突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


小説トップ
第2部 突然始まるポケモン娘と夢を見る物語
第1話 夢を見るように

一体、これはなんの冗談?
私はなぜお寺にいるの?
ここは……見覚えがある。

ワイワイ、ガヤガヤ。


 「なに?」

それは石段の下から聞こえた声だった。
私は境内を歩き、石段の上から下を見ると多くの学生が制服を着て、ある方角に向かっている。


 「なにこれ……これ、どこかで……」

どこかで見たことがある、そう思った時だ。
私は石段の下から私を見る少年を確認する。



『第2部
     突然始まるポケモン娘と夢を見る物語』




 「悠気……?」

悠気
 「……え?」

それは悠気だった。
悠気は私を下から覗き込んでいた。
一見すると、私のスカートを覗いているみたいだけど、実際は違う。
私は悠気に話しかけようとしたその時……。

瑞香
 「ヤッホー! 悠気! 相変わらずシケた顔ねぇ!」

柚香
  「お、お姉ちゃん失礼だよ!?」

それは山吹姉妹の瑞香と柚香だった。
瑞香は悠気の肩を後ろから叩いて振り返らせると満面の笑みだった。
悠気はそんな瑞香を見ると、冷たい顔で呟く。

悠気
 「山吹姉妹か」

悠気はそう言うと歩き出す。
それに着いていくように瑞香達も歩き出す。


 「あ!」

悠気達はあっという間に人混みの中に消えてしまう。
私は追いかけようとするが、途中で足を止めた。


 「なにこれ? これってまさか……?」

そうだ、私はこれにデジャビュがある。


 「今何日……?」

私は懐から携帯端末を取り出す。
するとその日は、始業式の日を指していた。


 「な、なんで!? タイムスリップしたの!?」

そうだ、この展開は見覚えがある。
でもなぜ? 私は12月24日にいた。
直前で25日を迎えた事は記憶にある。
でもその瞬間私はここにいた。


 「と、兎に角追ってみよう!」

私は兎に角悠気に会うために、学校に向かう。


 (私、パジャマだったのに突然制服に着替えているし、座っていたのに立っていた、一体どういう事なの!?)

矛盾だ、まるで夢でも見ているかのような感覚。
でも、どっちが夢なの?
学校へ入学する今が現実で、あの楽しかった1年が夢の可能性も否定できない。

だけど、おかしい……。
だって私はこの学校への道を知っている。
そこに何があって、どう進めばいいか知っている。


 (なんなのよこれ? 夢でも見ているの? それとも本当にタイムリープしたとでも言うの?)

兎に角学校へ急ぐと、校門で見知った顔を見つける。
黒い目をした色白の美人、アリアドスのPKM、御影杏先生だ。


 「えーと、月代さんね? 転校生の」


 「あ、杏先生?」


 「えっ? どうして私の名前を? 確かに私は御影杏だけど……」

間違いなく杏先生だ、だけど反応がおかしい。
私は杏先生の事をよく知っているのに、相手は私を知らない。


 「えと……まぁとりあえず職員室に行きましょ、色々説明もあるからね」

杏先生はそう言うと踵を返し、私は職員室に誘導される。
私はその間にも、学校の様子を確認しながら、何が起きたのか確認する。


 (知ってる……全部知ってる! なのになんで!? 私はこの道のりをとっくに通り過ぎた!)

私の中ではタイムリープとしか思えない。
突然12月25日を迎えた瞬間、始業式の朝を迎えた。
なぜこんな事が起きたの?


 「――それじゃ、月代さんは私のクラスに来て貰うから」


 「あ、悠気……若葉悠気は?」


 「若葉君? ああ……家隣なんだっけ、ウチのクラスだから後で話してみたら? 彼人を寄せ付けない雰囲気しているけど、意外と良い子だから」


 (知ってる……悠気のこと、誰よりも)

杏先生からすれば、先生目線での評価だろう。
だけど私は、彼と半ば一緒に暮らしていただけに、それだけ悠気のことを知っている。
お互い好きになって、これから一緒に歩もう……そう思った矢先だったのに。


 「それじゃ、ちょっと職員室で休んでてね♪ 始業式終わったら、紹介するから♪」


 「……はい」

杏先生はそう言って職員室を出て行った。
私はどうして良いか分からず、ただ部屋で呆然とした。
この後……確か朝礼会が終わったら、私教室に行くんだよね?
そこで確か、最初は悠気と喧嘩した。
あの頃はまだ悠気のこと信用出来なくて、私のスカート覗かれたって思ったんだ。
でも悠気は覗くような人じゃないし、それに偶然見られても悠気なら良いって思うようになった。


 (兎に角、悠気に相談しよう……悠気ならきっと力になってくれる!)

