突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語




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第2部 突然始まるポケモン娘と夢を見る物語
第33話 姉妹の絆



瑞香
 「……うーん?」

悠気
 「目覚めたか」

昼飯中に気絶した瑞香が目覚めたのは残り休み時間は5分という所だった。
そろそろ急がないと授業に遅れる時間だが、俺はあまり動じていない。
瑞香がそのまま眠っているなら、俺はそれに付き合うつもりだったし、問題があるとすればユズちゃんの方だった。

柚香
 「おはようお姉ちゃん」

瑞香
 「あれー? 私どうしてー?」

悠気
 「気絶してたんだろ、ほら、早く退け」

俺は瑞香の枕になっていたから、少し邪魔だった。
しかしその事実を知ると、瑞香は一気に顔を赤くするのだった。

瑞香
 「きゃあああ!? 悠気変な所触ってないわよね!?」

悠気
 「するか」

柚香
 「ていうか、させないよお姉ちゃん」

瑞香は慌てて起き上がると、俺から離れて身を守るように構えた。
随分恥ずかしい事を想像したようだが、俺にそんな趣味はない。

瑞香
 「それはそれで女として馬鹿にされたみたいで悔しい……ていうかユズ?」

柚香
 「はぁ……お姉ちゃん、もう授業だから私行くね?」

ユズちゃんは事前に持ち物を片付けており、最後まで俺に付き合っていたが、1年生は2年生より教室が遠いので、ユズちゃんは立ち上がると頭を下げた。

柚香
 「それでは悠気先輩、今日はありがとう御座いました」

ユズちゃんはそう言うと走って屋上の出口に向かった。
何が起きたのかまだよく分かっていない瑞香は呆然としていた。

瑞香
 「えと? なに? なにがあったの?」

悠気
 「ふ、おい、授業まで後3分だぞ?」

俺は微笑を浮かべるとはぐらかす。
瑞香は時間を聞くと顔を青くした。

瑞香
 「は!? それ早く言いなさいよ!? 遅刻しちゃう!?」

瑞香は慌てると直様既に片付けてあった弁当箱を回収すると、ある事に気がつく。

瑞香
 「あ……」

悠気
 「どうした? 急がないのか?」

瑞香
 「お弁当……とっても美味しかった、わ」

瑞香は最後の方の言葉は小さく聞き取りづらかった。
しかし直ぐに瑞香は怒鳴りながら教室へ急ぐ事を急かすのだった。

瑞香
 「あー!? ほら、早く行くわよ!?」

俺は頷くと、瑞香と一緒に教室へと急ぐのだった。



***



キーンコーンカーンコーン。


 「はい、ガキ共ー! 気を付けて帰るのよー!?」

その日、終業するとそれぞれの生徒達は動き出した。
部活に出る者、そのまま真っ直ぐ帰る者もいれば、寄り道する者もいるだろう。
だが取り敢えず俺は瑞香に注目する、瑞香は立ち上がるといつものように鞄を持って教室を出て行った。
俺はその後ろをそっと見守る。


 『バイト……かな?』

悠気
 (間違いないだろうな)

だが、俺はそんな瑞香の背中を見て不安が募るのだった。

悠気
 (宵、一つ質問だが、歴史はこのまま平穏が続くか?)


 『……悠気の知っている歴史の通りだよ』

宵は心苦しそうにそう言った。
俺は尚の事目を細め、拳を強く握り込んで怒りを抑えた。

悠気
 (まだ足りないのか……夢の世界の創造のピース)

俺はこの可能性世界線から必ず、皆を救ってみせる。
あの彼とは違う、本当に必要な世界を……。

やがて、瑞香は学園の正門を抜けると、足を止めた。
俺は気づかれない程度の距離から見守っていたが、瑞香が足を止めたのは。

瑞香
 「父さん……どうして?」

そこにいたのは身なりの良いスーツを纏ったエルレイドの男だった。
俺はそれを見て、僅かに目を細めた。


 『瑞香ちゃんのお父さん?』

悠気
 (確か山吹真だったな……)

瑞香の父親はかつて病院で見た時の記憶とソックリだった。
高圧的で瑞香を見下すその男はただ一言こう言った。


 「帰るぞ瑞香」

瑞香の父親はそう言うと瑞香の腕を掴んだ。
しかし瑞香は抵抗する、だが体格で劣る瑞香は敵わない。

瑞香
 「いや! やめてよ!? なんで今更!? 私なんていらないんでしょ!?」


 「我儘もいい加減にしろ!」

瑞香の抵抗を見て、俺は思わず飛び出そうとした。
だが、それよりも僅かに早く彼女が後ろから飛び出してきた!

