突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語




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第0部 突然始まるポケモン娘とあの夏の運命の物語
第1話 運命の日―Fate―



ある程度治安の良い住宅街、子供たちの元気な声があちこちから聞こえていた。

少年
 「待ってー! 萌衣姉ちゃーん!」

その幼い少年はリスのような尻尾の生えた少年より一回り大きな少女を追いかけていた。
鬼ごっこ中だろうか、萌衣と呼ばれた少女は振り返るも足を止めはしなかった。
そんな二人をオロオロと見る幼いPKMもいた。
月光のように美しい羽を生やしたクレセリアの少女だった。

そんな子供たちを優しく見守る大人達はいた。
あの幼い少年の父親、若葉討希は穏やかな表情で子供たちを見守っていたのだ。





第零部 突然始まるポケモン娘とあの夏の運命の物語




 「討希さん♪」

俺は無言で振り返った。
俺を呼んだのはママ友とやらと井戸端会議をしていた妻の育美だった。

討希
 「どうした、育美?」

俺は穏やかに微笑んだ。
育美と結婚し、息子も産まれて5年も経った。
俺は魔術を捨て、今では息子の為にも必死に働いていた。
最も生粋の魔術師であった俺は今更現代社会に馴染む事も出来ず、生活の大半は育美に頼る羽目になっているが。
育美は腕を組みながら近寄ってくると、いきなり抱きついてきた。

討希
 「どういう意味だ、育美?」

育美はアルセウスとかいう得体の知れない女だ。
自称神とは称するが、こうやっている内はただの女に過ぎない。

育美
 「うふふ、一人ぼっちじゃ詰まらないでしょ?」

育美は俺が一人ぼっちになっていると勘違いしているようだ。
俺はぼっちではない、一人でいるのが好きなのだ。
それに子供たちを見守る仕事もあるからな。

育美
 「討希さん、こっちでお喋りしましょ♪」

育美はそう言うと強引に腕を引っ張った。

ママ友
 「討希さーん♪ いらっしゃーい♪」

パチリスの女性、確か高雄萌がのほほんとした表情で呼んできた。
その隣にいたクレセリアの女性、月代晴香は諦めなさいという表情で首を振った。

討希
 「ち……俺にどうしろと?」

育美
 「いいのいいの! 会話に参加していれば」


 「そうですよ〜♪ うふふ♪」

晴香
 「ご愁傷様です、討希さん」

ご愁傷様だと思うならフォロー位して欲しい物だが晴香はしてくれないだろうな。
俺は改めて育美のママ友二人を見た。
萌は一行で一番身長が低い、だがそれはパチリスという種族に起因するらしく、こんな見た目でも一番しっかりとした母親だ。
対する悠気の友達の宵君の母親、晴香は落ち着いている。
娘は5歳になる筈だが、昨年父親を事故で失い晴香はシングルマザーとして頑張っている。
育美は特に晴香を気に掛けており、俺も支援は惜しまないつもりだ。
しかし3人ともPKMとはな、白い共通のやや大きな腕輪をしており、それはPKMの異能を封じる腕輪だった。
国から装着の義務化が進み、奇妙だがこの白い腕輪をつけたPKMが増え始めていた。

育美
 「ねぇ、討希さん?」

討希
 「なんだ?」

俺は子供たちに気をやりながら、この女性陣に答えた。

育美
 「この中で誰が一番美人だと思います?」

俺は沈思黙考した。
なんて下らない事を……俺はただ黙して苛立ちを募る。


 「どうです〜? うふふ♪」

討希
 「女性の美醜はその地域時代よって大きく価値観が異なる、無駄な議論だ」

俺はそう言ってバッサリ議論を断ち切った。
こんな会話を繰り返しているのか、育美達は……!

