突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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第2部 突然始まるポケモン娘と夢を見る物語
第26話 夢見る世界、絶望よりも希望を



育美
 「悠気……?」

母さんの声が聞こえた。
俺はそっと目を開くと、目の前に母さんを見捉えた。
同時に背中に父さんがいる事を俺は感じ取る。

討希
 「戻ってきたか」

俺は二人が無理矢理俺を月代宵の下に精神を送った後、本の少しの時間しか現実では過ぎていない事が分かった。
俺は月代宵と会合し、向こうで俺が何者かを知ることが出来た。

悠気
 「宵は……」

俺は月代ではなく、俺の妹の宵を探した。
そんな俺を見て母さんは驚く。

育美
 「貴方の目……金色に!」

俺自身には自分の変化は少し分かり辛い。
恐らく瞳孔の色の変化は、俺が調律と創造アルセウスである事を受け入れた為だろう。
俺は母さんに振り返る、優しく微笑んだ。

悠気
 「母さん、それに父さん……俺行くよ」

俺は既に自分の力の操り方を理解していた。
だからこそ俺はアルセウスとしての力を躊躇いなく利用する。
母さん達は俺を見て静かに頷くと、俺は一瞬でその場から空間転移する。



***



若葉宵は家にいた。
いつものようにエプロンを付け、晩御飯の用意だろう。
実に見慣れた姿だが、俺はそんな宵の後ろに顕現する。


 「ッ? え……お兄ちゃん?」

宵は俺の気配を察知すると、咄嗟に振り返った。
俺は力を消失させると、なるべくいつものように振る舞った。
もう……ある意味で俺は元には戻れないんだから。

悠気
 「宵、少し話がある」


 「お兄ちゃん?」

宵は俺の真剣な顔に、何かを察して、コンロの火を消すと真摯な態度で応対した。

悠気
 「お前の本音を聞かせてくれ、俺は不出来なお兄ちゃんか? もうこんな兄はうんざりか?」


 「……お兄ちゃん、私はお兄ちゃんの事が好きだよ? 確かに駄目なお兄ちゃんだけど、嫌いになんかなれないよ」

俺はその言葉に少しだけ心が動いてしまう。
同時にそれがとても残酷な事だったんだなと、俺は後悔してしまった。
今なら俺は宵に手を出せる。
まだ今なら間に合う、宵だけは。


 「お兄ちゃん? 今後悔した?」

悠気
 「ッ!?」

宵は俺の僅かな表情の変化を見逃さなかった。
ずっと一緒にいて、兄妹として育ったからこそ宵は俺を最も理解していたのだ。


 「お兄ちゃん……私の願いね? お兄ちゃんがもう楽になってほしいの、私の事なんか放っておいて」

悠気
 「それじゃお前は誰が幸せにするんだ?」

宵はそれを聞くと、諦めたように首を振った。
俺はそれが我慢ならず宵に詰め寄ると。


 「ん」

宵は突然俺にキスを仕掛けてくる。
浅いキスだが、宵は顔を赤らめ、そっと離すと俺は呆然としてしまった。


 「これで充分♪ 私はもう充分幸せにしてもらいました♪」

宵はそう言うと微笑んだ。
妹はいつの間にか大人になっており、俺の過保護は既に必要では無くなっていた。
それと同時に気付いてしまった、宵の好きは異性としての好きだった。


 「次はもっとお兄ちゃんを必要とする人に幸せを与えてあげて♪」

宵がそう言うと、俺は静かに頷いた。
もう宵とはお別れしないといけないからだ。

悠気
 「宵……ありがとう、こんな駄目な兄ちゃんをずっと愛してくれて、もう行くよ」


 「うん♪ 頑張れお兄ちゃん♪」

宵はなにを理解しているのか、小さくガッツポーズをした。
俺はそれを見て、その場から消え去った。



***



俺は次に再び真っ白な空間に立っていた。
俺の目の前には因果調律システム月代宵が立っていた。


 「どう? できそう?」

宵がそう言うと俺は、目の前に全ての夢の残骸をかき集めた。
既に空から希望の欠片は降り注がない。
宵が創った希望を溜め込んだガラクタ人形は、俺に覚悟を与えてくれた。
宵の創ったガラクタ人形は世界の中心だ、それが人の形をしていたのは俺という不安定で未熟な存在を護る為だった。
だがいずれ子供は大人になる、蛹を破り蝶になるように。
今の俺がこうしていられるのは、この宵のお陰なんだな……。

