第一部 世界征服を目指す物語
第五章 超電磁怪人、参上! Part2

第五章Part2



当夜
 「うーん」

学園に無事辿り着いた僕は授業を受けながら考えていた。
時刻は昼休み、既に生徒たちは動き出していた。

光輝
 「どうしたんだ悩んで? 男らしくないぞ?」

当夜
 「え!? 男らしくない!?」

弁当箱を持ってやってきたのはクラスメートの光輝君だ。
男らしくないという言葉に過敏に反応してしまった。
しかし、同じく弁当箱を持つ常葉さんが反論してくれる。

里奈
 「あら? 男だって悩んでいいんじゃない? 上乃子君、気にし過ぎよ?」

当夜
 「常葉さん……」

やっぱり常葉さんは優しいなぁ。
光輝君も別に優しくない訳じゃないけど、こうやってからかう事が結構あるからなぁ。

光輝
 「はは、参ったね。まぁいい、とりあえず昼飯にしようぜ?」

光輝君はあんまり気にしてないのか、席をくっつけると僕も美陽さん謹製手作り弁当を取り出す。

光輝
 「常葉も一緒に食べようぜ?」

里奈
 「うん、それじゃ少し席借りるね?」

常葉さんはそう言うと、可愛らしいお弁当を取り出して、僕たちは2つ連結させた机をテーブルにして、3人でお昼御飯を食べ始めた。

光輝
 「うまい! うまい! うまい! うまい!」

当夜
 「あはは……、それネタ?」

光輝君はいつものようにお姉さんの用意したお弁当のようだ。
彩り豊かなお弁当だけど、レパートリーが少ないのか、似たような具材をよく見るね。
対して常葉さんは、相変わらず小さなお弁当箱だけど、中身は凄く綺麗に彩られている。
常葉さんの場合、飲食店勤務という事もありお弁当もプロ級だよね。
美陽さんのお弁当は勿論美味しいけど、少し常葉さんの手作りお弁当は憧れちゃうかも。

光輝
 「んぐ、それで! 結局何を悩んでいたんだ?」

里奈
 「良かったら相談してくれてもいいのよ? 答えられるかは相談によるけど」

そう言ってくれる二人は本当に優しいなぁ。
僕も涙ぐんでしまう友情だけど、僕は理由が理由だけに泣かない。

当夜
 「それじゃ相談するけど、どうやったら自信って付くと思う?」

僕は顎に手を当てると、そう質問した。
自信のある自分は何度もイメージしてみたが、やっぱり想像できない。

光輝
 「んー? そりゃやる気スイッチみたいな物があるだろ? それをオンにすりゃいいんじゃないか?」

里奈
 「もう光輝君! そんな物理的な方法で精神論はどうにかならないわよ!?」

やる気スイッチって言うのも気になるには気になるけど、常葉さんはその無理矢理な方法を批難した。
常葉さんは、意思ポケモンというアグノムのPKMだ。
制御装置で、能力こそ制限しているが、精神的な部分を司るPKMだから、真剣に考えてくれた。

里奈
 「自信は、意思だけじゃなく、感情も、そして像を正しく投影する記憶も重要よ」

当夜
 「意思、感情、記憶?」

里奈ちゃんは目を瞑ると、真剣な表情で語った。
それは僕だけじゃなく、光輝君も真剣に聞いていた。
冷静で理知的な常葉さんの言は、なんだか僕でも素直に聞き入れられた。

里奈
 「そう……自信っていうのは、何かと比較して発生するの、比較とは記憶、そして感情はパッションとして発露し、意志は最終的な強度になる……これが自信の本質だと思うわ」

光輝
 「成る程な……、そりゃ俺の方も参考に出来そうだわ」

当夜
 「光輝君でも自信が無い時ってあるの?」

光輝
 「俺も完璧超人って訳じゃないぜ? プロのレベルを知れば、嫌でも自信無くすさ」

そうか、高校生としては頭一つ抜けてるサッカーの実力を持つ光輝君だけど、それでももっと上を見れば、それだけレベル差を感じるんだ。

光輝
 「まっ! 最もそれはそれで、燃えるからな! さて、筋肉付けなければ!」

光輝君はそう言うと唐揚げを美味しそうに一口で食べた。
光輝君の身体はこの3年、確実に大きくマッシヴになっている。
高校生としては体重も重い方だろう、もしかしたら僕の倍はあるかもしれないな。
光輝君の話だと、プロのスポーツ選手と比べたらまだ、筋肉量が足りないって言ってたし、本気でプロサッカー選手目指しているんだな。

当夜
 (それに比べて僕はどうして……?)

