突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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第2部 突然始まるポケモン娘と夢を見る物語
第19話 呪われた悲劇



悠気
 (なんか良いな、こういうの)

俺は昼休み、琴音と一緒に昼御飯を摂っていた。
俺は琴音がなんとなく愛おしく思えるほど彼女に惹かれている。
その想いは宵の対しての想いと変わらない程。

琴音
 「ふふ、悠気君の方こそ喉を詰まらちゃ駄目だよ……あら?」

ふと、琴音が顔を上げた。
俺は琴音の視線を追って後ろを振り返る。
すると、そこにいたのは幸太郎だった。

幸太郎
 「すまない、遅くなった」

幸太郎は人気の無い場所に駆け寄ると、誰かと会っているようだった。
俺と琴音は興味深く幸太郎に近づき聞き耳を立てる。

幸太郎
 「この手紙の送り主は君だな?」

幸太郎の目の前は茂みに隠れてよく分からない。
だが、幸太郎が手に持っている手紙には見覚えがあった。

悠気
 (あれ、今朝下駄箱の?)

今朝下駄箱で幸太郎は何か発見していた。
軽く茶化したが幸太郎は話を逸した。
結局あれは何だったんだ?

幸太郎
 「今更古風な事だ、手紙を下駄箱になど?」

女子生徒
 「ご、ごめんなさい……」

女子の声だった。
俺は少しだけ背伸びすると、その顔を覗く。
眼鏡を掛けた茶髪を三編みでお下げにした少女だった。

悠気
 (誰だ? 知らない子だな?)

幸太郎
 「で? 俺になんの用だ?」

琴音
 「ゆ、悠気さん……これ以上は」

琴音は俺の肩を引いた。
振り返ると彼女も顔を赤くして、出歯亀している事に負い目を感じているようだ。
しかしその顔には間違いなく興味がある。
とはいえ確かにこれは野暮だろう。
俺は琴音に従い、そこから離れようとする。

女子生徒
 「っ! 好きです! 付き合ってください!」

俺がその場から離れようとしたその時、その女子は大きな声で幸太郎に告白した。
琴音は耳まで真っ赤にして口元を両手で抑えた。
ま、まさか愛の告白だと……?
俺は凄まじい気不味さを覚えてしまう。

琴音
 「ゆ、勇気あるなぁ」

悠気
 「琴音もしっかり出歯亀してるじゃないか……ほら、行くぞ?」

俺は琴音を引っ張って、その場から離れる。
正直これは想定外だ、俺はそんな野暮はしたくない。
正直琴音の件でも俺は顔を赤くする程なのに、こんな歯痒い話は聞いていられない。

悠気
 (それにしても……幸太郎が告白されるなんてな?)

幸太郎ならモテて当然だ。
それでも幸太郎の放つ雰囲気は女性を寄せ付けない独特の空気がある。
それなりに付き合いは長いが、幸太郎の好みは俺も知らないんだよな。

幸太郎
 「……すまん、その好意を俺は受け取れん」

俺は後ろを振り返った。
しかし、そこにあったのは首を振る幸太郎だった。
女性は顔を抑え、その場から走り去った。
そりゃそうだ、あんな勇気を出して告白までして、無情にもばっさり斬り捨てられた恰好だからな。

幸太郎
 「……で、覗き見とはいい度胸だな?」

ギクリ、俺たちは背筋を凍らせると、ピタリと止まった。
そのまま首だけ回して幸太郎の方を向くと、そこには逞しく二の腕を胸の前で組む寡黙ないつもの幸太郎の姿があった。

琴音
 「ご、ごめんなさい! で、でも全部見たわけじゃ……!」

琴音は真面目に頭を下げて謝罪した。
とはいえ一部始終は見たわけだからな……。
しかし、それを聞いた幸太郎は怒るかと思いきや「フッ」と微笑を浮かべるだけだった。

幸太郎
 「別に怒っちゃいないさ、それより此方こそ君たちの邪魔をしたかな?」

悠気
 「は?」

俺はキョトンとして琴音を見た。
琴音も俺を見る、幸太郎はフフンと鼻を鳴らした。

幸太郎
 「悠気、お前も隅におけんな……俺とは違うらしい」

幸太郎のその言葉の意味、俺たちはそれを察して顔を真っ赤にする。
幸太郎は俺達の関係をからかっているんだ。

悠気
 「違!? う……訳じゃない、けど」

俺は耳まで赤くすると琴音との関係を弁明する。
しかし、俺は琴音と付き合っているのか?
琴音はそれを求めているかもしれない。
俺自身は恋人っていうのがよく分からない。

