突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語


小説トップ
突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語
第35話 楽しいクリスマスと違和感



むかしむかしまだ世界が核の炎に包まれる前。
4人の女子がいました。
若葉悠気はそんな女子達の中から、恋人を一人選ばないといけません。

まずは山吹瑞香。
瑞香は4人の中で最も付き合いが長かったのですが、如何せん直ぐに暴力を振るい、私生活もダメダメで悠気は「ないな」と思いました。
特に「ないな」と思ったのは5年も付き合ったにもかかわらず、一向にデレる様子がなかった事です。

次はその妹山吹柚香。
柚香は四人の中で最も聡明で家庭的で大人しい娘だったので、悠気も期待していたのですが。
如何せん姉とは正反対で消極的過ぎて「ないな」と思いました

三人目の大城琴音は全体的に「ないな」と思いました。
もうそのロン毛以前に初めから決まっていました。

そういう訳で悠気は消去法で恋人を月代宵にしました。
これを聞いた琴音はとても怒ったり、瑞香は逆レイプ未遂を起こしたり、世界は核の炎に包まれたり、色々大変だったのですが。
扱いやすさが売りの宵がもろもろポケモンの枠を越え、もろもろ頑張ったので、丸く収まりました。

めでたし、めでたし。



萌衣
 「……はぁ」

私は溜息を吐いた。
あんまりにもしょうも無いネタを思い付いたので、次のゲームのプロットを書いたけど、書いてて泣きそうになる。
改めて悠気が宵ちゃんを選んだことで、分かりきっていたことだけど、私にチャンスはなくなった。
本来なら、もっともチャンスが多かったはず。
それでも……私は臆病だった。
悠気が愛おしくてたまらなくて、ただ見守っているだけでも幸せだった。
ただ彼の頼れるお姉ちゃんであった時が一番嬉しくて、そこで満足してしまったんだ。
もし、もっと積極的にアプローチしていたら、結果は変わっていたのだろうか?

萌衣
 「次のビジュアルノベル、傷心した主人公が過去に転生して、好きな男子と添い遂げるため、運命を変える……割とありかしら?」

ゲームには夢を詰め込める。
例え私は負け犬でも、それを主人公に詰め込めば、きっと妄想の世界くらい許してくれるはずだ。

萌衣
 「おっと、そろそろ集合しないといけない時間か」

私は時計を確認した。
プロットを書くノートパソコンを閉じると、机から立ち上がる。
するとその時だった、本棚からなにか一枚の写真が落ちた。

萌衣
 「これって……」

私はそれを拾うと、そこに映っていたのは私と悠気だった。
まだ悠気が笑顔で笑っていた頃、それは10年も前の写真だ。

萌衣
 「懐かしいなぁ、あの頃悠気ってば泣き虫でずっと私の背中を追っていたのよね」

それは今でも覚えている。
あの愛らしい顔は未だに忘れられない。
だけど彼は変わったんだ。
ある日突然、全く笑顔を失い、そして覚悟を持っていた。

萌衣
 「ん……? よく見るとこの写真なにか変……」

それはよく見るとおかしい物だった。

写真の被写体は妙に右に寄っており、私の隣に笑顔の悠気が映っている。
しかし、悠気の隣に不自然な空白があり、そこにもう一人入りそうなのだ。

萌衣
 「あ、れ? なんで……? 私なにか忘れている? 何を? 誰かこの写真には写っていた? え……それって」

そうだ、私はなぜ忘れていたのだろう。
そこには三人目がいた、そう悠気から片時も離れようとしなかった少女がいた。

萌衣
 「あれは■■■■、□□■□□■□■―――」

………?

萌衣
 「あれ? あ、そうだ早く学園前に行かないと!」

私は気でも失っていたのだろうか。
直前の記憶はなく、もしかしたら疲れて眠っていたのかも知れない。
兎に角このままじゃ遅れちゃう!
私は急いで準備すると、集合場所を目指すのだった。



***



みなも
 「まぁ、それでこの大荷物ですか」

悠気
 「ああ、俺も手伝うからさ」

突然大荷物を持って帰ってきた俺にみなもさんはビックリしていた。
俺が事情を説明すると、みなもさんはポンと手を叩いて納得した。

みなも
 「成る程、私もクリスマスを楽しむのは初めてですが、大人数で楽しむのですね」

悠気
 「今回は7人分だから、夜までに間に合えば良いけど!」

本来なら3人分で良かった筈だが、こうなってしまったのは仕方がない。
本来は空いた時間宵とデートするつもりだったが、これがご破算だ。
まぁ宵と二人っきりになる機会はこれからもあるだろうからな、それは次回に取っておこうか。

みなも
 「私も育美様直伝の料理でお持てなし致しましょう!」

悠気
 「うん! 頑張ろう!」

俺達はエプロンを着ると早速、作業を始める。
今頃宵は皆と合流している頃だろうか?



