突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


小説トップ
第2部 突然始まるポケモン娘と夢を見る物語
第21話 受け取った輝き



悠気
 「留置所なんぞ高校生が行くことになるとは思わんかったわな」

俺たちは朝ご飯の後、電車に乗って留置所のある町の向かった。
留置所に着くと面会を申し付けると、後は待合室でその時まで待った。


 「そうだね……お兄ちゃん絶対にここにお世話になっちゃ駄目だよ?」

悠気
 「失礼な、俺は人畜無害な男だぞ?」

俺はそう反論すると宵はクスリと笑った。
くそう、兄を弄んだな。
俺は両腕を組んで不機嫌にすると、宵は少し困った顔になった。


 「ご、ごめんなさい……お兄ちゃん」

俺は宵の頭を撫でると、なるべく笑顔を見せた。

悠気
 「ふ、お兄ちゃんで遊ぶからだ」


 「えへへ、もう、子供じゃないんだから」

宵はそう言うと俺の手を払い除けた。
俺からしたら宵はいつまでも心配な妹だがな。
しかし宵の言葉にも一理ある、お互い子供じゃいられないんだよな。


 「あ、順番みたいだよ?」

気がつくと順番が来た。
俺たちは職員に案内され、面会室に入った。
面会室はガラス越しに隔たれ、それが隔絶された世界のように思えた。

瑞香
 「……あ」

面会室に入ってきたのは黄色い囚人服を来た瑞香だった。
しかし瑞香は俺たちを見ると、凄まじく気まずそうな顔をする。
瑞香はおもむろに帰りの扉を掴むとそのまま……。

悠気
 「こら!? 逃げるな卑怯者!」

俺は席から立ち上がると、戻ろうとする瑞香に叫んだ。

瑞香
 「……ち!」

瑞香は舌打ちすると戻ってきた。
その顔は相変わらず仏頂面で友好的な雰囲気は欠片もない。


 「ねぇ? 本当に瑞香ちゃんがやったの?」

先ずは宵がそれを聞いた。
瑞香はやや目つきをキツくすると。

瑞香
 「そうよ、私がやったの、あの毒親を!」

嘘だ、瑞香は確かに両親を嫌っている。
でもそのような不道徳な女ではない。
俺は目を細めて瑞香を見た。
未だそれが信じられない宵は胸を抑えて涙ぐんだ。


 「なんで!? なんで瑞香ちゃんが!?」

悠気
 「宵、すまんが瑞香と少し二人きりにしてくれないか?」

俺は宵にをそう言うと「え?」と不思議な顔をした。
俺が瑞香と話したい事、出来れば宵にも知ってほしくないんだ。

悠気
 「頼む……」


 「わ、分かったわ……」

宵はそう言うと席から立ち上がった。
宵が面会室の扉を潜ると、俺は改めて瑞香を見る。
瑞香は複雑そうに目線を逸らしながら、指で髪を弄っていた。

悠気
 「まず初めに言う、お前がやってないということはユズちゃんから聞いている」

瑞香
 「っ!? アンタまさか!?」

瑞香はユズちゃんの名前を聞くと立ち上がった。
俺はため息を吐くと、瑞香を落ち着かせる。

悠気
 「真犯人は知っているが、それを元に告訴しようとは考えていない」

瑞香
 「ユズの奴……何考えて……!」

瑞香は席に座ると、爪を噛んで苛立った。
瑞香が知らないはずがないからな、真犯人はユズちゃんで間違いない。
だが、俺はユズちゃんを断罪など出来る訳がなかった。

悠気
 「お前、ユズちゃんの気持ちは考えたか?」

瑞香
 「え? どういう意味よ?」

悠気
 「ユズちゃんな……今にも死にそうな顔してたぞ」

俺がユズちゃんの事を説明すると瑞香は絶句した。

瑞香
 「……ユズ、ねぇ! お願い! アンタだけにしかこれはお願い出来ないの! ユズを、ユズを幸せにして!」

それは瑞香の切実な願いだった。
今にも泣きそうな顔で、妹の為なら幾ら傷ついても構わないという覚悟と凄みがある。
俺はギュッと拳を握った。

瑞香
 「ユズはアンタことが好きなのよ! だからアンタならユズの傷を癒やしてあげられる……!」

悠気
 「ふざけるな……」

瑞香
 「え? 悠気?」

悠気
 「ふざけるな! それじゃ誰がお前の傷を癒やすんだ!?」

俺は怒りに吠えた。
瑞香は俺の気迫に怯んだ。
あの瑞香が俺の前では決して見せなかった弱さを初めて見せた。
ユズを幸せにしたい、それは痛い程分かる。
でもどうしてそれを瑞香と柚香で等価交換しないといけない!?
姉妹両方が何故幸せになれない!?

