突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


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突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
第7話 深窓の乙女のような



琴音
 「お母さん、おはようございます」

私の名前は大城琴音(おおきことね)。
私は目の前の位牌と写真に挨拶をした。
お母さん……大城奏(おおきかなで)は私が10歳の時に死んだ。
お母さんは元々病弱で、本当は私を産んだときに死んでいても不思議じゃなかったらしい。
それでも懸命に母を演じてくれて、それでもその思い出は10年でしか無い。
少しずつ失せていく、母との思い出が怖くて、位牌の前に立ってしまう。
さて、そろそろお父さんを起こさないと。

琴音
 「お父さん! 朝だよ、遅刻しちゃうよ?」

道理
 「んあ? 朝か……何時だ琴音?」

私のお父さんは大城道理(おおきどうり)と言う。
30代後半で、そろそろ老けてきた顔も貫禄とはほど遠い。
IT系企業に勤めているしがない課長さんだけど、私はお父さんが大好きだ。
お父さんは私とお母さんを一杯愛してくれた。
お母さんが亡くなった時は、私よりずっと泣いて哀しんでた。
それでも私が学校にいけるのはお父さんのお陰。

琴音
 「7時、ご飯にするよ」

道理
 「おう、直ぐ行く」

私はお父さんの寝室を出ると、リビングのちゃぶ台の前に座る。
私が産まれた時からずっと住んでいるアパート。
とても良い家とは言えないけど、お母さんは日向ぼっこ大好きで、一杯陽が当たる場所だからこのアパートを選んだって聞いている。
お父さんは肌着の白シャツにトランクスという情けない格好で出てくるけれど、今更だから私は何も言わない。

道理
 「ふあ……おはよう琴音」

琴音
 「うん、おはようお父さん」

お父さんがちゃぶ台前に座ると朝ご飯が始まる。

道理
 「頂きまーす、うん……相変わらず美味しい」

琴音
 「うふふ、お母さん直伝だからね」

道理
 「最近すっかりお母さんに似てきたよなぁ……」

それは容姿の事だろう。
幸運な事に私は健康そのもので、お母さんのように虚弱じゃない。
半分はお父さんの血が入っている筈だけど、容姿はお母さんから、身体はお父さんから受け継いだのかも。

道理
 「さーて、今日の天気予報は……雨、か」

お父さんは雨という言葉に嫌そうな顔をする。
それはきっともっと深い意味があるんだと思う。

琴音
 「今年は少し早めに梅雨入りみたいだね」

時は6月、日本には梅雨前線が押し寄せている。

道理
 「ごちそうさん、着替えてくるわ」

そう言ってお父さんは味噌汁を飲み干すと、寝室に戻る。
私はお父さんの食器を片づけると、エプロンを脱いでお父さんの様子を見た。

道理
 「奏……雨の日だとやっぱり思い出しちまうよ……時々常葉の奴が羨ましく思っちまう。なんで逝っちまったんだろうな……やっぱり早すぎたぜ……」

琴音
 「……」

お父さんはスーツに袖を通して、位牌に語りかけている。
お父さんは今もお母さんを愛している。
それが私は少し哀しく思えた。
こんなお父さんを見て、お母さんは喜ぶのかな?
お母さん、お父さんはすっかり笑わなくなりました。
どうすればもう一度笑って貰えるでしょう?



***



家を出ると、雨が降っていた。
お父さんは一足先に電車の待つホームに向かう。
私は傘を差すと、学校へと向かった。
学校までは徒歩で30分、なるべく近くが良いと選んだので、特にこれといった理由はない。
20分位歩くと、目の前から大きな尻尾を振るある少女を発見する。


 「琴音お姉ちゃん! おはよう♪」

琴音
 「おはよう、命(みこと)ちゃん」

彼女は常葉命(ときわみこと)、お父さんの大親友で常葉茂(ときわしげる)さんとその奥さんの常葉茜(ときわあかね)さんのご子息で、私と命ちゃんは家族ぐるみで付き合いがあった。
命ちゃんはイーブイのPKMで、私を発見すると嬉しそうに駆け寄ってくる。
とても人懐っこい子で、身体能力が高い子だけど趣味は物凄くナードな変わった子。
特筆すべきはその低身長に似合わない巨乳だよね。
身長は150センチ程度、バストは82のロリ巨乳、しかし全くエロさを感じさせない元気で活発な子だ。