そう、光輝君の3年は僕の3年でもある。
僕が筋トレを開始したのは中学生の頃だ。
徐々に僕は周りと体格差を広げられ、僕は小さくて華奢な事を思い知った。
どんどん周りに比べて幼い僕は、やがて女の子のように扱われるようになり、一念発起して、僕は男らしくなろうと誓った。
でも肉体も精神も僕は本当に駄目だ。
ろとぼんには、トレーニングを計測してもらっているけれど、どうしてこれで筋肉がつかないのか、人工知能でさえ、首を傾げる始末だった。

僕は頭も馬鹿だし、運動音痴だし、才能なんて何一つない。
なんて、考えたら更に憂鬱になるから普段は気にしないようにしているんだけど、今日ばっかりはなぁ。

光輝
 「あのな? 当夜はさ、まず自分を変えないとな!?」

当夜
 「自分を変える?」

光輝
 「そうそう、当夜はなにかあると直ぐネガティブになる、でも当夜だって変われるんだぜ!?」

里奈
 「そうね、上乃子君は喜怒哀楽が激しいから、少しそれを抑えるだけでも大人っぽくなるかも」

うーん、僕を変えるか……。
僕は変わった筈だ、だからデスリー総統になった。
でもデスリー総統になっても変わらなかったのは、自信なんだ。
きっと僕は世界一情けないだろう、多くの人の責任を背負わなければならないのに、僕は意志薄弱だ。
僕はどう変わればいい?

当夜
 (教えて欲しいよ……僕はどうあるべきなんだ?)

上乃子当夜として、そしてデスリー総統として。
僕はこの2つの仮面を嵌めなければならない。
演じなければならない。
それが滑稽で、難しいのだ。



***



キーンコーンカーンコーン♪

風子
 「あ」

風子は当夜の通う学園に接近する頃には、既に放課後を迎えていた。
風子はアレから、少しでも世界を良くするため、善行に努めていた。
風子は凄まじいスピードで、善行をこなした。
しかし、この世界を良くするには、改善しないといけない要素が多すぎる。
今日行った善行は優に300件を超えるだろう。
感謝の笑顔は、風子にとって嬉しい物だった。
人々が笑顔でいられるのは、世界が少しでも良くなった証だ。
気がつけば、当夜をそっちのけであった。
ようやく当夜をスキャニング出来る距離に捉えた時には既に、放課後だったのだ。

美陽
 「風子……どこにいたのですか?」

美陽はいつものように校門の前で当夜を待っていた。
随分遅く現れた風子には、美陽も首を傾げた。

風子
 「少しでも街を良くしていたら、こんな時間になってしまいました」

美陽
 「?」

美陽には意味不明だった。
美陽は効率を重視する、完璧に当夜を支えるため、無駄を省く。
だが風子は極端に遠回りしてしまう子だ、優秀過ぎるあまり愚直とも言え、効率的とは言えない。

美陽
 「もうすぐ当夜様が出ます、準備を」

風子は当夜をスキャニングした。
今ご友人と別れ、教室を出た所だ。
当夜は寄り道をしない、ただ急ぐ訳でもなく、まっすぐと下駄箱を目指していた。

風子
 「当夜様、褒めてくれるでしょうか?」

風子はワクワクしていた。
表情も少しだけ綻ばせ、今日の活動を当夜に報告するのが楽しみだった。
美陽は不思議そうな顔をしていたが、風子は自信に満ち溢れていた。

美陽
 (タキオンはどうして、ジバボーグの感情を制御しなかった?)

美陽は風子の一連の行動を精査して、評価を下した。
やはり、風子は怪人としては無駄がある。
ペレである自分と比較するのは酷だが、本当にこれが役に立つのか、些か不安であった。

美陽
 (一度タキオンに聞かないとね)

この不可解なジバボーグの仕様は、睦美に聞かねばならない。
世界征服は全てが善行で行われる訳ではない、現状でさえも地球人は一つに纏まらないのに、デスリーの理念は人間もPKMもすべてを包み込める世界征服なのだ。
良い意味で言えば、地球連邦の成立のようなものだが、デスリー帝国を築くには、デスリー総統の下意思統一が求められる。
怪人には非情さも必要だ、その用意がジバボーグに出来るか?

