突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語 - 第三部 突然始まるポケモン娘と夢の果てにアイツが来る物語
第3話 トキワカンパニー襲撃



悠気
 「いた、茜さん」

俺は上空から常葉茜さんを捜索すると、直ぐに見つける事は出来た。
とりあえず着陸すると、見失わないように尾行を開始するのだった。

悠気
 (おい宵……胸騒ぎの理由は分かったか?)

俺は今も理として夢の世界を監視する宵に聞いた。
しかし、宵は要領の得ない言葉で困惑していた。


 『やっぱり分からない……杞憂だよ、だって常葉って名前にピンと来た程度だもん』

宵は彼の世界では夏休みに常葉命と一緒に宿泊旅行に行っている。
俺にはそんな経験はないが、宵は俺より常葉を知っていると言えるからな。


 『ねぇ、もう帰ってもいいんじゃない?』

宵はそう勧めるが、それは俺が納得しなかった。
何故って? それこそ運命みたいなものだろう。

悠気
 (俺は宵を信じる、それだけは絶対さ)

やがて茜さんを監視していると、その周囲に不穏な気配を感じた。


 「……誰かと間違えてない?」

茜さんは道端で立ち止まると、その周囲に黒尽くめのスーツ男達が囲んでいた。
男たちは全員サイバーサングラスを装備しており、まるでどこかのエージェントだった。

黒スーツA
 「常葉茜だな? 余計な抵抗はしないでもらいたい」


 「またロケット&エンジェルコーポレーションかしら?」

悠気
 (また? いやそれよりなんでR&Aなんて大財閥が!?)


 『思い出した! トキワカンパニー! なんかR&Aはトキワカンパニーにが開発した携帯型量子コンピューターを求めていたんだ!』

携帯型量子コンピュータ?
確かあれって小さくするにはノイズの軽減問題で、既存のコンピュータサイズには出来ないって話だろう?
ただ単純に大きくしても性能は上がらず、それなら理論値は相変わらずスパコンの方が優れると聞くが。

悠気
 (R&Aも量子コンピュータの製造実績はあったろう?)


 『だけど性能では国内で三番手って評価ね、今国内で稼働している量子コンピュータの実績ではマサラエンジニアリング株式会社がトップよ』

確かトキワカンパニーって、マサラの子会社だったか?
となると、茜さんを人質にトキワカンパニーに技術を強奪する気か?

悠気
 (とりあえずやばくなるなら動くぞ?)


『うん! あんなハレンチな相手には遠慮なんていらないんだから!』

理たる宵のお墨付きを受けられたなら正に百人力だな。
それにしても夢の世界にまで、こんな悪党が混ざるなんて思ってもみなかったな。


 (考えたら不思議……どうして悠気はこんな奴らも夢の世界に転写したの? 普通なら余計な災いは不要の筈なのに?)

俺は事の成り行きを見守った。
黒スーツ達はいつでも茜さんを拘束出来る状態だった。
だが、茜さんは角度的に表情は見えないが、怯えている様子もない。
ていうかあの人、変な所で達観してるな?
普通なら泣き叫んで助けを求めるだろうに。


 「はぁ……ふ!」

突然だった、茜さんは溜息を吐くと、目の前の男に屈んで水平蹴りを放った!
黒スーツは反応が遅れて転倒した!


 『上手い! 非力さを理解したテクニカルな技だよ!?』

俺は直様飛び出した。
茜さんが予想外に戦える人なのもビックリだが、流石に多数に無勢だ!