育美
 「ええー!? 私が一番じゃないのー!? 討希さんの浮気者ー!」

育美はそう言うと下手くそな嘘泣きをした。
しかしその嘘泣きが一番クリティカルだったのは、別の方角からだった。


 「なにぃ!? 浮気しているのか討希君!?」

萌の夫、高雄正輝は俺より二回りは大きい大男だ。
非常に暑苦しい男で、関わるのはかったるい相手だ。
決して悪人ではないのだが。

正輝
 「討希君! 君ともあろう者が浮気など!?」

討希
 「落ち着け正輝、俺は妻一筋だ、育美も嘘泣きをやめろ」

育美
 「テヘ♪ はーい♪」

育美はケロっと嘘泣きをやめるとこの熱血漢はキョトンとした。
まだまだ人生経験が足りんな。


 「貴方、まだまだね♪」

萌はそう言うとポコンと正輝の頭を叩いた。
優しいげんこつだったが、それが効いたのか正輝は男泣きをしだした。

正輝
 「うおおおん! 俺はなんて誤解をー!?」

討希
 「暑苦しい……」

俺は完全にこの大人達を無視すると、子供たちを注目する。
父親が泣いているを見て、我慢出来なかったのか萌の娘萌衣がダカダカと走ってきた。
俺は危険を察知して、その場から距離を取る、萌衣の尻尾が帯電していたのだ。

萌衣
 「泣くな鬱陶しいー!」

バチバチバチィ!

萌衣のスパークは蹴りによって放たれた。
正輝は娘のスパークを受けて感電する。

正輝
 「あばばばば!?」


 「きゃあ!? 大丈夫正輝さん?」

正輝
 「ふ、ふははははは! なんのこれしき!」

6歳にしてこれだけの威力の電撃を扱える萌衣も恐ろしいと思うが、正輝も大概だな。
俺は一応萌衣を注意するのだった。

討希
 「萌衣、みだりにその力を使ってはいけない」

萌衣
 「ええー? なんで?」

討希
 「君は大切な者を傷つける覚悟はあるか?」

俺は少し怖い顔をした。
生まれ持った異能を当然の物だと思う傲慢さを俺は知っていた。
血統主義に基づく魔術師には少なからずこのような価値観があるのだ。
萌衣は俺に気圧されると、悠気達を振り返った。

萌衣
 「傷つけない! 私皆護るもん!」

討希
 「過失は起きた後には手遅れだ……」

俺はそう言うと、萌衣の腕に装着してあった腕輪の制御機能をオンにした。
萌衣はギュッとスカートの裾を握ると涙ぐんだ。

育美
 「萌衣ちゃん? 今は難しいかも知れない、でも優しいお姉ちゃんの方が悠気や宵ちゃんも好きだと思うなー?」

育美は屈み込むと、そう言った。
俺と違い理知的で、そして子供にもわかり易い説明に萌衣は顔を上げた。

萌衣
 「本当? なる! 優しいお姉ちゃんになるよ!」

萌衣はそう言うと笑顔で頷いた。

悠気
 「お父さーん!」


 「ママー!」

突然子供達が抱きついてきた。
俺は悠気を抱き止めるがどうしたんだ?

晴香
 「どうしたの? 寂しくなった?」


 「うん、うん」

宵は萌衣が取られたとでも思ったのか、母親が急に恋しくなったらしい。
もう5歳といえば5歳だが、まだ5歳といえばまだ5歳だな。
知識は基より乏しく、空想の魔物を見たか。

討希
 「悠気、どうした? 怖いか?」

悠気
 「ううん、でも……」

悠気は大人しい子だ、アルセウスのPKMで、医者の診断書では陽性と出た。
他の第二世代PKMと比べるとあまり人間と見た目が変わらないが、これでも来年には制御装置の義務化が待っているのか。

討希
 「俺は悠気の側にいる」

悠気
 「うん……」

育美
 「ふふ、悠気ー? そろそろ帰ろうか?」

悠気
 「……うん」

悠気はまだ少し遊びたそうだが、育美には素直に従った。
悠気は育美に抱きつくと、育美は悠気を抱き上げた。

育美
 「それでは皆さん、お先に失礼します」


 「はーいまた明日ねー♪」

正輝
 「討希君、たまには一献付き合えよー!」

俺達は手を振って、家へと変えるのだった。



***



育美は家に帰ると主婦の顔になった。
今から夕飯の準備があるため、必然的に俺は悠気を見ている事になる。

討希
 「悠気、何をしているんだ?」

悠気はなにやら画用紙に絵を描いていた。
何を描いているのか覗いて見ると。

討希
 「……? これは?」

悠気
 「あのね……月がグルグルするんだ」

悠気が描いた絵のまず一番最初に異様に気がついたのは、奇妙な渦に巻き込まれ月だった。
月が渦を巻く? 嫌に抽象的だ、だがなんだこの異様な胸騒ぎは?
俺は次に他の絵に注目した、大きな巨人?