私は悠気のことを考え、悠気に縋るしかない。
私自身はまだこんなに弱い、悠気のような強い人間にはまだとてもなれそうにはない。
いつかは悠気のような頼れる人になりたいけど、今のままじゃ無理だ。


 (それにしても待ってる時間ってこんなに長かったっけ?)

私はもぬけの殻となった職員室を見渡した。
今は先生も皆朝礼会に出ているみたいで、職員室には私一人だ。
それ故にカチ、コチと時計の音が嫌に響いた。
前は、こんな気分にはならなかった。
きっと緊張していたから、時間が過ぎるのが早かったのかも。
そう思うと、今はクラスの皆のことも分かるし、あの頃のような緊張はないのかも。


 (て……変だよね、なんで私は未来の記憶があるの? タイムリープしたのか、未来視をずっと見ていたのか……)

勿論分かる筈もない、私みたいな馬鹿にはこんな不可思議の意味なんて理解出来る訳がない。
敢えて言えばまるでマンガみたいだな、とは思う。
あるいは夢を見ている? まるで微睡みの中で彷徨っている気分だ。


 (はぁ……早く悠気に会いたい、私一人じゃ頭パンクしちゃうよ……)




やがて、時間が過ぎていくと先生達が帰ってくる。
人の気配も一気に戻ってきて、杏先生も私の前に現れた。


 「それじゃ月代さん。教室に行きましょうか?」


 「はい……」

杏先生に引きつられ、私は教室に入室する。
教室の中は皆奇異の目で私を見ていた。
ただ、悠気だけは興味なさげだったのが気になる。


 「それじゃ、自己紹介お願いね」


 「月代宵です、皆さん宜しくお願いします」

私は黒板にチョークで自分の名前とPKMとしての種族名を書く。

幸太郎
 「クレセリアか……」

瑞香
 「ふ〜ん、結構可愛いじゃない」

琴音
 「羽綺麗……」

皆の反応は様々だ。
だが、私はこれまで親しく接してくれていた人達の突然の変化に戸惑うしかない。


 「ガキ共仲良くするのよ!? それじゃ席は〜、空いてる席にお願い♪」

そう言うが、空いてる席は一つだけ。
どうせ明日には席替え有るんだから別に良いんだけど。
私は一番後ろの席に向かいながら窓側で興味なさげに黄昏れる悠気を見る。
しか、視線に気付いた悠気が私に振り返った。

悠気
 「なに?」


 「……後で話しがあるの」

私はそう言って席に向かうが、その話を聞いた一部が響めいた。

男子生徒
 「なんだなんだ!? 若葉、月代さんとどういう関係だ!?」

琴音
 「若葉君……?」

瑞香
 「……(゚Д゚)」

悠気
 (鬱陶しい……)

瑞々しい反応だ。
いつからだろう、最初は皆私と悠気のこと突いてきたのに、気が付いたらそんな事も無くなっていた。
この反応は最初だけだろう、どうせ皆慣れるよね……。


 「はーい! ガキ共騒ぐなー! そんじゃプリント渡したらホームルーム終えるわよ!?」

私が席に座ると、杏先生はプリントを先頭の席の人に順番に配っていった。
とりあえず終わったらまず悠気に事情説明しよう。
だけど……。


 「それじゃ今日はもう帰ってもいいわよ!」

放課後が始まると、私が立ち上がるより先に生徒が私の周りを取り囲む。

男子生徒
 「ねぇ月代さん何処に住んでいるの!?」

女子生徒
 「羽綺麗ね!」

男子生徒
 「部活はどこに行くか考えてる!?」


 「え? あの……私はっ!?」

動けない。
私の周りは興味津々の生徒が多くて、私は悠気を見るけど、悠気は興味なさそうに出口に向かっていく。


 「ま、待って……!」

悠気が一度出口で振り返る。
しかしそこに向かったのは瑞香だった。

瑞香
 「悠気〜♪ 昼飯奢って貰うわよ〜♪」

悠気
 「おま……あれは賭けが成立していないだろ」


 (え? なんで……?)

確か、私の記憶にはこんな事は無かった。
何が違った?
私はそれを考えるが、周りの生徒は私に質問責めをして、上手く考えさせてくれない。
そうこうしている間にも悠気はもう見えない。
は、早く悠気に説明したいのに!?