黒スーツB
 「この! 抵抗は、あば!?」

俺は後ろから茜さんに拘束しようとする男に思いっきり、踵落としを頭部に叩き込んだ!
男は泡を吹いて、一発で昏倒。

黒スーツ
 「な、なんだお前は!?」

悠気
 「お回りさーん! 暴漢でーす!」

俺は迷わずその場で叫んだ。
周囲は人の数こそ少ないが繁華街なのだ。
たまたま近くを通りかかった警官は現場を目撃した。

婦警
 「アセリナさん! 現行犯です!」

アセリナ
 「天下の往来で暴漢とは上等じゃないか! やるぞうしお!」

警官はうしおと言われる人間とアセリナと呼ばれるグラエナのPKMの混合タッグだった。
黒スーツは状況不利と判断すると直様蜘蛛の子を散らすように逃走した。

アセリナ
 「逃げられると思うな!」

腕輪の装備を義務付けされていない警察管轄のPKMは凄まじいトップスピードで黒スーツの一人を追いかけた。
一方でうしおと呼ばれた方は、俺達の保護を優先した。

うしお
 「大丈夫ですか!?」


 「うん、ありがとうお姉ちゃん♪」

悠気
 (こ、子供の振り!?)

茜さんは婦警さんの前ではなんと、子供の振りをした。
どうも警察慣れしている臭いな。


 『先制攻撃したの茜さんだから、正当防衛が成り立たないかも知れないから……かな?』

だとしたらあざといな!?
愛らしさで暴行を乗り切る気かよ!?
色々無茶苦茶な御仁だよ!?

うしろ
 「えと、ご家族でしょうか?」

悠気
 「他人です」


 「うん、このお兄ちゃんに助けてもらったの♪」

まだ猫を被った演技をするのな。
人生楽しみまくってる人だなぁ。

うしお
 「聴取の為に、交番までご同行よろしいでしょうか?」

俺達は素直に頷くのだった。
それにしても俺が来なかったら、この人どうする気だったんだ?
まさかと思うが、そのままバックレる気だったんじゃ?



***



交番での聴取は直ぐに終わり、俺達は解放された。
茜さんと一緒に交番を出ると、彼女は真っ先に俺を見た。


 「どうして尾行したの?」

悠気
 「気づいていたんですか?」


 「こう見えても修羅場を潜った数が違うの」

茜さんは一見冗談めいた事を言うが、なまじあの立ち振舞い、第一世代PKMという事もあり、本当のように聞こえてしまう。
少なくとも見た目に騙されたら痛い目にあうな。

悠気
 「もしかして余計でした?」


 「まぁね、あの程度なら一人で切り抜けられたから」

迷わず断言っすか。
本当可愛い面して、中身は修羅なのかね?


 「まぁ、でも感謝するわ……万が一が無いわけでもなかったし」

悠気
 「茜さんを攫って奴ら何する気だったんでしょうね? 茜さんは心当たりは?」


 「多分……アイリスね」


 『確か携帯型量子コンピュータの名前ね』

初めて聞いたが、そんな名前だったのか。
確かに手の平サイズの量子コンピュータなんて今日でもそうはないが、量子コンピュータ自体はもう然程珍しくも無いのに、何故R&Aは求めたのだろう?


 「理由は知らないけど、大方私を人質にアイリスちゃんを交換材料にする気だったんでしょう……」

茜さんはそう言うと溜息を放った。
その顔は一度や二度、て感じじゃないわな。

悠気
 「R&Aを訴えたりは?」


 「しても大して効果が無い、彼らがなんでアイリスにご執心か、こっちからしたらさっぱり分からないんだもの」

茜さんはある意味で諦めているようだった。
R&Aの目的は不明だからこそ、あれほどなりふり構わないやり方をする。
それ程その量子コンピュータに価値があるのか?



***



そこは下町に工場を構えるトキワカンパニーだった。
そこの社長常葉茂は、目の前にホログラムを展開する、茨に覆われた少女と会話していた。

アイリス
 『マスター、奥様がR&Aの襲撃を受けたようです』

ホログラムの少女こそがアイリス、正式名称を新量子波形分列制御性コンピュータシステムバージョン1.38アイリスであった。
アイリスは世界中のインターネットを経由して、常に最新情報を得ている。
ハッキング対策も、本社であるならば分散配置型にサーバーを経由して、防護は完璧だった。


 「茜が!? 無事なんだろうな!?」

ピッチリとしたスーツを纏う社長常葉茂は40代の初老男性だった。
身体は鍛えているのか、身なりはしっかりしており、まだまだ覇気を感じるその男は、愛する妻の事になると狼狽した。

