突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語




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第三部 突然始まるポケモン娘と夢の果てにアイツが来る物語
第5話 力の顕現



R&A本社ビルは跡形も無く吹き飛んでいた。
東京の一等地に立っていたR&A本社ビルの周りにはかつては摩天楼と評するべきビル群が立っていたであろうと予想できるが、それも過去の話。
ビル群はいずれも倒壊し、東京を死の都市に変えていた。
何が起きたかさえ理解出来なかった市民達はR&A本社ビルの上空を見上げた時、誰もが目を開いた。

光の球体が東京の空に浮かんでいた。
球体は徐々にその外殻を開くと、まるで卵から孵化するように、光の天使が誕生したのだ。

天使の名はヨハネ・アンデルセン。
いや、この世界での名乗るならArc−1と言うべきか。
Arc−1の身体は魔力によって構成されたヒトとはかけ離れた存在だった。
Arc−1の光り輝く身体の中心には依り代に使われた量子コンピュータアイリスが魔力に囚われていた。

Arc−1
 『これが神の庭……か』

Arc−1は電子で構成された音声を呟いた。
さながらデミ・ヒューマノイドの極地だった、Arc−1の顔の表面に六つの目を開いた。
初めて見る夢の世界に感じたArc−1の感情は決して喜ばしい物ではなかった。

Arc−1
 『この魔力……懐かしいな』

Arc−1は急接近する気配を感じ取ると、その方角に目を振り向けた。
急接近したのはArc−1を討つ為に顕現した若葉討希と若葉育美だった。

Arc−1
 『Hope49か、彼の魔法名』

Arc−1の恐るべき能力は討希の魂に刻まれた魔法名を一瞬で理解した。
一種のハッキングか、Arc−1能力はこの夢の世界で奇妙な親和性を発揮していた。

市民
 「あれはなんだ!?」

市民
 「エイリアンか!?」

Arc−1
 『?』

Arc−1は足元に群がる市民を見て、首を傾げた。
Arc−1にとってアリのような存在がArc−1を認識している事は不愉快だった。
Arc−1は手を地上に向けると、胸部のアイリスが激しく振動する!
直後、膨大な魔力は光の本流へと変換され、地上を一瞬で焼き払った!

市民達は悲鳴をあげる暇も無く、一瞬でメギドの火によって蒸発したのだ。

育美
 「く!? 狼藉はそこまでです!」

一瞬遅れた育美はArc−1に飛びかかった。
しかし育美はこのArc−1を侮っていた。
Arc−1はギュルリと六つある目を動かすと、育美の神速の一撃を回避した。

育美
 「なっ!?」

育美は産まれて初めてだったかも知れない驚愕を顔に浮かべた。
Arc−1は未来予測によって育美の全ての行動パターンを光速でシュミレート、それはハッキングしたアイリスの演算能力の賜物だった。

Arc−1
 『愚かだな、神々の王の下僕よ』

Arc−1は無慈悲に育美に掌を向けた。
また先程の光を放つつもりか!?
育美は死を覚悟した、回避出来ない!

Arc−1
 『消えろ、私の世界に貴様は不要だ』

Arc−1の魔力が一瞬で膨れ上がる!
掌に収束する魔力は光り輝いた!

討希
 「喰らえ!」

しかし! そこへ討希は魔力の籠もった弾丸を放った!
薄紫に光るマギアバレットは、Arc−1の掌に吸い込まれた。
討希の魔術はArc−1の魔術と混ざると誘爆する!

ズガァァァン!

凄まじく魔力の暴発だった。
育美は吹き飛ばされる!
討希はそんな妻を抱きとめた。

育美
 「あぶない所でした……、感謝します」

討希
 「奴は……?」

光爆に巻き込まれるArc−1を見上げた討希は、その中にヨハネと同じ魔力がまだ生きている事を確信した。
Arc−1は片腕を吹き飛ばされたが、まるで蚊にでも刺されたかのような感覚でしかなかった。
Arc−1は失われた腕の先端から、光の魔力で構成された腕を再構成した。
それを見て育美は歯軋りする。

