二十一話 個性派だらけの探検隊
「って訳なんだ。」
フィレンが話終えた後、まぁ予想通りだったが、全員口を開けて呆然としている。恥ずかしさから、僕は顔を手で覆う。
「……何?厨二病?ヤバいやつなの?」
最初に口を開いたのはメグ。
「いや、それがマジの奴らしいんだ。なっ!」
「いや、『なっ!』って言われても……。」
そんなんじゃ信じてもらえない。人間の世界で『僕はドラゴ○クエストの勇者でした。』と自己紹介しているようなものなのだろう。
「カロト、信じられる?」
「う〜ん…そういう話は……聞いたことないなぁ……。」
完全に信じられない訳ではないという様子だ。
「ノンちゃんは?」
「私も……。」
結局、信じてくれるポケモンはいない。
(このままじゃちょっと痛い僕っ娘フライゴンでキャラが定着してしまう………。)
『別にいいんじゃないですか?どうせもとの世界でも厨二病だったんでしょ?』
(違ぇーよ!)
第二の人生が序盤からぶっ壊れようとしている。
「あー、やっぱり信じてないな。じゃぁ、サン!あれだ!」
フィレンが僕の脇腹を小突く。
「え?あれって?」
「決まってんじゃねーか、あれだよ。」
「あ…あぁ。あれだね。分かった。」
使用用途がないから忘れていた。
僕は目を閉じて深呼吸をした。再び目を開けたとき、全神経を目に集中させた。
〜〜
「カロト、Lv.37、HP78/78 攻撃42 防御39 特殊攻撃32 特殊防御34 素早さ24。」
全員がカロトを見つめる。カロトは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
「ビ……ビンゴ……。」
小さく呟いた。
「ノン、Lv.52 HP193/193 攻撃92 防御114 特殊攻撃135 特殊防御170 素早さ168。」
「せ……正解です……。」
ノンも驚きを隠せずにいる。
「ねぇ、何て手品?」
「だから、こいつの能力だって言ってんだろ?」
なぜフィレンがドヤ顔をしているかはいいとして、次はメグだ。
「メグ、LV.50 HP………へぇ!?」
「ん、どうした?」
さっきまでこっちが驚かしていたのに、今度はこっちがビックリさせられた。
メグ Lv.50 HP251/251 攻撃196 防御181 特殊攻撃166 特殊防御248 素早さ176。イーブイ………どころか、Lv.50のステータスじゃない。明らかに異常だ。一体どうして……。
「……何よ、じっと見つめんじゃないわよ。気持ち悪い。」
メグの声で我に返った。
「ま、そういうことだ。いろいろこいつには謎が多いからな。聞いたら技の使い方も知らなかったらしい。」
「なるほど……。」
ノンとカロトは顔を見合わせる。これはもう信じるしかないと言う具合だ。
「ま、自己紹介も済んだことだし、俺はここのギルドに入るぜ!ついでにお前らの探検隊にもな!」
「はぁ!?」
フィレンの言葉に耳を疑う。まず給料はしばらく安定しないはずだし、何よりこんなイーブイがいる場所になんて入りたくない。
「絶対駄目よ。あんたみたいなのが入ったらロクなことにならないわ。それにノンちゃんにも迷惑だし……。」
メグが文句を並べ出す。よくもそこまで出るものだと思うが、反対してくれるのはこちらとしてもありがたい。
『何を嫌がっているんですか〜。たかがドSですよ。問題ありませんをよ〜。』
僕の気持ちを正確に読み取れるはずの天使さんは僕の気持ちを完全に否定した意見を出す。少しだけ笑っているところといい、もう悪魔に転職した方がいいのではないだろうか。
「ふぁ〜…。おっはよー!」
大きな挨拶に驚いた。さっきメグに腹パンで一発KOを食らっていたピカチュウことソアがようやく起き上がった。あのステータスだし、メグは手加減していたのだろうか。そうでないと死んでしまい兼ねないが……。
「おはよう、ソア。さぁ、おやすみなさい。」
「え!?何で!?」
メグが拳を構える。この苛烈さといい本当は鬼じゃないのだろうか。
「いいから寝て。また話が変な方向にいくから。いつも通り本気で寝かせてあげる。」
「だから待ってってば!」
本気……ということはこの化け物の本気の腹パンをもろに受けているのか!?ピカチュウなのに!?また余分に謎が増えていく。
「で、何のはなし?」
ソアが首をかしげる。
「だから勝手に話を………。」
「おう!俺とサンはお前んとこの探検隊に入るんだ。いいか?」
「うん、いいよー!」
二つ返事で簡単に契約が成立した。
メグはため息をつきながら、「だからこいつは嫌いなのよ……。」と呟いた。言っても無駄だと考えたのだろう。
僕も僕でフィレンに反論するのをやめた。天使さんがまたうるさいだろう。
『いや〜。これから楽しくなりそうですね〜。』
(あんただけだろ!)
僕の周りには味方が少なすぎた。