柚香
 「お姉ちゃんに何するのーっ!?」

ユズちゃんは鬼気迫る表情で、瑞香と父親の間に入り込んだ。
そのままユズちゃんは瑞香でさえ見せないような憎悪で父親を睨みつける。


 「柚香!? 何故そいつを庇い立てする!?」

柚香
 「お姉ちゃんはお姉ちゃんでしょ!? お姉ちゃんは道具じゃない!」

瑞香
 「ユズ……アンタ」

柚香の啖呵に父親は怯み、瑞香は弱々しかった。
俺はそんなユズちゃんにはっきり確信が出来た。

悠気
 (元々激情を秘めてはいたんだ……)


 『瑞香ちゃんは逆って事?』

悠気
 (少なくとも瑞香は誰も恨んではいない、だがユズちゃんは別だ)

仲良しの姉妹であって、そして姉に対抗心を持ち、そして強い共感を持つユズちゃんは姉以上に感情を爆発させればなにが起きるか分からない気性の持ち主だ。

瑞香
 「やめてユズ、分かったわ……帰るわ父さん」

しかし、それを見て瑞香は帰る事を決心した。
奇しくも父親には従わない瑞香だが、妹を天秤に掛けたか。


 『なんで? どうしていきなり手のひらを返すの?』

悠気
 (瑞香にとっても一番大切なのはユズちゃんだからだ。ユズちゃんこそが彼女達の家の希望だからこそ、瑞香は犠牲の道を選ぶしかないんだ)

柚香
 「お姉ちゃん……」

半泣きするユズちゃんに、瑞香は優しく抱擁した。

瑞香
 「ありがと、ユズ。私の為に怒ってくれて」

瑞香は愛する妹にそう感謝すると、身体を離した。
父親に振り返ると瑞香は毅然な態度を示す。

瑞香
 「ほら、帰るんでしょう?」


 「むぅ、まぁいい」

父親はユズちゃんの豹変に驚いたようだが、一先ずは納得し、瑞香と共に帰るのだった。
後に残されたユズちゃんは、自分の力不足に嘆くように圧し殺すように泣くのだった。

悠気
 「ユズちゃん、元気だして」

俺はそんなユズちゃんの肩をそっと叩いた。
ユズちゃんは俺に気付くと、更に泣き出してしまう。

柚香
 「悠気先輩……私、お姉ちゃんに迷惑掛けたでしょうか?」

悠気
 「違うな、瑞香を迷惑に思っているのは寧ろユズちゃんの方だ」

柚香
 「私お姉ちゃんをそんなには!?」

悠気
 「ああ、だが現実はこれだ。いい加減自覚するんだ。君の感情が必ずしも姉に受け入れられない事を」

俺は正直厳し目にユズちゃんを諭した。
愛すれば愛するほど、互いを傷つけ合うヤマアラシのジレンマのように山吹姉妹は苦しんでいた。
ウンザリする程、それこそ反吐が出るようなクソみたいな世界だ。
俺は静かに怒りを燃やした。
何故年端も行かない少女達が苦しまなければいけないのか。
もし神が艱難辛苦を好み求めるならば、俺は全力で歯向かってやる。


 『悠気……あなた』

宵は不安そうな声を上げた。
俺は怒りを鎮め、なるべくユズちゃんにも気づかれないよう努めた。

柚香
 「ああっ!? なんで、なんでどうにもならないの!? 私はお姉ちゃんに幸せになって貰いたいだけなのに!?」

悠気
 「その為ならば自分を犠牲にか?」

俺は少し怖い顔でそう聞いた。
ユズちゃんは少し怯えて、暗い顔で俯いた。

悠気
 「ユズちゃんの姉、瑞香も同じだ。自分が犠牲になればユズちゃんを幸せに出来ると本気で信じていやがる」

柚香
 「お姉ちゃんも……?」

想いは同じなのだ。
受け取った夢の欠片があまりにも好対照であった。
だがその矛盾した願いを叶えられる程世界は優しくなかった。
姉が妹を、妹が姉の幸せを願えば、それは結果的に両者を不幸に落とした。
父親殺しの濡衣を背負った瑞香も、そんな姉の偽証をどうすることも出来ないユズちゃんも、結局は世界に振り回された犠牲者に過ぎない。

悠気
 (犠牲者? そう……! 犠牲者だ、くそったれめ!)