アイリス
 「はい、現地の警察官に助けられたようです」


 「そ、そうか……良かった、それにしてもR&Aめ……どれだけしつこいんだ!?」

茂はそう悪態をつくと、後ろを見た。
今会社はある種騒然としていたのだ。


 「はぁ……ただでさえ、爆破予告が来てるってのに」

しかり、トキワカンパニーに朝一番爆破予告は届いていた。
第一発見者は同社で働くラプラス娘の七島栞那であった。
直ぐに警察に連絡を入れ、今から現場検証に移る手筈なのだが。

アイリス
 『爆破時刻も方法も明示されず……話になりませんね』

アイリスはそう言うと首を振った。
そう、爆破予告というが、それには明白な声明というか、要求が無かったのだ。
実際爆破物の探知を行ってもらっているが、特にこれといった物は見つかっていない。

アイリス
 『計算では98%の確率でイタズラと結論づけます』


 「だが念には念だからな……そろそろ外に移動するぞ?」

アイリス
 『了解、端末に人格を移植します』

アイリスはそう言うと、工場の大型量子コンピュータから、そのデータを端末へと移送する。
携帯端末サイズに圧縮されたアイリスは、常葉茂の手元で優雅にホログラムを展開し、お辞儀した。
茂はアイリスを大切に抱きかかえると、そのまま外に出るのだった。



***




 「ねぇ? お礼をさせて? ねぇ? いいでしょう?」

悠気
 「いや、あのそういうのいいですから〜」

交番を出たあと、俺は急いでスーパーに寄らなければいけなかった。
だが、現在茜さんの猛烈プッシュに大苦戦していた。


 「貴方の事これでも気に入ったのよ? それともこんなおばさんじゃ興味ない?」

悠気
 「その言い方だと夫との生活に不満を抱えているように聞こえるな!? 間違っても高校生に言う台詞じゃねぇ!?」

何処ぞの性欲を持て余した人妻みたいな言葉を使われても俺は困惑する。
流石に俺もNTRする勇気はないぞ!?


 「あら、おませさん♪ こんなおばさんをそういう目でみたの?」

茜さんはさっきからこうやって揚げ足をとってばかりだ。
あと自分をおばさんと言うが、普通に若くて美人だからそこは自信を持っても良いと思います!
とりあえず埒が明かないとはこういう事か。

悠気
 「兎に角! 俺は用事がありますから!」

俺はそう言うと神速で無理やりその場から逃げた。
流石にイーブイ娘が神速は使えないだろう!?
最悪追いかけてきたら空に逃げる!


 『ねぇ? 悠気ってああいう熟女にも興味あるタイプ?』

俺は思わず吹いてしまった。
そのまま俺は悶絶してしまう。

悠気
 (お前……あの人を熟女って言うのはヤバ過ぎるだろう!?)


 『でも、そうでしょ? ねぇどうなの?』

くそ!? コイツさては俺のエロ本読みやがったな!?
変に知識を付けてやがる!?

悠気
 (ある訳無いだろう!? そこまで倫理観終わっているように思えるか!?)

俺はその場から飛び上がると、とりあえず上空から帰る事にする。
地上だと俺の一挙一動が見られるからな。

悠気
 「まず宵、なんでお前がそんな下世話な事を気にする?」


 『だって、悠気の本命ってイマイチ分かんないんだもん』

俺はそれを言われると押し黙った。
本命という言い方は卑怯な気もするが、あえて言えばそりゃ宵だろう。
宵だけがずっと俺と一緒にいて、俺をずっと支えてくれる。
そんな健気な相手をどうして蔑ろに出来るのか。
だが、俺はそれを言葉にはしなかった。
例え俺の想いを伝えても、宵を辛い想いにさせるだけだ。
彼女は理として世界を平等に見守らなければならない。
俺だけを依怙贔屓は出来ないのだから。

