疾風戦記















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三章 -偶然は道端に-
二十五話 だって小物だもの。
===前回までのあらすじ===

探検隊を結成してから初の依頼に向かう僕達。盗賊団の仕掛けた罠をゲームの世界ならばあってはならない方法で突破した。だけど、そのせいでフィレンが倒れてしまった………。

〜〜


「『かわらわり』ー!」

ソアの目の前で、転がってきた岩が真っ二つに割れた。障害物が消えたところで先を目指して再び歩く。僕だけはフィレンを担いでいるせいか足は少し遅い。でも、前から来る敵ポケモンや例の岩は大体ソアが片付けてくれているので問題ない。カロトが声を掛けてくれたが、こんなところで手間取っている場合でもないし、大丈夫だと返した。
暗かった洞穴の先に光が見え始めた。

「あそこだね。」
「うん。」

進むごとに光は大きくなり、視界も明るくなっていく。その光の中にはポケモンの影が揺らめいているのが見える。

「じゃ、行ってくるねー!」
「あ、待って!多分先には………。」

カロトの制止も聞かずにソアが光に飛び込んでいく。その瞬間………。

「罠が仕掛けられているだろうから…………。」

ソアの頭上から網が降ってくる。

「うわっ!」

ソアの体をまるごと包み込み、動きを制限する。そのまま引きずられて奥へと連れていかれる。
急いで駆けつける。最奥部は狭いながらも部屋になっており、焚き火の火の光で煌々と照らされた室内には、盗品と思わしき物がずらずらと並べられていた。奥の壁際では、例の張り紙に描かれていたガチゴラスが我が物顔で金属製の椅子に座っていた。

「なっ、おい!見張り!来たのは二匹だけじゃなかったのか!」
「す、すみません……。少々手違いがあったようで………。」

ガチゴラスが手下と考えられるココドラを怒鳴り付ける。部屋の右側でチゴラスが網に包まれたソアを見張っている。

「で、テメーら何もんだ!」
「はぁーい!僕らはセイバーズだよー!」

ソアが紹介をしてくれた。僕らとしては、名乗るのは恥ずかしかったため嬉しい。

「セイバーズだぁ?んな探検隊知らねーな!どーせ駆け出しのひよっこだろ。そんな探検隊に俺様が負けるわけねーがな!」

イラッと来るがあながち間違いではない。主力であるソアは動けず網目で遊び、フィレンは微笑みながら寝息を立てていて、しばらく起きそうにない。

『さっ!今こそあなたの出番ですよ!』
(はぁ!?)

バトル初心者、むしろここまで戦闘は大体フィレン達に任せっきりだったため、経験が皆無だ。戦力どころではない。

『ここで“僕がいく!”なんて決め顔で言ったらノンさんの気を惹けるかもしれませんよ!』
(ノンの気を惹くつもりはないし、そもそも無理だよ!)

ガチゴラスが挑発に近い言葉を並べているが、それらをガン無視し、天使さんと話し合う。

(そうだ!二対一でボッコボコにすれば………。)
『この狭さだと連携も何もないですよ。』
(じゃ、じゃぁ………カロトが行けば…………。)
『まともな一対一じゃ勝ち目ないですよ。まともじゃない方を考えているようですが、思い付いていないみたいですし。』

全否定された。でも、どうしても戦いたくない。痛くなければいいのに………。

(そうだ!ノンは?)

男として考えてはいけないことを考えてしまった。だが、僕よりも何年も長くこの世界で生きている分、戦う力はあるはずだ。ノンのお兄さんがそこそこの腕だったという話も聞いている。なら、ノンが戦った方がいい。

『まぁ、彼女なら快く引き受けてくれるでしょうし、むしろ、自分から名乗り出てくれるかもしれませんね。でも………。』
(でも……って何?)

やはりメスであることを言いたいのだろうか。なら、いくらでも男女差別反対と抗議してやる。どうしても戦いたくないのだ。

『後が怖いですよ〜。』
「あ……後?」
『メグさんがその事を知ったら………。』

「僕が行くよ。」

天使さんの言葉が終わる前に、動こうとしていたノンを制止する。
そういえば、うちの探検隊に男女平等なんてなかった。


〜〜


フィレンを入り口で寝かせ、ガチゴラスに近付く。

「あぁ?テメーが来んのか?」
「うん。」

ガチゴラスが椅子から立ち上がる。

「メスなんかに負ける訳ねぇだろうが。舐めてんのか!あぁ!?」

話せば話すほどフラグを立てていくやつだ。だが、とりあえずステータスを覗き見する。

(……。)

