疾風戦記















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二章 -バカに薬は効かない-
八話 普通を求める進化ポケモン
…ダルい。そして暑い。
外の気温は二十五度前後らしいが、私を含むイーブイやその他のふさふさの体毛を持つポケモンに関しては猛暑のようにも感じられる。そのせいで、扇風機がまるで役に立たない。

トレジャータウンの西側に位置する住宅街にて、私、メグは極々一般的な市民の一員としてどこにでもありそうななんの飾り気もない家に住んでいる。厳密には仮住まいで、ここの主人の意向で住ませてもらっている。
今日は休日のため、いつものよくわからないパーツを生産しているよくわからない工場での労働から解放され、外出せずにダラダラと朝からこうしてため息混じりにデスクトップパソコンを眺めている。
しかし、私にとって休日は実質的には“休める日”ではなかった。
なぜなら…、

「たっだいまーー!」

…ほら来た。休めない大体の原因が帰ってきて、私のため息はより大きくなる。赤いほほに黄色い体と尻尾、どこからどう見てもピカチュウの彼の名前はソア。ここの主人だ。
偶然私と年齢が同じくらいだったため、普通のやつなら気が合うかもと思っていたが、

「メグー!見てー!庭にキレーな花が咲いていたよー!」

割りとマジで普通じゃなかった。休日はこれの相手を延々とし続けなくてはならない。かといって、灼熱地獄である外に出る来もない。
しかしながら、仮住まいをしてはや二年。これの対処法については大体押さえていた。
いつも通り、イヤホンをイーブイ特有のふさふさの耳に取り付け、パソコンに接続。横に誰もいないかのように振る舞いながらネットサーフィンを始める。

「ねー、メグー。聞いてるー?ねーってばー。」

ソアは隣でピョンピョン跳ねたり手を振ったりして自分の存在を主張する。
構わず無視を決め込む。

「メグー、ねぇー。」

私の体をさする。何をされても無視するつもりだ。
しばらくして、ソアはふてくされたようにしながらどこかへ行ってしまった。

「…ふぅ〜。」

ソアがいなくなって、私は安堵の息を漏らした。ソアを追い払えたことは実はこれがはじめてで、今まではしつこいソアに耐えきれずにキレていた。
短気な私がよくあんな腹の立つ生物の言動を耐えきったと思う。そう心の中で自分を誉めた。
しかし、今回はかなり早い段階で諦めたと思う。いつもならもう二分くらいは私のイライラを増幅させてくるのだが。
まあ、そんなことはどうだっていい。久々に休日らしい休日が遅れるのだ。存分に楽し………。

「メーーグーー!」

雷に近い轟音が私の耳に響く。鼓膜が破れそうな音に、私は驚いて後ろを向く。ソアがメガホンを持ってつっ立っていた。

「やった〜!振り向いた〜!」

手をあげてピョンピョン跳ねながらソアは喜んでいる。

「だぁー!もう、うるさい!最初っから全部聞こえてるわよ!」
「じゃあ何でこっち向いてくれないのさ〜。」

私は本気で怒った。けど、ソアは気づいていないのか平然としている。

「あんたといると無駄にエネルギー消費すんの!いいからあっち行ってて!」

本気で怒鳴った。イライラはさらに増える。

「も〜、ツンツンしちゃってさ〜。メグがツンデレなのは分かってるんだからさ〜。素直になりなよ〜。」

このKYは笑いながら応える。
プチンっと私のなかで何かが切れる音がした。
体をひねり、その反動を利用して空中で大きく旋回する。その回転によって前に出た尻尾をソアに思いきりぶつける。
ソアは「ぐぇふ!」っと声をあげ、コンマ以下のスピードで壁に激突した。体が若干壁にめり込んでしまっているのが分かる。私はまた、ため息をついた。


〜〜


あの光景を見ればわかる通り、私の身体能力は他のイーブイよりかなりズバ抜けているらしい。普通の相手を殴れば十メートルくらい吹っ飛ぶし、逆に殴られても痒くもない。徒競走は毎年三十メートルくらい放してトップだった。簡単に言えば、電光石火が捨て身タックル級になる。
物心付いたときからこんなんで、特別何かしたわけでもない。
しかし、面倒くさがりな性格ゆえに、こんなものをバトルに生かすとかそういうことは全く考えなかった。毎日をテキトーに過ごせていれば、それでいいと思っている。希望とか夢とか、そんな贅沢なものはなくていいと思っている。
そんな怪力バカの私の攻撃を食らったこいつは、当然無事ではすまないだろう。一応、手加減くらいはやろうと思えばできるが、こいつに対しては日頃の鬱憤を全てぶつけているため、そんなものは存在しない。しかしながら、こいつの体はどうなっているのか、いくらボコボコにしても数分たてばゾンビのように蘇り、何事もなかったかのように私の苛立ちをさらに増幅させるのだ。
多分あと十分くらいだろう。次起きてきたら、また殴って黙らせよう。疲れるのでやりたくなかったが、これが一番手っ取り早い。

■筆者メッセージ
こんにちは。若干遅れましたが二章スタートです。また個性的なのを増やしてしまった……。改めてメグについて見返してみたら、
(こんなやつ最近のアニメにいたきが……)
となりまして。仕方なかったと反省しております。これからも頑張ります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
フィーゴン ( 2015/10/15(木) 23:53 )