悠気
 「ああ……出来る、宵さえいれば」

宵はそれを聞くとにこやか微笑んだ。
妹とは異なる、こっちはやや健気な笑顔だ。
俺は溜め込まれた希望を掌に持つと、静かに祝詞を述べていく。

悠気
 「因果を調律し、希望の方舟よ、夢を再び集め、そして世界を改変せよ」

俺の言葉に応じるように宵は光り輝く。
宵は目から光りを放つと、機械的に言葉を放った。


 「システム起動、領域の設定……完了。設定した領域内に時空改変を開始、成功」

悠気
 「もしこの世界が俺達を否定するのなら、俺は夢を見る、この夢を見る物語をもう一度!」


 「リソースの確認、完了。第二Dream Worldを開始します。The new world order……reboot」

そして、このくだらない全ての世界は今、新たな夢を綴りだす。



***



悠気
 (成功した、か?)

俺はそっと目を開いた。
しかし周囲を見ると、俺はまだ滅茶苦茶な世界に驚いた。

悠気
 (げ!? 重力さえ無いのか!?)

目の前にはビルや家が浮かび、デタラメに時空が連続で接続されていた。
だがそれも当然である、何万……いや、下手すれば何十万の希望の欠片で再現された夢の世界だ。


 『聞こえる悠気? 最初に言っておくけど、私だって世界を調律するのこれが初めてなんだからね?』

悠気
 「……とりあえずどうすればいい?」

俺は宵の念話を聞き、その場で呟いた。
いや、ここは元ネタ的には空気を読んで携帯電話で会話するべきか?
ていうか、俺普通のスマホも持っていないんだが。


 『とりあえず今は現実と変わらない絶望の世界よ? でもそれに手を加える事で全部ハッピーエンドに出来るって訳!』

悠気
 「そうは言うが……いくらなんでもこれは混沌すぎるぞ?」

俺はこの滅茶苦茶な世界で、何から手を付ければいいのか呆れてしまう。
まるで○ムシティでも始めたかのような気分である。


 『とりあえず優先すべきタスクみたいなの送っておく』

宵はそう言うと、突然胸元に収めていたカード型情報端末が鳴り出す。
俺はそれを取り出すと、端末には何件ものメール形式でリクエストが提示されていた。
俺はそれを見て苦笑する、確かにまるでゲームのタスクだな。
そこには何人もの見知った人物達の名前がある。
山吹瑞香、そして山吹柚香、百代幸太郎、大城琴音、高雄萌衣も。
だが、俺はある名前を見て凍りついた。

悠気
 「なぁ、このみなもってのは……?」


 『あーそっか、知らないんだっけ、みなもさんはね? 貴方の家政婦さんなのよ?』

それは俺の経験ではなかったが、異なる世界線のみなもという二人の女性が見えていた。
アシレーヌのみなもとジュナイパーのみなも、しかしこの二人はどちか一人しか生き残りが許されない。
それどころか、宵が生き残った世界線では父さん達はこの二人どちらも救ってさえいない。


 『みなもさんから行く?』

俺はどうしても救いたいその名に、しばし沈黙するも、やがて頷いた。
俺はみなものタスクに触れると、突然目の前が暗転する。


 『一応説明するね、事件が起きたのは1年前の3月上海での事、マフィアのアジトを襲撃した討希さんと育美さんが救う事になったのが後のみなもさんなの、だけどどういう訳か片方しか救われない』

悠気
 「それは放っておいても片方は確実に救われるって事か?」


 『両方助からない可能性も否定は出来ないけどね』

俺はそれに目くじらを立てた。
異なる世界線の俺はみなもさんをどの程度想っていたのだろう。
今の俺からすれば正真正銘他人でしかない。
それでも俺は……!