育美
 「なんですかアレは? 正真正銘神とでも?」

俄かには信じられない。
だが紛れもなくそこにいたのは育美さえ超越した存在だった。

討希
 「ヨハネ……お前を殺す」

Arc−1
 『フフフ、Hope49、いや若葉討希か……久しいですね』

Arc−1はゆっくり降下すると、焼け野原となった地上に降り立った。
改めて二人は間近に見て、この異質な存在に恐怖する。

育美
 「魔術師ですらない……?」

Arc−1
 『ヨハネ・アンデルセンという魔術師はなぜ世界は不完全なのか、どうして自分は完全な存在になりえないのか、常にそれは学問の探求となった』

討希
 「グノーシス主義」

グノーシス、神が不完全であるからこそ、世界も不完全であるという教義、しかしヨハネはグノーシスの掲げる魂の解放とは異なる解を導き出した。

Arc−1
 『ヨハネは生まれ持ち、未来予知に優れる超能力者だった、ヨハネは自分を完全なる存在に昇華させるべき計画を思いついた……それが私だ』

Arc−1は六つの目を全て討希に向けた。
討希は怯むことなく銃を向ける。

討希
 「お前はその為に10年潜伏したのか?」

Arc−1
 『そうだ、天使の姿を僅か片翼しか再現出来なかったヨハネは、完全なる姿を求めた』

まるで自分がそう、というように、Arc−1は一対の翼を大きく広げた。
エンジェルハイロウこそ無いが、Arc−1は極めて天使という概念に近い存在だった。
ヨハネは自分を討希に殺害させる事で、10年後の暗躍を確定させた。
自身の執筆した魔導書をR&Aに保存させ、魔導書にはそれを理解出来た者にヨハネの記憶と魔力を継承する仕掛けがされていた。
しかし魔術師の脆弱な身体では神には程遠かった。
PKMなど論外だ、魔素への耐性が低過ぎて常に魔力を編んでなければいけない。
10年後アイリスの完成を予知したヨハネはR&Aが新しい秩序世界を支配する権利を与え、そしてArc−1はそれを堂々と破棄した。
R&Aは利用するには丁度良かったが、新世界には不要なゴミだった。

Arc−1
 『君と争う事は好ましくない』

討希
 「俺には……ある!」

討希はトリガーに指を掛けた。
Arc−1は討希を利用こそしたが、討希の真っ直ぐさは評価していた。
方向は違っていたが、世界の不完全さに嘆くという意味では二人は表裏一体だったのだ。

だが、決定的に違ったのは討希は世界を信じた。
そしてヨハネは世界を信じられなかった。
その決定的な差が、今対立を生んでいる!

Arc−1
 『君は争いの種になるのか? 矛盾している』

討希
 「戯言を……! お前はウイルスだ」

討希はその言葉を最後にArc−1を撃った!
マギアバレットはArc−1に吸い込まれる!
しかしArc−1にはアイリスという演算装置が組み込まれている事を忘れてはいけない!
Arc−1はマギアバレット全てを回避してみせた!

しかし、討希はそれを読んでいた!
だからマギアバレットに仕込んだ魔力は!

マギアバレットは空を切ると、慣性の法則を無視してArc−1を後ろから襲った!
それは必ず当たるという意味を込めた概念さえも越える弾丸だった。
Arc−1はそれを理解すると、瞬時に腕を六本に増やした。
Arc−1は増やした六本の腕を全て切り離すと、マギアバレットは六本の腕に当たり、魔力の爆発を起こした!

ドォォン!

討希
 「ち!?」

Arc−1は簡単にこの難事を切り抜けた!
しかし育美はArc−1を追撃する。

育美
 「裁きの礫!」

ノーマルタイプの裁きの礫はArc−1に降り注ぐ!
Arc−1は身体をズタズタにされながら、構わず育美を掴んだ。

育美
 「あぐ!?」

Arc−1
 『弱体化した神などこの程度か』

Arc−1は感情も込めず、育美の首を締めた。
討希は後ろからArc−1にナイフで斬りかかる!
魔術の刻まれたナイフは薄紫発光していた!

討希
 「育美を離せ!」

しかし、Arc−1は背中に腕を生やすと、討希に光爆を放った。
討希はなんとか身を守るが後ろに吹き飛ばされた!

Arc−1
 「大切な者を奪われる瞬間、見ているがいい」

討希
 「くっ!?」

育美はArc−1を振りほどこうと必死に抗った。
しかしその力は遠く及ばない。
あの10年前なら兎も角、神の身体さえも魔素は蝕み続けた。
今や、かつての神々しさも育美には既に無いのだ。

育美
 (このままじゃ……!?)

育美は愛する夫を見ると、微笑んだ。
討希はそんな育美を見て叫ぶ!