***



萌衣
 「ごめん! ちょっと遅れちゃったー!」

既に閉じられた校門前、最後に現れたのは萌衣先輩だ。


 「萌衣先輩〜! 全然大丈夫ですよ〜!」

萌衣
 「そう? 宵ちゃんは優しいね〜」


 「えへへ〜♪」

萌衣先輩は私に駆け寄ると、私に抱きついて頭を撫でる。
それを見て、驚いたのは瑞香ちゃんだった。

瑞香
 「あれ? 萌衣先輩、宵と知り合いだったりしました?」

萌衣
 「え? あれ? そう言えば?」

そう言えば、私って萌衣先輩と詳しく話した事は無い。
名前は前に野球をやったときに知ったけど。
そう言えば私って、萌衣先輩とこんなに仲良かったっけ?

琴音
 「まぁ宵ちゃんは特別人懐っこいですから」

瑞香
 「それもそうね。まぁいいや、それじゃ行きましょうか!」


 「あ、案内しまーす♪」

私はそう言うと、早速道案内を始める。

瑞香
 「そう言えば宵って何所に住んでいるわけ?」


 「ほえ?」

柚香
 「そう言えば、いつも通学路で会いますけど、いつも悠気さんと最初に一緒にいますよね?」


 「あれ? そう言えば言ってなかったっけ?」

琴音
 「聞いたことないですね」


 「まぁ着けば分かるよ」

私はそう言うと住宅街を通り過ぎていく。
やがて、目的の場所に辿り着くと私は立ち止まった。


 「はい、到着〜♪」

萌衣
 「それは良いけど、着いたら分かるってどういうこと?」


 「私の家はこっちで〜す!」

私はそう言うと隣の家を指差した。

瑞香
 「まじで!? た、確かに月代ってある……」

琴音
 「そんな……それじゃ圧倒的に一緒にいる時間が……!」

柚香
 「つまり、初めから敗北してたのですね……」

あれ? なんだか皆急に落ち込んでしまう。


 「そ、そんな事より! 悠気も待ってると思うからさ!」

私はそう言うと、悠気のいる玄関の扉を開いた。


 「ただいま〜!」

悠気
 「おう、皆いらっしゃい」

家に入ると、早速エプロンを着た悠気がお出迎えしてくれる。
中は良い匂いで充満しており、早くもお腹が空いてしまう。
だけど今日はご馳走、我慢しないと!

瑞香
 「ねぇどう思う?」

琴音
 「所帯染みてる……これもう結婚してるんじゃ?」


 「な、何言ってるのよもう〜! 私と悠気はそんなんじゃ〜♪」

私はそう言うと両手を頬に当てて、身体をくねらせた。
そういう関係も悪くないって思うけど、まだ恥ずかしい。
一方で悠気はそんな事は気にもせず。

悠気
 「ディナーまで時間が掛かる、中でゆっくりしてくれ」

瑞香
 「まぁ、それじゃ〜、おじゃましま〜す」

琴音
 「お邪魔します」

私達はぞろぞろとリビングに向かう。
リビングに座り込むと、それを見越してみなもさんはお茶を持ってきてくれた。

みなも
 「粗茶ですが、どうぞ」

萌衣
 「メイドさん!?」

瑞香
 「あ、先輩そう言えば初対面よね、この人は出海みなもさん」

萌衣
 「な、なんでメイド服なの? しかもヴィクトリア朝時代の正式なメイド服だなんて……」

みなも
 「趣味です」

みなもさんはそう言うと、キッチンに戻っていった。
ていうか、みなもさん私服殆ど持ってないよね?
逆に普通の服を着る事に忌諱感もあるらしい、あの格好がもっとも落ち着くらしい。

琴音
 「出海さん、たしかホームスティしてるんだっけ……」


 「あーうん、色々便利みたい」

都合上、出海みなもは偽名であり、その来歴も詐称だらけだ。
でも、説明できないことだらけで、複雑な事情もみなもさんにはある。


 「そんな事より、何しよっか!?」

私は話題を逸らすと、なんとか皆と楽しく過ごそうと画策するのだった。



***



みなも
 「賑やかな皆さんですね」

悠気
 「ふふ、ああ……退屈しない、最高の学園ライフを満喫させもらっているよ」

俺はメレンゲを掻き立て、クリスマスケーキの準備をする。
思い起こせば、宵が現れてからこの1年、最初は鬱陶しいと思えるほど賑やかだった。
だが、気が付けばそれが心地良く、俺はそれほど苛立ちも失せていた。
宵というたった一つのファクターが俺達の生活を一変させたのだ。

みなも
 「良い経験をしたのですね……本当の顔で笑っています」

そう言うみなもさんも穏やかに笑っていた。
正直みなもさんも初めて会った頃に比べると、随分と落ち着いて穏やかになったように思う。
なんて言うか、最初の頃は余裕がなくて、俺も突然の許嫁メイドに戸惑ったが、今では良い関係にあると思う。