当夜
 「あ、美陽さーん!」

当夜は校門を出ると、手を振った。
その少し上には、ミラージュスキンで光学的に透明になったろとぼんもいる。
美陽は無表情で手を小さく振った。
当夜はそれだけで、にこやかに笑ってくれた。

風子
 「むむ」

風子はそれを見て、当夜が美陽にはっきりとした好意を見せていると判断した。
その時、風子は自分の感情が分からなかった。
はっきり言えば嫉妬だったが、風子はそれをまさかと思った。
これが睦美なら、その感情を否定しないだろうが、風子は別だった。
首を振ると、その感情をかき消す。
ただ、当夜を見ると胸がドキドキする。

それが当夜が好きという感情に気付くのはまだだった。

美陽
 「お疲れ様です、当夜様」

風子
 「あの! 当夜様!」

風子は当夜に駆け寄った。
当夜は風子に振り向く。
風子はもじもじと、両手を合わせると、可愛らしく当夜に今日の活動を報告した。

風子
 「あの、私、今日は一杯善行を行えました、少しでも世界を良くするため、頑張りました♪」

当夜
 「へぇ、そうなんだ……よく頑張ったね♪ よしよし♪」

当夜はそう言って褒めると、風子の頭を撫でた。
風子は感激だった。
ただ、舞い踊りたい程、感情的には舞い上がっていた。
だが、風子は顔を真っ赤にして笑った。
控えめな感情表現だった。

美陽
 「……っ」

当夜
 「うん? 美陽さんどうかした?」

美陽
 「いえ、何でもありません」

美陽は少しだけ胸がズキりとした。
あらゆる自分の機能を制御出来る美陽が、その感情だけは簡単には割り切れなかった。
だが、直ぐに感情を整理すると、いつもの鉄面皮に戻った。
美陽は相変わらず、自分のポジションである当夜の少し後ろを位置どった。

美陽
 「帰りましょう、当夜様」

当夜
 「うん、そうだね」

3人はいつもの道を下校する。
風子は行きとは違い、当夜の隣に立った。
そして嬉しそうに今日の出来事を当夜に話す。
当夜は「うんうん」と何度も頷いて嬉しそうに聞いていた。
美陽はそれを後ろから傍観して、少しだけ暗い顔をしていた。

美陽
 (私は……虚無?)

これまでなら気にもならなかった。
だが、今朝風子に指摘された美陽の致命的なコミュニケーション能力の話は今如実に結果に現れている。
美陽にとって、この一歩退いた位置は彼女の忠誠を表す位置でもあった。
だが、風子はそれを軽々と侵す。
そして当夜もそれを咎めない。
美陽は急激に疎外感を感じた。
そしてそれは、風子に対する思いにも繋がっていく。

美陽
 (私は当夜様の身辺警護と身の回りのお世話が任務、だけど……それだけ)

美陽には間違っても、当夜と話題を共有しつつ、会話に華を咲かせるなど出来ない。
風子の在り方ははっきり否定する。
しかし、ならば何故こんなにも羨ましいと思うのか、美陽には解決策が思い浮かばなかった。

美陽
 (私もあの位置に立ちたい? 馬鹿な……私と当夜様は対等ではない……)

美陽は下であるべきなのだ、それが完璧な怪人の矜持だ。
理想と現実は残酷だ、それを美陽は痛感した。

ブルルル!

