三十三話 砂嵐の強襲
===前回のあらすじ===
激闘の末、ティルはメグに勝利した。観客がその戦いを賛美し、讃えていたその時、地上からの轟音がすべての音をかき消した。
「なんだ………!?」
天井から砂が落ちる。辺りは一転、現在の状況の模索を始めた。
「大変だ!!」
カロトが慌てた様子で階段を降りてくる。慌てすぎてか足がもつれてそのまま転げ落ちてしまうくらいだ。ムクっと立ち上がると、大声で叫んだ。
「盗賊団だ!それも一つじゃない!」
「何だと!?」
大勢で集中攻撃をしてきたというのだ。理由はともかく状況の深刻さがよく分かった。
「とりあえず、サン、フィレン、来て!」
「えぇ!?何でピンポイントに!?」
「おぉ!腕がなるな!」
フィレンの頭の中はまだ戦闘民族らしい。群集を掻き分けてこちらに来る。
「メグはとりあえずこの場を抑えといて!僕らは二階に行くよ!」
メグが生半可な返事を返した。説明終了と共にフィレンは『神速』で階段をかけ上がった。僕らもそれに続いていく。カロトは足が遅いので、僕の背中に乗せて。
〜〜
「おい!聞こえねーのか!?あぁ!?」
二階、展望室の窓のそばに屈み、外の様子をうかがう。外は…………え!?何これ!?
『ポケモンで地面が見えませんね………』
地面、岩、鋼タイプのポケモンが勢揃い…………。レベルもばらつきがあるが平均で50はあると推測できる。
「お前らの部下が俺の舎弟をぶっ倒してムショ送りにしたことはわかってんだぞ!早く出てこい!でなきゃ基地ごとぶっ飛ばすぞ!」
なるほど、要は仇討ちか。見たところ砂嵐に強いポケモンを集めていると見れる。ということは一体はガチゴラスで決まりだ。だが、他は身に覚えが全くない。
「あいつらの要求は、フライゴンとルカリオ、つまりサンとフィレンを処刑させろ………ってことらしいんだ。」
「フィレンも?また何で………あ…………。」
あのラムパルドじゃねーか!!
これはどう考えても僕とフィレンの個人的な責任だ。それでギルドを潰させるなんて出来ない。だけど、外を見る限り敵さんの数は五〇〇匹を明らかに越えている。トップと思われるあのバンギラスはLv.75という化け物だ。
「俺たちは砂嵐悪党協定っつーのを結んで、メンバーがムショ送りにされたらサツだろうと何だろうと他のメンバー全員の盗賊団で消し炭にしてんだよ!」
すごい剣幕だ。その間も攻撃は絶えず繰り返され、震動が二階にも伝わる。
「だが新参ギルドを潰して探検隊協会を敵に回したら、俺らとしては不都合なんだよ!だからそっちのバカなルカリオと生意気なメスフライゴンを連れてこい!妙な真似はするんじゃねーぞ!」
時間がないことは分かった。バカよばわりされてムカムカしているフィレンを抑え、とりあえずカロトを見る。
「……………もちろん、渡す気は毛頭ない。今、何かないかって考えているんだ。」
カロトは顔を下に向けて唸っている。
「俺も加勢しよう!」
階段を上がってきたのはティルだった。僕らのそばにスタスタ歩いて来て、屈み込む。
「多勢を相手には出来ないが、一対一なら絶対に負けないぜ。うまく牽制をかければ充分戦えるはずだ!」
「よし!じゃあ俺は裏口があったはずだからそこから敵の注意を惹く。その隙に正面から頼むぞ!」
「僕も正面から行くよ!下にいるやつらからも協力者を募ってくる!」
ティルとフィレンがうなずき、一斉に行動を開始する。
「待った!」
呼び止められて動きを止めた。カロトだ。
「作戦を立てた。………ただ上手く運ぶかは分からないけど…………」
ヘタレスイッチがオンになったらしい。少しだけ目を逸らす仕草が、僕らまで心配にさせる。特に、カロトのことをよく知らないティルは。
「オーケー、参謀。言ってくれ」
フィレンの言葉に勇気付けられてか、前をちゃんと向いて話し始めた。
「昔、本で読んだことがあるんだ。」
真剣な目付きは、少しだけ頼もしさを感じさせてくれた。
「幻の…………黄金の国で起こったっていう………五〇匹足らずのポケモンが、七〇〇匹近くのポケモンに圧勝した話なんだ。」