突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語 - 第三部 突然始まるポケモン娘と夢の果てにアイツが来る物語
第1話 瑞香のイチャつき方



理となった宵は今日も夢の世界を演算し続け、そして管理する。
彼女の周囲には誰もおらず、また彼女を知覚出来るのも悠気だけだった。
そんな悠気の周りを眺めながら宵は微笑む。
悠気が笑っている、だから宵は嬉しいのだ。



第三部 突然始まるポケモン娘と夢の果てにアイツが来る物語



悠気
 「……」

俺の名前は若葉悠気、今日も平穏な夢の世界で暮らしている。
そんな夢の世界もようやく新年を向かえ、俺は高校三年生なっていた。
そんな始業式もある朝、俺は二人の女性に両脇から迫られていた。

瑞香
 「だーかーらー! ねぇ聞いているの悠気?」

柚香
 「お姉ちゃんより私の方が良いですよね!?」

悠気
 (どうしろと?)

俺の両脇を挟んで言い合いするのは、姉の山吹瑞香と妹の柚香だ。
俺はユズちゃんと愛称で呼んでいるが、ユズちゃんはサーナイトのPKMで、姉の方は人間だ。
広義で言えばどっちも人間とPKMのハーフであり、二人の容姿は似ている。
姉の方はエメラルドグリーンの綺麗な髪をセミロングで伸ばし、妹の方は髪飾りでアクセントをつけている具合だ。
二人は仲良しで、普段は喧嘩する事もなく、ユズちゃんが姉の真似をする。

そんな仲良し姉妹は、今朝の瑞香の余計な一言がユズちゃんに火を付けたのだ。



***



それは振り返る事30分前。
まだ家で朝ごはんを皆で仲良く食べていた時だった。

瑞香
 「うーん♪ みなもさん料理上手よねー♪」

柚香
 「うん、憧れちゃうなー」

いつも皆の食事を用意するのは我が家の住み込み家政婦の出海みなもさんだった。
アシレーヌの第一世代PKMであるみなもさんは、ややおっとりとしたお嬢様のような女性で、褒められると控えめに頬を緩めた。

みなも
 「ユウ様は如何ですか?」

俺は味噌汁を飲みながらその質問に答えた。

悠気
 「うん、良いですね。腕を上げてる」

みなもさんの料理の腕は母の育美がベースだ。
元々みなもさんは中国でマフィアの娼婦だったお人だ。
家事は元から得意だったが、母さんに徹底的に礼儀作法や料理のレクチャー等を受けて立派に成長していた。
俺は日々精進するみなもさんにグッショブと推す。

みなも
 「うふふ♪ 褒められちゃった♪」

柚香
 「うぅ、私も頑張らないとなぁ〜」

喜ぶみなもさんにライバル心を細やかながら持つユズちゃんはそう言うとグッと手を握り込んだ。
ユズちゃんも家事が得意で、料理はみなもさんとは別ベクトルで上手だ。
高校でも料理部に所属しており、基本レベルは高い。
だがやはりアマチュア、みなもさんをプロだと評するなら、やはりユズちゃんは高レベルのアマチュアと評さざるを得ない。

それは言葉以上に二人の絶対的な壁だった。
しかしそんなユズちゃんの頑張りを嘲笑ったのは、よりにもよって姉の瑞香だった。

瑞香
 「無駄無駄! 今更頑張ったってその差が埋るとは思えないわねー、それならー? 自分の得意とする所でアピールするべきじゃない?」

瑞香はそう言うと顔を俺に近づけた。

悠気
 「おい、瑞香?」

瑞香
 「ん♪」

瑞香は俺の頬にキスをした。
すっかり瑞香も自分の感情に素直になったのは喜ばしいが、時折こういう突拍子もない事をしてくるのが困りものだった。
しかし頬とはいえキスを目撃した女子陣は固まった。