***



夜、深夜の上海に若葉討希とその妻育美の姿があった。
二人は周囲に怪しまれない程溶け込んでおり、それが彼らの異能による物なのは明白だった。

育美
 「お待たせ、やはりPKMのバイヤーね」

討希
 「ふむ、なら手筈通り襲撃する」

育美
 「ま、手慣れたものね」

二人はそんな物騒な会話するも、周囲の人間は誰も咎めないまま、二人は歩き出した。
……そんな二人を俺は物陰から見届ける。

悠気
 (ここが、当時の世界、か)


 『あくまでも私が理に則ってやってきた時空よ、故に本来の時空へと結果歪める事は理を歪める事と同じ、それでも私が理として彼女達を拾い上げる……だから救ってあげて……』

俺は誰にでもなく頷く。
今全てを救い、夢の世界を完成させる為に動き出した。
二人を追い、やがてある建物に入っていく。
俺は先回りするように、先行してアルセウスの力で空間転移した。

悠気
 「……中は……ッ!?」

俺は周囲を確認するも、その瞬間殺気を感じた。
それは影の矢だった、影縫いという技。
それは俺の足に突き刺さるが、俺はノーマルタイプのアルセウスなので、それを無効化した。


 「貴様突然どこから!? 襲撃者か!?」

俺は後ろを振り返ると、そこには弓を構えるジュナイパーの女性がいた。
目付きは鋭く、真っ黒なプロテクターを装備した戦闘員だった。
俺は確信する、彼女がみなもだ。

ジュナイパー
 「敵ならば容赦はしない!」

悠気
 「待って! 敵じゃない! 寧ろ救いに来たの!」

ジュナイパー
 「なんだと!? 騙されんぞ!?」

ジュナイパーの女性はじりじりとにじり寄り、弓を引き絞った。
影の矢なら通じない、だが彼女は確固たる決意だった。
俺は焦る、急がないと父さんたちが突入する。

悠気
 「あのね? 俺はアンタに死んで欲しく無いんだ!」

ジュナイパー
 「さっきから訳の分からない事を……!」

駄目だ! 全く信用されていない!
俺は兎に角急いでこの場を済ませないといけない。
この後今度はアシレーヌのみなもさんを救わないといけないんだから。

ジュナイパー
 「ッ!」

ジュナイパーは影の矢を放つ。
しかし胸部に刺さるもやはり意味がない。
だが、ジュナイパーは直様リーフブレードを生成して、それを振るう。
俺は咄嗟に危険を感じて飛び退くと、俺のいた場所が切り裂かれた!

悠気
 (遠隔の特性!? そういや隠れ特性かこの人!?)

流石にリーフブレードは無効化出来ない。
俺が回避したのを見るとジュナイパーは舌打ちした。
この人、確かに強い、そりゃ組織の暗殺者だって任されるわ!

悠気
 「組織の為に戦う、それは本望なの!?」

ジュナイパー
 「本望かだと? 他に道が無いからやっているだけだ!」

俺はその言葉を聞いて、益々この人を救わなければと覚悟を決める。

悠気
 「なら、俺がその道になってやる! 貴方を絶対に暗闇から救い出す!」

俺はそう言うと一気に駆け出した。
ジュナイパーはその場でリーフブレードを放つ、だが俺は直様鋼のプレートを生成すると、それを取り込みリーフブレードを弾く。

キィン!

ジュナイパー
 「なっ!?」

ジュナイパーはまさか弾かれるとは思っていなかったようだ。
金属化した俺の身体はジュナイパーの腕を簡単に弾き返し隙きを晒す。
俺は迷わずジュナイパーに飛びかかった!

悠気
 「はぁああ!」

俺はそのままジュナイパーさんを押し倒すと、ジュナイパーさんに馬乗りになる。
ジュナイパーさんはなにかを諦めたかのような顔をすると、ただ無抵抗に俺を見た。

ジュナイパー
 「なんなんだお前……お前が私のなにを知っている?」

悠気
 「何も知らない……だからもっと教えて欲しいんだ」

ジュナイパー
 「殺さないのか?」

悠気
 「言ったろ? 助けるんだ、これからこの組織は潰される、襲撃してくる相手に抵抗しなければ助かる」

ジュナイパー
 「……簡単には信じられない」

当然といえば当然だろう。
ジュナイパーは寧ろここでの介錯を待っているようにさえ思える。
その顔は酷く虚無的で、この世界に絶望した顔だった。

悠気
 「お願いします、生きてください……そうすれば俺は必ず貴方に応えます!」

俺はそう言うと、ジュナイパーから退いた。
ジュナイパーは上半身を起こすと、憂いの目で俺を見てくる。

ジュナイパー
 「どこへ行く?」

悠気
 「次はアシレーヌさんの方を救いに」

ジュナイパー
 「13号だと? お前本当に何者で……」

俺はアシレーヌさんの気配を探ると、直ぐに空間転移した。



***



タッタッタ!

