第一部 世界征服を目指す物語
第七章 うしお爆誕 Part2

第七章Part2



前略、シャーク将軍が女性になった。
僕たちはラボで集まり、シャーク将軍の処置について協議していた。

シャーク
 「……ということが」

当夜
 「……それ、因みに僕が飲んだらどうなってたの?」

ジバボーグ
 「女体化デスリー総統? 今と大して変わらないんじゃ?」

うぐ!? ジバボーグさんの無慈悲な言葉に僕の安っぽいプライドは砕け散る。
元々は僕用の新薬だったそうだけど、危うくモルモットになるのは僕の可能性もあった筈だ。
偶然シャーク将軍がモルモットになってしまったのは正に不幸だけど、本当に女体化するなんて。

タキオン
 「全く以て遺憾だ、天才のこの私の計算が間違っていた等!」

タキオンさんはそう言うと拳をぷるぷると震わせる。
女体化そのものは問題視している様子はなく、あくまでも計算間違えで起きた現象に悔やむ辺り真っ当にマッドサイエンティストしているなぁ。
てか、モルモット探しの時点で倫理観がヤバいと言わざるをえない。

当夜
 「それで、シャーク将軍は元に戻せないの?」

タキオン
 「戻せなくはないだろうが……それを直ぐにとは、断言出来ん」

タキオンさんは腕を組むと、俯いてそう言う。
なら、当面はシャーク将軍、女性のままなのか。
僕は改めてシャーク将軍を見る。
シャーク将軍は大人の女性って感じで、筋肉質だけど、どこか女性的な美しさがある。
本人にとっては不本意だろうけど、僕は美人だなと思った。

ペレ
 「タキオン、しかしこれはどうするの? 公の場にこのままじゃ出せないわよ?」

タキオン
 「公言するのが一番なのだが」

シャーク
 「な、ならん!? そんなもの男の恥だ!?」

シャーク将軍がこの様子じゃ、無理矢理引っ張り出す事もできそうにないな。
しかし、シャーク将軍は怪人部隊の総司令官、いないとなると作戦行動に支障を来す恐れもあるし。

ジバボーグ
 「では? シャーク将軍の妹、亡き初代に代わり、二代目シャーク将軍になるというのは?」

ジバボーグさんはそんなアニメじゃないんだからという事を言い出す。

シャーク
 「俺、死んでいないんだが?」

タキオン
 「ま、存在しないのでは、死んだと同じだがな?」

事の原因であるタキオンさんに言われると、シャーク将軍もなんとも言えない表情になった。
兎に角シャーク将軍が女体化したという事実、これは何も変わらない。
シャーク将軍は公表したくないと考えている以上、僕としてはそれを尊重したいけど……。

当夜
 「デスリー総統として、今後の裁量を決めるよ? シャーク将軍の事は一先ず秘匿する」

シャーク
 「ありがたい……心から感謝しますぞ、デスリー総統!」

シャーク将軍はそう言うと、土下座する勢いで頭を下げた。
僕の意見は一応この組織の最高意思決定となる。
ペレさんもタキオンさんもこの結果に文句を言う者はいなかった。
だけど、これは問題の先送りに過ぎない。

当夜
 「問題は怪人部隊総司令官の不在だ、シャーク将軍失踪をどう説明する?」

ジバボーグ
 「やはり年齢のため引退というのは?」

シャーク
 「待て!? 確かに私は齢35と、肉体の衰えは実感しているが、流石に引退には早すぎるぞ?」

当夜
 「そうだね、60代でも頑張っている人もいるし」

シャーク将軍が不在の証明、僕たちはその理由付けに頭を悩ませる。
なんにせよ、シャーク将軍が女体化した事は秘匿すると決定した以上、組織にシャーク将軍が失踪した理由をでっち上げ、納得させなければならない。

当夜
 「そうだ。怪我をしたから、代理で妹を派遣したっていうのはどう?」

ペレ
 「流石に直ぐバレるのではないでしょうか?」

うーん、駄目かなぁ?
僕は必死で頭を捻るけど、そもそも頭の良くない僕が良い答えなんて全然出せる訳がない。
ただ、タキオンさんは一人黙考していた。

タキオン
 「……とりあえずシャーク将軍と今のうしおちゃんのプロフィールをでっち上げなければな」

シャーク
 「ちょっと待て? うしおちゃんとは?」

僕もそれは気になった。
シャーク将軍の本名は鮫島牛尾だけど、うしおちゃんって……。

ジバボーグ
 「なんだか可愛らしい名前になりました」

ペレ
 「うしおなら、男性名でも女性名でも通用しますからね」

タキオン
 「将軍はもはや鮫島牛尾ではない、それは自覚し給え?」

シャーク将軍は「ぐぬぬ」と唸ったが、別人を演じなければならない以上、それは渋々了承した。
とりあえずシャーク将軍改め、うしおさんって呼べばいいのかな?