若干の希望が生まれた。Lvは42。僕が45だったので僕の方が有利だ。ステータスでも、攻撃力の高さが目立つだけで、他はガタガタすぎて使い物にならないくらいだ。

「な、なんだ!その顔は!何か文句でもあんのか!」

どうやら呆れが顔にまで出たらしい。これはいかんと思って、気を引き閉め直す。

「ザコだって思ってんなら強ぇって証明してやるよ!『諸刃の頭突き』!」

ガチゴラスが頭をこちらに向けて全力で突進してくる。『諸刃の頭突き』は、岩タイプの最強クラスの技だ。こいつがこのLvで習得できたかは知らない。が、当たればこいつの攻撃力だ。ただでは済まない。
まぁ、普通なら。
ガチゴラスの突進をモロに受け、少しだけ後方に飛ばされる。だが、ダメージ量は少ない。

「なっ!」

ガチゴラスは驚いているようだ。僕、フライゴンは、地面タイプのポケモンのため、岩タイプの技は効果が薄い。お陰でほとんど痛くない。衝突で舞い上がり、顔についた砂埃を払う。

「今度はこっちの番だ。『ドラゴンクロー』!」

反動で後退したガチゴラスに風のごとく接近し、鋭く尖った爪でカマイタチのように切り裂く。

「ぐぁぁっ!」

情けない声を上げて倒れる。後退し、次の技を警戒する。次は多分『諸刃の頭突き』はやめてくる。なら…………。

(………あれ?)

倒れてから動かない。もしかして………。

『おめでとうございます!初勝利ですね!』

天使さんから祝福の言葉を受ける。状況に困惑する。手下たちは「親分がやられたー!」と叫んで逃げていく。ソアの網をノンが取り払い、カロトが縄でガチゴラスを縛り上げ、フィレンがあくびをしながら起きても、僕は現状を理解できなかった。


〜〜


警察にガチゴラスが引き渡され、報酬として四〇万ポケが入った。そのお金で午後にソアとメグが食料や干し草なんかをを買ってきた。当分はこれで困らないという。だが、基地はまだ建てれない。ノンが家の改造を認めてくれたが、それでも軽く一〇〇万ポケは必要なのだ。
夜、ついに喫茶店から追い出され、僕とフィレンは広場で野宿をしていた。幸い今日は干し草があるので暖かい。フィレンはもう寝たらしい。僕は寝転んで空を見た。真っ黒な闇の中で星が赤に黄色に輝いている。
なぜこの世界に来たのだろう。天使さんは相変わらず話してくれないし、手がかりも何もない。かつてはこの空の黒い側だった僕だが、この世界に来て光輝く側になれとでもいうのだろうか。でも、やっぱり僕はこの世界でも黒いままだろう。たとえ光れたとしても、微弱過ぎて誰も気づいてくれやしない。
…………こんなことを考えるのはやめよう。僕は起き上がり、気分転換に散歩することにした。適当に歩いていると、通りの先に街の入り口のアーチが見えた。偶然にもそこにはソアがいた。手に何か細長いものを持ち、街から出ようとしている。あっちは確か『何もない平原』、今日行ってきたところだ。何しに行くのだろう。僕は興味本位で着いていくことにした。

ソアはしばらく歩いていたが、あるところで急に立ち止まった。足で地面を踏み、何やら場所を探している。

「………何してるの?」
「あ、サンじゃん!」

ソアは驚いた様子で僕を見た。

「実はね!気になることがあって………。あ!ここだ!」

ソアが持っていたのはシャベルだった。ソアは場所を決めるとそこを真下に掘り進めた。すごいスピードだ。それにしても星の光しかない暗闇の中、どうやって場所を特定したのだろう。どこの地面も同じ固さで、これと言って変わったところはない。
三〇分くらいたったが、何も変化はない。穴は一〇メートルくらいにもなっていた。穴の外からソアに話しかける。

「ねぇ、何があるの?」
「分かんない!でも……。」

カキン!

突然、シャベルが何かに当たった。また石だろう。五メートルを切ったところ辺りから石の欠片が増えてきている。

「やった〜!」

だが、ソアは喜んでいる。下は暗くてよく見えない。降りてみる。とびきり大きい石の欠片………にしては平べったすぎる。だが、材質は完全に石だ。ソアが土を取り除くと、どんどん全貌が明らかになっていく。平べったい石は何個もあり、石畳のようになっている。途中でそれが途切れている…………と思ったら、きれいに角になっており、段差をつくっている。それがずっと続いている。その先を掘ると空洞になっており、暗闇に包まれている。土が入り込んでいないのか、進めそうな気がする。

「これって…………。」
「そう!」

ソアはシャベルを高々とあげた。

「いせきの入り口だよ!」

■筆者メッセージ
こんにちは。
今回、前半は完全にネタ回です。設定上、避けられない運命にあったんです。仕方なかったんです。あと、後半部分作っていたら月曜になってました。スミマセン。入試のせいでどんどん雑になっている気がしてならないです。
あと、投稿後、100KB遂に越えるかと思います。やっとか………長かった………。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
フィーゴン ( 2016/02/15(月) 00:06 )