俺はユズちゃんを真剣に見つめる。
そして不安げなユズちゃんに俺はこう言った。

悠気
 「いいか? 姉の幸せを願え! でもそれ以上に自分の幸せを願え!」

柚香
 「姉の幸せを願い、それ以上に自分の……?」

今のユズちゃんには理解らないかも知れない。
だが必ず重要な要素なんだ。

悠気
 「欲張りになれ、幸せになる事は批難されるべきことでは無い!」

柚香
 「本当にいいんでしょうか? 私、幸せを願っても?」

悠気
 「死神気取りか? なら瑞香は貧乏神気取りだな?」

死神、貧乏神……あの二人の宿命がそれなら俺は覆す。
ユズちゃんの纏う死神の気配、俺はそれを認めるつもりはない。
誰も幸せになれないあの未来に、その為の人身御供も結局はなんの意味も無かったんだ。

悠気
 「俺を信じてくれ……瑞香は絶対に俺が救う!」

柚香
 「……信じます。お姉ちゃんが大好きな悠気先輩を!」

俺は少しだけ不器用微笑んだ。
ユズちゃんは自分の無力さに押し潰されるだろう。
だからこそ俺はそんなユズちゃんの足りない力の代行になろう。
ユズちゃんを死神にはしない、ユズちゃんには笑顔でいて欲しいのだ。



***



瑞香
 「久し振り、ね……」

私は久し振りに家へと帰ってきた。
私の部屋は出て行った日からなにも変わっていなかった。
両親にとって、私は要らない子の筈だ、両親の求める能力を尽く持っていない私は妹の付属品が精々だった。
だがそんな私にも我慢の限界がある。
家を飛び出して河川敷のダンボールハウスで暮らしていたのは、そんな反発心の為だった。
しかし、あんな父親でも、娘の一人が失踪では周囲への示しがつかないのだろう。
若い時から苦労していた父親だ、周囲の目を気にするのだろう。

瑞香
 (あーあ、まぁそりゃ私も腹を括るしかないか)

思わず悠気に優しくされた事を思い出すと、泣き出しそうになるが我慢した。
私は長女ですもの、妹みたいにぴえんと泣いて等いられない。

瑞香
 (両親にはこれでも、私にブランド価値があるって事かしら? ユズが可愛いのは認めるけど、私も少しは可愛がりなさいよね?)

私はベッドに倒れ込む。
自分の存在が段々空虚に思えてきて、両親の求める人形としての役割に納得しそうになっていた。

瑞香
 (私が聞き分けの良い人形にさえなれば、ユズを幸せに出来る)

悠気なら、特にユズを絶対に守ってくれる筈だ。
もうこれは賭けのような物だ、もし外せば悠気を一生恨んでやる。

瑞香
 「悠気、悠気か……」

私は横になると、悠気の事を考えた。
悠気は私の為に怒ってくれて、私の為の心配してくれて、私の為に不器用な愛し方をしてくれた。
本当はもっとデリカシーがあって、私の事もっと真剣に見てほしい。
私のことを愛してくれるって言ってくれた時はすごく嬉しかった。
私は、私は……!

瑞香
 「……あ」

私はニヤけていた自分に気が付く。
気付けば悠気の事ばかり考えていた。
それだけ悠気の存在が大きくなった証だった。

瑞香
 「悠気の……バカ、バカバカバカ! 早く私を助けなさいよ、私の、私達の王子様」

私は悠気の事を想えば想うほど、更にその想いを強くしてしまった。
顔が赤くなる、彼の事は全部本音として吐き出された。
私は赤くなった顔を手で覆うと、そのまま身体を横へ一回転させた。
想えば想うほど、苦しくなっていく……なんでこんなに好きになったんだろう?