討希
 「悠気このだいだらぼっちみたいな絵は?」

悠気
 「分からない……」

悠気はまるで神がかった、正しくオカルトのような絵を次々と描いていた。
先程の奇妙な巨人は手を振り上げ、何か刃物を持っている。
湾港だろうか、暗い闇に何かが浮かんでいる。
そして最後3対の羽根を持つ天使がその絵の中央に。

ピンポーン!

討希
 「ッ!」

俺は顔を上げた。
玄関の方を向くと、キッチンにいた育美が応対に出る。

育美
 「はいはーい♪ あ、晴香!」

玄関を覗くとそこにいたのは晴香だった。
晴香の足元には宵もいた。

晴香
 「今日もお願いします」

育美
 「はーい♪ 宵ちゃん中に悠気もいるわ、行ってらっしゃい♪」


 「うん、お邪魔します!」

宵は玄関で靴を脱ぐと、自分で靴を正す。
そして笑顔でリビングに向かった。


 「悠気お兄ちゃん♪」

悠気
 「宵、いらっしゃい!」

晴香は普段夜勤で働き生活費を稼いでいた。
その為この時間は我が家で宵を預かる事が恒例だった。
俺もそれには異存はない、なにより育美は子供好きなのも手伝って喜んでいた。

育美
 「晴香、お仕事頑張ってね♪」

晴香
 「ええ、育美、宵をお願いね?」

育美と晴香は親友とも呼ぶべき程に仲が良い。
二人は笑顔で別れると晴香は仕事に向かった。


 「何描いてるの?」

悠気
 「一緒に描く?」


 「うん! 描くー!」

俺は悠気の描いた絵から異様な空気を感じ取った。
悠気と宵は新しい画用紙を取り出すと、お互い好き放題クレヨンで描いていたが、そこには他愛もない子供らしい絵が描かれていた。

討希
 (宵……月代……まさか、な)

俺は歪んだ月に晴香を想像してしまった。
月とクレセリア……今日は三日月だった。



***



晴香
 「ふぅ、急いで帰らないと」

夜も耽る頃、晴香は夜勤を終えて急いで帰っていた。
彼女は繁華街の飲食店で働いており、給料の面では良い仕事だったが、娘の宵の事を考えると出来れば仕事を変えたいとも思っていた。
とはいえ保育園は中々見つからない。
今は無二の親友の若葉夫妻が宵の面倒を見てくれているが、これ以上迷惑を掛けたくないのだ。

晴香
 「晩ごはんは食べているわよね……」

宵はきっと育美に晩御飯を振舞って貰っているだろう。
極度の世話好きな上に何処で習得したのか謎な程、様々な料理に精通する育美だ、宵も育美の方が美味しいと言うだろうか考えると、苦笑してしまう。

晴香
 「何か買って帰って……あ」

ふと、晴香は繁華街で足を止めた瞬間だった。
いつの間にか後ろにいたある奇妙な格好の男性にぶつかってしまった。

晴香
 「す、すいません!」

相手は白いローブを身に纏った白人の男性だった。
凄まじい美形で、思わず晴香もドキリとした。
ローブの白人はそんな晴香を見下ろすと。

ローブの白人
 「月の羽……いや、こちらこそ済まない」

晴香は自分の身体から独立するクレセリアの羽を見た。
男性は穏便に済ますと、その隣にいた同じく白いローブに身を包む黒人男性が促した。

黒人男性
 「ヨハネ、先を急ぎましょう」

ヨハネ
 「うむ、それでは失礼します」

ヨハネと言われた白人は丁寧に会釈すると、晴香は道を譲った。
その一方、一際小柄なローブで顔を隠した女性を晴香は見た。

女性
 「ち! PKMが……!」

晴香
 (なに? コスプレ? それにしては異様だけど)

いつの間にか背後にいた事、そして全員が白いローブに身を包んだ特徴的な一団。
それは修道士にも思えたが、明確な悪意に晴香は身を捩った。

晴香
 (あの女性普通じゃない……PKMを憎んでる?)