柚香
 「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!? 悠気さんな、なな、なにを!?」

瑞香
 「なにって? キスじゃない? 愛情表現としては普通でしょう? ねぇ? 麻理恵のねーさん?」

丁度掃除をしていたみなもさんの姉になるジュナイパーの出海麻理恵は瑞香に話を振られると、特に動じる事もなかった。

麻理恵
 「ああ、普通だな」

麻理恵さんも慌てる事なくざっくばらんにそう言い切る。
瑞香も共同生活するようになって、すっかり麻理恵さんと仲良くなったものだ。
二人は馬が合うのか愛情表現が素直な方で、割と直球でやってくる。
一方で奥手なユズちゃんやみなもさんではそうはいかない。
二人は照れて顔を真っ赤にした。

みなも
 「ユウ様とキス……はぅ」

瑞香
 「ま、ユズには難しかったかしらねぇ?」

柚香
 「ッ!? 悠気先輩!」

俺はやっちまったか、そう思った。
ユズちゃんは確かに大人しい性格だが、その芯は瑞香以上の気性を持つ。
ユズちゃんはカチンときたのか机を叩くと、俺に顔を寄せてきた。
そして彼女は震えたまま、瑞香とは反対側の頬にキスしたのだ。

柚香
 「ん……わ、私だって、出来るん、だから……はぁ」

ユズちゃんは唇を離すと艶やかな色っぽさで、呼吸を少し荒くしていた。
思わず俺がドキドキしてしまう表情には息を呑んだ。

瑞香
 「ふーん、やるわね……!」

しかし今度は瑞香に火をつけたか?
俺は急激にかったるくなると、後は流れに任すのみだった。



***



……という訳で、姉妹は飽きもせず「あーだ、こーだ」と俺を挟んで言い合っているのだ。

柚香
 「大体お姉ちゃんは!」

瑞香
 「ユズこそねぇ!」

幸太郎
 「お前達いい加減にしろ」

二人の言い合いがヒートアップする中、後ろからそれを静止する声があった。
俺の親友の百代幸太郎だ。
3年生になり、更に貫禄がついたコウタは穏やかに二人を静止させた。

瑞香
 「あら、久し振りね幸太郎」

柚香
 「おはよう御座います百代先輩」

幸太郎
 「ああ、おはよう……悠気、お前はそろそろこの姉妹に首輪しろ」

コウタは要約すれば、ちゃんと管理しろという意味の言葉だったろうが、肝心の瑞香は顔を真っ赤にすると。

瑞香
 「え? SMプレイ!? ちょっと公衆の面前でそういうプレイは流石に恥ずかしいというか……♪」

悠気
 「馬鹿につける薬は無い……か」

瑞香
 「ちょっと!? 馬鹿って誰よ!?」

瑞香はそう言うと俺の尻にキックを放った。

悠気
 「ぐお!?」

くそ、相変わらずしなやかな鋭いキックだ。
ていうかコイツ本当に手加減してるのか?
もう慣れたとはいえ、いい加減高校三年なんだ、暴力女の異名はそろそろ要らないと思うんだがな?

幸太郎
 「はぁ……夫婦喧嘩は犬も食わぬ」

コウタはそう言うと首を振った。

柚香
 「ふ、夫婦……」

瑞香
 「もう、またそういう事言って」

かくいう瑞香も嬉しそうだった。
どうもコウタ目線だと俺はとっくに瑞香と付き合っているという認識らしいな。
それ自体別に俺は困らないのだが、肝心なのは瑞香とユズちゃんか。

瑞香
 「ねぇ? アンタ私とユズ、どっちと結婚したい?」

悠気
 「選ぶなら両方だと既に答えた筈だが?」

俺はそう言うとユズちゃんは恥ずかしさのあまり顔をカバンで隠した。
俺は誰も愛さないという理念で生きてきた。
その原因は昔魔術師に妹の宵が襲われた時、俺が妹を護る為に得た結論だった。
だが妹の為に奔走する俺は、その過程で全てを失った。
本当に冗談でもなく、俺は皆を不幸にしてしまったのだ。