***




 『で、どうする訳?』

悠気
 「さてな」

俺は家に戻ると、夕飯の準備をするのだった。
そんな様子に宵は少し不満顔、俺の対応を不十分だと思っているのだろう。


 『もう! 本当に大丈夫なの!? 瑞香ちゃん連れて行かれたんだよ!?』

宵は史実再現を恐れている。
史実が再現されればユズちゃんが父親を殺し、瑞香が偽証を行い、そして二人は救いのないドン底に落ちる。
考えたら本当にクソみたいな未来だな、おい。

悠気
 「心配なら、瑞香の様子でも見てきたらどうだ?」


 『そうする……』

宵の気配が遠ざかった。
俺は気にせず支度をすすめる。


 『ねぇ、どうして悠気はそんなに落ち着いていられるの? 二人を信じているの?』

ふと、声が返ってきた。
落ち着いている、か……これも彼なりに言えば改善なんだろうな。

悠気
 「信じているさ、俺に出来るのは後たった一押しだ」


 『一押し……それだけ?』

悠気
 (史実再現を逃れる事は出来ない……だからこそ俺は宵に協力してもらい夢の世界を創り出した……もう、願いは完成しつつある)

後は……そう、切欠だろう。



***



夜が更けた、山吹宅に静寂が訪れる頃。

柚香
 「いい加減にして!」


 「お前こそいい加減目を覚ませ! あんな屑がなんになる!?」

柚香と父親の口論は始まった。
徐々にヒートアップする二人、瑞香が介入し出すと、宵は不安視した。

瑞香
 「ユズに何するのさ!?」

バチン! と父親は柚香の頬を叩くと、瑞香は柚香を庇うように前に出た。
このままでは史実再現は起きてしまう。
もしかして悠気は本当はもう手遅れ、失敗だと思っているのではないか、宵は不安になった。
そしてそれを知らない当事者達を宵は心配する。

柚香
 「お姉ちゃん……」

瑞香
 「ユズ、アンタは絶対お姉ちゃんが守るんだから!」


 「お前達……何故父親の言うのことを聞けない!」

柚香
 「私は、私達は人形じゃないの! 断じてお父さんやお母さんの操り人形じゃない!」

柚香はそう啖呵を切る。
父親は信じられなかった、それと同時に激昂した。
拳を強く握ると、それを振り上げたのだ!


 「お前達はー!?」

悠気
 「器を知れ」


 『ゆ、悠気!?』



***



丁度頃合いだった。
俺は見極める必要があった、あの確たる事実が本当に正しいのか。
ユズちゃんの殺意の立証、そして何が正しくて、なにが間違っているか知る必要があった。
俺は二人の父親の真後ろに出現すると、そのプレッシャーをぶつけた。
すると父親は咄嗟に振り返る。


 「な、なんだ貴様!? どこから侵入した!?」

悠気
 「一部始終観察させてもらった、そして程度が知れたな」


 「なにを!? はっ!?」

俺はスマホで一部始終撮影を行っていた。
それを知った時、この父親は顔を青く狼狽した。

瑞香
 「ゆ、うき?」

柚香
 「悠気先輩……どうして?」

俺はその情けない父親の脇を通って、二人の下に向かう。
二人は俺を見て、泣き出しそうだった。
俺は二人を安心させるように微笑むと、父親に振り返った。

悠気
 「アンタを終わらせるのは簡単だ、だがそれで済むとは思えない」


 「うく!? 脅迫するつもりか!?」

悠気
 「脅迫か、本当に愚かな事だ、アンタが見下したこの姉妹、何故愛することを当然の義務だと思う?」

瑞香
 「悠気……?」

柚香
 「愛すること……」

二人はギュッと俺の背中を掴んだ。
まるで怯えるように俺の背に隠れたのだ。
一方でこの父親の方は自覚していない、すでにその行いが父親失格だというのに。

悠気
 「お前達、俺は知っているように不器用な男だ、お前達は俺に何を望む?」

二人は俺の顔を見た、そして隣り合う者を見る。

瑞香
 (私……悠気が好き、もう一度悠気のご飯が食べたい!)

柚香
 (私本当に我儘になってもいい? 欲張りになっても?)