悠気
 「お前が嘘を付き続ける限りユズちゃんが幸せになると思っているのか!?」

瑞香
 「か、勝手な事言わないでよ!? 私の想いだって気づいていながら放置した癖に!?」

俺たちは勢いに任せて言葉をまくし立てた。
思わず後ろにいる係官が動きそうになるが、俺たちは息を整えながら落ち着いた。

悠気
 「そうだ、俺は宵の事で精一杯だった、お前が俺に好意を持っていても俺は答えようとはしなかった」

瑞香が俺に好意を寄せていたのは中学の頃からだ。
でもユズちゃんまで俺に好意を寄せた事で瑞香は自然と身を退いた。
結局俺たちは自分可愛さに、最も愚かな選択をしたんだ。

瑞香
 「私こそ臆病だった……ユズさえ幸せならいい、ユズの幸せが私の幸せだと」

もし……、もしも俺が瑞香の想いに答えられていたら、瑞香はここにはいなかったかもしれない。

悠気
 「教えろ……お前本当に幸せなのか? どうなんだ?」

瑞香
 「……んな訳ないじゃない! もしアンタが私を護ってくれたら!? ユズには親の愛だってある! 私には何も無かった! なのにアンタは!?」

瑞香は慟哭した、顔を蹲ると瑞香は涙した。
やっぱりだ、瑞香は幸せではない。
勿論ユズちゃんもだ、なんて不毛なんだ。

悠気
 「俺は無力だ……好きになった女一人護れる保証もない」

瑞香
 「ヒック! わ、私はもういい! でもユズは、ユズだけは幸せになってほしいの!」

瑞香は泣きながらそれでもユズちゃんを優先した。
ユズちゃん抜きにして瑞香は幸せにはなれないんだ。

悠気
 「もし、もしも夢が叶うなら、瑞香は何を願う?」

瑞香
 「夢? 夢を見るなら幸せな夢がいい……私もユズも不幸になんてならない夢……」

その時だった。
俺の視界が、真っ白に染まった。
直後、眼の前には瑞香はおらず、逆に《ソレ》がいた。


 「あ……これ、温かい♪」

それはとびきり大きな温かい光の玉だった。


 「瑞香と柚香ちゃんの願い、受け取った」

《ソレ》は大きな光を手に取ると、直立した不安定なガラクタ人形に詰め込んだ。
その瞬間、俺の心が温かくなった気がした。
そして視界は……。

悠気
 「あ……」

瑞香
 「ヒック! うう」

瑞香だ、瑞香が泣いている。
俺はその涙を止めたかった。
でも、ガラス越しに俺は瑞香に触れられない。
俺は泣いていた、なんだ?

悠気
 (温かい……?)

俺の胸が温かった。
それは瑞香の想いなのか?

悠気
 「瑞香、もう泣くな……お前は強い子だろ?」

瑞香
 「ぐす……! 勝手な事、人を勝手に強い女に……!」

瑞香はそう言うと涙を拭った。
俺は席から立ち上がる。
面会はここまでだ。
俺はユズちゃんを訴えない、そして瑞香も見捨てたくない。

悠気
 「瑞香、俺はお前を必ず救うぞ?」

瑞香
 「なによ? そんなの出来っこないじゃない!」

俺はそれ以上は何も言わず面会室を出た。
すると、入り口で宵は心配そうに待っていた。


 「あ、お兄ちゃん……瑞香ちゃんは?」

悠気
 「瑞香は……泣いてた、ユズちゃんお願いって」


 「瑞香ちゃん……」

宵は未だ瑞香が親殺しをしたとは思っていないだろう。
しかしそうなれば嫌でも犯人は絞られる。
宵とてユズちゃんが親殺しなんて考えたくもないだろう。
そんな悪夢のジレンマを宵が背負う必要はない。

悠気
 「帰ろう宵」


 「うん……」


俺は宵を引き連れると留置所を出ていった。
ふと、空を見上げる。

悠気
 「空はやっぱり青い、よな?」


 「天気が気になるの、お兄ちゃん?」

「いや」俺は否定を入れながら、この空が本当に正しい空なのか考える。
馬鹿らしいとは思ってる、この宇宙時代に空が欺瞞など誰が思うか。

悠気
 (だが、それなら俺が感じたあの温かさはなんだ?)

そうだ、空は暗くて光は届かず、光の毛玉みたいな物が無数に降るあの色褪せた世界は?
夢を見ている……夢、か?