俺は反省した、そしてこの夢の世界に希望を見出した。
俺は愛して欲しいと願うなら全力で愛しよう。
それが愛おしき相手ならば。

瑞香
 「あうう……馬鹿みたい、早く学校行きましょう?」

悠気
 「競争は無しだぞ? 始業式位ゆっくり行きたい」

柚香
 「私も悠気先輩に賛成」

俺達二人の意見を聞くと瑞香は「ぐぐ」と呻き、ゆっくり行くことは可決したな。
せっかちな瑞香は諦めると、そのまま横を歩いた。

悠気
 「瑞香、いい加減落ち着け」

瑞香
 「私は私なの! 親かアンタは!?」

親……か、瑞香達山吹家の家庭環境は最悪そのものだった。
所謂毒親であり、瑞香にとっては地獄そのものの環境だったろう。
それでも瑞香が親に反逆しなかったのは本人の義理だった。
瑞香は一見暴虐な女だが、その実自分に厳しいのだ。
分かりやすい苛烈さがある反面、その芯はユズちゃんと正反対。
だからこそ損のする性格なんだよな。

悠気
 「親が必要か?」

瑞香
 「え? それって……」

瑞香は親が必要なのだろうか。
俺はまだ子供だ、母さんや父さんの境地には至っていない故に、子供の傲慢さがきっとあるだろう。
だがもし瑞香が親が必要ならば、俺はそれを学ぼう。
親になる準備はきっと必要だから。

瑞香
 「も、もう馬鹿な事言わないの! 先行ってる!」

瑞香はそう言うと駆け足で学校に向かった。

柚香
 「あの……悠気先輩、どうしてお姉ちゃんにあんな事を聞いたんですか?」

同じ姉妹でも親から受けた愛は異なるユズちゃんだと少し分かりづらいか。

悠気
 「俺も親になる時かなってね?」

柚香
 「ええ!? それって……それって!?」

幸太郎
 「ほお? もう身を固める覚悟が出来たのか?」

悠気
 「覚悟というならとっくに出来てる……後は時間だな」

俺はそう言うと少し足早に瑞香を追った。



***



学園前は一層賑やかな物だった。
新入生達が今日から通う学び舎に期待し、エスカレーター式に高校に上がってきた生徒達は、新調した制服を見せあって和気藹々としている。
俺はそんな生徒達の後方からなんとか掻き分けて行った。

悠気
 「よっと……ち、ままならんな」

俺は生徒達の群れからある程度抜けると、下駄箱にたどり着いた。

琴音
 「あ、悠気君、おはよう!」

悠気
 「琴音か、おはよう」

一足先に集団を抜けていたのはメロエッタの大城琴音だった。
あの病弱で儚かった少女も、俺の魔術のレクチャーで身体の魔素を徐々に抜いていった結果、すっかり元気になったな。
かつては細すぎた手足も、今では健康的になった。
走ったりジャンプしたりこれならもう問題なさそうだな。

幸太郎
 「ほお、大城女子見違えたな?」

琴音
 「あ、百代君もおはよう」

コウタは腕を組んで頷く。
琴音も笑顔で挨拶した。

幸太郎
 「しかしよく進級出来たな? 出席日数足りたのか?」

琴音
 「それはもう……御影先生に一杯迷惑かけたよ〜、でもそれ以上に大変だったのは勉強だよ〜」

琴音は聡明で理知的だが、学業となるとからっきしだった。
俺も琴音の事を放っておけなかったから、勉強をずっと教えてきた。
ついでに瑞香も進級ギリギリだったしな。

琴音
 「兎に角お互いこれで上級生だね」

幸太郎
 「先輩方も卒業し、俺も柔道部の部長か、気を一層引き締めんとな」

上級生になった、という事はここには高雄萌衣先輩、パチリスの萌衣姉ちゃんはもういないという事だった。
萌衣姉ちゃんは無事学園を卒業し、プログラミング科のある専門学校へと進学した。
萌衣姉ちゃんとの約束、正輝さんに提出するゲームはなんとか萌衣姉ちゃんが卒業する前に完成した。
その出来はまだまだ現実を知れるただの凡作だったが、萌衣姉ちゃんも今はまだ芽を出したばかりだ。