 「アーメアーメフーレフーレ♪」

琴音
 「命ちゃん、雨が好きなの?」


 「うーん、私は毛がゴワゴワしてそんなに好きじゃないかも、でも伊吹お姉ちゃんが好きだから」

琴音
 「伊吹さん、良く歌っているものねぇ」

命ちゃんの家は色々と凄い。
なんと言っても第一世代PKMを8人も養っているんだから、今時考えられないよ。
とは言っても、今常葉家には第一世代PKMは4人しかいなかったはず。
ギルガルドの美柑(みかん)さんは冒険家で有名で、今は南極にいるはずだし、ピジョットの凪(なぎ)さんは教員免許を取ってから一人暮らしを始めている。

琴音
 「そう言えば、華凛さん見たよ、ドラマ主演って凄いよねぇ」

アブソルの常葉華凛(ときわかりん)、芸名は花月華凛(かげつかりん)は舞台から映画の世界に入って、今や知らない者はいない女優になった。
だけど彼女も迷惑は掛けられないと、家を出て行った。
残ったのはずっと家政婦をしているウツロイドの保美香(ほみか)おばさんと、保育園で保母さんをしているヌメルゴンの伊吹(いぶき)さん、社会人のアグノムの理奈(りな)さん、そして命ちゃんのお母さんの茜さん。


 「永遠お姉ちゃんは音信不通だし……やっぱり寂しいよ」

かつて10人で住んでいた常葉家も今や6人、ウチはずっとお父さんと一緒だったからあんまり分からないけど、大家族だといつかは家を出て行っちゃうんだよね。

琴音
 「命ちゃん、学校は楽しい?」


 「うん! Eスポーツ部も今年の大会は全国優勝するからね!」

今や五輪の正式種目にも採用されたのがEスポーツ、ゲームを使った大会は正式なプロリーグも開かれ、全国高校生選手権も開かれている。
命ちゃんは、そんなEスポーツ部の超新星なのだ。
お母さんの茜さん同様神の超反応を持って、中学生大会では全国優勝、遂に高校一年生になり、全国大会で優勝すれば、世界大会へと招待される。
だけど、命ちゃんが凄いのって、スポーツ万能なこと。
PKMとしては非力のイーブイだけど、それが制御装置と相性がいいのか、大して弱体化してないようで、陸上部柔道部剣道部バレー部と体育系が軒並み勧誘を仕掛けたのは記憶に新しい。
だがしかし、あくまで彼女はナードだ。
例えいくら100メートル走中学記録を持とうが、剣道部で全国1位の猛者を軽く一本勝ちしようが、大好きなのはゲームなのだ。
改めて、ずるい位スペックが違うのよね。


 「お姉ちゃんはどうなの? 好きな人とか!」

琴音
 「ええ? またその話題?」

高校生にもなれば当然だけど、命ちゃんも恋バナが大好きだ。
因みに本人だが、お父さんみたいな人が理想らしく、今の所高校にはいないようだ。
アレだよね、世の中にたまにいるおじさん趣味、○アヌリーブスとかが好みなんだよね。


 「とりあえず、高校生には死んだ魚の目を持った熱い心の男子がいない」

琴音
 「相変わらず希望が具体的だねえ」

そんなの茂おじさんしかいないと思うけど。
命ちゃんのお父さんだけど、常葉茂おじさんは私目線で見てもとってもダンディー。
というか思想が男らしいというか、今時ハーレム築くのあの人位だと思う。
今ではベンチャー企業を立ち上げて、社長として働いている。
この会社も妙で、PKMが多く採用されているという新興企業らしい特徴がある。
採用されているのもメタグロス、ポリゴン、ラプラス、ハブネーク、ゴーリキーと得意も様々で、非常に賑やかな会社だ。
お父さんも勧誘されたんだけど、丁度時期がお母さんを失った頃だけに、お父さんは断ったの。
茂おじさんは副社長の椅子を用意していたみたいだけど、お父さんにはそんな気持ちの余裕はなかった。
お父さんが笑わなくなった事は茂おじさんも気にしてくれている。
今でもちゃんと付き合いはしているし、お互い違う道行ってるけど仲が良いのは確かだ。
その子供の私達だって、こうして仲が良いんだから。


 「それで、お姉ちゃんが好きなのは?」

琴音
 「それは……あ」

気が付くと学校は目の前だった。
丁度校門を走って校舎に向かうのは山吹さんと若葉君?