討希
 「育美!? 早まるな!?」

育美は全てのプレートを開放した。
プレートはクルクルと育美の周りを旋回する。
創造と調律を司る神は、その最後の力で自爆を試みた!

育美
 (お前如きに、やられる、つもりは……ない!)

育美は全てのプレートを圧縮させ、縮退させたアルセウスの天地創造の力をバーストさせる。
その反動は育美を殺すだろう、しかし充分Arc−1を消滅出来る筈だ。

育美がギロリとArc−1を睨んだその瞬間だった。
Arc−1の目の一つが、育美の後ろを凝視した。

悠気
 「うおおおおお!!」

それはもう一人のアルセウスだった!



***




 『あ、ああ……』


戦いの少し前、俺は現場に急行していた。
そんな中宵の様子は異常だった。

悠気
 (しっかりしろ、宵! 一体どうしたんだ!?)


 『ご、ごめん……悠気、ごめん! ああっ!』

悠気
 (だから何を謝っている!? 何が起きたんだ!?)


 『育美さんが死んじゃう! 私の性だ……!?』

俺はその言葉に衝撃を受けた。
母さんが死ぬだと?
宵はある程度なら未来を観測出来る。
普段おいそれと未来までは観測しない宵だが、何を見た?

悠気
 (お、お前の性って、どういう意味だ!?)


 『分かっちゃったの! あのArc−1って奴が何者か! わ、私が10年前世界に顕現したことは、赦されざる運命の干渉だった! 私が過去さえも改変してしまった!』

宵が過去さえ改変しただと?
歴史を改変することは、歴史のパラドックスを生むと言われている。
しかしそれを生きている者が認識する事は出来ない。
Arc−1は10年前、宵が歴史改変を行った時に誕生したというのか!?

悠気
 (宵! 俺には何が悪いのか分からん! でもこれだけは胸を張って正しいと思ってる! お前が俺と妹を助けてくれた事だ! お陰で今の俺は存在する!)


 『悠気……! ねぇ悠気? もし私が本当に元凶なら、貴方は選択してくれる……?』

悠気
 (一体なにを?)

俺は宵の考えが分からなかった。
ただ、宵は既に何かを確信している。
宵はただ……落ち着いた声で俺に聞いたのだ。


 『私を壊してくれる?』

俺は顔を青くした。
自分の中でなんにも整理出来ないぐちゃぐちゃの想いの中で、ただ俺は血がにじむ程強く手を握り込んだ!

悠気
 「ば、馬鹿な事を言うな! お前が元凶なものか!」

俺は答えられなかった。
ただ宵は巫山戯てそんな事を質問したんじゃない。
本気で覚悟しているんだ。
自分がこの世界に悪を呼び込んだかも知れない可能性を。

悠気
 「見えてきた……!」

俺は意識を宵から眼の前に切り替えた。
正直考えも切り替えたかった。
今地上では両親が戦っていた。
母育美がArc−1に首を締められ持ち上げられている。
光の天使の姿をしたArc−1は両親を圧倒していた。
俺は歯を噛み締めた、そして覚悟を決める。

悠気
 (大丈夫、俺は勝てる!)

俺は自ら魔術を行使した。
俺の魔術は思った事を現実にする現実改変。
この力をポジティブに維持できるなら、俺は無敵だ!

悠気
 「うおおおおお!」

俺はArc−1に急降下キックを放った!
Arc−1は咄嗟に手を翳す!
だが、俺は魔術を行使し、Arc−1の魔力干渉を穿いた!
俺は一本の槍のようにArc−1を打ち抜く!

Arc−1
 「ふ……」

Arc−1はその場で爆砕した。
俺は着地すると、弱った母さんを抱きしめた。

悠気
 「母さん無事!?」

育美
 「ゆ、悠気……貴方が……?」

パラパラ、と母さんのプレートが地に落ちた。
プレートで何かしようとしたみたいだけで、不発に終わったな。
俺は母さんの無事を確認すると父さんを見た。
父さんは相変わらず表情の見えない様子で何を考えているかは微妙だった。

育美
 「まさか悠気に助けられちゃう……なんて」

母さんは俺に抱きしめられると照れて顔を赤くした。
俺は母さんを離すと、直ぐに後ろを見た。
Arc−1がスマホみたいな機械から再構成されたのだ。

Arc−1
 『不意打ちは一度までだな』

Arc−1の声は電子音声だった。
俺はそのコアのような役割をする構造物が恐らく奪われたアイリスだと考えられる。
聖誕祭、マジでアイリスが関わっていたのかよ……!