幸太郎
 「さて、クラス別け確認に行くぞ?」

俺達は靴を履き替えると、クラス別けの書いてある張り紙の前に向かった。

悠気
 「お、3年連続だぞコウタ」

幸太郎
 「そのようだな、腐れ縁か」

琴音
 「やった、私も悠気君と同じクラス♪」

俺達は自分の名前を見つけると教室に向かった。
まだ生徒も疎らな中、一足先に向かった瑞香は手を振った。

瑞香
 「へーい! 腐れ縁共ー!」

結局瑞香も同じクラスか、中学時代含めたら6年連続なんだよなぁ。
俺達は必然的にまだ席も決まっていない中、瑞香の前に集まると席を取り合った。
俺は迷わず瑞香の後ろを選ぶ。

瑞香
 「ん? なんで後ろ?」

悠気
 「蹴られたくないから」

コイツは席が前だと容赦なく蹴ってくるからな、逆に後ろならその心配もない上、瑞香の様子も伺いやすい。
そんな話をすると琴音はクスクス笑って迷わず俺の隣に座った。
コウタはその前だ、やや不満そうだったのは瑞香だけだな。

幸太郎
 「ふ、どうせすぐに席替えだ」

瑞香
 「ふーんだ! 今年こそ私は淑やかに暴力とは無縁な淑女になってやるんだから!」

琴音
 「淑女ってそういうものなの?」

悠気
 「無理では?」

瑞香
 「うっさいわボケー!」

バチィン!

瑞香のツッコミチョップが俺の脳天に炸裂した。
俺は気怠げに瑞香の手を振り払う。

琴音
 「い、いきなり暴力!?」

瑞香
 「こんなの暴力の内に入らないわよ! ツッコミよ、ツッコミ!」

こんな有様の女になにが期待出来るのか。
俺は改めて瑞香のガサツな部分には諦めた。
これからもこういう関係は続くのだろう。

瑞香
 「ていうかさ? アンタもナチュラルに煽る癖どうにかならないの?」

悠気
 「性分だ、改善は考慮する」

改善、改善あるのみ。
宵の……そして異なる世界線の俺の口癖か。
マルチバースに俺が存在するとして、行動や癖がどれだけ似るのだろうな。

幸太郎
 「お、すまん少し席を外すぞ?」

やがて生徒達が続々と教室に集まる中、幸太郎はある女生徒を見つけてそちらへ向かった。

幸太郎
 「吹寄!」

それは幸太郎に好意を持ち、幸太郎もそれを恋としてでないならば、友人としてなら付き合おうと決めた相手吹寄女子だった。
昨年はクラスが違ったが、今年は同じか。
逆に瑞香をイジメの対象にしていた女子三人組はいないな。
良くも悪くも整理されたって感じだな。

キーンコーンカーンコーン。

やがてチャイムが鳴った。
因みに豆だがこのチャイム、ロンドン時計塔のチャイムが由来だな。


 「やっほー! ガキどもー! 久し振りー!」

アリアドスの第一世代PKMの御影杏先生も今更変わりない態度で元気に教室に入ってきた。
ざらっと見渡す限り去年から同じクラスの生徒が多く、先生としてもやりやすいやり方で、か。


 「さーて皆出席してるわねー、相変わらず湿気たガキどもね!」

悠気
 (御影先生も相変わらずか、そろそろ結婚して身を固めればいいものを)

俺は御影先生の相変わらずの暴言に呆れるが、自分で思ったこと、ついさっき瑞香に注意された事に気付くと、早速反省した。
自分のデリカシーの無い部分、やはり言われなければ直すことも出来やしない。
改善、改善あるのみ。


 「それじゃ早速だけど体育館に移動するわよー!」



***



今日は始業式という事もあり、体育館で学園長のありがたい話とやらを聞かされて、後は新しい教材などを受け取ると放課後だった。
この日はまだ部活はないし、多くの生徒が直ぐに家へと直帰だろう。

瑞香
 「ねぇ、この後皆で街で遊ばない!?」

琴音
 「え? 私もですか?」

幸太郎
 「俺も含まれている?」

瑞香と街で遊ぶ、それ自体は過去にも何度かあった。
とはいえ家にはみなもさん達も待っているからな。

琴音
 「あの、行きたいのは山々なんですが、今日は病院で検査がありまして……」

幸太郎
 「俺も少し用がある、パスだな」

早速二人脱落じゃねぇか。
まぁ無理強いも出来ないと、瑞香は落胆するが気を取り直す。

瑞香
 「しゃーない! じゃ悠気デートしますか!」

琴音
 「で、デート!?」

琴音が顔を真っ赤にして食いついた。
そういえば琴音とデートって一度もした記憶がない。
まぁそれ言ったら萌衣姉ちゃんやみなもさん麻理恵さんともなんだが。
いまいちデートと言っても何をすればいい、どこへ行けばいいか全然分からないんだよな。
瑞香とデートと言っても、どうせゲーセンに遊びに行くだけだろう。

