疾風戦記

















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三章 -偶然は道端に-
二十七話 水神様の逆鱗に触れて
===前回のあらすじ===

ソアが掘り当てた遺跡からは、栄えたあとということを沸々と感じさせられた。そして僕は単独ながらも、遺跡の更に奥を目指す。


通路の奥はライトの光が届かずよく見えない。壁面の規則正しい模様が神秘的な雰囲気を醸し出している。足元に広がる水は、進むごとにどんどん冷たくなり少しずつ水かさも増えている気がする。
この先に何かあるだろうということは容易に想像できた。ゲームでいうボスというやつだ。
ラムパルドにはボコボコにされ、ガチゴラスは逆に簡単に倒したが、次はどうなるのだろう。正直戦いたくはないが、自分の寝床が懸かっているともいえなくもない現状において、退くという選択肢はまずない。
また広いところに出た。分かれ道を適当に歩いて来たが、どうやら正解だったらしい。四本の柱が直立している中央には、コケの生えた祭壇がある。観光目的程度なら引き返すところだが、あくまで探索が目的なので祭壇に近づく。
柱にもやはり幾何学模様が描かれており、何を意味するかもやはり分からない。
次は祭壇を調べる。

パラパラパラ………。

「…………ん?」

砂が落ちたような音に立ち止まる。だが、周りに変化は見られない。
と、思ったその時………。

バラバラバラバラッ!

足元が急に崩れた。

「うわっ!」

突然のことに反応が遅れる。瓦礫と共に落下する。

「うわぁぁぁぁぁ!」

飛ぼうとすると岩がぶつかる。なす術もなくまっ逆さまに落ちた。しばらくすると、急に体が何かにぶつかった。

「痛っ!」

地面のようだ。とりあえず致命傷には至らない。だが、追い討ちをかけるように瓦礫の雨が降り注ぐ。

「ぐあぁっ!」

立ち上がろうとした僕はまたうつ伏せになる。体のあちこちに岩が当たる。人間なら確実に死んでいるが、前にもあったように岩の攻撃は僕には効果が薄い。
だが、立ち上がろうとしたとき、激痛を感じて翼を押さえる。この分では飛べそうにない。助けを待つしかないだろうと思ったが…………。

「……ラッキー……なのかな………?」

道は続いていた。まっすぐ前に。


〜〜


通路がいい具合に瓦礫に塞がれたらしい。一方通行の状態になってしまっている。ライトも落下の衝撃で壊れてしまったが、何故か通路には火が点いている蝋燭があり、明るい。水浸しなのは相変わらずだが。
痛みを堪えながら先を行く。やっぱり広い部屋に出た。炎に照らされた部屋の中央にはポケモンがいる。

「何者だ。」

静かにこちらを見据えている。青色の、タツノオトシゴのような外見。キングドラだ。

「僕はサン。えーと………探検家………だね。」
「ほう………メスがか……。勇ましいことだ。」

堂々たる態度だ。口調も堅い。

「望みは宝か?」
「まぁ……そうかな……。」
「ほう………。私の先祖は、代々ここで財宝を守り続けている。……この意味は分かるな?」

予想はしていたことだった。退くつもりはない。

「バトルしろってことだね。」


〜〜


まずは相手の確認だ。目に力を入れる。Lvは67と高め。攻撃も特殊攻撃も同じくらいだから、技は分かりにくい。物理攻撃は逆鱗、特殊攻撃ならハイドロポンプ、竜の波動もあるか。

「メスとて手加減はせぬぞ!『ハイドロポンプ』!」

キングドラが口から激流を吐きだす。回避し、『ドラゴンクロー』を構える。連続して『ハイドロポンプ』が飛んでくる。僕の体の右や左を掠め、後ろの壁を抉る。

(よし………ここだ!)

正面が空いた瞬間、潜り込むように直進する。『ハイドロポンプ』の乱れ打ちでこちらへの反応は遅れるはず………。『ドラゴンクロー』を仕掛ける。

「………見えていないと?」

キングドラがこちらを睨み付けた。その形相は蛇を思わせる。

(まずい………!)

後退するが間に合わない。

「『逆鱗』!」

覇気を纏ったキングドラが攻撃を仕掛ける。直撃は免れない。

「ぐっ!」

厳しい………。吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。ダメージも大きい。ゲームではもう『瀕死』の状態だろう。
追撃が来る。すんでのところでかわし、『ドラゴンクロー』を叩きつける。効いたらしい。キングドラも間隔を取る。

「……では……本気を出さしてもらう…!」

キングドラが天井を向く。

「『あまごい』!」

キングドラが技をいい放つ。天井から水滴が数粒降ってきたかと思うと、その数はどんどん増えた。地下なのに大豪雨の勢い。蝋燭の火は次々に消えく、暗くなりお互いが見えにくくなった室内で水かさはどんどん増し、僕の動きは鈍くなる。だが…………。

「『冷凍ビーム』!」

キングドラの移動速度は段違いに速くなる。キングドラの特性は『すいすい』。雨が降っている、つまり、上から水が降っている状態で素早さが倍になる。ゲームの中ではそこまで驚異ではなかったが、回避、攻撃等のすべてに素早さが関わるリアルのこの世界ではその性能の高さは分かりきっている。
冷凍ビームが顔の横を通りすぎる。地面タイプとドラゴンタイプを併せ持つ僕には、氷タイプの攻撃を受けることは致命的だ。絶対受けてはならない。
痛む体に鞭打ち、技を使う。今のキングドラに今の状況で『ドラゴンクロー』は当たらない。なら………。
息を大きく吸う。そして、



「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」




全身の力を振り絞って叫ぶ。『ばくおんぱ』だ。これなら、音の波なので確実に当たる。自分に技が返ってくるなんて気にしている場合じゃない。自暴自棄でもどうだっていい。
音で空気がうねり、衝撃がキングドラを襲う。だが、たいして効いている風ではない。

「『冷凍ビーム』!」

すぐに体勢を立て直して技を繰り出してくる。
回避を試みる。だが、冷凍ビームは僕には飛んで来ず、床へと向かう。

(………しまった!)

床にたまっていた水が僕の足を巻き込んで一気に凍っていく。
完全に捕らえれた。動けない。

「これで終わりだ!『ハイドロポンプ』!」

激しい水の流れが急に僕の視界に入った。












「何やってんのよ。」

目の前に飛び出た茶色のポケモンがそう吐き捨てた。

「体がメスだからって甘えてんじゃないわよ。」

■筆者メッセージ
こんにちは。今週は気分で土曜投稿です。日に日に自分の無い執筆能力がさらに無くなっている気がします。比喩が………比喩がうまく使えん………。まだセンスの世界に突入してはいないはずですので、頑張りたいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
フィーゴン ( 2016/02/27(土) 20:31 )