Arc−1
 『君がここに現れるのは想定通りだ……理と共にある少年よ』

悠気
 (コイツ……宵を知っているのか?)


 『あ、あ……!』

宵はArc−1に怯えていた。
怯える? 仮にもこの夢の世界の絶対者たる宵が?


 『同じだ……アイツ私と……!』

悠気
 (同じ?)

俺はArc−1を注視する。
アイリスを演算装置としてコアにし、その周囲を光の魔力で天使のように象っている。
俺はまさかと思った。
そう、その構造は魔力をコアにアルセウスの全てのプレートを外殻として閉じ込めた演算装置……構造も性質もソックリだと!?

Arc−1
 『理と共にある少年、申し訳ないが君だけは見逃せない』

Arc−1は手を翳した。
俺は警戒する、だが俺には現実改変の魔術がある、大丈夫だ。

Arc−1は手に魔力を迸らせた。
それは規格外の魔力、文字通りこの世の全ての魔術師を形骸に出来る力だ。
Arc−1は魔力を開放するとそれは光線となって放たれた!

討希
 「避けろ悠気!」

悠気
 「っ!?」

俺は親父の檄にその場で身を捩った。
俺はスローモーションになる主観時間の中で、それを見た。
魔術障壁をいともたやすく貫く光線を。

Arc−1
 「魔術では到達し得ない魔法の世界をお見せしよう」

俺はなんとか光線を回避すると、遥か彼方で光爆が起きた。
それは魔術なんてチャチな物じゃない、この世の法を律す力だった。

Arc−1は背中に生えた一対の光の翼を広げると六つの腕を一斉に広げた。
俺はその瞬間、かつて親父が言っていた天使の存在を想起させた。
人は天使にはなれない、セフィロトの樹を登るには時間も力も人の身では全く足りないと言っていた。
だが奴は人であることを辞めた、その力はもはや人の理にはとらわれない……いや、奴こそが!

悠気
 「理……か!」

そう奴は人の理だ、宵が自分を壊せるかという質問を思い出した。
結論で言えば勿論壊せる、コアを破壊すれば宵といえども機能を停止する。
勿論そんな事をすれば夢の世界は再び壊れるだろう。
俺も宵もそんな事は求めていない。

だが、俺は理と戦う事に戦慄すると同時に、それを破壊すると意思を確定させた。

悠気
 「うおおおお!」

俺は拳を握る、Arc−1に俺は殴りかかった!
しかしArc−1はそれを腕の一歩で受け止める!
俺はすかさず蹴りを放った!
しかしその蹴りさえも受け止められる!

悠気
 「くそ!? なんなんだよコイツ!?」

Arc−1
 『クク……アルセウスか、所詮覚悟も務めも果たせずただのガキか』

Arc−1は口が無い、鼻も無ければ耳も無い。
だけどArc−1は笑っていた。
人間の無駄を極限まで取り払ったかのような存在は俺を嘲笑ってやがる!

悠気
 「ガキを舐めるなよ! 俺は諦めが悪いぞ!!」

俺は頭突きを放った!
頭突きはArc−1にクリーンヒットする!
しかしコアを攻撃しなければ大して意味が無い事も分かっている!

悠気
 「おおおおおおお!」

俺はコアに向かってハイパーボイスを放った!

Arc−1
 『ぬ、う!』

Arc−1の身体が一瞬不安定になった。
Arc−1はたまらず光の爆発で俺を吹き飛ばした。

悠気
 「ち!? あともうちょっとだったってのに!」

俺は直ぐに臨戦態勢に戻る。
とはいえ、なんて化け物だ……正直アルセウスの力も現実改変の魔術も過ぎた力だと思っていた。
こんな力があっても誰に使うのかとずっと馬鹿みたいに思っていた。
それがまさか……アルセウスの力がここまで通じない化け物がこの世にいたなんてな……!

育美
 「悠気、落ち着きなさい」

討希
 「ああ、お前はまず冷静になれ」

悠気
 「うぐぐ……言わせておけば!」

俺はどこぞの強力の超人のように拳を震わせた。
そりゃ自覚しているよ! 俺結構感情的だからね!?