タキオン
 「とりあえず、住民票をでっち上げて、シャーク将軍のデータも改竄すれば問題ないだろう」

当夜
 「さりげなく凄いこと言ってるね」

タキオンさんならさも造作もなく改竄してしまうんだろうなぁ。
僕はその倫理観や道徳感の欠片もないタキオンさんに呆れながらも、その手際を信頼するのだった。

タキオン
 「それと、デスリー総統、君にもかなり重要な演技をしてもらわないとね?」

当夜
 「え?」

僕が演技?
……でも、僕の存在は、僕が思っているよりも重要だ。
そしてそれが、シャーク将軍を護る事にも繋がる。



***



幹部陣、そして戦闘員並び組織構成員が玉座の間に集合した。
デスリー総統の勅令となれば、組織の幹部陣でさえ無視する事は出来ない。
円形の玉座の間、僕は玉座に座りながら、全員の集合を待った。
僕の隣にはペレさんと、シャーク将軍がいる。
当然、周囲の目線は女体化したシャーク将軍に注がれるが、あまり騒ぎにはならなかった。
僕はなるべく平常心でいるようシャーク将軍に指示をすると、シャーク将軍は言葉通り、顔色を変えることはなかった。

ペレ
 「幹部陣、全員着席しました」

幹部陣は全て上階別室に控えている。
流石に秘密結社だけあり、中には表社会の名士なんかも含まれる性か、末端の前に顔を出すことはまずあり得ない。
僕はペレさんの言葉に頷くと立ち上がった。

デスリー総統
 「デスリーの者に説明しないといけない事があります! シャーク将軍が事故で怪我を負い、暫く現場に復帰できなくなりました!」

勿論これは嘘だ。
しかし戦闘員には動揺が走っている。
シャーク将軍は部下の面倒見が非常に良いことで有名だったから、戦闘員からよっぽど慕われていたのだろう。
だからこそ、僕は自分の精一杯の演技力を見せなければならない。

デスリー総統
 「しかし、僕に志願した者がいた! 紹介しよう! 新たなデスリー怪人部隊総司令官を!」

僕はそう言うとマントを翻し、シャーク将軍ことうしおさんに手を翳した。
すると、シャーク将軍は毅然に一歩前に歩き出し、女体化しても変わらぬ風格を持って声を上げる。

シャーク
 「私の名前は鮫島うしお! 兄に代わり、新たな怪人シャークとして、デスリーに粉骨砕身、忠義を尽くす事を誓う!!」

その言葉に場は静まり返った。
シャーク将軍は凛々しくて、美しい。
まるで息を飲むような、風格と威厳があった。
僕は「こほん」と咳を吐くとシャーク将軍の横に立つ。

デスリー総統
 「僕は彼女をデスリー怪人部隊司令官に推薦する! しかし異議がある者は名乗り出よ!」

僕は明確に任命権を持つけど、あえて任命ではなく推薦とした。
シャーク将軍自身が納得しなかったからだ。
シャーク将軍の放つオーラのような物に当てられた構成員達は何も言えなかった。
僕は上座に座る幹部陣に目を配ると、幹部陣は顔を合わせて何か相談していた。
僕はシャーク将軍にアイコンタクトを送ると、シャーク将軍は無言で頷く。
ただ、ニヤリとその鋭利な牙を覗かせて。

シャーク
 「まだ完全に納得がいっていないようだな!? ならば実力を証明してやろう!」

シャーク将軍はそう言い放つと、場に緊張が走った。
シャーク将軍はデスリーナンバーワンの実力者。
その気迫は戦闘員さえ圧倒する。



***



ドカァ!