美陽
 「? タキオン?」

突然、美陽の胸元に装備されたピンバッジにタキオンから連絡が入った。
美陽はピンバッジを弄ると、骨振動を通じてタキオンの声が美陽に届いた。

タキオン
 『美陽君、本部から招集だ、ジバボーグと総統も一緒にな?』

美陽
 「了解した」

タキオン
 『うん? 少し苛ついているかな?』

ドクタータキオンは、美陽の聞き慣れた声に違和感を覚えた。
声だけで分かるのは流石だが、美陽は直ぐに通話を切った。
その顔は既に怪人ペレに変わっていた。

美陽
 「当夜様、風子、直ぐに本部に向かいます」



***



急いで僕たちはデスリー秘密基地に向かうと、僕たちは訓練場に向かうことになった。
そこには、シャーク将軍にタキオンさん、そして幹部に相当する組織の運営者達の姿があった。

当夜
 「遅くなりました!」

シャーク
 「いえいえ! 此方がデスリー総統の手間を求めたのです! デスリー総統が謝る必要は御座いません!」

タキオン
 「で、急いで来てもらったのは他でもない、ジバボーグ、早速お披露目だ!」

ジバボーグ
 「! 私のお披露目ですか?」

ジバボーグのお披露目、それは怪人ジバボーグが果たしてデスリーに貢献するものか試すということだろう。
ジバボーグさんは胸に手を当てると、少しだけ不安そうだった。
その顔は僕に似ており、そしてジバボーグさんの昔の話を思い出す。

当夜
 「ジバボーグさん、自信を持って、自信は記憶で像を作り感情でパッションを、意志でそれらを強くする!」

それは常葉さんの受け売りだ。
そして僕もデスリー総統としての像を依り代にして、ジバボーグさんを激励する。

ジバボーグ
 「デスリー総統……」

当夜
 「頑張って!」

僕はそう言って、ジバボーグさんの肩を叩いた。
ジバボーグさんは少しだけ微笑むと、はっきりとした意志で前を向いた。

ジバボーグ
 「はい!」

ジバボーグさんはこのお披露目に集まった幹部陣の前に立った。

タキオン
 「では、私からこの怪人について説明させていただく! このDT01はジバコイル娘を素体ベースにしている! ジバコイル本来の強力な磁力は勿論、鋼タイプ特有の機械化に対する高い親和性も発揮し、その性能は従来のロボット型怪人を遥かに凌駕すると言えるだろう!」

幹部
 「しかし、ようはサイボーグだろう? 一怪人に金を掛け過ぎではないか?」

タキオン
 「まぁ、経理部の文句は私にも届いている。だが今更量産型を生産して、ゲノセクトエースを倒せるかな!?」

幹部
 「むう!?」

タキオンさんは、いつものようにハキハキとした喋りは、辛口な幹部陣を黙らせた。
ていうか、やっぱり怪人の開発ってお金掛かるんだ。
思わず悲鳴を上げる経理部の吾妻さんを想像すると苦笑した。

タキオン
 「とりあえずまずは戦闘能力を証明しよう!」

タキオンさんはそう言うと、指をパチンと弾く。
すると、訓練場の奥から、三体の怪人が現れた。

タキオン
 「旧世代型怪人だ、ゲノセクトエースには勿論通用しなかった。つまりこれに苦戦するようでは世界征服は夢のまた夢!」

タキオンさんは首を横に降ると、ニヤリと笑った。
自信満々に両腕を胸元で組むと、幹部陣に宣言する。

タキオン
 「3分だ、3分以内でジバボーグはあの怪人達を破壊する!」

ザワザワ、ザワザワ!

幹部陣はどよめいた。
旧世代怪人達はいずれもロボット型だ。
恐ろしい見た目だが、それでもゲノセクトエースには歯が立たない。
それを3分で3体とも破壊すると言う。

ペレ
 「相変わらず、弁論が得意で」

当夜
 「タキオンさんいつもお喋りだけど、こういうの得意なの?」

僕の直ぐ側に控えるペレさんは小さく頷いた。
ペレさんは僕の知らないタキオンさんを少しだけ教えてくれる。

ペレ
 「タキオンは世界屈指の天才です、故に大学では教授を弁論で負かす等日常茶飯事、教授泣かせで有名だそうです」

当夜
 「うわあ、なんとなく想像できるなー」

さて、ジバボーグさんは怪人達の前に出た。
いよいよお披露目は本番だ。
模擬戦が開始されるのだろう。

タキオン
 「念の為、バリアからは離れて! それでは模擬戦を開始する!」

タキオンさんがそう宣告すると、怪人達は一斉に動き出した。

ジバボーグ
 「システム戦闘モードに移行、マグネフィールド展開!」

ジバボーグさんは腰をためて、周囲に不可視の力場を生成した。
ロボット型の怪人は強力な磁場に動きを鈍くした。

ジバボーグ
 「マグネットアンカー、射出!」

更にジバボーグさんは、両腕の大きな鎖付きU字磁石を射出した。
それは目にも見えないスピードで、怪人二体に引っ付く!

