疾風戦記

















小説トップ
間章 -3-
三十五.五話 月下の交信
 あれから少したった。厳密には三日程度だと天使さんは言っていたが、どうもそんな気がしない。
 メグが経営…………というか、中心になって営業している小規模フードコーとは味が評判でポケモンの出入りが激しい。どうしてここまで美味しい料理が作れるのかと、常連客なんかは特に聞いてきているのだが、「何てことないことよ、こんなの」って、毎日はぐらかされているわけだ。バトルスタジアムも大盛況で、医務室の利用回数も増えたことで、その分お金に関するアクシデントが予想された。現に一昨日にどこぞのピカチュウがしでかしたし。そのため、昨日メグとカロトが金銭的な方面の仕事を受けてくれるポケモンを募集した。すると、まさかのあのキリマルが担当になった。経営学には精通しており、常にホタチ型の電卓を携帯しているらしい。
 ざっとこんなもんだ。仕事の分担もうまくいっているが、まだ安定していない。そのせいで、僕らは有無を言わさせずに一〇時間、粉骨砕身の勢いで肉体的労働を強いられている。どこのブラックだよ。唯一、これで助かっているといえば、寝付きがとても良くなったことだろう。夜の十一時には確実に睡魔が襲ってきてくれる。そのおかげで朝は早起きできて清々しい。
さぁ、今日も終わった。ぐっすりと…………………………………。






(違う…………!)

いや、こんなはずはなかった。みんな忙しいのは分かる。だけど何か違う。これじゃない。頭を抱えて冷静に思考を巡らしても、やっぱり行き着く結論は同じものでしかない。ベッドから降りて窓の外を見る。鏡で反射されてできた虚像の月でも、青く輝きながら周りの星を引き連れている。
 眺めていると、やはり窓枠に区切られた範囲では物足りなくなる。部屋を出て一階に上がり、欠伸混じりにテントの出口に向かう。

「………あぁ…………大丈夫だ…………」

 唐突にポケモンの声がして、眠りかけていた意識が覚醒した。ボーバンだろう。しかし、誰かと話をしているようだ。人脈があるとは思えなかったが…………。

「………で、そっちは大丈夫か………そうか。じゃあ、これからも注意する。しばらくは大丈夫だろうし、あいつらもここは目をつけないだろ…………」

 片側の音声だけ耳に入らない。つまり…………電話?いや、ここじゃそんなものはまだないはずだし……………。待てよ………工業大国っていうクレセントなら…………!
 話し声がなくなり、ザッザッと土を踏む音が近付く。慌てて僕は階段を下り、自分の部屋で目を閉じた。夢だといいのに。

■筆者メッセージ
どうも。
早速書き溜めがつき始めている…………。やっぱ、もう少し作るべきだったか…………。
なんとしてでもペースを上げますんで!
ここまで読んでいただきありがとうございました。
フィーゴン ( 2016/04/16(土) 19:47 )