瑞香
 「アッハッハー! 私の勝ちー!」

悠気
 「陸上部の瑞香に勝てる訳ねぇだろぉぉ!?」


 「あ、柚香ちゃーん♪」

命ちゃんは同級生を発見すると、楽しそうに尻尾を振って向かって行った。
私はそんな命ちゃんを見届け、若葉君の背中を追っていた。



***



瑞香
 「ウフフ〜、今日は昼奢りだからねぇ?」

悠気
 「理不尽だ……」

幸太郎
 「常々不思議なんだが、瑞香はいつも弁当じゃないか? なのに奢りとは?」

悠気
 「コイツの目的は食後のデザートだよ」

瑞香
 「ウフフ〜、今日はプリンの気分ねぇ〜♪」


 「それなら悠気に作らせたら? 悠気のプリン美味しいよ」

瑞香
 「なん……だと? アンタプリンも作れるの!?」

悠気
 「作れる……というか作った方が安い」

俺はそう言うと、全力疾走の代償から自分の机に突っ伏した。

瑞香
 「むぅ……クリームプリンとか、作れちゃう?」

悠気
 「お前の好きな抹茶プリンでも作れらぁ」

瑞香
 「……よし! 罰ゲーム変更! 明日プリンを作ってきなさい!」


 「ついでに私もヨロロ〜♪」

悠気
 「……腐らないように運ぶ方法が問題だな……」

もう6月、半袖のシーズンが来て、気温に湿度と生ものの保存が大変厳しい時期だ。
俺はどうやって運ぶか想像するが、コウタは呆れたように。

幸太郎
 「作ることになんの異存もないのに、運ぶ方法は真剣に考えるのか……」

悠気
 「兎に角湿度が問題だ……ん?」

俺は明日プリンの予約に思案を耽っていると、目の前に覚えのある姿を見つけた。

琴音
 「あ、若葉君おはよう」

悠気
 「おはよう、大城」

大城だった。
なんて言うか、大城が挨拶するのは珍しいな。
挨拶されれば返す奴だが、自分からするのは珍しい。
今時では激レアな大和撫子の大城はとても奥ゆかしい。
恐らくどこぞの姫さまの生まれ変わりじゃないだろうか……なんて噂もある。
間違いなく学園一の美少女は今日も高嶺の花だ。

男子高生A
 「見たか? 若葉が大城さんに挨拶されたぞ!?」

男子高生B
 「許すまじ……暴力女は良いとして、月代さんまで拐かしている癖に!」

瑞香
 「あーん? 喧嘩売ってんの!?」

男子高生B
 「ひえーっ!? 暴力女が襲ってくるー!?」

……大城に挨拶されただけで嫉妬されるんだからやってらんないぜ。
まぁ瑞香はどうでも良いとして、月代を拐かすとは心外だ。
向こうが勝手に懐いているだけだっつーの。


 「私拐かされてるの?」

悠気
 「お前はご飯目当てなだけだろうが」


 「てへっ♪」

最近月代の食欲も旺盛だ。
お弁当もみなもさんが作るようになって、事情を話したら喜んで月代の分も作るようになった。
それが効いたのか、最近月代が俺の家で晩飯を食べるようになってきた。
お陰で最近料理の腕が上達していないようで、それが悩ましい。
中間テストも赤点なしで乗り越えたし、着々と成長はしてるんだがなぁ。

キーンコーンカーンコーン。

やがて、騒がしかった教室もチャイムが鳴ると皆着席して先生を待った。


 「よーし、ガキ共! 出席取るぞー!」

今日も元気全開に教室に入る杏先生、6月になると先生も衣替えして薄いカッターシャツに変えているのだから、色気が増して男達が響めく。


 「こら上杉! いくら先生が美しくて見とれたからって、鼻の下伸ばしてんじゃないわよ!」

それに笑い声が上がると、先生は点呼を始めた。
先生らしい、冗談を取り入れた授業は人気が高い。
先生なりの和ませ方だろう。


 「大城!」

琴音
 「はい」

悠気
 (大城、琴音……か)