幸太郎
 「ハッハッハ! ようやく悠気も妹離れか?」

幸太郎は俺の態度に大爆笑した。
まさかと思うが、妹の名を出され俺は反発した。

悠気
 「よ、宵は関係ないだろ、宵は!?」


 「私が……どうかしたの?」

突然後ろから弁当箱を持った宵が現れた。
俺は心臓が口から出るかのような衝撃を受けて振り返った。
宵は事情を知らないのか首を傾げている。

悠気
 「よ、宵さん? いつからそこに?」


 「ついさっき、食堂から出たらお兄ちゃん達が見えたから」

そう言えば中庭の奥に渡り廊下があるが、その先に学生食堂があったな。
普段は殆ど利用する事は無いんだが、今日に限って俺達別々に食べたから学食に行ってたんだな。


 「もうー! それよりもお兄ちゃん! いつまで中庭にいるの!? もう時間だよ!?」

悠気
 「なに!? しまった!? もう昼休みが!? 琴音、急ぐぞ!?」

琴音
 「あ、う、うん!」

俺達は急いで弁当箱を片付ける。
流石にのんびりし過ぎた!
幸太郎は「やれやれ」と首を振っている。

琴音
 「あ、ええと、宵さん?」


 「うん? 大城さんどうしたの?」

突然琴音は宵に向き直った。
若葉だとどっちか分かりづらいからか、かなり遠慮気味の宵さん呼びだったな。

琴音
 「今日はごめんなさい、お兄さんお借りして」


 「ああ! いいよいいよ♪ それよりお兄ちゃん迷惑掛けなかった?」

……すっごい気になる。
琴音の奴、本当に宵に遠慮するし、宵は宵で無条件で琴音を信用し過ぎだろ。

幸太郎
 「やれやれ、行くぞ悠気?」

悠気
 「お、おう」

俺は弁当箱を片付けると幸太郎と一緒に教室に向かった。

悠気
 「なぁ、幸太郎? さっきの告白、なんで断ったんだ?」

俺は幸太郎の隣まで歩くと先程の事を聞いた。
俺は宵も琴音も受け入れている、でも幸太郎は違う。
幸太郎は大人びていて厳格な男だが、付き合いは悪くない。
良くも悪くも友人としては付き合いやすい男だが。

幸太郎
 「先に好きな人がいれば、気軽には受けられんさ」

俺はその意外な言葉に驚いた。
それと同時に幸太郎は顔を俯かせると続きを話す。

幸太郎
 「それにな……俺がそんな不義理な想いを持ちながら付き合ったら、彼女に申し訳が立たんだろう?」

それは幸太郎がそれほど浮つく事も無い厳格さの証だった。
幸太郎もまた、あの女子の不幸など望んでいないんだ。

悠気
 「振られた痛みは直ぐに忘れられる、か?」

幸太郎
 「願わくば早々に俺なんて忘れてくれれば、新しい恋も楽しめよう」

幸太郎はそう言うと微笑を浮かべる。
だが……逆に思うが幸太郎は幸せなのか?
幸太郎はすでに想い人がいると言う、だがそれはまるで望まぬ恋のようにも思えた。
幸太郎は本当に幸せなのか、俺はそれが疑問だった。


 「もう待ってよ、お兄ちゃーん!」

琴音
 「はぁ、はぁ!」

俺は足を止めると琴音達を待った。
幸太郎はそれを見て笑う。

幸太郎
 「あの二人、大切にしろよ?」

悠気
 「……ああ、分かってる」

俺は幸太郎の言葉に頷いた。
俺は幸太郎とは違う。
宵も琴音も俺は悲しませたくない。



***



キーンコーンカーンコーン。


 「はーい、ガキ共はもう帰れー!」

今日も平和に終わりを迎えた。
俺は帰る準備をするとそれとなく琴音を見た。


 「大城さん、今日は大丈夫?」

琴音
 「あ、はい……大丈夫みたい、です」

琴音は慎重に椅子から立ち上がった。
問題ない、俺は安堵すると琴音は御影先生の下に向かう。


 「お兄ちゃん、帰ろっか?」

悠気
 「ああ……、いや、ちょっと待ってくれるか?」

宵はいつものように帰り支度を済ませると俺の下に来た。
しかし、俺は琴音を待とうと思う。
はっきり言って過保護かも知れないが、それでも彼女はそれで充分に思える程なのだ。

宵は俺の視線に気付くと納得した。


 「ああ、大城さん……いいよ、待ってあげる」

悠気
 「済まないな?」


 「いいの、お兄ちゃんがそうしたいなら私は応援したいもの」

俺と宵の関係は少し不思議かもしれない。
確かに兄妹だが、血は繋がっていないし、それでも俺は兄として妹を護る義務があると思う。
一方で妹である宵もまた、俺を兄として慕ってくれて、そして俺の事を想ってくれる。