 「も、もう〜! 質問は明日にして!」

私はそう言うと、無理矢理人の波を掻き分けて悠気の後を追った。
悠気の姿は校門前で発見する。
私は兎に角悠気の後ろを必死に追いかける。


 「ま、待って……!」

悠気
 「……」

悠気は足を止めてくれた。
しかしそれに不快な顔をしたのは瑞香だった。

瑞香
 「月代さん? アンタ妙に悠気に馴れ馴れしいわね……アンタ悠気の何なの?」

悠気
 「人聞きの悪いことを言うな! 初対面だ」


 「……その」

瑞香はずっと優しくしてくれただけに、この攻撃的な反応には戸惑ってしまう。
でも一番キツいのは、悠気に他人扱いされた事だ。
私は涙目になって、震えてしまう。

瑞香
 「悪いけど月代さん、私は悠気とこれからデートなの♪ 邪魔しないでくれる?」

悠気
 「ただ、昼飯奢るってだけだろうが……」

瑞香
 「うっさい!」

そう言って瑞香は悠気の背中を蹴る。
悠気は苦悶の表情を浮かべた。


 「瑞香……その」

瑞香
 「えっ? なんで私の名前知ってるの!?」

瑞香は驚くと、私に向かって恐い顔で迫ってくる。
しまった、まだ私達は初対面だから、名前を知っているのはおかしいんだ。

瑞香
 「まさか私の記憶でも見たの?」


 「そ、そういう訳じゃ……」

瑞香
 「それ以外考えられないじゃない! アンタエスパータイプでしょ!? そういう読心も出来るのよね!? でもそれって最低よ!」


 「ひっく……! わ、私は……!」

こんな瑞香を見るのは初めてだ。
瑞香は基本的にこんなに怒ることはない。
でも記憶を覗かれたと思った瑞香は本気で怒っていた。

悠気
 「もうよせ、瑞香」

瑞香
 「……悠気だって、覗かれたら嫌でしょ? いいわ……許してあげる。でも金輪際そういうことしないでよ!?」

瑞香はそう言うと悠気の手を取って歩き出した。
私はこれ以上どうすることも出来ず、ただ棒立ちでそれを見送るしか無かった。


 「ひっく……どうして? なんでこうなったの?」

違う……私の知っている歴史と似ているようで違う。
私は瑞香とは最初からある程度良好な仲でスタートした。
でも今回は違う、悠気とは険悪な印象からスタートした訳じゃないけど、瑞香とは険悪な関係からスタートしている。


 (訳分かんないよ……どうなってるの?)

果たして、私の記憶は本物なのだろうか?
本当はこっちが現実で、私が体験した1年は夢や幻ではないか?


 「帰ろう……」

私は意気消沈して、トボトボと家路に向かう。
この時期って何してたっけ……そうだ、引っ越しだ。
早く帰らないと引っ越し業者が来ちゃう。


 「宵ちゃん♪」


 「え?」

帰り道、丁度廃寺のある参道の前で私は聞き馴染みのある声の方に向いた。
目の前には長身でとても美しい女性がニコニコ笑顔で立っていた。
育美さんだ……そう言えば、随分久し振りに会った気がするなぁ。


 「お久しぶりです、育美さん」

私は育美さんに頭を下げると、育美さんは私の頭を撫でてくれる。
まるで本当の母親のように。

育美
 「宵ちゃん、浮かない顔ね……どうしたの?」

育美さんは私の顔色を見て、私が沈んでいると理解したらしい。
いっそ、育美さんに説明してみようか?
馬鹿みたいだけど、早くこの疑問を氷解させたい。


 「実は……」

その時だった。
突然私の持っていた携帯端末が鳴る。
私は育美さんに一言言って、端末を見るとメールを一件受信していた。
メールアドレスは知らないドメインだ。
そしてその内容は。

『育美に事情を話すな』


 「えっ!?」

私はその短い文章に驚いた。
なぜ育美さんとの会話が筒抜けなの!?
近くにこのメールを送った人がいる!?
私は周囲を伺うが、この周囲には私と育美さんの姿しかない。

育美
 「どうかした?」


 「え……? その……なんでもありません! それより引っ越し業者が来ちゃいますから!」

私はそう言うと育美さんに一瞥して、家へと向かった。
足早で向かう中、私は動悸を速める。
何故? なんで育美さんに教えては駄目なの!?


 (一体メール主は誰なの!? この現実は一体何なのよ!?)

訳がわからない。
ただ混乱する要素だけが増えて、私は気が付けば走っていた。
だけど……この時私はまだ気付かなかった。
あの謎のドメイン、それは12月24日にも送られていた事を……。



『突然始まるポケモン娘と夢を見る物語』


第1話 夢を見るように 完

第2話に続く。


KaZuKiNa ( 2021/09/17(金) 18:00 )