悠気
 「宵……?」


 「え? あ、なに?」

俺は宵を見た。
唐突話しかけられた宵はびっくりした顔をした。
俺はあの色褪せた世界に宵がいたような気がした。
でも、なにか違う……宵に似ていたが、宵じゃない。


 「ねぇお兄ちゃん!? もう! 私になにかあるんじゃないの!?」

悠気
 「すまん、呼んだだけ」


 「うーもう! お兄ちゃん! 反応ニブチン!」


 「あはは♪ 相変わらず仲良いねぇ」

俺たちは突然話しかけられた。
妙に聞き慣れた声、俺は振り返るとそこにいたのは背は低いが大きなリスのような尻尾を持った女性、高雄萌衣だった。

悠気
 「萌衣姉ちゃん、奇遇だね」

萌衣
 「あはは、貴方達こそ留置所? なにかあったの?」

そうか、学年が違うし萌衣姉ちゃんは知らないんだったな。


 「瑞香ちゃん、同級生が収監されているんです」

宵は顔を暗くするとそう説明する。
すると萌衣姉ちゃんも流石に気不味い顔をした。

萌衣
 「あー、思い出した、例の殺人事件?」


 「そう、です……でも! 瑞香ちゃんがやったとは思えないんです!」

実際瑞香はやっていない、しかしそれを萌衣姉ちゃんに訴えても無意味だ。

萌衣
 「最近なんかおかしいよね、昨日は飛び降り自殺でしょ? ちょっと前、夏休み前の事覚えてる?」

悠気
 「夏休み前……光先輩の件ですか?」

それは葛樹光というジャローダのPKMの先輩だった。
非常に頭脳明晰で俺も勉強で世話になる事もあった。
本人は本当に気の良い兄ちゃんで、そこまで悪人でも無かったのだが、ある事件があった。
ウチの学園で生徒会長をする七竃星というマフォクシーのPKMの先輩がいた。
その七竃先輩がレイプされるという事件があったんだ。
その事件が明らかになったのは七竃先輩をレイプした不良どもを光先輩が全員文字通り半殺しにしたからだ。
警察騒ぎになったこの事件は、光先輩の過剰暴力が取り上げられて、光先輩は自主退学した。

萌衣
 「あの事件、七竃にもかなり効いたみたいだし、あの後不登校になったからね?」

七竃先輩は今も学園に戻る兆しはない。
両親も娘がレイプされたのだから、過保護になっても仕方がないのだろう。
先輩達の事件は俺たち下級生には手が出せる問題じゃなかった。
まして七竃は学園を運営する財閥令嬢、下手すればウチの学園長にもなるかもしれない人なんだ。


 「あ、あの……! それで萌衣お姉さんはどうしてここに?」

萌衣
 「あ〜、実はさ? 私お見合いしてるんだ」

それ聞くと俺たちはぎょっとした。

悠気
 「お、お見合いぃ!?」


 「お、お兄ちゃん驚きすぎ!? あわわわ!?」

萌衣
 「いやいや、宵ちゃんも驚きすぎだから」

そりゃ驚いているが、というか唐突過ぎだろ!?
萌衣姉ちゃんも冷静に考えればもう18歳。
いや、やっぱり早すぎるわ、今時18歳でお見合いは無いだろう?

悠気
 「え? え? 萌衣姉ちゃん結婚願望なんてあったの?」

萌衣
 「無いわよそんなの、でも家族で婚活なんて私しかいないし」

基本的に高雄家は良好な家庭だ。
昔家が隣だった時は少なくとも家族付き合いだってあった。
萌衣姉ちゃんは高雄家では3番目の子供で末女になる。
長女はもうすでに社会に出ている普通の人間で、次女は大学に通うパチリスの血を継ぐPKM。
家も俗に言う良家で、俗人とは良くも悪くも感覚が違うのか?

萌衣
 「私だって本当は悠気のようなさ……」

そう言うと萌衣姉ちゃんは明後日の方向を見ながら、深いため息を吐いた。


 「お兄ちゃんのような?」

萌衣
 「ハッ!? 違うわよ!? どうせお見合いするなら悠気の方が良いとか思ってないから!?」

悠気
 「いや言ってる!? ダダ漏れだよ!?」

萌衣姉ちゃんとは小さい頃は弟のように可愛がって貰っていた。
ある事件の後、家を引っ越したが中学で今の学園に入学すると萌衣姉ちゃんと再会した。
その頃には身長も逆転していて、久しぶりでもお互い誰か直ぐに分かった。
萌衣姉ちゃんは頼れる姉ちゃんで、特に宵は良く懐いていた。
でも、一見問題ないよう思えて、萌衣姉ちゃんも問題抱えているんだな。

悠気
 (瑞香にしろ、幸太郎にしろ、琴音にしろ……事情が重たすぎる奴ばっかりだから、忘れていたのはナイショだ!)