幸太郎
 「お前達は帰らんのか?」

悠気
 「幸太郎こそ、部活じゃないのか?」

突然幸太郎が鞄を持って、こっちにやってきた。
いつもなら幸太郎は柔道部だ、直ぐに体育館に向かう筈だが。

幸太郎
 「なにすぐ行くさ、そっちが気になっただけだ」


 「お兄ちゃん、大城さんを待ってるの」

宵はそう言うと、幸太郎は目を丸くした。
多少驚いているが、しかしそれも納得した様子で直ぐに微笑むと背中を向ける。

幸太郎
 「なるほど、そこまで入れ込んでいる訳か、お幸せに」

幸太郎はそう言うと教室を出ていった。
一方御影先生と琴音は何か確認をとっているようだ。
恐らく授業の事とかだろうが。
やがて会話が終わったのか、御影先生は話を打ち切ると教室を出ていく。
琴音は御影先生に頭を下げると、直ぐに帰宅準備を進めた。

悠気
 「琴音、もう帰るのか?」

俺は直ぐに鞄を手に琴音の下に向かう。
琴音は鞄を用意しながら顔を上げた。

琴音
 「え? もしかして待っていてくれたの?」

悠気
 「ま、まぁな」

俺は顔を赤くすると、それを肯定する。
琴音の事が心配だからとは言えない、出来れば彼女を普通に扱いたいのだ。
それは琴音が望んでいる事だと思うから。


 「大城さん、先生と何を話していたの?」

琴音
 「えと、進級の話……出席日数が足りなくて」

俺たちはそれを聞くと「ああ」と納得する。
恐らく進級に関してなにか先生方も用意してくれているのだろう。
このままじゃ琴音は3年生になれない、琴音も困った顔だった。

琴音
 「えへへ、テスト頑張らないと駄目みたい」

悠気
 「本当にやばいなら俺も手伝うぞ?」


 「もう! お兄ちゃんこそテスト頑張らないと駄目だよ?」

俺は格好つけたつもりが墓穴を掘る。
俺自身頭が悪いからテスト結果は散々だ。
これは俺に言えた話じゃない、か。

琴音
 「クス、悠気君と一緒に留年なら、悪くないかも♪」


 「それは笑い事じゃないよ〜」

悠気
 「ま、まぁそれは俺も頑張るから! とりあえず帰ろうぜ?」

俺は今回は本気で真面目に勉強しようと思う。
今までなんとか赤点は取らない程度に頑張ってきたが、流石にそんな低空飛行はもう辞めるべきだろう。
見ているがいい、次のテストでは宵より成績上になってやるぞ!

琴音
 「私、校門までだけど帰ろう♪」

琴音は帰宅準備を終えると、俺たちは教室を出た。
しかし通路に出ると何故か生徒が通路に集まっていた。


 「あれ? 皆窓の下を覗いているけど……」

俺は不審に思いながら窓の下を覗いた。
しかし俺はそれを見て驚愕した。

悠気
 「う、嘘だろ!?」

それはあり得て良い話じゃなかった。
俺は顔を青くすると直ぐに通路を走り1階を目指す。


 「ちょ、お兄ちゃん一体どうしたの!?」

琴音
 「ま、待って悠気さん!?」

悠気
 「二人は来るな!?」

俺は二人に真剣な顔で静止すると、彼女たちは俺を追う足を止めた。
俺は迷わず階段を飛び越え、直ぐに1階に降りるとグラウンドの前に出た。
すでに野次馬達はそこに集まり、先生達の姿も見えた。
俺は顔を真っ青にしながら、それが嘘だと信じたかった。
しかし俺はその現場につくと、それが真実だと知ってしまう。

悠気
 「はぁ、はぁ……なんで?」

野次馬の中心、そこには血塗れの女子生徒が倒れていた。
それは茶色髪の毛を三編みにした少女だった。
頭から血が吹き出し、まだ赤くそれが新鮮な状態である事が生々しく理解出来る。

幸太郎
 「どけ! 退いてくれ!?」

俺は顔を上げた、柔道着に着替え終えた幸太郎が野次馬を割って入ってきたのだ。
その顔は幸太郎が初めて見せるほど狼狽した顔だった。

悠気
 「こ、幸太郎……この子、は」

幸太郎
 「う、嘘だ……なんでだ!? 何故君がこんな目に合わないといけない!? 罰を受けるなら俺だろう!? なんで君なんだー!?」

……それはどんな罰なんだ?
どんな悪夢なんだ?
俺は確信した、この娘は幸太郎に告白し、そして幸太郎が振った少女だ。



『突然始まるポケモン娘と夢を見る物語』


第19話 呪われた悲劇 完

第20話に続く。


KaZuKiNa ( 2022/01/22(土) 18:34 )