タキオン
 「マグネットアンカーは射程100メートル! 電磁力を反発させ、音速を超える射出速度は、ゲノセクトエースと言えど容易には逃れられないだろう!」

タキオンさんがその性能を解説すると、シャーク将軍も腕を組んで唸った。
ジバボーグさんは怪人をマグネットアンカーに吸着したまま、それを持ち上げ、怪人二体を激しくぶつけた!
怪人からスパークが走る!

タキオン
 「更にマグネットアンカーは最大100トンの相手を持ち上げる力がある! 勿論ジバボーグにもそれを扱えるだけの力が!」

磁力の塊であるジバボーグさんは、さながら磁界王と言った強烈さだった。
ジバボーグさんは鎖を引くと、怪人ではなくジバボーグさんが一気に引き寄せられた!

ジバボーグ
 「はぁ! マギネットボム!」

ジバボーグさんは、怪人を一塊に纏めると、それを地面に押し付け、腰からマグネットボムを放った。
怪人はマグネットボムに接触すると、強烈な磁力の爆発に巻き込まれた!
その瞬間、怪人は一瞬で沸騰した。
強力なジバボーグさんが発生させる磁界の中で放たれたマグネットボムはさながら電子レンジの中に放り投げられたダイナマイトだ。
マイクロ波の渦が、怪人を焼き切った!

ドカァァン!!

怪人が爆発する!
僕は顔を抑えるが、青白いバリアは風一つ通さなかった。
誰もが見守る中、爆炎を吹き飛ばしたのは、強力な地磁気を纏い、爆風を受け流した無傷のジバボーグさんだった。

タキオン
 「ふむ、1分半……目標の半分か」

幹部
 「おお!? これ程とは!?」

タキオン
 (パフォーマンスを考えれば、もう少し時間を掛けてほしかったが、まぁお偉いさんには上々のようだし、良しとするか)

ジバボーグさんは此方をさり気なく向くと、小さくガッツポーズしていた。
僕は素直に拍手で応える。
すると、幹部陣も続いて拍手をした。

パチパチパチ!

タキオン
 「さて、幹部陣の方々も言いたい事はあるでしょうが、まずは最高責任者であるデスリー総統の意見を聞きましょう」

そう言うと、タキオンさんは僕を見た。
ペレさんは無言で頷く。
僕は少し緊張したが、ジバボーグさんの活躍を見て、タキオンさんの下に向かった。

当夜
 「僕はまだデスリー総統になって、短くあまり余計な口を挟む気はありません……ですがジバボーグは怪人としては素晴らしいのではないでしょうか? 僕はジバボーグとドクタータキオンを賞賛したい」

僕は殆ど顔も覚えていないような、顔をろくに合わせてない幹部陣に言った。
僕はデスリー総統だが、実際の組織運営にはこういう幹部陣のおじさん方がやっぱり必要だろう。
幹部陣は顔を合わせると、なにやら小声で相談した。

シャーク
 「さぁ、各方! ジバボーグに意見を!」

幹部
 「対ゲノセクトエース用怪人、承認しよう!」

それは、幹部陣の総意だった。
それを期に幹部たちはその場を去り、訓練場はいつもの面子になった。

シャーク
 「はぁ……! プレゼンは上手く行ったな」

強面軍人風のシャーク将軍も幹部陣の前では緊張したのか、いなくなると深い溜め息を吐いた。
シャーク将軍も幹部なのに、やっぱり戦闘部門の幹部って、立場弱いんだろうか?