悠気
 「……なぁそれよりーー」

その時だった、突然後ろから衝撃波が発生した。
俺は言葉を遮り、後ろを振り返ると街の一角から爆炎が上がっていたのだ。

悠気
 「な……!?」


 『こ、これは!? トキワカンパニーで爆発!?』

宵は直様何が起きたのか解析した。
トキワカンパニーで爆発だと?
俺は茜さんの顔を思い出した。
いや、まさかとは思う……だが。

俺は空中で反転すると、そのまま爆発の下に向かった。



***




 「う……あ」

それは大惨事だった。
常葉茂が工場を出た直後、突然工場が爆音を放ち大爆発。
爆発に巻き込まれた茂は意識が朦朧としていた。
だが、爆破予告は本当だった。

サトー
 「社長しっかりしてください! 社長!?」

トキワカンパニー社長秘書のメタグロス娘のサトーは必死に茂の身体を揺すった。
茂はなんとかサトーに笑顔を向けた後、全員の安否を確認した。


 「さ、サトーちゃん、社員は? 無事?」

サトー
 「全員外に出ていましたので、何人か負傷していますが無事です!」

結局一番重症なのは茂だろうか?
いや、現場検証していた人達は……しかし、状況はまだ余談を許しはしなかった。

キュラキュラキュラ!

サトーはその嫌な音に顔を険しくすると顔を上げた。
憎悪に満ちたその瞳が見たのは重厚な装甲と履帯を持つ戦車だった。
十数台の戦車が周囲を取り囲んでいた。

サトー
 「く!? R&Aー!? 貴様ら絶対に許さんぞー!?」

サトーは吠えた、スーツの裾を破くと、金属質の豪腕が剥き出しにされた。
サトーは茂を護る為に戦車相手に立ち向かうつもりだった。


 「だ、駄目だ……抵抗はよせ」

しかし、茂はそんなサトーの足をよろよろと掴み、無駄な交戦否定した。
やがて戦車部隊の脇から重武装した兵士達が駆け寄ってきた。

兵士
 「見つけたぞ……約束の日はきた」

サトー
 「……く!?」

兵士達は銃をサトーに向けた。
多少なら金属の豪腕で防げるかも知れない。
だが、それでは茂を危険に晒すのは変わらなかった。
やがて兵士は足元に転がる携帯端末型量子コンピュータを手にした。

サトー
 「アイリスが今更何になると言うんだ!? こんなことして! 許されると思っているのか!?」

サトーは吼えるようにそう言った。
しかし兵士達は取り合う事もなく、端末を持った兵士だけを後方に送り、残った兵士達は銃をサトー達に向ける。

兵士
 「今更国家がなにか? これより聖誕祭は開始されるのだ」


 (聖誕祭……? どういう意味だ?)

茂は薄れゆく意識の中で必死に考えた。
だがアイリスと聖誕祭がどうしても結びつかない。
やがて兵士達はトリガーに指を掛けた。
サトーは必死に茂におい被さった。

サトー
 「社長はやらせない! お前達なんかにー!?」

兵士
 「健気だな……やれ!」

その時だった、一陣の風が起きた。
それは裁きだろうか?
サトーは空を見上げた。
その時、裁きの礫は戦車部隊を蹂躪していたのだった。



***



悠気
 「汚物は消毒する必要があるな?」

俺達は問題の現場に辿り着くと酷い有様だった。
なにやら悲痛な叫びをあげる女性に気づき、俺はやるせなかった。

悠気
 「この技を使うのは初めてなんだ、恨むなよ?」

俺はアルセウスとしての力を引き出すと、裁きの礫を放った。
俺の掌から放たれる万物の創造と破壊の力は、頭上で弾け、まるで流星のように周囲に降り注いだ。
裁きの礫は一撃で戦車を大破させ、兵士達を蹂躪する。


 『戦車は無人機よ! 遠慮はいらないから!』

悠気
 「そいつは重畳!」

俺はニヤリと笑うと、裁きの礫の出力を上げるのだった。



『突然始まるポケモン娘と夢の果てにアイツが来る物語』


第3話 トキワカンパニー襲撃 完

第4話に続く。


KaZuKiNa ( 2022/10/21(金) 18:00 )