萌衣
 「はぁ、という訳で、これからお見合いなのさ?」

そう言う萌衣姉ちゃんは本当に嫌そうだった。
お見合いって事は家ぐるみだもんなぁ。
しかも18歳のギリギリJKとって、相手相当じゃないか?

悠気
 「でもおかしくない? お見合いだったら長女の萌香(もえか)姐さんが妥当でしょ?」

因みに萌香姐さんとも親交はあったりするが、ぶっちゃけ出番が無いのは内緒だ。
萌衣姉ちゃんはそれを聞くと「うーん」と唸る。

萌衣
 「それって私だけ結果出せないからなんだよねぇ」


 「結果が出せないって?」

萌衣
 「萌香姐はもう会社の部長さん、若くてカリスマまである、次女の萌美(もえみ)姐も大学で頑張ってるからねぇ」

その点高校卒業しても、スポーツ一筋の萌衣姉ちゃんじゃ結果を出すのは難しい、だからそれならさっさと跡継ぎが欲しいというのが真相か。


 「ちょっと可愛そうかも、自由恋愛が出来ないなんて」

萌衣
 「ハハ、まぁギリギリまでは反抗してみせますわ、本当はそりゃ自由が欲しいけどさ?」

悠気
 「萌衣姉ちゃん、陸上の成績は良くないのか?」

萌衣姉ちゃんは短距離走で中学記録を持っていた。
しかし体格差が徐々に出るにつれ、高校生になってからはそういった話題は聞かなくなった。

萌衣
 「陸上は嫌いじゃないよ? でも……私じゃ結果は出せなかったから……」

俺はその時、萌衣姉ちゃんが別の事で結果を出した世界線が何故か脳裏を過ぎった。

悠気
 「姉ちゃん、ゲームとか好きだったよね?」

萌衣
 「うん? 突然なに? そりゃまぁ今時高校生でゲームやってない子の方が珍しいでしょ?」


 「えっ?」

宵が驚いた。
因みに宵は本当にゲームに疎い、その今時高校生の癖に携帯端末に入ったゲームアプリもプリセット分しか無い程だ。
萌衣姉ちゃんは一端のゲーマーらしく、そこは誇っていた。

萌衣
 「でも、突然どうして?」

悠気
 「いや……陸上じゃなくてゲームとかでなら、萌衣姉ちゃん結果出せたんじゃないかなって……」

萌衣姉ちゃんはそれを聞くと沈黙した。
きっと考えているんだ、でも萌衣姉ちゃんは首を横に振る。

萌衣
 「駄目よ、私じゃプロゲーマーにはなれないし、両親も多分認めてくれない」

悠気
 「違う、そうじゃない……! えと、なんて言えばいいか、ゲームを作る側?」

萌衣
 「製作者!? ……そりゃ憧れはあるけど」

俺は何故か分からないが、そんな言葉が出てくる。
なんとなく萌衣姉ちゃんはゲームを作る側だった、そんな気がした。

悠気
 「萌衣姉ちゃん、もし夢が叶うならどうなりたい?」

萌衣
 「夢? そうね……悠気の言うように、ゲーム製作者として結果を出せたら、父さんも認めてくれたかな? そんなのあり得ないけど、それが夢になるのかしら?」

俺はその言葉を聞きたかった。
そしてそれは《ソレ》が聞き取った。
《ソレ》は、どこか若葉宵に似たなにかは、その願いを受け取るとそれをガラクタ人形に詰め込んだ。


 「これでよし、萌衣ちゃん先輩の願いも入った」

萌衣
 「……それじゃもう行くねー!?」

悠気
 「あ、ああ……! 萌衣姉ちゃん! 頑張ってなー!」

俺は走り去る萌衣姉ちゃんに叫んだ。
俺は胸が高鳴り、温かさを感じた。
何故かは分からない……でも、俺はなんとなくその願いを受け取った気がした。


 「お兄ちゃん、なんだか変だったよ?」

悠気
 「え? 変?」


 「なんか遠いところ見ていたっていうか、まるで違う世界に住んでいるみたい」

遠いところ、違う世界……俺はそれは否定できなかった。
何故か分からないが、俺は萌衣姉ちゃんも瑞香も、幸せな願いが叶う世界を知っている気がするんだ。
でも、何故かが本当に分からない。
俺は一体どうなっちまったんだろうか……?



『突然始まるポケモン娘と夢を見る物語』


第21話 受け取った輝き 完

第22話に続く。


KaZuKiNa ( 2022/02/11(金) 18:09 )