腕輪で制御している晴香には以下にエスパータイプといえど、あの悪意の意味を読心する事は出来ない。
それでも生粋のエスパータイプだからこそ、高い感受性が危険信号を放ったのだろう。


 「ふーん、メルト、アイツにしよう♪」

晴香
 「え!?」

突然だった、暗がりに晴香が振り返った時、何かスライム状の何かが晴香に襲いかかった!
晴香は身を捩ったが、スライムは晴香の口も鼻も塞いでしまった。
呼吸が出来ない中、晴香は必死に制御装置に触れようとした。
しかしスライムはそれも許さず、晴香は何も抵抗出来ないまま、ただ暗がりに引きずり込まれた。

晴香
 (一体なにが……誰か助けて……宵!)



***



討希
 「……」

深夜俺は悠気と宵が眠ったのを確認すると、紺のローブを手に取った。
もうボロボロで本来なら廃棄処分する手筈だった。
だが俺は再びそれを纏うと、魔術師に戻る。

育美
 「討希さん……どうするの?」

育美は不安そうに俺を見ていた。
分かっている、一度は捨てた過去、今更必要ではない筈だ。

討希
 「晴香の戻りが遅い、育美は念の為家に」

育美
 「それはいいけど……貴方そんな古いローブを」

俺は魔術を発動すると、見かけは新品のようなローブに変化した。
そして俺は表情を隠す魔術を自分に施した。

討希
 「もし魔に類する者がこの街にいるのなら、俺は狩る」

俺はそう言うと、机の引き出しを開いた。
昔使っていたナイフにレミントンの改造銃を取り出すと、懐に仕舞った。

育美
 「討希さん……貴方は」

討希
 「止めるな……俺は所詮クズだ、クズだがクズなりに護りたいモノがあるだけだ」

俺はそれを最後に周囲に風を起こした。
俺は転移魔術でその場から空間転移した。

討希
 (もし悠気に魔術の素養があるなら……あの絵には何か意味がある)

俺は人のいない湾港に転移すると空を見上げた。
三日月は地上を優しく照らしている。
一方で俺は魔力を大きく膨れ上がらせた。
俺はここにいるぞ、と餌を撒く。
すると餌には直ぐに掛かった、いや初めから狙われていたと思うべきか。

それは正面から堂々と歩いて来た。

討希
 「ローマ正教イスカリオテ機関か」

討希が目にしたのは純白の修道服だった。
それは異端審問官として知られ、公式には存在を認められていない異端者狩りのプロとも呼べる魔術師だった。
あまりにも成端で奇妙とさえ思える白人の男は無造作に俺の10メートル手前で足を止めた。

ヨハネ
 「初めまして、私はヨハネ・アンデルセン」

討希
 「偽名か……異端者狩りがこの街になんの用だ」

ヨハネと名乗った男は「ふふ」と余裕のある笑みを浮かべた。
俺はそのありふれた名前に即偽名と見抜くが、その程度で動じない、か。

ヨハネ
 「知れたこと、君は指名手配されているのだぞ?」

討希
 「……狩るの俺で、獲物はお前達だ」


 「狩人気取りか! 我が炎の契約に従い、奴を火の連鎖で包め!」

俺は冷静にその声の方を向いた。
女の魔術師が詠唱を行うと、強大な魔力が迸る。
炎の鎖は女魔術師の周囲を渦巻き襲いかかった。

討希
 「『無駄』だ」

俺は詠唱した、詠唱と言っても言ってみれば高速詠唱だが、俺の場合勝手が違う。
俺の魔術希望は俺の望みを叶える力を持つ。
だがこの力は俺の強い精神力に支えられている、この力を正しく扱うには狂気じみた精神力を必要とした。