当夜
 「お疲れ様、皆?」

僕は怪人達の苦労を労った。
ジバボーグさんはぴょんぴょん跳ねると、喜んだ。

ジバボーグ
 「はい! バッチリやりました!」

シャーク
 「しかし問題はここからだぞ?」

ペレ
 「はい、幹部陣の承認を得た以上、ゲノセクトエース打倒作戦が発動します」

当夜
 「ジバボーグさん、大丈夫?」

ジバボーグ
 「任せてください! 私負けません!」

ジバボーグさんは自信満々だ。
確かにジバボーグさんの戦闘能力は凄まじい。
過去のゲノセクトエースの戦闘記録と見比べても、決して見劣りしているとは思えなかった。

当夜
 (僕も信じるしかない……ジバボーグさんの無事を)

僕は正直ゲノセクトエースに勝つことよりも、無事帰ってこれる事を願った。
ゲノセクトエースは強い、どれだけ対策しても、どれだけ強い怪人を用意しても不安は拭えない。



***



当夜達が訓練室を離れる頃、ペレはタキオンに詰め寄った。

ペレ
 「ジバボーグの仕様について説明を求める」

タキオン
 「ん? 何が気になったんだい?」

ペレ
 「何故ジバボーグは感情を制御しない?」

タキオンはペレの真剣な目を見て思わず吹き出した。

タキオン
 「ハッハッハ! いや、笑ってすまない! しかし感情、か!」

ペレ
 「怪人には無駄だと思う、あの子は非情になれるか?」

ペレは大真面目だった。
それを茶化す思いはタキオンにはなかったが、それはタキオンの考えとは違った。

タキオン
 「私は逆だと思うよ、感情は性能限界を越える! ジバボーグはカタログスペック以上を必ず弾き出すよ!」

ペレ
 「しかし……感情は時にデメリットも……」

タキオン
 「ペレは旧世代怪人のラストナンバーだったな? 前任者は私とは思想も違うのだろう……」

タキオンはそう言うと首を振った。
ペレは感情が起こすデメリットを知っている。
怒りは冷静さを失い、哀しみは闘志を衰えさせる。
完璧に怪人を全うするなら感情は不要な筈だ。
そうでなければならないのだ。

タキオン
 「なにを焦っている?」

タキオンはペレの機微に気が付いた。
ペレは震えていた。
完璧に制御されていると言われるペレだが、実際は完璧ではない。
ほぼ完璧が正解であり、ペレは無感情ではないのだ。

ペレ
 「そうでなければ、私の存在価値は……」

それは不安だった。
ジバボーグは自分の立場をあっさり奪うかもしれない。
当夜と楽しそうに会話する姿が羨ましかった。
この上で、感情で戦うジバボーグが結果を出せば、ペレは自分の存在意義を喪失するだろう。
それ程に、ペレは感情に葛藤があった。

タキオン
 「ふん、ペレ君も存外女なのだな?」

ペレ
 「っ!?」

タキオン
 「ふん、当夜君を取られると思って焦っているんだろう?」

タキオンはそう言うとニヤリと悪い笑みを浮かべた。
ペレは図星を突かれ、押し黙った。
しかしこうなるともうタキオンのペースだ、口早に捲し立てる。

タキオン
 「ハハハハ! 心配いらないさ! 君は当夜君には必須の存在だ! 決してジバボーグが取ってしまうなどありえないよ! 寧ろ喜ばしい! つまり君は嫉妬したということだ! ジバボーグは君にとって女として驚異! そうだろう!? ああ、なんて言うことだ! デスリー総統は罪深いなぁ!」

ペレ
 「デスリー総統は何も悪くありません……!」

ペレは少しだけ怖い顔をした。
タキオンはニヤニヤ笑いが止まらない。
ペレの明け透けな乙女心を指摘して、ペレを不機嫌にしていくのだ。
だが、タキオンは理解している。
当夜という少年は気が弱く、優しさが時に悪目立ちしてしまう少年だ。
だが、それだけに当夜がペレに向ける視線が特別な事をタキオンは知っている。
悔しいが、タキオンでは埋められない絆が既にペレと当夜にはあったのだ。



***



ゲノセクトエース打倒作戦は直ぐに実行に移された。
ゲノン・セッターことゲノセクトエースは下宿するアパートを出ると、直ぐにある存在に気が付いた。

ゲノン
 (あの車……見ないわね?)

それは車道に駐車された黒い無骨な車だった。
運転席には誰もいない。
違法駐車か?
ゲノンはバイク置き場に駐車してある愛車ジェノセッターに跨ると、マリアンルージュに向かう。
だが……!

ゲノン
 (!? 車が追ってきた!?)