トレーニングルーム、シャーク将軍は長い棒を持つと、戦闘員達と100人組手を開始した。
今早くも70人目が倒された。
シャーク将軍も流石に息が上がっていたが、全身を上気させ、筋肉を膨れ上がらせた。

シャーク
 「どうした!? その程度か!?」

シャーク将軍は生き生きとしている。
女体化したことで、身長も下がり、パワーも落ちた筈で、その感覚の変化は戸惑う筈だけど、組手の中で自分の身体の動かし方を覚えたようだ。

当夜
 「凄いな〜」

僕は純粋に感嘆の声を上げた。
僕の横に沈黙を守りながら立っていたペレさんはシャーク将軍を見て言う。

ペレ
 「シャーク将軍、男性の時よりも強い?」

当夜
 「え? 小さくなったのに?」

シャーク将軍のスタイルは荒々しいパワースタイル。
女性としてはマッシブな今のシャーク将軍だけど、当然ながらパワーは落ちた筈だけど?

ペレ
 「スピード、特に反射神経がずば抜けています、まるで全盛期を取り戻したような」

そういえば、タキオンさんも言っていたっけ。
今のシャーク将軍の身体は18歳相当。
細胞レベルで若返っているって言っていた。
女性化しても、戦闘知識は変わらないなら、今のシャーク将軍は強くてニューゲーム状態?

ドッカァ!

シャーク
 「甘い! 殺す気でかかってこんかぁ!?」

気がつけば80人抜きされた。
なんだかトレーニングルームの雰囲気もいつものように戻ってきた気がする。
僕は戦闘員達の姿を見て、シャーク将軍が受け入れられる土壌はあると確信する。
シャーク将軍の実力と知識なら、僕の推薦なんかなくても、怪人部隊司令官になれただろう。

シャーク
 「イヤー!!」

シャーク将軍愛用の赤い棒が唸りを上げる。
中にはPKMの戦闘員だって混じっているのに、面白いように吹き飛ばされた。
これが、最強の怪人シャーク将軍なんだなぁ。



***



二代目シャーク将軍の就任は問題なく行われた。
末端の感触もよく、幹部陣もその実力に納得し、怪人部隊司令官の座は首尾よく引き継がれる。

タキオン
 「一先ずは成功と言えるが、問題はこれからだな」

そう言ったのはドクタータキオンだ。
研究所に戻った僕たちはこれからについて考える。
当面タキオンさんには、仕事の無理がない範囲で、シャーク将軍を元に戻す研究をしてもらう。
新たな怪人予算を貰っているみたいだが、その予算は新怪人二代目シャーク将軍の育成費(という名目)に当てられる事になった。

シャーク
 「ぬ、ぬうう……」

シャーク将軍は顔を真っ赤にすると、白いタンクトップ姿で研究所に現れた。
100人組手の後、汗をシャワールームで流した後、研究所に来るよう指示していたのだ。

当夜
 「なにか問題がありましたか?」

シャーク
 「も、問題だらけです……お、女の体……」

タキオン
 「幹部は個別のシャワールームが使える筈だ? 見られる心配はないだろう?」

それは幹部の優遇措置の一つだ。
まぁシャーク将軍は気さくな人だから、あんまり個室は使わないかもしれないけど。

シャーク
 「違う! 胸も、尻も! 自分で自分を意識してしまうのだ!? 視線なんて今まで気にもならなかったのに!?」

シャーク将軍はそう言うと、耳まで真っ赤にして黄色い悲鳴を上げた。
ああ、そういうことか……シャーク将軍、僕でもちょっと意識しちゃう程、健康的でスタイル良いからなぁ。
未だ客観的に自分を捉えられていないから、自分の裸を見て困惑するのだろう。

シャーク
 「うう、間違えて男用のシャワールームに行こうとしてしまったし」

シャーク将軍は普段、部下と一緒にシャワールームを使うのが日常だった。
部下を大切な戦友として扱うからこそ、シャーク将軍は絶大な信望がある。
しかしそうなると今度は女性用のシャワールームを使用しないといけないのか?
それは流石にシャーク将軍には無理だろう。
心は男性なのだから。

シャーク
 「それに、身体に合う服が無くて……」

シャーク将軍はそう言うと、胸を張り出した。
タンクトップをギチギチと張り詰めるその姿は僕も目のやり場に困ってしまう。
「はぁ」と面倒くさそうに呟いたタキオンさんは自分の私物と思われる上着と白衣をシャーク将軍に投げ渡す。

