突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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第2部 突然始まるポケモン娘と夢を見る物語
第5話 世界の秘密



みなも
 「はぁ……早く慣れないと」

私は悠気様の身の回りの世話をするために日本にやってきた。
元々を辿れば私は奴隷で、適性があったからマフィアの暗殺専門のバウンサーになった。
組織に忠誠心はなかったし、討希様が組織を潰して、私だけが助かった。
暗殺のための技を教えられて15年……今はそれを棄てて、家庭的なことを必死に学んでいる……のだが。

みなも
 「やり直しだ……クソ! ……いけない」

淑女にあるまじき発言もこれからは控えないといけない。
私はリビングの掃除に失敗して、もう一度最初から始めた。

みなも
 (討希様はどうして私を選んだのだろう……可能ならば13号の方が良かったはず……)

アシレーヌの13号は私と同じように15年前に顕現した。
当時はお互い幼いモクローとアシマリだったが、時が経つにつれ、奴隷の役割は変わった。
私は暗殺、13号は性奴隷として。
13号は性奉仕の序でに家政婦としての仕事も仕込まれていた。
私よりずっと役に立った筈だ。

みなも
 (いかん! 弱気になるな! 生き残った者が勝者なら、私は生を享受しないといけない!)

持ち前の私の性格は強気だろう。
男勝りだと自分でも自覚している。
一方で女らしさを取り戻すには苦労していた。

悠気
 「大変そうだね、手伝おうか?」

みなも
 「ユウ様!? い、いえ! ユウ様の手を煩わせる訳には!」

悠気様は先ほどまでキッチンで月代様と何やら話をしていたはず。
キッチンを見ると、いつの間にか月代様はいなかった。

悠気
 「いい、掃除の基本はね?」

みなも
 「ゆ、ユウ様! それより月代様は?」

悠気
 「月代なら一旦帰った……この後出掛けるから」

みなも
 「あ、はい!」

そう言いつつ、悠気様は手早く掃除を進めた。
私はただただ自分の不器用さに赤面するしかなかった。



***




 「……1周目、か」

私は自分の部屋に戻ると、さっき悠気に話したことを振り返った。
1周目、無知で無自覚な私が生きた世界。
それでも抗うように全てを吸収して、今の私は形作られた。


 (楽しかったなぁ〜)

8月、皆と海に行って人狼ゲームをしたんだっけ。
私弱くてすぐ脱落したんだよね。
9月には文化祭もあった、メイド服を着て喫茶店の真似事したんだっけ。
あれが切欠で、私バイト始めたんだよね〜。
そして最後はクリスマス、間違いなく一番充実した。
それ以外にも小さな事は一杯あった。


 (霊園墓所……あの不思議な体験を悠気に話したら、顔色変えてた)

あれは12月の初めて位だったと思う。
近道で夜の霊園を通過したとき、突然濃霧に包まれた。
その中で私は幼いクレセリアの少女を見た。
アレがなんだったのか今でも分からないけど、おかしな事が起きたのは少なくともアレで最後だったはず。
そして終わりは12月25日0時0分、世界は1周したように始まりを迎えた。


 (始まってからと言えば……)

私は携帯端末からメールを開く。
メール欄はまだそれほど使われておらず、所在不明のメールが一つ目立っていた。


 (育美に事情を話すな……かぁ)

シンプルだが強烈な一文だ。
もしこれが観測者なら、どういう事だろう?


 「……兎に角、やっぱり観測者の存在を明らかにしないと!」

観測者が一体誰なのかは見当も付かない。
少なくとも育美さんを知っていることになるけど、それが育美さんと知り合いかはイコールにはならないだろう。
そもそも、私を観測する理由はなんだ?
私にこの2周目を体験させることになんの意味があるんだろう?


 「はぁ〜、分かる訳ないよね」

分かってるし、まして私馬鹿だし。
悠気は私が持っている1周目の記憶に鍵があるんじゃないかって踏んでいるみたいだけど、なにか分かったのかな?


 (やっぱり気分悪いよね……これじゃフラスコの中の実験室じゃん)

良いように運命を弄ばれ、みなもさんのような存在が変わる場合すらある。
本来なら、それこそこれは神の御技なんだろうけど、そんな物に巻き込まれる身にもなって欲しい。


 (私なんて観察したって、そもそも面白いのかな?)

ふと……、今まではあくまで観測される側で考えていたが、逆に観測する側の視線だとどうだろう?
観察対象が私だとして私の何を観察されているのだろう?


 (はっ!? もしかしてお風呂とかも観察されてる!?)

私は顔を真っ赤にして胸元を隠す。
周囲をキョロキョロ伺っても、観察されているという実感は湧かない。
思わずハレンチな事を考えてしまったが、そもそもそんな神様みたいな人にそういう低俗な考えがあるのか疑問だけど。


 「れ、冷静に考えてエロ目的で盗撮してるなら、そもそも2周目とか必要ないし……」

私にとって重要なのは2周目の意味だ。
誰かが(この場は観測者とする)、私に2周目を体験させている。
それを意味のある物だと捉えると、私に何かをさせたい?