育美
 「貴方にアルセウスとして生きてほしくなかった」

討希
 「魔術の事など知らずにいてほしかった」

それは両親の俺への愛の証明だった。
両親は自分の業を知っている、それを俺に押し付けたくなかったんだ。

悠気
 「全く……アンタらどんだけ自分勝手なんだ、俺がいつ嫌だって言った?」

育美
 「っ!」

二人は驚いていた。
そりゃこの人達、俺の気持ちなんて何にも知らないんだろうからな。
言わない俺にも問題はあったかも知れない。
でもこの際だから俺はガキらしく両親に不満を思いっきりぶつけた。

悠気
 「俺はこの力が大嫌いだった! ああ、そりゃそうさ! アルセウスなんてこの世界でなんの役に立つ!? 魔術なんて何に使えばいい!? 力なんてクソさ! 」

それは俺のずっと溜め込んでいた不満だった。
この力の性で変な魔術師には狙われるし、周りは不幸になっていく。
こんな過ぎた力なんて、子供が扱いきれる訳がないだろう!?

悠気
 「だが……今は感謝している、お陰でこんなクソ野郎をぶっ飛ばせるんだ! 力の扱い方……どうすりゃ良い!?」

今の俺はもう受け入れている。
後は……クソ野郎に勝つ方法が必要であった。
両親は俺を様々な感情を綯い交ぜにして見てきた。
両親からすれば俺を普通の子供として育てたかったのは分からないでもない、俺だって子供が産まれたらきっと同じことを思う。
だが子供は親を見て育つんだ、俺はこんな駄目両親を反面教師に育っちまった。

悠気
 「駄目は駄目なりに! 父さん母さんの戦い方を教えてくれ!」

俺は叫んだ、母さんは小さく頷いて父さんに合図を送った。

育美
 「悠気、アルセウスは遍く世界に平等の光を与えるべき存在です、神々の王は創造と調律を意味づけました」

悠気
 「創造と調律……」

育美
 「創造しなさい、貴方の調律を、そして調律を世界へと届けなさい……悠気!」

俺は創造を意識した。
すると、俺は自分の中から力を認識した。
力は複数のプレートに分割され、それは俺の目の前で表出する。

育美
 「そう、それはアルセウスの具現化された創造の力よ」

俺は自分の中から取り出したプレート達に様々な力が宿っている事を自覚する。
そしてこの力は時間や空間でさえも超越する力を感じ取った。

悠気
 「……そうか、こうすればいいのか!?」

俺は不思議のプレートから力を取り出す。
俺は自ずと調律を意味を知った。
そのまま俺は手を振ると、念動力が発生しArc−1を襲う!
見えない念動力は空間を歪めた、Arc−1は身体を念動力で引き千切られた!

Arc−1
 『ふふ、流石だよ、もうレベルアップしている』

Arc−1は別の場所に再び再出現した。
そしてそのままArc−1は魔法を発動させる、氷の魔法が俺に襲いかかった!

悠気
 「こうか!?」

今度は俺は火の玉プレートの力を引き出す。
炎タイプになった俺は、炎を噴き出し、氷の魔法を相殺した!

悠気
 「おおお!」

俺は魔法の力を上回り、炎を爆ぜさせた!
爆炎はArc−1を襲う……が!

Arc−1
 『ではこれは?』

Arc−1は足元に魔法陣を放った。
魔法陣から凄まじい力が渦巻く、純粋に魔力をブーストしたのか!?

討希
 「悠気! 魔術とは空想の先にある! 闇の中に答えはある! お前は一人ではない! 内なる神と対話しろ!」

突然親父は何かを投げつけてきた!
俺はそれを受け止めると、それは銃弾だった。

討希
 「それは俺の『杖』だ、お前にくれてやる!」

銃弾には魔術の術式が組み込まれていた。
マギアバレットとして父さんが時に必殺の武器として用いる『杖』であり『魔術書』は魔術師の力をブーストする。

悠気
 「内なる……神」

俺は目を瞑った。
ただの人が魔術師となるその瞬間とは、闇に手を差し込んだ時、そこにある何かを掴んだ時だ。
自分が見る闇は、また同時に闇も俺を見ている。
闇の中に何があるか、それを決めるのは自分の想像に委ねられる。
だが魔術として、力として取り出すにはその先、空想の先の世界を知覚しなければいけない。

俺はその段階は既にクリアしている。
だが問題は内なる神だ……俺は一瞬の瞑想状態の中で酩酊したようにトリップした。
その無防備な時間、Arc−1は?