炎の鎖は俺の射程2メートルに侵入すると、魔素に分解されて消滅した。
紫色のパーティクルが散り、俺は力の差を見せつけた。

ヨハネ
 「イリアナ、余計な力を使うまでもない」

イリアナ
 「く……! 分かった! ヨハネに従う!」

討希
 「貴様達……なんのつもりだ?」

俺は更に一人、俺が反撃に移れば即座に射殺すという殺気を放つ魔術師を見つけた。
俺は三方の魔術師に警戒しながら、もっとも強大な力を感じるヨハネに注目した。

ヨハネ
 「今日は挨拶だよ、まだ今宵はその時ではない」

ヨハネはそう言うと手を上げた、その背中に光の片翼が振り上がった。
すると二人の魔術師を自身の側に転移させた。

討希
 (あの魔力……!)

俺は驚いた、ヨハネは殆ど詠唱を行わず魔術を行使してみせた、こんな芸当が出来るとしたら世界でも三指に入る魔力量の持ち主だろう。
そして確かに魔術の瞬間ヨハネは片翼であるが光の翼を広げたのだ。

討希
 「悪趣味な魔術だな」

ヨハネ
 「否、この力はまだ至らぬ、私は出来損ないだよ」

天使を気取る魔術師は、それが半端な事を自覚していた。
しかし謙遜はしているが、その力は先程の炎を扱うイリアナと呼ばれる女性や、寡黙な黒人魔術師よりも上だった。
俺は極めて警戒する。
俺の魔術は極端に射程が短い故に、この距離では何も出来ないのだ。

ヨハネ
 「さて、顔見せは済ませた……今日はお暇させていただこう」

討希
 「待て」

イリアナ
 「テメェ!? やんのか!?」

烈火の如き希少の女魔術師が吠えた。
ヨハネはそんな魔術師を手で制すると、俺を静かに直視した。

ヨハネ
 「まだなにか?」

討希
 「月代晴香、クレセリアのPKMをどうした?」

ヨハネ
 「クレセリア?」

黒人男性
 「2時間ほど前結界に偶然侵入したPKMでは?」

ヨハネ
 「ああ、あの時の? 失礼だが質問の意味が分からないのだが?」

俺はそれらのやり取りから、晴香の行方不明と奴らが関係ない事を知った。

討希
 「どこで出会った?」

ヨハネ
 「繁華街だが、大切な人かな?」

俺はそれで充分だった。
こいつらを全員殺すのは今じゃない。
同時に奴らもこちらに宣戦布告しているのだ。
今はこいつらよりも晴香だ。
俺は即座に転移魔術を試みた。
周囲に風が逆巻くと、俺はその場から転移した。



***



ヨハネ
 「ふむ、アレがHope49か」

黒人男性
 「事前調査では若葉討希、現地のPKM若葉育美と息子若葉悠気を設けています」

イリアナ
 「ち!? テロリストが家庭をだぁ!? 生意気な奴だ! 何故直ぐ抹殺しなかったヨハネ!?」

討希が転移した後、彼らも既に湾港に用は無かった、一行はその場をすぐに去る。
イリアナはいつでも討希を殺す気概は十分だった。
だが、ヨハネはあくまで冷淡に言葉を返した。

ヨハネ
 「言ったでしょう、まだその時ではない」

この三人、ヨハネは明確な上司ではないがヨハネが最も力があるのは正しかった。
だからこそこのイリアナも命令に従うのだった。

イリアナ
 「ち……時ってどういうこった!? お前の魔術に月齢が関係するなんて聞いた事がねぇぞ!?」

世の中には月齢により強弱の変わる風変わりな魔術師も存在する。
勿論ヨハネはそうではない……だが、ヨハネは微笑を浮かべると、イリアナは恐怖した。

ヨハネ
 「クク……そうですね、関係ありませんよ、月はね?」

イリアナ
 (な、なんだ……!? ヨハネの奴なにを考えている!?)

ヨハネから漏れる異様な気配、それは喜びだった。
ヨハネは今宵を喜んでいた、ようやくこの時が来たのだと。



『突然始まるポケモン娘とあの夏の運命の物語』


第1話 運命の日―Fate― 完

第2話に続く。


KaZuKiNa ( 2022/10/05(水) 18:01 )