆者メッセージ
テスト期間、それも、ヤバイ状態なのに書きました。八時頃から大急ぎで書きました。勉強時間はかなり削られました。文の推敲も全くしていません。何かと言われますと、いろんな意味で自殺行為ということです。赤点を回避する能力は……まぁ、そこら辺の話しは置いといて、この度、コラボをさせていただきましたabyss様、改めまして、コラボしていただきありがとうございました。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

追記:7/4 一部、文を訂正しました。
   7/16 一部、文を訂正しました
フィーゴン ( 2016/07/03(日) 21:41 )