Arc−1
 『さぁ、光の魔法をお見せしよう!』

Arc−1が光り輝く。
魔法陣を用いた強大な極光の魔法はどれほど威力があるだろう?
だが、俺はそれを全ての五感をシャットダウンしているのに知覚している事に気がついた。
そう今、俺は第六感を用いていた。
そして第七感に俺は気配を感じた。

それは内なる神だ、おどろおどろしい目の凹んだグールのような怪物は俺に触れた。
畏れてはならない、内なる神を否定すれば、内なる神は荒ぶり、俺の精神をズタズタに引き裂くだろう。
内なる神は、爪を立てると、ゆっくり俺の胸に何かを刻んだ。
ああ……そうか、それが俺なんだな?

Arc−1
 『極光の力、受けるがいい!』

Arc−1は大きな光の玉を放った。
俺はボソ……と呟いた。

悠気
 「Yuk34が命じる……! 我が力に従え!」

俺は自らの魔法名を知った。
内なる神は意味の分からない魔法名を刻んだが、俺は本能的にそれを受け入れた。
魔術師になった俺は、その内なる神の持つ力を正しく稼働させた。

大量の魔素を受け入れ、俺は魔力を精錬した。
マギアバレットは触媒となり、俺の力をブーストする!

悠気
 「これが力だぁ!!」

俺は純粋な『力』をイメージした。
内なる神はそれをただの無色の魔力として解釈し、その力は極光の力とぶつかりあった。

力と力は五分!
Arc−1は六つの目を見開いた!

Arc−1
 『ハハハ! そこまで引き出すか! だが魔術では魔法に勝てない!』

Arc−1は腕を背中側から生やすとと、追加の魔法を発動させた。
光の光線は一斉に俺に襲いかかってくる!

悠気
 「く、ううう!?」

正直それでも厳しいものはあった。
アルセウスの力を引き出し、魔術の深奥に触れても、Arc−1の力は凄まじい。
理はそれ自体がルールのような物、誰もルールに抵触出来ない。

だが、例外はその時、行動を行った。


 『頑張って悠気! 私がついてる!』

その時半透明の彼女が後ろに顕現した。
宵はムーンフォースでArc−1の光線を相殺した!


 『悠気、負けないで! 私がついてる!』

俺はその一番心強い言葉にニヤついた。
敵が理なら、味方も理。
これでもう負ける気がしない!

悠気
 「おおおお! 裁きの礫!」

俺は裁きの礫を放った。
裁きの礫は極光の力を貫き、それはArc−1に降り注いだ!

Arc−1
 『ぬ、う!?』

悠気
 「穿けー!」

 『いけー!』

宵が俺とシンクロしているのが分かった。
そうか、宵も同じなんだ。
俺は嬉しかった、宵がそこにいるのだから。

極光の力が弾ける中、裁きの礫はArc−1の光を剥ぎ取っていく。
そして遂に裁きの礫はArc−1のコアである量子コンピュータアイリスを撃ち抜いた!

Arc−1
 『ふ、フフフ……流石だよ、やはりこれでは不完、ぜん……』

Arc−1は消滅の間際にも関わらず余裕だった。
量子コンピュータは破壊され、Arc−1はもはや自分を維持出来ない。

討希
 「人造の天使よ……ここは貴様の居場所ではない、滅びろ」

Arc−1
 『ふふ、そうさせて、もら、う』

Arc−1はそのまま消滅した。
壊れた量子コンピュータがその場に落ちると、Arc−1の膨大な魔力は拡散した。
俺は光り輝く空を見上げ、物凄く疲れたのを実感した。
俺は後ろを振り返ると、宵は既にそこにはいなかった。

悠気
 (宵の奴……理がルール違反しちゃ駄目だろう……でも、ありがとうな!)

俺は心の中でそう言った。
だが……その時、俺は宵がやったルール違反の意味、そしてArc−1の目的を読み違っていた事を今更知る事になった。

ゴゴゴゴゴゴ!

育美
 「な、なに? 時空振動?」

討希
 「馬鹿な……夢の世界が揺らいでいる!?」

それは時空の悲鳴だった。
夢の世界が泣いているのだ。
そしてそれは眼の前に顕現した。


 「ふ、アハハハ!」

それは物理法則を無視した顕現だった。
光の羽根を生やす女性が時空を割いて顕現したのだ。
俺はその姿に驚愕した。
ピンクのお団子ヘアをしたその女性は宵だった。
だが俺はそれを宵であり、そうじゃないと認識していた。

そう、その存在は……!



第5話 力の顕現 完

第6話に続く。


KaZuKiNa ( 2022/10/31(月) 18:11 )