門番を蹴散らした討希と育美は中へと入る。
思ったよりも抵抗は薄く、ある程度深部へ潜る事には成功した。
そしてそれを見たジュナイパーは、二人の前に姿を表す。

ジュナイパー
 「……お前達、この組織をどうする気だ?」

討希
 「潰す、この組織はやりすぎた、それが理由だ」

育美
 「出来れば抵抗しないで? 殺したくはないの」

二人は構える、だがジュナイパーは両手を上げた。
それは悠気の言葉を信じたからだ。

ジュナイパー
 「組織に忠誠心は無い……好きにしろ」

二人は怪訝な顔で互いの顔を見た。
何かがおかしい、二人はそれを感じた。



***



悠気
 「ホーアチャー!」

俺は怪鳥音を上げながら、とある個室の扉を蹴り破った。
そこは性接待を行う部屋で、しかもかなり上物、いわゆる高級娼婦の一室だった。
俺の侵入に驚いたのは妙に太った半裸の男だった。


 「ヒー!? 突然何アル!?」

俺は男を無視して、ベッドに横たわるアシレーヌの女性を見た。
女性は背を向けているが、非常に長い髪に、その豊満なエロさは間違いなくみなもさんだった。

悠気
 「今更創作でもそのアル口調はねーよ!」

俺はとりあえず小太りおっさんの顔面を蹴りぬくと、おっさんは鼻と歯を折って気絶した。
アシレーヌさんはそっと頭を上げるとまるで深海を思わせる暗い瞳で俺を見た。

アシレーヌ
 「貴方は……? 私ついに用済みですか?」

俺はアシレーヌさんの様子に思わず唇を噛んでしまう。
俺の知るアシレーヌさんの本当の姿がこれなのだ。

悠気
 「アシレーヌさん、俺は正義の味方です、今はここでじっとしていてください、必ず助けが来ますから」

アシレーヌ
 「助け? 待って……貴方は誰?」

悠気
 「……いずれ分かります」

俺はそう言うとその場から消え去るのだった。



***



アシレーヌ
 「不思議な方……」

アシレーヌは身体を持ち上げると、あの不思議な少年の言葉を反芻した。
やがて足音が迫る、それは組織の構成員か、それとも正義の味方か。

育美
 「あら、ここは?」

足音の正体は女性だった。
だがアシレーヌはこの女性が少年と似ているように感じた。

アシレーヌ
 「貴方は私のご主人様でしょうか? それとも正義の味方でしょうか?」

育美
 「正義の味方、と言っちゃそうかも知れないけど」

育美は不思議な事を言うアシレーヌを見て首を傾げる。
だが少なくとも扉が壊されていること、今まさに事後と思われる現場で歯を折った男が伸びている事。

育美
 (どうやら別口で何かが起きているみたい、ね)



***



1時間後、上海上空で悠気は大きく溜息を吐いた。

悠気
 「まさかこの作品で切った張ったがあるとは思いませんでした」


 『第一部では地味に不可能だったポケモンバトルキタコレ!!』

俺はとりあえずやるべき事はやったので、後は両親を信じるだけだった。


 『それにしても知らなかった、あの二人、本当はあんな人達だったんだね?』

悠気
 「曲りなりにも交流はあったんだろう?」


 『ジュナイパーの方のみなもさんはあんまり無いけどね』

俺の記憶にもあの二人の姿は脳裏にこびりついている。
古風なメイド服を着た二人は、この後事情があって来日する。
そのお互いに心の傷があり、俺はそれを受け止めなければならないだろう。


 『それじゃもう戻る?』

悠気
 「そうだな……これ以上この時空にいる意味はないか」

夢の世界を完成させるにはまだ多くの難題がある。
だが俺はもう覚悟を決めたのだ、これからどれだけ無理難題があろうと、どれだけ理不尽が待っていようと俺は必ず皆を救う。
誰も不幸の涙に暮れさせなんてしない。
俺は真剣な顔で拳を握ると、世界の理たる宵は俺をこの時空から消滅転移させる。



『突然始まるポケモン娘と夢を見る物語』


第26話 夢見る世界、絶望よりも希望を 完

第27話に続く。


KaZuKiNa ( 2022/07/01(金) 19:06 )