その無人の車は突然動き出した。
まるでゲノンを待っていたように、後ろを追っているのだ。

ゲノン
 「こちらゲノン! 正体不明の車に遭遇!」

ゲノンは直ぐに自分の所属する正義の組織に連絡を行った。
ゲノンが被る特殊なヘルメットには、様々な情報が表示されていた。

司令官
 『デスリーか!? なるべく被害の及ばない場所に誘導するのだ!』

ゲノン
 「……了解!」

ゲノンはスロットルを吹かせた。
するとジェノセッターは凄まじい加速を見せる。
だが、車は追従してきた。
ゲノンはなるべく被害のない場所を選んで走った。
やがて、廃工場の立ち並ぶエリアに入ると、車は本性を表すようにように急加速する!

ゲノン
 「くっ!?」

ゲノンは凄まじいドライビングテクニックで、車の突進を回避した。
そのまま廃工場のシャッターを突き破り、ゲノンは飛び込んだ!

車は物が乱雑に置かれた工場内では不利だ!
しかし、この暴走車はまるでそれを知らんと言うように、ゲノンに迫る!

ゲノン
 「ちぃ! はぁ!!」

ゲノンはジェノセッターをウィリーさせると、飛び上がった!
そのまま、正面のコンクリートの壁に車輪を噛ませると、垂直に走る!
車は急ブレーキするが、壁に激突した!

ガッシャァァァン!!

ゲノン
 「はぁ、はぁ! 止まった……?」

ゲノンはジェノセッターを停めると、半壊した車を見た。
しかし! 運転席のドアが開いた!
ゲノンは警戒する、すると突然目の前に輪郭が歪んで浮かんだ!
なんと車から出てきたのは全身機械化した怪人だった!

ゲノン
 「お前は!? デスリーの新型か!?」

ジバボーグ
 「っ!」

怪人はガションガションと足音を立て、ゲノンに迫った。
ゲノンは変身ポーズを取る!

ゲノン
 「変・身!」

ゲノンは変身ポーズを取り、叫ぶとライダースーツが光り輝き、ヘルメットが変形する!
コンマ1秒にも満たない変身時間で、そこには紫のコンバットスーツに包まれたヒーロー、ゲノセクトエースが立っていた!

ゲノセクトエース
 「正義の使者、ゲノセクトエース、参上! 悪のデスリー、新型のようだが、覚悟しろ!?」

ジバボーグ
 「私はDT01ジバボーグ、ゲノセクトエース、覚悟!」

ジバボーグと名乗る怪人は女の子だった。
ゲノセクトエースは少し戸惑うが、直ぐに覚悟を決める。
機械系と言うことは、ゲノセクトエースには戦い慣れた怪人だ。
すかさず飛び上がると、ジバボーグにパンチを放った。

ゲノセクトエース
 「はあ!」

ジバボーグは両腕でそれをブロックする、ジバボーグはゲノセクトエースのパンチ力に地面を滑った。
凄まじい攻撃力だ、しかし、確信する!
ゲノセクトエースは、その違和感に気付いた時にはもう遅い!

ジバボーグ
 「マグネットフィールド展開……!」

それは強烈な磁力だ!
ゲノセクトエース自身はあくまでゲノセクトのPKMだ!
若干身体は改造されているが、基本はゲノセクトの要素をほぼ残している!
だが、戦闘服に僅かに改造された部分が、磁力に引っ張られた!
鋼タイプのゲノセクトエースはジバボーグの磁力から逃れられないのだ!

ジバボーグ
 「マグネットアンカー、射出!」

ジバボーグは右手を突き出した!
すると、凄まじいスピードでジバボーグの右腕に装備された鎖付きのU字磁石が、ゲノセクトエースに突き刺さる!

ゲノセクトエース
 「うぐ!?」

ゲノセクトエースは苦悶の表情を浮かべて、吹き飛ばされる。
恐るべき事にジバボーグの放ったマグネットアンカーは音速を超えている!
ゲノセクトエースに吸着したそれは、勢いよく廃工場の壁を突き破った!