ふと、普段なら気にも留めない相手のことを考える。
学園一の美少女なんて言われ方もしているが、実際のところ彼女と誰かが会話したり、遊んでいるところを見たことがない。
それはこのクラスの皆でも殆ど知らないだろう。
何せ同じクラスの生徒と会話することも稀で、誰が友達かも分からないんだ。
ボッチとは思わんが、団体生活が苦手にも思えないし、不思議だよなぁ。


 「おーい、若葉ー? 返事しろー?」

悠気
 「あ、はい!」

ふと、大城の事に集中していると自分の点呼を忘れていた。
俺は出席番号の最後だから、俺の確認を取ると先生は特に連絡もなくホームルームを終えて、教室を出て行く。

男子高生
 「雨か〜、今日1限目って体育だろ? 自習かな?」

今も窓の外では大粒の雨が降り注ぐ。
グラウンドはぐちゃぐちゃで乾くのは時間が掛かるだろう。
俺はぼんやり空を見上げながら、授業の準備に向かうのだった。



***



放課後、帰宅部の俺は同じく帰宅部の月代と一緒に下駄箱の前まで来ていた。
今日は一日降るらしく、月代も月が出ないと力が出ないのか気怠げだ。


 「あれ? 大城さん?」

校舎の入口で俺たちは見知った顔を発見する。
大城は、入口で困ったような顔をしていたのだ。

琴音
 「あ、二人とも……」

悠気
 「どうしたんだ?」

俺は傘立てから、自分の傘を引っこ抜くと、大城に聞く。
みると荷物を持っている事から、帰宅するようだが。

琴音
 「その、傘がないの……多分誰かに間違えられて……」


 「盗まれたんじゃない? 大城さんって隠れアイドルって感じだから」

月代の意見もあながち間違いとは言えんな。
偏執的なファンなら盗みかねん、そしてそういうファンが潜在的にいるかも知れないのが大城なのだ。
しかし大城はなるべく人の性にはしたくないのだろう、あくまで間違えられたとしている。
そういった性格の良さも人気の秘訣だろうな、月代や瑞香も見習って欲しいものだ。

悠気
 「仕方ない、ほら! 傘を貸してやる」

俺はそう言うと自分の傘を大城に差し出した。
大城は目を大きく開いて驚いたが、俺の顔を見て素直に受け取った。

琴音
 「でも、若葉君はどうするの?」

悠気
 「月代! 傘入れろ!」


 「え〜?」

露骨に嫌がる月代、こいつ忠誠度低いな。
仕方ないので、俺は譲歩案を出す。

悠気
 「今なら傘持ちをしますよ?」


 「なら良し!」

そう言うと、俺は月代の傘を受け取って寄り添いながら校舎を出る。
大城も俺の傘を使って後ろから近寄ってくる。

大城
 「いつも思うけど、二人って本当に仲良しですよね。もしかして付き合ってるの?」

悠気&宵
 「「まさか!?」」

ハモった。
仲が良いのは確かだが、いわばこれは飼い主と犬の関係に近い。
断じて月代に恋愛感情を抱く事はないし、それは月代も同様の筈だ。


 「うわ!? 水跳ねた!? もっと寄って!」

悠気
 「これ以上近づくと歩きづらいぞ!」

そう言って更に近づく俺たちに、大城はクスリと微笑んだ。

琴音
 (どう見ても相合い傘なんだけどなぁ……)


 「大城さんって確か吹奏楽部でしょ? 今日はどうしたの?」

琴音
 「今日はお休みになったの」


 「へぇ〜、文化系って雨の日の方が活発だと思ってた」

琴音
 「そうでもないのよ? 特に楽器って湿度で状態変わるから」

なるほど、今日みたいに湿度が高い日だと特にか。
そう言えば湿度で音が変わるって聞いたことがあるな。

琴音
 「あ、私はこっちだから……」


 「うん! 大城さんまた明日ねー!」

琴音
 「若葉君、傘ありがとうね」

悠気
 「気にするな、また明日」

琴音
 「はい、ご機嫌よう」



『突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語』


第7話 深窓の乙女のような

第8話に続く。



KaZuKiNa ( 2021/02/19(金) 19:25 )