疾風戦記















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二章 -バカに薬は効かない-
二十二話 救済者に私はなりたい
メグがソアにギルドと探検隊の申請をお城にさせに行かせた。というか、“王政”ってこと自体初耳なのだが。天使さんの仕事ぶりが伺える。その間、僕らは暇潰しをすることになった。

「……って、メグが。」
「へぇ〜。ノンも大変だったんだね。」

ベンチに座ってカロトから、これまでの経緯を粗方話してもらった。“戦時中”ってことも初耳だった。

『いや〜、伝えるのをすっかり忘れてました〜。』
(はぁ……。)

ただでさえこの世界に関する情報が少ないのだ。しっかりしてもらわないと……。

「それで、そっちは?」
「あぁ。街をうろついていたら強盗事件がおこって、僕が殺されかけたところをフィレンが助けてくれたんだ。」
「この世界に飛ばされてたった数時間で強盗に殺されかけるって……。」

分かっている。生まれたときからツキなんて初めから信じていない。

「フィレンのことは?」
「いや、何も。メス好きってことと世界中を旅していたってことぐらいしか。」

ペンダントとポーチだけという軽装備で本当に旅ができたのかは分からないが。

「まぁ、これでお互い情報交換は終わったかな。」
「うん。こっちは他には何もないよ。で、問題が………。」

僕とカロトが一方向を見つめる。

「何だよ!ちょっとくらい話したっていいだろ!」
「駄目。」

想像はしていた展開だ。メグがノン防衛戦を行っている。

「どーせまたセクハラするんでしょ?訴えるわよ。」
「スキンシップだ!悪く言うな!」

手にキスの時点で既にスキンシップの域を越えている気がする。が、あの渦中に飛び込めば木端微塵にされかねない。カロトも完全に諦めているみたいだし、仕方なく僕も見守る。

「大丈夫ですよ、メグさん。私なら何とも思いません。」
「ノンちゃんがいいって言っても私が許さないわ。この変態なんかと……。」
「誰が変態だ!どこが変態だ!」

口論は激しさを増す。なんだか展開が読めた気がする。

『メグさんとフィレンさんのガチ対決ですね!ワクワクです!』
(ワクワクするな!)

本当になりそうだから怖い。あのパンチをソア以外が受けたらどうなるのだろう。死にはしないと思うが………。

「メグー!」

遠くからソアが叫びながら近づいてくる。何かを担いでいるのが見えた。風呂敷だろうか。

「“しんせー”してきたよー!探検隊の名前も聞かれたから僕が決めたよー!」
「はっ!あ〜、しまった!」

メグが頭を抱える。まあ、性格もつかめているので自体の深刻さは伝わってくる。

「何で名前だ?」
「えーっとね、『セイバーズ』!人間さんの言葉で“セイバー”っていうのは誰かを助けるって意味があるらしいんだ!だからセイバーズ!ピカチュウギルドのセイバーズだよ!かっこいいでしょ!?」

ソアが言っている“セイバー”は、英語の『saver』、もしくは『savior』のことだろう。どちらも救済者とか救世主とか、そんな意味があった気がする。

「おお!いいな。俺らの仕事は救助じゃなくて探検だがな。」
気に入ったのか満足げに笑うフィレンとは対照的に、メグは「また変な名前に……。」とボヤいている。

「それで………これ!」

ソアは風呂敷の中からたくさんの布を取り出した。

「“しんせー”のときに、ギルドの印になるものを頼まれたんだ!だからこれをギルドの印にするんだ!」

布はスカーフだった。赤や緑、青など様々な色がある。

「……何でこんなに?」
「バーゲンのときにいっぱい買ったんだ!」

金銭事情でバッチとかは買えないのだろう。でも、いいアイデアだと思う。

「よし。じゃあ俺は紺色だ。」
「僕は黄色!メグはピンク色で、ノンは赤ね!」
「何でよ。別にどれでもいいけど。」
「まぁ、私もどれでも……。」

各々適当に色を選んだ。カロトは黄緑、僕は橙になった。


〜〜


「それでー?なんの話なの?」

話題を変え、ソアがメグに尋ねる。メグは切り替えて前を向くと、何かひらめいたかのように口を開いた。

「ちょうどよかったわ。あんた、こいつと戦って。」

全員が反応した。ソアが戦う?どういうことだろう。明らかにメグが戦えば確実に勝てるのに。ソアもソアで死なないっていうアドバンテージはあるが、長期戦になるだけで何の得もない。

「よくわかんないけどオッケー!」

ソアも相変わらずの承諾の早さだ。

「ねぇ、変態。こいつに勝てればノンとのスキンシップを許すわ。でも負けたら、この子のことは完全に諦めなさい。一応、バトルの間だけは瀕死になるって前にこいつ言ってたし大丈夫よ。」
「だから私は何ともないと………。」
「よし、いいだろう!受けてたつぜ!」

フィレンも乗り気だ。もちろん天使さんも。


〜〜


「どっちかが降参、もしくは倒れた時点で終了。いいね?」
「オーケーだ。」
「だいじょぶだよー!」

勝負は近くの闘技場で行われることになった。テントが張られているだけだったものの、中はそこそこ広いし、地面もしっかりしている。入場料はソアが払った。どうやらそれで財布の中身が尽きたらしい。バトルの審判はカロト。もう夜に差し掛かっているが、数匹の観戦者もいる。そういえば、ソアのステータスを覗いていなかった。僕はソアを凝視する。

「ん!?」

HP無限大とかを予想していたが違った。有限ではある。ステータスがレベルの割りに高いということでもなかった。しかし、僕の瞳に映ったものはそれでも気になるものだった。

「それじゃぁ、バトル開始!」
カロトの声が場内に響いた。








と、同時にソアの顔から感情が消えた。

■筆者メッセージ
こんにちは。
探検隊の名前ですが、もっといい名前を思い付きたかったです。何も出てこなかったもので……。
現在の課題は口調が似ていて区別がつけにくいことです。特にサンとカロト辺りが……。
この戦闘は入れる予定はなかったのですが、ふと思い付いたので入れました。でも多分ちゃんとあと二話ぐらいで二章終わると思います。終わらせます。いい加減早く冒険させたいですので。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
フィーゴン ( 2016/01/24(日) 17:29 )