ゲノセクトエース
 「うわあああ!?」

ゲノセクトエースは砂利が敷き詰められた採石場跡で、無様に転がった。
ガション、ガション、ジバボーグは鈍重なのか、特徴的な足音を立て、追ってくる。

ゲノセクトエース
 「くっ!? このままでは不味い!?」

それは初めての驚異だった。
デスリーはこの3年で恐るべき兵器を完成させていた!
ゲノセクトエースは、命の危機を感じた。
だが、負けるわけにはいかない!
その闘志は強く燃え上がる!

司令官
 『ゲノセクトエース君! 敵は強敵だ! しかし、君は一人で戦っているのではない! その為に力を今送るぞ!』

ゲノセクトエース
 「司令官!? はっ!?」

ジバボーグ
 「マグネットボム!」

ゲノセクトエースは素早く側転した!
マグネットボムは次々爆発する!
ゲノセクトエースは間一髪でそれを回避した。
しかし、ジバボーグが構える。

司令官
『今新兵器を送った! すぐ受け取り給え!』

ゲノセクトエースは空を見上げた!
何かが高速で飛翔してくる!

ジバボーグ
 「終わりです! 電磁砲!」

ジバボーグは胸部から強烈なスパークを発生させると、強烈な電撃を放った!
ゲノセクトエースは飛び上がる!
だが、間に合うのか!?

ドカァァァン!

大爆発! 爆炎が昇る!

ジバボーグ
 「やった!?」

しかし、ジバボーグは空を見上げた!
ゲノセクトエースの生体反応は消えていないのだ!

ゲノセクトエース
 「ブレイスカセット装着!」

説明しよう!

ゲノセクトエースは、ブレイズカセットを装備することで、ゲノセクトブレイスに進化するのだ!
ゲノセクトブレイズの強力な銃撃は、ゲノセクトキックの10倍の威力を誇る!!

ジバボーグ
 「これは!? データにはない!?」

ゲノセクトエースはランドセル型カセットと空中でドッキングすると、炎を上げ、ヒーローポーズを決める!
ゲノセクトブレイズへと進化したヒーローはヘルメット型HUDにブレイズカセットの情報が表示された。

ゲノセクトブレイズ
 「テクノバスター? これね!」

ゲノセクトブレイズは空中で構えた。
ランドセル型強化パーツから伸びる一門の砲身。
ゲノセクトブレイズのエネルギーが集約する。

ゲノセクトブレイズ
 「テクノバスター、ブレイズシュート!!」

それは巨大な火球だった!
ジバボーグは避けることも出来ず直撃を受けてしまう!

ジバボーグ
 「きゃあああ!?」

ズガァァァン!!

強烈な一撃は、敵を一撃で粉砕した。
ゲノセクトブレイズは着地すると、その威力に驚く。

ゲノセクトブレイズ
 「これが私の強化形態、ゲノセクトブレイズの力!」

それはまさにヒーローの力だった。
太陽の如く熱く、燃えるような意志の力、それがゲノセクトエースに新たな力を与えた!
戦え! ゲノセクトエース! 世界の平和を守るため!



***



シャーク
 「……」

ペレ
 「……」

当夜
 「……」

一方デスリー秘密基地で、戦闘を見ていた一団はお通夜ムードだった。

当夜
 「え? ちょっと!? ジバボーグさんは!? いきなり爆死!?」

タキオン
 「落ち着き給え、ちゃんと爆発に巻き込まれる前に回収した!」

ジバボーグには緊急時、タキオン謹製テレポート装着を装備されている。
あくまで、秘密基地に回収する程度能力だが、タキオンが念の為に装備させていた。

シャーク
 「ゲノセクトブレイズか……やってくれる……!」

シャーク将軍も悔しさに拳を握り込んだ。
これは想定外の敗北だ。
いや、ゲノセクトエース、もといゲノセクトブレイズがそれ程強かったのだろう。
しかし、幹部陣をうなだらせるには充分過ぎるだろう。

ペレ
 「……振り出しに戻りましたね」

ペレがそう言うと、全員深いため息を吐いた。
デスリーの世界征服は前途多難だった。



***



ジバボーグ
 「もう! どうしてこーなるの!?」

ボロボロにされて負けたジバボーグはそう言うとワイプアウトするのだった。(チャンチャン♪)



突然始まるポケモン娘と世界征服を目指す物語

第五章 超電磁怪人、参上! 完

第六章に続く。


KaZuKiNa ( 2021/11/16(火) 18:06 )