疾風戦記

















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二章 -バカに薬は効かない-
十一話 来訪者
「ねえ、本当にここなの?」

もう三回聞いた。聞くたびにうん、とだけ答えられ、私の不安はさらに膨れ上がる。家に勝手に押し入って、違うポケモンだったらどうしよう。まあ、違うポケモンでなくとも、怒られるのには違わないが。
ソアについてきた結果、トレジャータウンの東の方にある一軒家にたどり着いた。こんなところに家があること自体知らなかった。
とにもかくにも、私は、早々と帰りたい気分だった。家でダラダラしたい。

部屋の中はかなり片付いていて、フローリングに至ってはお客さんでも待ち構えているのではというくらいピカピカだ。うちとはえらい違いだと思う。窓の近くに机が置いてあり、その上には本が放置されている。近くにしおりもある。片付いていないのはここだけで他はかなり素朴で……というか、インテリアと呼べるもの自体ほとんど置かれていない。例の本は、厚さからしてかなりの長編だ。読書が趣味と見てとれないこともないのに、本棚らしきものもない。ベッドの近くのクローゼットと、正面の壁際にある収容用の棚くらいだろうか。奥にキッチンにでも続くのであろう廊下も見えるものの、この一部屋でこの家具の量ははっきりいって異常だと思う。

「あれ〜?いな〜い。」

ソアは額に手をかざして周りを見渡している。

「そんなんしても居ないもんは居ないでしょ。ちゃんと探しなさい。」

私は窓の近くの本が気になり、そちらへと向かう。

「そっかー!じゃあ手始めにあのクローゼットの中を見よう!」
「んな所に居るわけないでしょ。廊下の奥とか見てきなさいよ。」

私は本の表紙をめくった。小説らしい。かなり読み込まれているらしく、所々ボロボロになっている。

私がページをめくっていると、窓のそばの壁が『ミストボール』で吹き飛んだ。


〜〜


ほのかな風で目が覚めた。窓でも開いているのだろうか。視界には六年間見てきた天井が映る。私はソファで横になっていた。体には毛布……ではなく、クローゼットにしまってあったマフラーなどの衣類がかけられている。体を起こす。少しだけ頭に痛みが走った。気温からしてまだ昼だ。私はあの後どうなったかよく思い出せなかった。

「あ、起きた起きた。」

突然の声に反応する。例のイーブイが机に突っ伏してダラけている。そばの壁が壊れている。風はあそこから入ってきたんだろう。

「大丈夫?手加減したつもりだったけど、まさか三十分も気絶されるとはね〜。」

軽い口調で私の方を見る。

「え……あ…あの、…その…。」

私は戸惑った。ポケモンとまともに話すなんていつ以来だろう。

「あー、悪いけどさ、あれみたいにしたくないから大人しくしててね。」

イーブイは廊下の方を指差した。廊下の手前あたりで例のピカチュウが倒れていた。私が技を当ててしまったんだろう。あれ?でも、打撃のようなあとが……。

「私はメグ。で、あれはソア。探検隊のメンバー探しでここに来たの。あんた、名前は?」
「……ノンです。」

率直に答えた。嘘をついても仕方ない。

「ふ〜ん、……じゃあ説明してちょうだい。」
「……なぜ、攻撃したかでしょうか?」
「そんなの、急に見知らぬポケモン二匹に勝手に乗り込んでこられたらそうなるでしょ。口調からしてコミュ障っぽいし。」
「それでは…。」
「ほら、逃げたり隠れたり、あと、この家のこととか。明らかにポケモンを避けてるようで、不自然でしょ?どうせ訳ありなんでしょ。」
「……分かりました。」

答えよう。理由を話せば帰ってくれるかもしれない。

「あー、ちょっと待って。」
「はい?」

私が口を開こうとすると、メグさんがそれを止める。

「こいつにも聞かせるから。」

そう言うと、メグさんはいまだに伸びたまま動かないソアさんに近づいて、顔を殴り出した。空気が唸っている。

「ほら、起きなさい。」
「ぐぇぶ!痛いじゃないかー!」

そのおかげか、ソアさんはむくりと立ち上がりメグさんを怒る。
混乱した後、何があったか大体わかった気がした。

■筆者メッセージ
こんにちは。今回は短いですね……。こっから切ろうとすると少し長くなるだけなんです。
決して面倒だとかそういうのは(ry。
ラティアスの名前適当でスミマセン。ちゃんとした理由はあるんです。後々付け足しただけですが。許してください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
フィーゴン ( 2015/11/04(水) 23:14 )