瑞香
 「うふふー♪ だって二人っきりなら遠慮とか必要ないしー?」

瑞香はそう言うと妖艶に腕を絡めてきた。
まるで娼婦みたいだが、演技力が大根過ぎて全然萌えねぇ。

琴音
 「え、えっちな事もするんですか!?」

瑞香
 「あら、気になるの? 勿論ラブホで〜」

悠気
 「誰が行くと言った?」

俺はばっさり瑞香に言ってやった。
瑞香は言葉を遮るように言われると、急にしおらしくなり、目を潤わせた。

瑞香
 「なんで〜!? ていうか悠気、こんなに可愛い娘がいるのに全然手を出さない!」

悠気
 「自分を可愛いと思ってる奴言うほど可愛くない説」

瑞香
 「ムキー!」

瑞香は顔を真っ赤にすると両手を振り上げて癇癪を起こした。
そこまで怒るものなのかと思うが、瑞香も思う所があるのか。

琴音
 「クスクス、やっぱり二人は仲良いね」

幸太郎
 「全くだ、お前達お似合いだぞ?」

明らかに喧嘩のような物の筈だが、外野には微笑ましいらしい。
瑞香も俺も心外だが、何故そう見える?

幸太郎
 「お前達いい加減馬鹿ップルだと自覚しろ」

瑞香
 「え、ええ!? そう見えてるの!?」

琴音
 「うん、悔しいけどそう見えるよ……去年に比べても益々」

悠気
 「……」

俺はそう言われて、確かに瑞香は変わったなと納得する。
だが本当に変わったのはきっと俺だろう。
俺が瑞香を受け入れたから、瑞香もきっと感じ方が変わったんだ。

琴音
 「兎に角検査が早く終わったら、悠気君連絡入れるね?」

琴音は帰る用意を整えると、バッグを背負ってそう言った。
それを見て、コウタも帰る準備を整えた。

幸太郎
 「俺は今日は合流できん、また明日な」

琴音
 「悠気君、瑞香ちゃん、さようなら」

悠気
 「ああ、さようなら」

瑞香
 「ばいばーい、はぁ……」

二人は先に教室を出た。
瑞香は二人を見送ると溜息を放った。

悠気
 「で、行かないのか?」

瑞香
 「……連れてってくれるの? ラブホ」

俺は無言で、優しく瑞香にチョップを放つ。
アルセウスチョップだぞ? 何気にレアだぞ?
なんて冗談は止めておいて。

悠気
 「そういうのは卒業後まで我慢しろ」

瑞香
 「ち……あと1年か」

俺はそれには敢えて答えない。
瑞香が本格的に望んでいるのが理解ってきたが、俺も学生の瑞香を孕ませる勇気はない。

悠気
 「一応伝えておくが、俺は瑞香のそういう所が嫌いな訳じゃないからな?」

瑞香
 「そこは素直に好きって言ってほしい」

悠気
 「飽きないか? そういうの」

瑞香
 「一日10回は好きって言ってほしい!」

瑞香も結局は恋愛初心者、そういう乙女な部分がやはり子供っぽい。
みなもさんや麻理恵さんもたまにそういう愛され方を望んでくるが、瑞香は特に多いな。

悠気
 「好き、愛してる、これでいいか?」

瑞香
 「めっちゃ感情希薄ー、はぁゲーセンでいい?」

悠気
 「どうせ選択肢は他に無いだろ」

俺達は行く先を決めると直ぐに準備をした。
すっかり出遅れた俺達は空いた学園を出るのだった。



『突然始まるポケモン娘と夢の果てにアイツが来る物語』


第1話 瑞香のイチャつき方 完

第2話に続く。


KaZuKiNa ( 2022/10/15(土) 18:00 )