 (ん〜、でもそれなら直接言えば良いじゃん? わざわざメールで警告出来るんだしさ?)

だとしたらやっぱりこの線は違うっぽい。
兎に角不明だが、観測者は存在する……はず。
問題は目的が一切分からない。


 「あ〜もう! シャワーでも浴びて、一度スッキリしてこよう!」

私はイライラから、お風呂場に向かう。
こういう時は一度頭空っぽにした方が良い!



***



悠気
 「霊園墓所……恐らくここだよな?」

時刻は17時頃。
俺は月代に聞いた1周目の情報から、ここが怪しいと踏んだ。
とりあえず散策しながら、辺りを覗う。
しかしそこはありふれた、典型的な寂れた墓地だ。
当然人の姿もなく、あえて近づく理由も無い。

悠気
 「レヒレはいない……当然か」

月代が事件に巻き込まれたのは12月だ。
最低でもそこまで待たないとイベントが発生しないと考えるべきか?
俺は改めて、月代の回想を振り返る。
アイツはここで濃霧に遭遇したと言っていた。
それは間違いなくカプ・レヒレの能力だろう。
そしてそこで月代は、幼いクレセリアの少女に遭遇したと言う。

悠気
 (それは間違いなく死人だ……だが月代となんの関係がある?)

月代宵は不自然なことに過去の記憶が無いらしい。
一方で俺も過去に関しては曖昧だったりする。
ただ、俺自身分からないんだが、幼いクレセリアの少女と言う言葉がどうしても引っかかった。

10年前……まだ親父が家にいて、今の家に引っ越す前。
萌衣ちゃん先輩とは、家も近くて仲良しで、よく一緒に遊んだ記憶はある。
でも、なんで引っ越したのか……親父が帰らなくなったのはなぜか?
それがさっぱり思い出せない。

悠気
 「ち……! この世界はどうなってる?」


 「……無自覚で、ここに辿り着いたのか?」

悠気
 「え……?」

その人は、全く気配がなかった。
そして驚いた。
その人は、紺色のローブを身に纏い、顔はフードに隠れ、不自然な位顔が見えない。
もう10年も会っていないのに……俺はその人を知っていた。

悠気
 「親父……なのか?」

その人は無言だった。
俺はその人を親父、若葉討希だと認識している。
だが、親父はそれを肯定しない。

討希?
 「……ここに俺は存在しない、いやこの世界には誰も存在しない」

悠気
 「!? 親父! 何を知っている!? まさかアンタが黒幕か!?」

討希?
 「……いつまで夢を見る? 気付いているはずだ、現実に」

悠気
 「なんだと?」

夢を見ている?
現実と夢?

その言葉の符号、俺は意味が分からなかったが、親父らしき人はせせら笑う。

討希?
 「……それとも、更なる解答が必要か?」

悠気
 「っ!?」

その時、俺の視界はおかしくなっていた。
俺は何を見ている?
ふと、そこには少女が立っていた。
そこに存在してはならない少女。
世界にとってタブーであり、この矛盾した世界の象徴が……。

悠気
 「あ……あ!?」

討希?
 「……後はお前次第だ、月代宵」

そう言って親父らしき人はその姿を薄らと希薄にしていった。
物の数秒で親父はあたかもそこには存在しなかったかのように消え去った。

月代宵……そうか、そういう事なのか?
俺は宵の事を……ずっと―――。



***




 「――あぐっ!?」

シャワーを浴びた私は突然、激しい頭痛に襲われた。
頭をトンカチで叩かれたなんて目じゃないレベルで、まるで脳をシェイクされたような気持ちの悪さ。
数分間意識を失った私は、軽い頭痛に苛まれながら起き上がる。


 「痛た……今の何?」

あれは唐突だった。
今は大した痛みはないが、死ぬかと思ったわ。


 「うぅ〜、風邪引いちゃう」

丁度風呂上りだったため、私はバスタオルを巻いただけのあられのない姿だった。
急いで用意していた洋服に身を通すと、何が起きたのか考える。


 「単なる偏頭痛……?」

お風呂上がりは特に危険だってテレビでも見た覚えあるし、それだろうか?
いや……なにか違う気がする。


 「ん〜、具体的には説明できないけど、なにかある気がする!」

あるいは、これも2周目で起きる矛盾だったり?
悠気の言う話には、時間が経てば経つほど乖離が進んで、何が起きるか分からないって言ってたし。


 「とりあえず悠気に聞いてみよう」

私はそう思うと自室に向かうのだった。



『突然始まるポケモン娘と夢を見る物語』

第5話 世界の秘密

第6話に続く。


KaZuKiNa ( 2021/10/16(土) 18:00 )