柚香
 「あの、良かったら私も手伝ってよろしいでしょうか?」

みなも
 「あら? ですがゲストにお手伝いさせるわけには」

悠気
 「……いや、ユズちゃんは料理部のエースだ、その腕は信頼出来るし、なにより彼女の好きにさせてやってほしい」

俺がそう言うと、みなもさんは素直に従った。
ユズちゃんはそれに顔を綻ばせる。
俺はエプロンを指差すと、彼女は慣れた手つきで調理場に入った。

柚香
 「では、何をすれば良いでしょうか?」

悠気
 「兎に角揚げ物が多い、そっちを頼む!」

柚香
 「分かりました!」

柚香ちゃんは指示さえ貰えば、的確だ。
姉とは正反対で真面目で几帳面だから、ほぼ正確に調理するだろう。

瑞香
 「悠気、まるで料理長みたいね〜」

悠気
 「邪魔する気か?」

瑞香
 「まさか! そこまで子供じゃないわよ〜、ふふ〜ん♪」

瑞香はそれだけ言うと、戻っていく。
アイツ……何がしたかったんだ?



***



瑞香
 「ふふふ、柚香の無自覚の献身には感謝するわよ、これで悠気の目線は私に向かない!」

私はそう言うとこっそりと2階の階段を昇る。
そりゃ男子の家にやってきて、やる事って言ったら1つよね〜?
私は2階に辿り着くと悠気と書かれたプレートの貼られた扉を開く。

瑞香
 「お邪魔しま〜す♪」

私は悠気の部屋に入ると、静かに扉を閉めた。
その内装はかつて来た時と大して変わっておらず、相変わらず生真面目な悠気に苦笑する。

瑞香
 「あいつ……本当に普通の趣味を持たない奴よねぇ……これが高校生の部屋ぁ〜?」

悠気の部屋は整理整頓が行き届いていて、マメに掃除された跡もある。
マンガ類も最低限しかなく、当然思春期の男子にありがちなエロ本も見当たらなかった。

瑞香
 「それにしても1年振りかぁ……今年はなんだかんだで忙しくて、悠気と全然遊んだ気がしないわね」

私はつい1年前まで、割と頻繁に訪れたこの悠気の部屋を懐かしむ。
そして窓の向こうに見えるのが、宵の部屋なんだろう。
こんな手を伸ばせば届きそうな近さで、アイツらはずっと過ごしていたのか。

瑞香
 「そりゃズルいよ、ずっと一緒だなんて、勝てるわけ無いし……」

我ながら弱気な発言だ。
だけど、実際この距離感は私達が絶対に得られなかった物だ。

瑞香
 (悔しいわよね、もっと早くこの事実を知っていれば……)

そうだ、3月位までは私はまだ余裕があったし、ここに遊びに来てたのだ。
それが4月になって、部活が本格始動した事もあるけれど、宵が来てから全く来ていない。

瑞香
 「あれ? でもなんで?」

私はふとおかしな事を疑問に思ってしまった。
私は来ようと思えば、何時でもここに来れた筈だ。
にも関わらず来れなかった。
それは来ようと思わなかったからだ。
そもそもいつも最初に悠気と合流するのが宵という事にも全く疑問を挟まなかった。
なぜ? 気になる男子を巡るライバルよ? 普通は気にするわ。

瑞香
 「おかしい、これって絶対おかしい!?」

私は頭を抱えてしまう。
こんなに不思議なのに、どうして今まで疑問にさえ思わなかったんだ!?
まるで何かに情報統制されていたみたいな気持ち悪さで、そしてそれが突然解き放たれた。

瑞香
 「宵が来てからおかしくなった? なんで宵なの? あの子一体何者?」

考えれば考えるほど月代宵は不自然だった。
まるで運命が月代宵を護っているかのように、逆にそれ以外を切り捨てるように……。

瑞香
 「まさか……■■■□□□■」

……あれ?

瑞香
 「えっと……あぁ、そうそう! エロ本位あるのよね〜?」

私は気が付くと、呆けてしまっていた。
お陰で何していたのか一瞬分からなくなってしまったが、思い出したように悠気の部屋を物色するのだった。
とりあえずアイツのオカズにしている本位知りたいわよねぇ〜♪


***



そこは日本だった。
ただ寂れた廃寺、そこの猫の額のような狭い敷地に紺色のローブを着た男が立っていた。

討希
 「……綻びが大きくなってきた、か」

それは悠気の父、若葉討希だった。
その顔は不思議なほどローブから見えず、まるで物理法則が働いていないかのようだった。
ただ、その男は絶対に日本にいてはならない筈だ。
その男がここに居る事こそ、ただ意味がある。

育美
 「……やはりこうなるのね……」

その隣に彼女、若葉育美は空間転位する。
アルセウスである育美は常にこの世界を見守っていた。
だけどもう限界だ……。

討希
 「……信じろ、俺達にはそれしかできない」

育美
 「そうね、そうするしかない……」



『突然始まるポケモン娘と学園ライフを満喫する物語』


第35話 楽しいクリスマスと違和感

第36話に続く。


KaZuKiNa ( 2021/09/03(金) 18:01 )