疾風戦記















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四章 -夢幻は儚く-
三十七話 独裁政治は穏やかに
===前回のあらすじ===
 国の象徴とも言えるポケモン、ミュウのミランは現在の社会事情を行動だけにもかかわらずわずか一〇数秒で物語ってくれた。こんな国のこんな王様の頼み事なら、一つしかないだろう。



 一〇分間、きっちり待ったあと、ミランは僕等を中に入れた。豪華絢爛と呼ぶに相応しい家具が並んで………………はいるが、一部、明らかに何かを置いていたような微妙なスペースがミランの不憫さをさらに強調した。中央のふかふかのソファに僕を促し、自分もソファに向かい合う形で座る。

「キーン、お茶をお願い。お湯はもう沸騰させてあるからさ」
「かしこまりました」

 キーンは一礼して部屋を出た。ミランは僕等の方に向き直って真剣な眼差しを浴びせる。

「聞いたよ、ソア。ギルド立ち上げたんだってね」
「そう!すっごいんだよー!」

 ソアは、自分の腕で目一杯大きく輪を描き、アピールする。

「そこでなんだ………。おそらく察しはついているだろうけど………」

 ミランは自分の朱の綺麗なジャケットから一枚の紙を取り出し、机に広げる。

「…………『軍事協力依頼』か……………」
「やっぱり。思った通りよ」

 テーブルの上の紙の横に妙に高そうな羽ペンとインクを置き、ミランはため息をつく。

「こんな手間のかかることをわざわざしなくても、別に相手国の奴だと分かったら倒してくれるだろうけどさ……いかんせん法律がうるさくて……一般人は戦争に巻き込んだらいけないんだ」

 キーンが部屋に入ってきて、良い香りの漂う紅茶を差し出した。

「法律にさえ舐められるとは、王様って肩書きも落ちぶれたもんね」

 メグはサインを書きながら嘲笑した。

「全くさ!戦争の経費でお金は消えるし、最低限、この街は賑やかにしようと思えばお金は消えるし、領土が減って食品は大体輸入で、そのせいでまたお金は消えるし、だからって衣装は着飾らないと国民が不安になるから変えられないし、そして増税しても結局赤字は赤字だし……………………」

 悲痛な嘆きは室内にこだまする。みんな、この愚痴から精神的にもやつれ始めているとは簡単に分かったようだ。

「そんなんで大丈夫なんですか?革命とか起こされませんか?」
「革命………二五〇年前のオクタン革命が懐かしい…………」
「あぁ、あの失敗に終わったっていう………」

 ミランは宙を眺め、哀愁に耽る。

『ミランさんはどうやら、この国が出来てから五〇〇年間近く、ずっと国王の地位を守っているらしいです。種族上、普通のポケモンよりも長生きらしく』
(へぇ〜………)

 個人的にはオクタン革命がものすごく気になって仕方がない。
 とはいえ、こんなにもクレセントに追い込まれているのだ。なら…………。

「辛いなら、ここは捨てた方が良いんじゃないのか?」

 フィレンが僕の言いたいことを代弁してくれあ。無理に防衛を続けるくらいなら、海上交通を利用して新天地を探すのも手だ。

「もちろん、考えてるよ。大型船の開発には援助をかけてるし、親戚に住みやすいジャングルを紹介してくれるっていうのもいる」
「じゃあ、早いうちに…………」
「でもね………………………………………」

 ミランは窓の外を眺めた。正午を過ぎた頃合いの日光が地面にまっすぐに差し込み、草が、花が、木が、風に揺られて光っている。

「どうしても、この地を手放したくはないんだ」

 五〇〇年以上開き続けた目には、何が映り、何が生まれ、何が消えたのだろう。
 検討もつかないがただの日常ではない気がした。


〜〜


 これで僕等はお国の公式の(いぬ)となった。他にも狗となったギルドはあるらしく、有名どころばかりが集まっているとのことだ。そして、うちの狗の代表はというと、

「王様から認められたよー!みんな集まったらお祝いだー!」

 ポジティブシンキングを通過して、パーティシンキングに至ったらしい。お陰で僕、フィレン、メグ、カロト、ボーバンは五匹で食料調達。他の探検隊のメンバーは遠征や調査依頼、五月病などの理由により全員出払っているか動かない。そのため、ノンとソアは留守番。人見知りとバカを残すのはやばいと思ったが、ノンが自ら一匹か二匹で大丈夫です、といったため可決された。ボーバンが最後まで反論していたが、メグに睨まれて諦めたらしい。やはり、どこか怪しくて、気になってしょうがない。


〜〜


 少しだけ、私の中で気になることがあった。他のみんなが出かけてくれて本当に助かった。これで調べごとができる。ソアさんをどうにか言いくるめれば……………。

「…………んぐっ……むにゃ…………」

 テーブルに突っ伏し、よだれを垂らしている。杞憂だったらしい。私は地下一階に降り、ボーバンの部屋に入った。きちんと整頓された部屋の机の前に立ち、引き出しの中身を確認する。

「………………あった……………」

 よく、ボーバンがつけているのを見ていたため、気になっていた指輪。青色の不思議な色。、間違いない。

「お兄ちゃんのだ………………」

 どうして持っているのかは分からない。信じたい。でも、裏に何かあるとしか思えない。

 インターホンが鳴り、指輪を落としかけた。ボーバンだろうか。さっきまで私が残るのに散々反論していたし、こっそり戻って様子を確認しに来たというのなら筋が通るだろうか。
 私は指輪を元の位置に戻し、部屋を出て一階の出口の前に立った。なるべく怪しんでいることが悟られないように、自然にいこう。息を深く吸って、吐いた。

「早いですね、どうか………しまし…………」

 笑顔を保つつもりが、一瞬で崩してしまった。

「ど………どなた…………ですか…………?」

■筆者メッセージ
どうも。
これから、この小説の見せ場です。かっこよく描きたい…………。
もはやそれに尽きます。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
フィーゴン ( 2016/05/14(土) 00:19 )