タキオン
 「とりあえずこれを着たまえ、サイズは合うだろう」

シャーク
 「す、すまぬ」

タキオンさんは普段からゆったりした大きめのサイズの衣服を好んでいる。
白衣でさえ男性用のサイズの物を着ており、その性でダボダボでだらしなく見えるのだが、今はこれが功を奏したという所か。

当夜
 「僕後向いてまーす」

僕はそう言うと念の為、目も閉じる。
シャーク将軍が着替え終えるのを待った。

シャーク
 「ぬぅ、まさか女物を着る日が来るとはな……」

シャーク将軍は着替え終えると、スッキリした姿になった。
普段から軍服みたいな格好で身嗜みも良かったシャーク将軍らしく、その姿は着慣れたタキオンさんよりも着こなしていた。

ジバボーグ
 「わぁ、まるで本職の研究員さんみたいです」

ジバボーグさんはそう言うと手を叩いて褒めた。
シャーク将軍は恥ずかしそうに髪を弄った。

タキオン
 「ふふん、それなら眼鏡も必須! ぜひコレを!」

そう言うとタキオンさんはどこから取り出したのか、黒縁眼鏡をシャーク将軍に差し出した。
シャーク将軍は困惑しながらも、受け取ると。

シャーク
 「なんで眼鏡があるんだ? しかも伊達か」

タキオンさん眼が悪いらしいけど、眼鏡は使わないからね。
普段からサイコパワーで見えないものも見るタキオンさんの場合、眼鏡はいらないようだ。

当夜
 「うわ、眼鏡を掛けるだけで印象変わるね」

シャーク将軍は眼鏡を掛けると急にインテリっぽく見えた。
まぁ文武両道のシャーク将軍は頭も普通以上に良いんだけど。

ジバボーグ
 (なる程、当夜様は眼鏡がお好みの可能性が!?)

ペレ
 (……私も眼鏡を掛ければ、デスリー総統は喜んでくれるでしょうか?)

何やら、無言で何かを思う女性二人がいるが、僕は気にしない。
それよりも冒頭でタキオンさんが言っていた通り、これからどうするか。

当夜
 「シャーク将軍、表の方はどうするんです?」

シャーク
 「どうするも何も、家に帰る事もできん」

シャーク将軍は意外にも質素な下町に暮らしているらしい。
賃貸のアパートに住んでおり、一人暮らしのようだ。
人付き合いの良いシャーク将軍はなまじ町の清掃活動や、町内会の出席なども欠かさない。
それが災いして、今のシャーク将軍は不自然そのものだ。

タキオン
 「とりあえず下宿先を変更したまえ」

シャーク
 「やむをえまい」

当夜
 「あ、じゃあ新居が決まるまで、僕の家を使ってください」

シャーク
 「で、デスリー総統の家をですか!?」

シャーク将軍は心底驚いているが、僕変なこと言ったかな?
ペレさんもタキオンさんも、ジバボーグさんだって遠慮なく利用している。
僕は別に嫌じゃないし、賑やかで楽しいとさえ思っているけど、シャーク将軍には違うのかな?

シャーク
 「緋扇時夜様の……」

シャーク将軍は複雑な顔をすると、父さんの名前を呟いた。
僕はその瞬間気がついた、この人はお父さんにも仕えていたんだ。

当夜
 「あの、嫌なら別に……」

僕がこの組織で特別な理由は知っている。
先代デスリー総統緋扇時夜の子供だからだ。
何故組織にとって実力より血統を重視するのかは僕も知らないが、緋扇の名は大きい。
僕はもし、何か気に障るなら、強制なんて出来なかった。

シャーク
 「いえ! 嫌などではありません! ただ畏れ多いかと……」

ペレ
 「ならば遠慮などいりません、あの家は……皆の家です」

ふと、極めて珍しいがペレさんが口を挟んだ。
極力自分からは喋らない人が、この時に限ってシャーク将軍に助言をする。

当夜
 (あ、そういえばペレさんも父さんの部下で……)

そうだ、ペレさんはどんな想いで僕に仕えているのだろう。
今ペレさんが家で使用している部屋は両親の部屋だ。
ペレさんはいつでも鉄面皮の無表情だけど、内心は常に揺れている。
そんなペレさんが、シャーク将軍に来いと、暗黙の中言っているのだ。