瑞香はユズちゃんを見つめる。
するとコクリと頷いた。
ユズちゃんもまた、瑞香と繋がり合う姉妹だ、その意図を知って頷いた。
二人はそっと手を重ねると、ギュッと固く握り込んだ。

瑞香
 「私! 悠気と一緒にいたい! 悠気の事愛してるから!」

柚香
 「私もです! お姉ちゃんに幸せになって欲しい! でもそれ以上に私は幸せになりたい!」

俺はその願いの欠片を正しく受け止めた。
宵は観測する、夢の世界に正しくピースが嵌った事を。

悠気
 「山吹真! 娘達は頂いていく!」


 「な!?」

俺は二人の顔を見ると、二人は笑顔で頷いた。
やがて世界は俺達三人を残して、白く塗りつぶされていった。



***



瑞香
 「ふぅ……」

柚香
 「美味しい……」

夢の世界に戻ると、俺は二人に夕飯を振舞った。
瑞香にユズちゃん、二人は安心した表情であった。

みなも
 「あの方々……ユウ様の想い人?」

麻理恵
 「分からん……ただユウ様と親しそうだ」

夢の世界だと、やっぱりみなもさん達がいた。
二人は離れた場所でヒソヒソ話していた。
俺は一先ず気にせずこの姉妹の方を優先する事にした。

悠気
 「どう? 気分は?」

瑞香
 「凄くいい……やっと、こうやって姉妹一緒に貴方といられるんだもの」

瑞香は穏やかな表情で笑った。
本来はこういう奴で、色んな物を背負いすぎた瑞香はこの顔を忘れ去っていた。
だが今は咎のない状態、俺は好ましかった。

柚香
 「私も今凄く気分が良いです、もう何も遠慮しなくていいんですよね?」

悠気
 「流石に節度は理解してな?」

俺は苦笑してそう言うと、ユズちゃんも顔を赤くして乾いた笑いを返した。
そんな様子を見て、瑞香はニヤリと笑う。

瑞香
 「ねぇ悠気、私とキスしてくれる?」

柚香
 「き、キス!?」

麻理恵
 「スズキ目スズキ亜科?」

みなも
 「麻理恵姉さん、それは鱚です」

遠くからボケツッコミが聞こえる。
ていうか、二人共遠くで見てないで、近くに寄っても良いのにな。

柚香
 「き、キスなんてお姉ちゃん〜」

ユズちゃんは顔を赤くすると、モジモジと身体を揺らした。
一方で姉の方はというと。

瑞香
 「悠気、ん」

瑞香は目を閉じるとゆっくり顔を近づけた。
俺はそっと唇で触れる。
優しいキスをすると、瑞香は身体を離し、妹に対して勝ち誇った。

瑞香
 「はい、お姉ちゃんの勝ち♪」

柚香
 「〜〜〜!」

イマイチ乗り気じゃないユズちゃん相手に、この大人げなさは流石瑞香だ。
まぁ決して褒められたもんじゃないんだけどな。

柚香
 「悠気先輩! いいえ、悠気さん! 私もお願いします!」

負けん気の強いユズちゃんはそう言うと顔を真っ赤にして目を瞑った。
俺はポリポリ頭を掻くと、瑞香は「うん」と頷く。
俺はユズちゃんにも優しくキスをする。

柚香
 「はぅ……ありがとうございます」

瑞香
 「ねぇ……悠気、私達はもうこの想い全てアンタに賭けたわ、ちゃんと責任とってね♪」

瑞香とユズちゃんの想い、俺はちゃんと受け止めている。
個人では幸せになれない姉妹は、ようやく姉妹で共有する共通の幸せを獲得出来たんだな。

瑞香
 「で、さっきから気になってたんだけど、コソコソこっち見てる彼女達なに?」

瑞香も流石に突っ込むと、みなもさん達はビックリ身体を震わせていた。
逡巡する二人に呆れて、俺は二人を呼んだ。

悠気
 「みなもさん、麻理恵さん、こっち!」

麻理恵
 「畏まりましたユウ様!」

みなも
 「た、ただいま向かいます!」

俺はようやくこの4人を救えたな、と安堵した。
まだまだ前途多難だし、何よりまだ救えて無い奴はいる。
だが……一先ず俺は喜びたかった。


 『分かっていた事だけど、これ大変だねぇ? ハーレムでも作る気?』

悠気
 (そん時はそん時だ)

俺は既に覚悟を決めている。
もう気安く止まれる事態じゃないんだ、俺はもう迷わない。
必ず夢の世界を完成させよう。



『突然始まるポケモン娘と夢を見る物語』


第33話 姉妹の絆 完

第34話に続く。


KaZuKiNa ( 2022/08/19(金) 22:13 )