シャーク
 「ふっ、皆の家か……ならば、ありがたく下宿させて頂く」

シャーク将軍はそう言うと初めて笑った。
怪人の問題は僕の問題でもある。
だからこそ、僕はなるべくこの問題に付き合ってあげたい。

ペレ
 「そうなると更に買い物が必要になりますね」

ペレさんはそう言うと、既に今日の夕飯の事を考えているようだった。
すっかり主婦というか、そういう顔が似合ってきた気がするね。

当夜
 「ま、モアナさんを招待した時よりはマシでしょう?」

ペレ
 「はい、彼女は普通の私達の3倍以上は食べます」

それを聞いたシャーク将軍は頭を抱えた。

シャーク
 「モアナの奴……デスリー総統に粗相はかけるなとあれ程……」

当夜
 「あ、別に僕はモアナさんに困らされてはいないですから、気にしないでください」

僕はモアナさんを擁護するように言うと、シャーク将軍は思いを飲み込んだ。
モアナさん、遠慮がないというか、文化の違いを凄く感じる人だけど、とっても良い人だし、僕もあれ位の粗相はもう慣れたっていうかね?

当夜
 「それじゃ、もう戻ろうか?」

ペレ
 「畏まりました、お車の用意を」

シャーク
 「私も出しましょう、タキオンはこっちに乗れ」

タキオン
 「えー?」

タキオンさんはあからさまに嫌がる。
折角シャーク将軍も車を出してくれるって言っているんだから、好意を受け入れても良さそうだけど?

シャーク
 「ペレの車だと狭いだろう?」

タキオン
 「私はペレ君とデスリー総統と一緒がいいなぁ〜?」

そう言うとタキオンさんは物欲しそうに僕を見る。
僕は「えっ!?」と声を出してしまったが、ヘルメット越しに赤面してしまう。
それを見たシャーク将軍は「ハァ」と溜息を吐いた。

シャーク
 「デスリー総統、ご采配を」

当夜
 「えと、それじゃあジバボーグさん、代わりにシャーク将軍の車に乗ってもらえます?」

ジバボーグ
 「はい、畏まりました」

タキオン
 「やった♪ 少しワガママも言ってみるものだな♪」

タキオンさんはそう言うと、嬉しそうに目を細めた。
もしかして一種の愛情表現なのかな?
僕にはやっぱりタキオンさんは計りかねる。
僕を使って遊んでいるようで、本当の所は分からない。

シャーク
 「タキオン、粗相はするなよ?」

タキオン
 「失礼な! この年齢でお洩らしなどしない!」

シャーク
 「誰もそっちの粗相の心配などしておらんわぁー!?」

シャーク将軍の突っ込み、タキオンさんは「ハハハ!」と笑い、走った。
シャーク将軍は怒り顔でそれを追いかけた。

ペレ
 「……早く帰りましょう」

ペレさんは動じずそう言うと、僕は頷いた。



***



家についた後もドッタンバッタン騒ぎは続いていた。
これまで意識したことも無かったけど、シャーク将軍、いや表の名前うしおの天性の突っ込み才能を初めて知った。

うしお
 「だーもう! 牧村!? 何故当夜様の入浴時に入ろうとする!?」

睦美
 「ち! 裸のスキンシップは当然だろう!?」

うしお
 「そんな訳あるかー!?」

美陽は無表情で冷たい麦茶を淹れた。
いつものように当夜のペースに合わせてマイペースに働いている。
睦美の行動は見慣れた物で、特に止める必要は感じなかった。
風子も苦笑いを浮かべているが、きっちり当夜の入浴を透視で覗いている変態ぶりは隠しているが、躊躇いもない。

睦美
 「風子君〜、なんとかしてくれたまえ」

風子
 「睦美博士は、自分に甘え過ぎです」

辛辣! 風子は特に感情も込めず、ただ当夜のマイナスになる者には容赦しない所は相変わらずだった。
まぁ分かっていた答えか、睦美もショックは受けていなかった。
ただ、机に項垂れると、そのままぐうたらする。

うしお
 「全く! これからは私が風紀を管理する! 覚悟しておれよお前達!?」

訳ありで女になってしまったシャーク将軍。
今はシャーク将軍の妹、鮫島うしおと自らを偽り、当夜へと改めて仕える。
もしかすれば、うしお自身この特異な環境を好んでいるのかもしれない。
一体彼女が、男に戻れるのはいつになるのだろうか?



突然始まるポケモン娘と世界征服を目指す物語

第七章 うしお爆誕 完


KaZuKiNa ( 2021/12/16(木) 19:25 )